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読書履歴 2021年 (2021年12月24日更新)
2018年春4月から、自分の忘備録も兼ねて、読書の履歴を残すこととしました。2021年の読書履歴。
2021年12月に読んだ本
クリスチャンなのに、クリスマスイブに22時まで残業しているのは、どこのどいつだい?
私だよ!
さて、12月に読んだ本。
12月は本を読む時間も気力も、ほとんどありませんでした。
★はかせとコッペのたび/画:しんじはるか・文:のはらかもめ/いのちのことば社
出版されたばかりの絵本。クリスマスにぴったりの3人の博士+コッペの旅の物語。テンポよく進むよ~。
3冊買って、2冊は友人へのクリスマスプレゼント用♪
ぼくはきみがすき/いもとようこ
いもとようこ先生の絵本を、久しぶりに読む。
30年ほど前、僕がまだかけ出しの20代のCGクリエーターだった頃、いもと先生の「サンタさん」の絵本をCGでフルアニメ化しました。絵本をCGで動かすと言うのは、当時も誰もあんまりやっていなくて、いもと先生も初めての経験だったらしく、絵本が動くのを見て「とても喜んでくださっていた」と言う話をスタッフにお聴きし、とても嬉しかったクリスマスシーズンの想い出。
いもと先生の優しい絵本を読むと、それを懐かしく思い出します。
今月、絵本しか読んでないな~(笑)。
2021年読書感想総評。
昨年は年間で55冊。今年もあんまり変わらずの58冊。かつての本の虫も、今は読書量が往年の1/3~1/5に減っています。
まあ、知識偏重主義者じゃないし、読むのもけっこう気力&体力が必要で疲れるから、別に良いんだけど。
今年は、仕事も家事も家庭の事も一年を通して忙しすぎて、夜は疲れて本が読めない一年でした。
そんな中でも、辞書みたいに分厚い最新の「ワイン教本」とパスカルの「パンセ」が読めただけでも「収穫有り」としましょう。
2021年11月に読んだ本
11月は今年の最繁忙期でしたが、打ち合わせ等の電車移動が数回あったのでそれなりに読めました。
★画家 鈴木喜美子 「足尾への旅」/春山陽一著
草加を代表する画家の一人、鈴木喜美子さんの「足尾」への思い、そしてアートの経歴を追った一冊。
鈴木喜美子さんのギャラリー「ミュゼ環」がオープンしたのは、今から5年前の11月。同町内「神明町」の歩いて行ける近所の美術館で、僕も11月25日にお伺いしました。(余談ですが、同神明町の近所には「人形の美術館」もあり、さながらアートの町内です)。
鈴木さんの絵を初めて見た時の感想を正直に描きますと、「なんて暗い絵なんだろう」と思いました。空は灰色で、茶色と黄土色と灰色の山々、そして雪の景色・・・木々の緑やゴーギャンの様なカラフルな色合いは、一切無い。「なぜこんな陰鬱な印象の足尾の絵ばかり描くのだろう?」と、不思議でなりませんでした。
ちなみに僕の40年前の卒論テーマは、当時珍しかった環境問題と経済を取り上げた「自然環境破壊学概論」でした。森林破壊、大気汚染、水質汚濁など個別に取り上げた本はありましたが、環境破壊を俯瞰や総論で取り上げた本は少なく、自分の目で公害の現場を確かめる必要があるため、(学生の少ない費用で)あちこちに脚を運びました。川崎港、日本有数の汚い河川、絶滅危惧種のいる動物園等々、そして足尾銅山もその一つでした。
ご存知、足尾銅山は日本の殖産興業政策を支えた場所の一つで、同時にかつて足尾鉱毒事件のあった場所でもあります。その後、企業の努力で汚染物質が渡良瀬川に流れることは無くなりましたが(日本の公害対策の先駆けともいえる)、しかし足尾の山に酸性雨が何十年も降り注いだ結果、樹木は枯れ、禿げ山と化しました。「100年経っても木々は再生されない」と言われていました。僕が40年前に足尾の山を歩いた時も、緑は無く荒涼としたガレ場でした。
そのような、荒涼とした足尾と言う場所を「50年近く描き続けるのは何故だろう?」と言う疑問を、この本は少しづつ紐解いていきます。本の内容を全ては書けませんが、鈴木さんが足尾を描く姿は、セザンヌがひたすらヴィクトワール山を描いた姿と被ります。スズキさんの絵が、次第に緑の無いセザンヌのヴィクトワール山に思えてきました。本物のアーティストだけが為しうる、たった一つの事にたいするこだわりと執念。
