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新時代の大変革期   (2008年10月30日記載)

 日本は、20世紀の敗戦、経済の高度成長、そしてバブルの崩壊を経験し、この21世紀の初頭、時代の変革期を迎えている。
 それぞれの歴史認識や価値観はともかく、ここ150年の日本では、"明治維新"と"太平洋戦争の敗北"の二回の歴史転換点があった事を否定する人はまずいないだろう。

 第一の日本の大転換点。江戸時代末期、西洋列強諸国に対する危機により歴史が動き、多くの日本国民の犠牲の上に明治政府が樹立された。
 それまでの日本社会は、公家・貴族ならびに(その後勢力を拡大した)武家による統治が長らく続いていた。時代ごとに力を持った諸侯の中で、もっとも強大な力をもった者がこの国を統御すると言うやり方が、ずっと踏襲されていたのである。その社会のあり方を根本から問い直させたのが、米国のペリー来航に始まる西洋列強諸国の開国要求である。西洋列強による世界各地の植民地化は、留まる事を知らなかった。
 攘夷(※外国人を撃ち排斥する事)は、西洋諸国の圧倒的な軍事力の前に不可能と判断した憂国の志士たちは、外国の技術、法制度、統治システムを積極的に学ぶ。そして、もはや日本を守る力を失った徳川幕府の倒幕へと進んでいくのである。明治維新は農民や町人も含めた国民全体の革命とは言い難いが、それでも明治維新は武士が権力を振るう時代に終止符を打ち、不完全ながらも民主主義法治国家の体裁を整えた。そして、西洋列強諸国に追いつけ、追い越せとばかりに富国強兵策へと邁進するのである。

 第二の日本の大転換点。アジアに覇を唱えようとした日本の、軍事的な完全なる敗北。
 西洋諸国に追いつくべく、強力な軍事力の増大を図る。当初は、西洋列強の侵略を阻止すべく強化された軍事力だったが、清国との戦争後、遂に西欧列強のロシアと開戦するに至る。当時最強と目されたコサック騎兵ならびにロシア艦隊に勝利する。西洋列強の仲間入りを果たしたと歓声に沸く日本だったが、その奢りが行き過ぎると日本に暗雲が垂れ込め始める。傀儡政権による満州国設立などの策謀は、中国だけでなく西洋諸国にも大きな警戒感を与える。日本はアメリカやイギリスなど西洋諸国に包囲され、資源確保のために"大東亜共栄圏"と言う大義名分の下、無理なアジア侵略を開始し南進を始める。当初は優勢だった戦闘も、アメリカとの(資源、技術、システムを含めた)国力の差で、日本国家は壊滅的な敗北を喫する。しかし、軍事力を放棄した日本は、平和憲法の下で、経済大国の道を歩んでいくのである。

 第三の日本の大転換点。それが今である。
 軍事的な敗北によって国土が焦土と化した日本ではあったが、国民の必死の努力で驚異的な経済的復興を成し遂げた。国民の多くが経済発展の恩恵を享受し、一億総中流家庭と言われるまでに発展した。しかしその一方で、経済の発展と共に様々な弊害が起こり始めた。公害の問題、都市化による心の疎外や孤独感など、様々な問題が噴出した。経済発展と共に、「稼ぐためにはどんな事をしてもよい」とでも言うような間違った"自由主義経済思考"が横行し、人々の職業倫理観は低下し、偽装や汚職などの不正が拡大していく。尊いはずの労働の意義が薄れ、単純に稼いだ金額によって"勝ち・負け"を決定するような時代に変貌してしまった。本来は、国民に仕えるべき公僕としての国家エリートである官僚すらも、いかに自己の属する組織ならびに自分のために利益を誘導できるかと言う、私利私欲の亡者と化してしまった。経済発展の影に隠れて、数多くの公共工事、数え切れないほどの法制定による天下り先の乱立、こう言った事に税金が湯水の如く投入されていった。その中でメディアに暴かれた不正の数は、枚挙に暇が無い。20世紀末のバブル崩壊、昨今の金融危機、官僚の腐敗、企業倫理の低下、不公正な労働環境など、日本は今、未曾有の危機に瀕している。

 日本が今、大転換点に差し掛かっている事を如実に示す"事実"がある。事実の1番目。
①風雲急を告げる江戸時代末期、江戸幕府の指導者たる老中の平均在任期間は、わずか1年半。
②満州事変から太平洋戦争集結までの期間、首相の平均在任期間も、わずか10ヶ月程度。
③そして、現代の自民・公明政権は、阿部首相、福田首相と、1年ほどで立て続けに政権を放り出している。
 時代が変わろうとしている時なのに、時の指導者は政権の維持しか考えていないので本質は何も変わらない。最近では、異例な長期政権となった小泉首相にしても、前後の首相たちと本質的な所では何も変わりがない(※むしろ自公政権を延命させたと言う意味ではより罪が重いかもしれない)。
 幕末であれ、戦時の政権であれ、次々と指導者が変わっても、詰まるところ中身を変えるつもりが毛頭無いので、最後には結局ぶっ壊れるまで行ってしまう。行きつく所まで行き着いてしまう。それが"江戸幕府の崩壊(1.封建的旧体制の崩壊)"であり"大日本帝国の崩壊(2.軍事国家力の崩壊)"である。そして今、日本は、第三の崩壊の危機に瀕している。それが、"経済力国家の崩壊"であると僕は考えている。

