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見えない銃弾の飛び交う戦場を生きる   (2009年 9月13日記載)

 8月31日の衆院選において、民主党が圧勝した。自民党の主な支持団体には"経団連"等があり、大企業優先の政策、まあ言ってみれば(各種の大義名分はともかく)「金持ちはより金持ちに、貧乏人は死なぬ程度に」的な政策に偏っていたのは否めない。一方で、民主党の主な支持団体は"労組"等であり、これには自治労なども含まれることから"果たして公務員改革などできるのか!?"と言う不信もあった。しかし、その疑念をすら大きく上回る自民党(および公明党)への"No!"の意思表示が、国民によってなされた訳である。
 約一年ほど前の昨年10月に、"新時代の大変革期"についての記事を書いた(→記事についてはこちらをクリック!)。明治維新、そして第二次大戦終戦に引き続き、近世日本の第三回目の大変革が、"遂に"と言うか"ようやく"訪れた。

 このホームページで度々触れているように、この日本では毎年3万人もの自殺者が出ていて、それが10年も続いている(※注1:これは遺書などにより自殺と断定できる統計上の数であり、実数は遥かに多いと推測される。正確な統計は無理だが、一説には年間推定10万人とも言われる)。一年に3万人の自殺者と言うのは、先進国の中でも異常に高い数字である。
 また、失業者数も5.7%と最悪の数字になっている(※注2:これも統計上の数字であり、就業をあきらめた者、パートやアルバイトで僅かでも収入を得た者、労働基準を下回る過酷な労働環境だが転職できない潜在的な失業者の数はカウントされていない。これらも正確な統計数を出せないが、5.7%と言うのは失業者の実態とは大きくかけ離れていると考えられる)。
 世界の紛争地域や治安の悪い国ですら、自ら命を絶つ者が3万人もいる地域と言うのはほとんど無いと言われる。自殺の"率"で言えば、日本は全世界で8位と言うありがたくない高位置にいる。これ以上に自殺率の高い国は、ほとんど旧ソ連圏などの貧しい国々である。先進国ないし経済大国と言われながら、日本と言う国は世界から見てもたいへん異常な状況なのだ。