この本を読んでから、5年ぶりに「ミュゼ環」を11月12日に訪れました。昨2021年の新作では、「夏の足尾」の「緑の山」と「青い空」が描かれていました。単に足尾に緑が戻ってきているというだけでなく、画家鈴木さんの心の変遷が伺える一枚です。
★ドローンガイドブック/玄光社MOOK
初のGPS機ドローン・DJIのMINI2を購入を機に、航空法や各種認可を確認する意味も含めて改めて再読しました。
ドローンの練習を始めたのは2018年ですが、その前にドローンのメカニズムや操縦方法、法律の規制などを知りたくて、ドローンを購入する前年の2017年に買ったドローンのガイドブック。「空を飛ばす=危険も大きい」と言う認識を持ち、知識と実技(経験)の両方が大切です。事故が行ったり、機体をロストした後に後悔しても遅いですからね。
★ライアー癒しの竪琴曲集/編者:CERENA/ライリスト社
マイナー楽器である「ライヤーハープ」練習の、現在選択肢の無い、ほぼ唯一と言って良い教本。
2021年10月に読んだ本
10月は繁忙期に入り、ほとんど読めませんでした。
★すごい平屋(美しい住まいと家づくりシリーズ)/エクスナレッジ
子どもの頃、新聞に入っていた家やマンションの広告の見取り図を見るのが大好きでした。
その頃の気持ちは未だに変わらず、「10坪の家」とか「ガレージのある家」とか、果ては「キャンピングカーアルバム」まで買って読んでいます(笑)。
「すごい平屋」はアマゾンで取り寄せて、面白くて一気に読んでしまいました。考えてみれば、平屋ってごっつい贅沢なんですよね。土地が広くないと成立しない。我が家が3階建てなのは贅沢なのでなくて、狭い土地で家族6人が生活するには家を上へ上へと伸ばすしか方法が無いからです。だからサザエさん一家なんて、世田谷区であんな広い平屋(しかも庭も広い!)に住んでますが、現代人にはちょっと無理なんです(笑)。サザエさんはなんか庶民っぽい一家の物語だけど、実は現代の我々からするとプチリッチ一族かもしれない・・・サザエさんも舟さんもパートに出ている形跡もなく、都内のあの広大な家と日々の生活を維持できるのが不思議でならないw。磯野家の、あの縁側とか、庭とか、長い廊下とか憧れますね~。
生涯でもう一度家を建てる機会があるのでしたら、田舎にちょっと広めの土地を買って平屋を建てたい・・・ガレージや天窓やロフトはあっても良いかな?そんな妄想心をくすぐられました♪
★イエス(JESUS)・上下巻/安彦良和作/NHK出版
20年以上借りっぱなしで、本棚の奥で見つけた本。返す前に再読しました。
著者も編集者もクリスチャンではなく、NHKの出版なので宗教色を極力取り除こうとしている漫画です。
安彦氏はガンダムやアリオン等で有名ですが、クリスチャンでは無いので、この漫画の背景には明確なキリスト教教義批判があります。キリストの復活は全否定、物語中ではキリストの奇跡も一切描きません。イエス・キリストはユダヤ教の改革者であり熱心な宗教家なのであり、キリスト教の教え(復活など)は、全て弟子たちがキリストの教えを「すり替えている」とまで言います。つまりキリスト教の教えは、絵空事であり弟子たちのでっち上げであるという前提で、キリスト教に対してかなり偏見をもって漫画が描かれています。高尾利数氏(日本の宗教学者)の「イエスとは誰か」をきっかけに、この漫画を描き始めたそうです。
この本は1997年に出版されているので、オウム真理教の社会的なショックが色濃い時代だったのでその影響も多分にあると思います。後書きにおいて、安彦氏はオウム真理教の事件に触れていて、初期キリスト教が弟子たちによって創設されたカルト教団だと暗にほのめかしているものと思われます。その意図に沿うように、聖書には存在しない記事、つまり安彦氏の推測や憶測で創作されたエピソードがかなり多く、これは聖書物語ではなく聖書の題材を借りた別の何かです。映画で言うならば、「ジーザズ・クライスト・スーパースター」やニコラス・カザンザキス原作でスコセッシが撮った「最後の誘惑」のような、聖書物語ではない別のお話しです。
2021年9月に読んだ本
この夏は、五輪のロードレースやTT、ブエルタ、UCI世界選手権など、自転車レース観戦に明け暮れました。
★バイシクルクラブ11月号
新城幸也選手の特集記事、MTB界をけん引してきた引退する山本幸平の記事、辻啓さんや別府史之さんや新城選手のコラム、自転車キャンプ記事他、「これは買わねば!」と、久々に買ったバイシクルクラブ。
★アメリカンマッスルカー1巻
僕が買ってきたディアゴスティーニやデルプラドやアシェットコレクション史上、最低のペラッペラの薄い内容の記事。
★わすれられないおくりもの
久々に絵本読みました。
2021年8月に読んだ本
8月はブエルタが始まりましたが、根性でパンセの700ページを読了しました。
★パンセ/パスカル著/前田陽一・唯木康訳/中公文庫
「人間は考える葦である」で有名でパスカルの思想の書。
以前取り上げて、HPに書いたので内容は割愛。
⇒詳細はこちら。
★自動車メカニズム図鑑/出射忠明著/グランプリ出版
車好きなので以前買って読んだ本。この度、車のメカニズムを現すCGを作る可能性が出てきたので再読しました。
2021年7月に読んだ本
7月は夜な夜なツールドフランス観戦をして、ツール後は五輪のロードレース、TT、MTBレースなどを観戦して、読書タイムほぼ全滅。読まれるのを待っている積読中の本の山が、高々と積みあがっている(汗)。
★バーダー 8月号
初めてバードウオッチングの雑誌をじっくり読みました。
僕のバードウオッチングのイメージと言うと、水元公園に自転車で行く度に、大勢のバードウオッチャーがずらりと並んで、高価な望遠レンズを付けた一眼デジカメを三脚に取り付けて「カワセミ」撮影を狙っている姿です。
しかし、この本を読むをバードウオッチングの世界ってもっと深くて広い。まず鳥の種類。名前を聞いたこともな鳥が、写真と共にたくさん掲載されている。そして生息場所も、海辺、川辺や湖畔や平地から高山まであらゆる地に及ぶ。そして、鳥の解剖図や鳥の餌となる虫研究記事まで網羅・・・凄いな。
今度、鳥の博物館に行ってみようと思います。
2021年6月に読んだ本
5月は3週間ジロ・デ・イタリアを夜な夜な観戦したので読書はほぼ全滅し、5月後半から6月中は仕事オンリーで6月も読書ほぼ全滅・・・読みかけだった本だけ読み終える(汗)。
★改訂版:バセドウ病・橋本病/伊藤公一著/高橋書店
2013年に甲状腺機能亢進症になった時に、同じ病を経験していた友人から借りて読んだ本。
あれから8年、昨2020年に新情報や最新の治療法や検査法などを加えた「改訂版」が発売されたので、改めて読みました。一生の病と付き合いつつ仕事をしたり余暇を楽しく過ごすには、病と向き合い、病の事をしっかり知ることは大事ですからね。
著者は、日本有数のの甲状腺機能の専門医、伊藤病院の伊藤公一先生。
★西の魔女が死んだ/梨木香歩著/新潮文庫
娘が色んな本を読んでいるのですが、そのうちの一冊を拝借して読みました。
僕も子どもらも、映画がかなり好きです。僕はSFが好きな傾向が高く、子どもらはややアニメお宅化しつつありますが、ある特定のジャンルは僕も子どもも共通して好きです。「何ジャンル?」と訊かれると今一つ応えづらいのですか、例えば「かもめ食堂」とか、「南極料理人」とか、「君の膵臓が食べたい」とか、この「西の魔女が死んだ」とか、そう言う傾向の映画・・・この感覚伝わるかな?
で、娘は気に入った映画の原作もけっこう読んでいたりする。
僕も「西の魔女が死んだ」は好きだったので、この原作小説を読んでみました。映画がとても原作に忠実だったので驚きました。
「日本映画あるある」なのですが、原作を映画化する時、制作側の都合で、設定や登場人物を変えてしまったり、オリジナルじゃないストーリーにしちゃうことが多々あって、あれは常々駄目だなぁ~と思っています。ファンの期待を、悪い意味で裏切ってますね。
最近では、「進撃の巨人」の実写化はひどかった。1作目も2作目も、脚本・設定・演技の全てが視聴に耐えられないレベルで、総スカンを食らってましたね。ほんと、ひどかった。「約束のネバーランド」も色々変えてしまって、ファンから総スカン。そう言うのが、日本映画は僕の子供の頃から多くて。原作者は、怒らないのかな?契約上、文句を言ったり抗議したりできないのかな?