 今、僕は自分の事務所を経営しながら、別の会社で月間100時間ほどの徹夜勤務の仕事もしている。自給換算では(日中賃金よりも高い夜勤の賃金ですら)、本業の仕事の数分の一にしかならない。実際にこの仕事をメインとしている人もいるが、仮にこの夜勤だけを一年間一生懸命に続けても年収200万円には届かない。月収15万円ぐらいが限界だと聞いている。ボーナスは、もちろん無い。その中から家賃、水道光熱費、税金などを支払ってしまうと、数万円しか残らない。数万円から食費、衣服費などを捻出するのだ。たいへん過酷な話しである。とても、貯金など捻出できる状態ではない。収入はそれだけだから、少しぐらいの風邪では仕事を休めない。健康を大きく崩せば、その収入の道すら絶たれてしまう。実質的に、セーフティネットなど何処にも無い。これが日本に相当数増えてしまったワーキングプアの現状なのだ。そう言う労働状態・雇用関係が、何年も何十年も、この先ずっと続くのだ。気がおかしくなってしまうような状況だと思いませんか?現在、僕はそれを現場でずっとこの我が身で体験している。僕には別の本業があると言うものの、日中に本業で10時間働き、1~2時間の僅かな仮眠で再び徹夜で10時間働き、翌日また本業で10時間働く…と言う、これはこれでまた別な意味でたいへんハードで辛い状況がある(※世のお母さんやお父さんの中には、僕のように2つ、3つと仕事を掛け持ちせざるを得ない方々もいるのだ)。
 派遣業の自由化により、"若者の職業選択の幅が拡大した"と自民政府と閣僚たちは言ってきた。「若者が自分の夢をかなえるために、その目的をかなえるまでの仕事を自由に選べるようになった」と。はっきり言おう。これは大嘘であり、派遣の自由化を正当化するための大義名分でしかない。どんな悪い戦争にも大義名分があるように、どんな悪い政策にも大義名分がある。"派遣業の自由化"の本質は、"グローバルな競争に勝ち抜くため"と言う旗印の下、「企業が人材が欲しい時には安く労働力を手に入れ、要らなくなったら直ぐに首を切れる」ために設けられた政策である。仮にこの派遣業自由化政策を導入するのであれば、政府はセーフティネットを構築し、仕事を失った人々の就業訓練や雇用創出、そして何よりも失業者の保障のために予算を費やさねばならなかった。しかし、実際に厚生労働省が行ったのは、"お仕事館"のような巨費をかけた箱物の天下り先を作り出して、官僚自身の利益とする政策だった。仕事を失って本当に早急にお金を必要とする人々へは、お金が届くことはないのだ。現代に生きる労働者の多くが、不安定な派遣形態の雇用関係ではなく安定した労働環境を望み、「このような政策はおかしい、正しくない」と思ったからこそ、自公は大敗を喫したのだ。「生活を守る」と言う口先だけのPRには、人々は見向きもしない。美辞麗句に彩られた"大義名分"ではなく、彼らが"過去に何を行ってきたか"の本質を見抜いているからである。彼らが「何を言っているか」ではなく、「何をしてきたか」を知っているからである。
 これでは"将来に希望を持てない"、とか"不安"なのは当然である。その中で、"自分の存在意義"を見失い「自分なんか生きていても仕方ない」と思い、自らの命を絶つ者が実際に大勢いるのだ。またごく僅かな少数の者たちは、逆にその不満を外に向け「こうなったのはお前ら社会のせいだ」とばかりに他人の命を奪う許されざる蛮行に走る。自らの命であれ他者の命であれ、いずれにしても人の命が奪われる悲惨な現状である。