この「西の魔女が死んだ」は、原作も映画も両方活かしあっていると思います。映画を見た人が原作を読んでも、違和感なく受け入れらるし、原作を読んだ人が、その後映画を見てもすんなり入っていけます。
作者様、私はそう思います。
"I know."
2021年5月に読んだ本
5月は3週間ぶっ続けで夜な夜なジロ・デ・イタリアを観戦したので、読書はほぼ全滅(汗)。
6月も仕事が詰まっているので、読書は全滅の予感・・・。
2021年4月に読んだ本
根性でワイン教本を読み終える。なんか4月は、教科書みたいの(※みたいでなく教科書そのものw)ばっか読んだ・・・忍耐の読書月間(笑)。
★ソムリエとワインエキスパートのためのワイン受験テキスト/自由が丘ワインスクール
買ったのは昨年12月なんだけど、ようやく読み終わる。ソムリエ協会のワイン受験(ソムリエ&ワインエキスパート)の教科書。
内容と言い、厚みと言い、もう、ほぼ辞書です(笑)
僕は、1999年にソムリエ協会のワインエキスパートの試験に合格した、日本で538番目のワインエキスパートです。
呼称資格を既に持っているのに、なんでまたわざわざ「ワイン受験教科書」を買ったかと言うと、この約20年の間にワイン事情もけっこう変わったからです。僕自身も、ワイン本をなるべく読むようにして・・・これまでに読んだワインの本が30冊・・・「マイナーバージョンアップ」をコツコツ繰り返してきました。ですが20年以上経ったので、この際、脳内ワイン知識の「メジャーバージョンアップ」を図ることにしました。
この約20年でソムリエ協会のワイン受験内容の何が変わったかと言うと、主には次の点です。
①ヨーロッパ諸国がEUとなって法体系自体が代わり、原産地統制名称などの扱いの統廃合があり、大きく変わった。
②新興ワイン国の取り扱いが多くなった。旧ソ連圏の一旦没落してしまったワイン産地も復興を遂げつつあり(品質もあがっていることもあり)、今まで教科書に乗らなかったワイン産地の記述が大幅に増えた。
③同様に、日本のワインの水準が高まっているので、国産ワインの記述がとても増えた。一つ一つの産地の紹介も、詳しくなっている。
④ワイン以外のお酒も取り扱うようになった。ビール、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ、リキュールや中国酒、日本酒、果てはミネラルウォーターまで網羅する。
ちょうど僕が受験した年に、初めてワイン以外のお酒がブラインドテイスティングで登場した。受験生の誰もが全く予期していなかったので、慌てたと思う。僕も正解が全く分からず、スピリッツとスピリッツの特徴を書いた記憶があります(苦笑)。試験後に知ったのだが、これからのソムリエは「ワイン以外のお酒の知識も把握しておく必要がある」との事でした。ソムリエは、ワイン以外もお客様のニーズに応える努力をせねばならないのです・・・今、正にそうなりつつあります。
と言うようなところでしょうか。フランスのワインの記述が一番多いのは昔と変わらないが、全般的にとにかく暗記する事柄が大幅に増えた。ざっくり概観して、3割ぐらい変更&追加があったイメージです。そしてこの本は、教科書と言うより全ページ「暗記帳」もしくは「辞書」である。まあ20年前の教本も、ほぼ辞書でしたが(笑)。
こんなもん、一回読んだだけで暗記できるはずもなく、何十回と読み返す必要があります・・・22年前の「猛勉強」&「暗記地獄」を思い出し、蕁麻疹が出そうです・・・当時、勉強とワインのブラインドテイスティングのし過ぎ(ワイン飲みすぎ)で、本当に蕁麻疹が出ました(汗)。
ソムリエ協会の受験は、舐めてかかるとまず受かりません。カフェでまったりと珈琲を飲みながらお洒落な勉強・・・等と言うエレガントとは程遠い・・・鬼のような形相のねじりハチマキの猛勉強が必要です。筆記の1次試験を突破したとしても、2次試験にはブラインドテイスティング実技もありますので、仕事の合間の時間確保は熾烈を極めますよ、マジで。最低1年間は真面目にコツコツ勉強して、何十本と言う様々なワインのテイスティングをしてメモを取らねばなりませんよ。
久々に、改めて教科書を読んで、初心に返りました。
★情報リテラシー教科書
息子が授業で使うと言うので、注文して届いたので僕も読んでみた。
最近の子はスマホは使いこなすが、PCを使いこなせない子も多いそうな。例えば、調べ物は検索でサイトに飛ぶので、URLアドレスを直接打ち込むのを知らない子も多いとか。
この本は大学生向きに作られているが、内容は基礎・基本。PCの操作方法、PCやインターネットの仕組み、情報漏洩防止やマルウエアの脅威、ワード、エクセル、パワポの使い方など。僕にとってはほとんど基礎的な項目ばかりだけど、今の子達にとっては必ずしもそうでもないのかな?
2021年3月に読んだ本
3月はめちゃ忙しい割には、本が読めました。1~2月に読みかけだった本も読了。
ウルトラセブン本3冊は、別途感想を書いたので、ここでは割愛。
・→「ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた」の感想はこちら!
・→「セブン セブン セブン アンヌ再び・・・」の感想はこちら!
・→「ダンとアンヌとウルトラセブン」の感想はこちら!
★ユダヤ難民を救った男 樋口李一郎・伝/木内是壽(よしひさ)著/アジア文化社
ナチスの迫害によるユダヤ人難民を救った日本人としては、「命のビザ」の杉原千畝氏が有名だが、同様にユダヤ人難民を救った樋口李一郎氏(以後、敬称略)。しかし、樋口は杉原ほど知られていない。戦時中の事件ゆえに、相手国の外交関係への配慮から(軍事機密として)伏せられてきたためである。
この本一冊を丸々全部簡潔化することはできないので(それは本を読んでいただくしかない)、要点だけをまとめるとこうなる。元を辿ると、日露戦争時、日本はロシアと戦い続けるだけの資金は無かった。欧米において、日本の国債など誰も相手にはしない。弱小国日本がロシアに勝てるわけがないと、世界中が思っていた。日本の戦争の行く末は、風前の灯だった。その時に、日本人に救いの手を差し伸べたのがユダヤの経済人だった。彼が日本を支持したおかけで日本の国債は信頼されて、日本は戦費を調達できて、辛くもロシアに勝利した。そのかつての恩を、日本人達の一部の人々は忘れていなかった。軍人の樋口も、その一人だった。
また、世界中でユダヤ人が疎まれていた中、日本では独自のユダヤ研究が行われていて別の道を歩んでいた。当時、八紘一宇の精神で(これについては個人的に異議があるが脱線するので割愛)、理不尽にユダヤ人を迫害する世界の社会とは一線を隔していた。
樋口は、ナチスが台頭し始めた頃のドイツを視察し、ユダヤ人迫害の現場を見ていた。またポーランド武官時当時、ソ連の武官とも親交のあったロシア通でもあったので、対ソ連のためハルビン特務機関長として満州国へ渡ることとなった。当時の敵国はソビエトであり、間違いなく侵攻を狙っているソビエトへ万全の対策をしなければならない余裕の無い時に、関東軍は中国との戦争へと突き進んでいく。そんな情勢の中、樋口らはユダヤ人への理解を深めつつ、ユダヤ人と対立を深めている白系ロシア人(彼らもまた赤色革命でロシアから逃れた人々)とユダヤ人の融和政策も推し進めていた。
そんな折、1938年3月にオトポール事件が起きる。迫害から逃れてきたユダヤ人が、ソビエトと満州の国境のオトポールで足止めを食らっていた。極寒のシベリアで、飢餓と寒さで凍死者も出ている。放っておけば全滅。当時、日本はドイツと日独防共協定を結んでいたので、ユダヤ人排斥を進めていたドイツに気をつかったのだ。ハルビンのユダヤ人協会は、樋口を頼った。樋口は即座に行動に出た。軍の制裁(クビ)も覚悟し、独断で満州鉄道の松岡総裁(後の外務大臣)に救援列車の出動を要請した。松岡はこれに応え、13便の救援列車が出動した。こうして、極寒の中のユダヤ人難民は救出された。杉原千畝が、1940年に命のビザを発給する2年以上前の話しである。
この件については、予想通りドイツ側から抗議がくる。軍による査問が行われたが、樋口は正論で返してこの件は不問とされたが、日本陸軍は樋口を本国に戻した。樋口は参謀本部第二部長に就くこととなり、ハルビンを去ることとなった。ハルビン駅には、二千名の見送り群衆で埋め尽くされた。ユダヤ人だけでなく、ユダヤ人と敵対していた白系ロシア人も見送りに来た。