 私は思う。(このHPで以前も同様な事を書いたが)「現代は見えない銃弾の飛び交う戦場なのだ」と。多くの人々の心と体が傷つき、多くの人が絶望のうちに自らの命を絶っている、目には見えないが、過酷な戦場を我々を生きているのだ。目には見えないが、日本は現在"焼け野原"なのだ。そして今、日本国民は「もうこんな生活には耐え切れない!」と言う一揆の一票を選挙で投じたのだと思う。
 (これも何度もこのHPで書いてるように)僕は自民党政権の政策の背景にある思想には反対で、ずっと批判し続けてきた。選挙でも、その意志をずっと表してきた。国民に見放されつつあった自民党を、結果的に救ってしまった旧社会党や公明党についても同様な思いである。半世紀以上この国の政治を担ってきたこの政権党である自民党は、"自由"で"民主"なその政党名とは異なり、憲法が規定する思想・信教の自由とは正反対の政策を取り続けてきた。元文化庁長官にして元教育課程審議会会長のM氏の「もう、バカは相手にせず、リーダーになるエリートを育てる事に力を注げば良いのだ、これからの時代は。バカは、バカなりに国に忠義を尽くして、文句を言わずただもくもくと働いておれば良いのだ」と言う意味合いの発言に、その思想が象徴的かつ集約的に現れている(→詳しくはこちらをクリック)。明治政府が、国民に国家のために命を捧げてもらうように明治2年に"東京招魂社"(靖国神社の前身)を人為的に作ったのと同様な(→靖国神社の歴史についてはこちらをクリック!)思想は、「国民は国に忠義を尽くしてグダグダいわず働け」と現代にも引き継がれている。国民は文句も言わず国に仕える存在で、国家その物は"エリートのための国家"つまりは"高級官僚の国家"、そう言う思想が現代まで連綿と続いているのである。第二次大戦の敗戦でも、日本のその官僚支配の構造が壊れることは無かった。
 今、約1世紀半近く続いた官僚支配の体制が、ようやく問われ直そうとしている。今更ここで僕がうだうだと書くまでも無く、何十兆円と言う膨大な血税(…本当に血を流す思いで支払っている税金だと思う!)が、国民の生活と関係ないところに無駄に投じられ、天下りや渡りなどによって官僚自身の利益のために使われ続けているのは、既に国民の多くが知っている。官僚の中には、天下りと渡りで、短期間の内にサラリーマンの生涯賃金以上を稼ぐ人々がいる!(※否、"稼ぐ"と言う表現は当たっていない。元々"税金"であり、彼らは一円も稼いではいない。彼らには、永久にワーキングプアの過酷な現状や追い詰められた心理をできないだろうし、本気で理解しようとは思っていないだろう。彼ら官僚が提示してきた法案の数々がそれを物語っている)。しかも、血税をハイリターンで懐に入れる彼らが、仕事にリスクと責任を負うこはないのだ。政策の"良い結果"は官僚自らの手柄とし、"悪い結果"は誰の責任でもなく、もしくは具体的な仕事の外注先や政策を実行した企業の失敗であり、彼らが責任を問われる…現在、報道で我々が多く目にする通りである。民間企業では、有り得ないことだ。
 事実、4400もの外部団体に12兆円もの税金が投入され、その中の約9兆円が当該団体人権費等の団体維持に関わる費用であると言う。つまり、実際に政策に費やされるは僅か3兆円で、国民のために果たしてその中の幾らが実際に使われているのは、我ら国民には知る由も無い。民間企業では、がんばって売り上げて、もたらされた利益の中から給与や賞与が配分される。しかし、官僚組織においては、まず高額な税金を分捕っておいて自らの高い報酬を決めておいて、残りの僅かな部分を政策実行のために回す。 もう一度繰り返すが、民間企業では有り得ないことだ。正に、"役人天国日本"。
 ノーリスクなのに、超ハイリターン!我々の常識を、遥かに逸脱している。これらの金額が一体全体"正確にはいくらなのか?"は、自民政権下ではまったく分からなかった。彼らは言ってきた。「中~高福祉実現のためには、国民のそれなりの負担増も必要だ」と。私は一年の間に、所得税、事業税、住民税、固定資産税、自動車税、健康保険税、国民年金保険料、そして日々の消費税を支払っている。税金と公金の支払いが、多い年は一日あたりの支払い額が5,000円もあった…お昼ご飯の額を500円以下に抑えていたのにも関わらずである。これが現実の国民の姿であると思うが、これが果たして小負担であろうか?十分に、高負担ではないだろうか?それなのに、政府と官僚は、この負担では中~高福祉は無理だと言い続けてきた。十分に怒っても良い頃だと思う。そして前日の選挙で、"和をもって尊しとなす"日本人もついに切れ、その怒りの一票を投じた。

 高級官僚の指揮(及び結果としてその指揮下にあった政治屋)の下、日本国民は生き延びるために、また家族の生活を守るために日々の過酷な戦いを必要以上に強いられた。今、この"見えない銃弾の飛び交う戦争"を、この選挙を期に終戦にしてほしい。戦後には、様々な混乱が訪れるだろう。自分たちの巨額な利益を守りたい官僚は、必死に抵抗するだろう。既得権益を手放したくない周辺の団体や人々も、ありとあらゆる手を使って妨害をしてくるだろう。しかし、この"目に見えぬ戦争"をここで完全に終わりにして、この見えない"戦後の焼け野原"に、国民が"不安なく""未来に希望の持てる"新しい社会を築いていこう。それは民主主義国家では、本来、我々国民がその強い意志を示すことで初めてできることであり、今回その意志を国民が示したのだと思う。もう一度、否、何度でも言いたい。この"見えない銃弾の飛び交う戦争"を終結して、安心と希望のもてる新しい時代を皆で作っていこう。そして、現代の困難な日々を一生懸命戦った日本中のパパやママ達が、将来、自分の命も他人の命も奪われる事の無い明るい日本の未来を、その子供たちに引き渡すのだ。そして「あれは日本の大切な変革期だった」と後世に伝えるのだ。


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