長くなるので、その後の種々物語はばっさりカットするが、戦争末期の事だけは書いておきたい。1941年12月の真珠湾攻撃で太平洋戦争に突入した日本だが、翌年ミッドウェイ海戦で大敗。この時点で空母を失った日本の勝算は無くなるが、日本は米国とソ連の連絡を断ち切るために、アメリカ領土のアッツ島とキスカ島を占領した。海軍主導で始めたこの作戦だが、もはや海軍に北方に割ける船は無く物資が届けられない状況だった。樋口は、1942年8月に札幌の北部司令官に転任した。北部軍は、アッツとキスカの兵士を救いたかったが、作戦は大本営直轄化だったので関与できなかった。ここで、またもや樋口の対応力が求められた。そもそも東条英機が始めたこの戦争には戦略計画が無く、軍備も足りていないのに拡大するばかりで、歯止めのない大本営に樋口は怒っていた。樋口は、両島の軍を北部軍に編入して撤退させる道を速やかに模索する。本土の大本営では緊急会議が開かれ、撤退を進言する樋口を腰抜け扱いして罵倒した。しかし結果として両島の兵は、北方軍と改名された北部軍の下に入ることとなった。一方、米軍はアッツ島奪回計画を開始する。大本営は、対抗すべく4,000人の増員計画を決定した。樋口は、増援の報をアッツ島に送った。アッツ島の現場の士気は上がったが、増援は海軍の協力が得られず援軍は送れない事となった。アッツ島は玉砕となり、アッツ島守備隊2,638名のうち意識を失って捕虜になった29名以外は、全て戦死した。樋口は、無念の思いだった。本心は「部下に死ねと命じた自分がおめおめと生きていられない」のだが、キスカ島の守備隊5,183名を救わねばならない。樋口は艦隊司令官と打ち合わせて、霧の日の救出作戦を実行。米軍の艦船包囲網と最新のレーダーをかいくぐり、キスカ島の5,183名救出を成し遂げた。これには奇跡的な奇妙な背景があるのだが、ここでは割愛する。
そして日本はいよいよ終戦(敗戦)の日、8月15日を迎える。終戦したのに、ソ連軍最高統帥部は南樺太、千島列島、北海道への進攻作戦を発令すると言う暴挙に出た。そもそもソ連は、日本の敗戦が確定していた8月8日に、日ソ不可侵条約を一方的に破って、日本に宣戦布告していた。スターリンは、トルーマン大統領に対して北海道北半分の占領を要求していた。ソ連通の樋口は彼らの手の内を熟知していて、ソ連軍が2個師団で北樺太から南下する作戦だと予想した。終戦から3日後の18日、ソ連軍は日本の本土防衛の最前線の占守島を奇襲してきた。師団長から将軍の樋口に、即座に連絡が入る。大本営の指示は、「一切の戦闘行為を停止する」だったが「やむを得ざる自衛行動は妨げず」とし、完全停止の時期を18日午後4時とした。樋口は、直ぐに反撃を命じた。
午前2時、ソ連の上陸用舟艇の大群を発見。日本が集中攻撃を開始。敵の第二派、第三派、第四派が次々と押し寄せる。ソ連は2万の大軍を投入していた。日本軍は、戦車隊が横一列で応戦した。ソ連軍の損害は、戦死行方不明者4,500名、艦隊撃沈14。日本軍の死傷者は、600名だった。ここに及んで、ようやく21日午前8時に双方は停戦した。樋口は、北海道と言う本土防衛を戦い抜いた。この時の戦いが無ければ、北海道はかつての東西ドイツの様に分裂していたかもしれない。こうして、樋口の戦争は終わった。
これには、後日談がある。戦後、札幌駐屯の米軍の中佐が捕虜虐待事件を調べに樋口の所にきた。樋口は収容所の部下に「軽挙妄動は許さない」と軍規遵守の徹底と人道的処遇を図っていたので、捕虜虐待や致死事件が一件もなく、温情的処遇が明らかになった。調査が終わった後、件の中佐は樋口に謝罪し、食事に招待した。それ依頼、米軍側の樋口への信頼は厚く、高額で特別顧問に迎えたいとの申し出を行ったが、樋口は申し出を断り、山中の耐乏生活を続けた。
戦後の逸話がもう一つある。ソ連極東軍は、宿敵・樋口を「戦犯」に指名し、連合国総司令部に引き渡しを要求したがマッカーサーは拒否し、樋口は人道主義者であると擁護の通告をした。この背景には、アメリカ国防総省を動かした米国ユダヤ会議の存在がある。このユダヤ会議の中に、オトポール事件で命を救われたあの時の難民たちがいたのである。「樋口救出運動」のために、世界各地に散らばっているユダヤ人に檄が飛び、オトポール事件の恩を返す運動が米国国防総省を動かしたのである。樋口は、この事を後になって知った。当時、ユダヤ人の救出に関わった樋口や安江仙弘大佐の名が、エルサレムのゴールデンブックに名を刻まれている。(犬塚惟重も予告されていたが彼は辞退した。他には民間人の小辻節三の名が刻まれている)。
自分の功績を自ら語る事もなく「偉大なるヒューマニスト・ゼネラル(将軍)樋口」は、1970年世を去った。樋口の死は、アメリカの新聞や雑誌に大々的に報じられた。外国生活が長く、ユーモアを解し、ドイツ語、ロシア語が堪能で、オペラなどの音楽に通じ、水彩画を描く文化人であった。
2021年2月に読んだ本
2月の読書(忙しすぎて寝るのが精一杯で)、ほぼ全滅・・・(汗)。感想、特に無し。
2021年1月に読んだ本
ありがたいことに1月から仕事が多忙であまり本が読めませんでしたが、年末年始等の時間で、昨年から読んでいた本の何冊かは読み終えました。
★ゲバラ日記/チェ・ゲバラ著/平岡みどり訳/中公文庫
ゲバラ本の3冊目をようやく読み終える。
ゲバラの虐げられている者への思いには共感できるが、政治思想・哲学には共鳴し難いと言う事については前回書いたので、今回は割愛。
この本は、チェ・ゲバラのゲリラ活動の日記である。ボリビアの革命のために、1966年、たった6名でゲリラ活動を開始。その後、南米各地から集まった戦士志願者で30名そこそこのゲリラ部隊に。たったこれだけの人数で、ボリビア正規軍に対抗しようとするのである。しかしキューバ革命では、カストロらと共に僅か82名のゲリラ部隊で反政府行動を開始し、10数名まで減ってしまったにも関わらず、市民の支持などを得てキューバ革命を成功させた実績があるので、スタート時の小人数はまあそれで良いみたい。
ところがである・・・この集まった戦士たちが、兵士としての厳しい訓練も受けておらず、実戦経験も無いほぼド素人の集団。チェの仲間にはキューバ革命やコンゴ内戦を戦った実戦経験のある強者もいたが、ゲリラ部隊の参加者達の多くは実にお粗末。日々、くだらない喧嘩や愚痴や言い争い、空腹に耐えかねて隊の食料を盗み食い。その度ごとにチェが叱責。見張りの役につかせれば、居眠り・・・ローマ帝国軍だったら即刻処刑です。任務につかせれば、計画通りに実行できない、予定時間には戻らない。自分でつけた足跡を消さない。盗んだトラックは横転させる。重要な品々を保管しておく穴倉倉庫を作らせれば、雨で水浸しで使い物にならない。そして、次々と襲う体調不良や病気やケガ。戦闘よりも、そう言う滅茶苦茶な日常で疲れ切っていくゲリラ部隊の戦士たち。チェの日々は、まるで「言う事をきかない子どもを叱る大人」みたい。
こう言った一年に渡るゲリラ活動記を300ページに渡って読まされている訳だが、1年に渡って何度も繰り返される失敗を何度も何度も読まされている感じ。チェのイライラ感が伝わってくるが、読んでいる方もイライラする(笑)。ノンフィクションのドキュメンタリーなので、フィクション小説のような意外な展開やスカッとする展開など、もちろん微塵もありません(笑)。そもそも論なのだが、訓練も受けておらず、技術も能力もなく、何度も同じ過ちを繰り返す部下達に、延々と任せ続けているチェの指導力や脳内はどうなっているの?まあ、補充もできず限られた人材でやりくりしなきゃいけない、チェの心労は理解できなくはないけど(汗)。頼れるベテラン戦士の数は限られているし。チェは「せめて、あと100人の兵士(部下)がいたら・・・」と愚痴ります。
ゲリラ活動は、ボリビアの600m~2,300mの山岳地帯や高地で行われていたのだけど、50年以上前のゲリラ活動なので、当然GPSなんてないしドーロンもない。しかもボリビアの山奥なんて地図すらないので、自分達で現地で地図を作成しながらのゲリラ活動と移動。もう文字通り、暗中模索と試行錯誤の行軍の日々。1年にも渡る活動なので、携行食とか缶詰なんてのは僅かで、常に食糧不足で、食料は現地調達。農民から食料を現金で買うし、山の中で様々な鳥や動物も狩るし、色んな物を食べるので当然お腹もくだす。食料としての牛や馬やロバを引き連れての行軍。現代の近代戦からすると、もはや牧歌的とすら言える。
医者であるチェも度々体調をくずし、持病の喘息が悪化していく中、医療品も尽きていく。当初は士気も高く小さな戦果をあげていたゲリラ戦も、圧倒的な数の政府軍の包囲網で次第に不利になっていく。飢餓、病気、情報の不足、兵士の不足、士気の低下。脱走する兵士も現れるし、心身共に追い詰められて正気を失っていく兵士も出て来る始末。
しかも、関わった農民たちはゲバラ達の味方と言う訳でなく、戦士としてゲリラ活動に加わるどころか、情報を敵政府にどんどん密告する。30数名いたゲリラ部隊は、日々不利になっていく戦闘で数を減らしていき、24名、22名、ついには10数名に減る。1,800名の政府軍の包囲網に対し、僅か10数名となった風前の灯火のゲリラ部隊。
そして結末の書かれぬまま、日記は1967年10月7日、突然終わる。そう、チェは捕まってしまったのである。そして、その後処刑された。フィクションではないので仕方ないけど、予想外の結末も感動的なクライマックスも特にない、苦労話ばかりの他人の一年間のもやもやした日記を読むのに、少々疲れました(汗)。でも、チェ・ゲバラの「人となり」を、ほんのちょっとぐらいは理解できたのではないかと思います。
★NANI/2020 WINTER号
ウルトラセブンファン&マニアにはたまりませぬ。このNANIは、リアルポインター号の記録の2020年冬号です。ポインター号は、子ども時代の僕にとって憧れの車でした。一番大きな理由は、ウルトラホークやハイドランジャー、マグマライザーも美しくかつ独特なデザインで大好きでしたが、それらは本物ではなく模型な訳ですが、しかしながらポインター号は実車だったからです。本物が存在する!
ポインター号に会いたくて、どこかに現存しているのかどうか調べていた事があって、まだインターネット検索ができない時代だったので「幼稚園に寄贈された」とか「もう廃車となった」とか色々と情報が錯綜していて、結局、現物車両はもう存在しないと言う結論に至りました。
一方で後年、「ポインター号を実際に作った人がいる!」、そして「リアルポインターが実際に走っている!」と言う情報も得てワクワクしました。僕がウルトラセブン好きなのを知って、走っているポインター号の写真を撮影して友人が送ってくれた事もあります。
そして、この冊子はそのリアルポインター号の本なのです!ああ、ポインター号に会いたい!
★ながれぼし 武田康男 監修・写真/小杉みのり 構成・文/岩崎書店
友人にプレゼントするためにチョイスした絵本。
子ども達がまだ小学生の頃、流星群を見るために、夜、一緒に近所の公園に行ったのを思い出しました。子ども達は、空のどこを見たらよいのか分からず、流れ星を発見できませんでしたが、大人の僕は一点に集中せず全体をぼんやり見ていたので、3個発見できたことを思い出しました。都会は明るいので、流れ星もなかなか見られません。
同じ理由で、満点の星の天の川もまだ人生で3回しか見ていません。2回はそれぞれ国内の海と山で、もう1回はオーストラリアのウルル(※ユラーラ)の砂漠のど真ん中で。また、満天の星が見たいな~。
★国産&輸入車アルバム/ドライバー版
スーパーカー世代の車好きの性として、毎年必ず買う本が「国産車&輸入車」の本。毎年、車の脳内情報をバージョンアップします。
2003~2014年版は「JAF版」。2015~2018版は「CARトップ版」。そして2019年以降は「driver版」です♪
★ハイキュー 45巻
娘共々読んでいたハイキューの最終巻です。古舘先生、お疲れ様でしたm(__)m
以上、1月の簡易読書感想記でした。