 事実の2番目に、不思議な事に(と言うか必然的に)、すべての転換点で大国"アメリカ"が絡んでいると言う事も掲げておこう。
①ペリーの来航が無かったとしても、いつかは西欧列強との対峙を真正面に見据えなくてはならない時代が来たと思うが、最初の扉に足をこじ入れたのはアメリカである。
②アメリカの圧力で開国に踏み切り、富国強兵の道を進んだ日本が、今度はそのアメリカと対戦する事になったと言うのも、また皮肉な話しである。
③そして現代、日本そして世界は、アメリカの詐欺同然の"紙切れ証券"の上に成り立っていた金融バブル大好況の崩壊に右往左往させられている。

 3番目に、日本は大転換期を迎える毎に、多大な国民の犠牲者を出していると言う事実も付け加えておこう。
①明治維新では、西洋列強との戦闘による多数の戦死者、守旧派と倒幕派による内戦的な多数の死亡者を出している。
②太平洋戦争では、もうここで語る必要の無いほどの膨大な戦死者、戦没者を出している。こうした膨大な死を伴う経験から日本は学び、歴史の転換点を乗り越えてきた。
③では、現代はどうか?犠牲者はいないではないか?否、多数の犠牲者が現に存在する。毎年3万人以上と言う自殺者。それが10年の長きに続くと言う異常な状態が続いている。膨大な自殺者数である。

 幕末、虐げられた農民達は、もはや自らの命を顧みず、豪商や豪農の"打ち壊し"や世直し"一揆"を行なった。今、また時代は、風雲急を告げている。新たな時代の原理とは、何か?最初の"軍事力第一主義"は失敗した。次の"経済力第一主義"も寿命がつきかけ傾いている。これからの時代が必要なものは、何だろう?僕は、それは「人間の尊厳を第一とする時代」だと思う。

 兵器の力や、お金の力の上に、"人間の命"、"人間の尊厳"を置くこと。当たり前の事である。しかし、当たり前の事が、この世界から失われつつある。
 戦争が多数の命を奪う一方で、兵器の大量消費によって多額の利益を得る人々がいる。もう、軍事によって儲ける時代に、国際法と国際的なシステムによって、強制的にピリオドを打たせよう。どこかの国民に"紛争"を押し付けず、共に"平和"に暮らす道を必死に模索しよう。
 世界の市場が飽和し、革新的な技術発展が起っていない現在、これからの飛躍的な経済発展は無い。しかし金融的な策略によって、暴利を貪る少数の人々がいる。労働せずに莫大な富を築ける時代に、国際法と国際的なシステムによって、強制的にピリオドを打たせよう。世界の人々と、"富"だけでなく"貧しさ"も分かち合おう。
 新しい時代の単純明快な哲学。相手の立場や信条を尊重すること。自分もがんばり、同時にがんばっている人を応援すること。そして力尽き、倒れてしまった人に肩を貸してあげること。悪い事をしている人がいたら叱り、良い事をしている人がいたら誉めること。使命に忠実に、自分の仕事を誇りをもってなすこと。悩みを共有し、共に楽しく働き、遊び、生きること。そう…人間とこの人生を愛すること。"人間の命"を大切に思う、"人間の尊厳"を尊重する。これからの時代は、そう言う時代。絵空事としないためには、過去の歴史と同様に犠牲は多いかもしれないが、未来のためにそうするだけの価値はある。

 現代の自民・公明政権は、幕末や太平洋戦争末期のような完全な末期状態。

 今度は、国民にお金ないし商品券を配ると言う。一人当たり1万数千円になるらしい。還元される資金は、元々国民の税金である。こんな馬鹿な話は無い。いや、実際に国民を舐めて馬鹿にしているのだろう。国民には、この程度のお金を与えておけば、尻尾を振るだろう…とでも思っているのか!?地域振興券の教訓から何も学ばなかったのだろうか?もう、こんなのは経済政策ですらない。政権与党による、国民の票の買収でしかないと言うレベルのものだ。明らかに、この与党は末期症状である。
 今の政権が本来すべきは、官僚による天下りや不正な公金使用などの無駄な税金の流出を止めさせ、無駄を省き、その税金を教育や医療、福祉に充てること。そして、年金の制度とその遂行(実務)をしっかりすること。まずは、そこがスタート地点である。官僚の既得権益を保ったままでの消費税増税では、本末転倒である。
 "日本に生きる民"の人生や命を重視しないから、そんな当たり前の政策を行なえないのだと思う。国民を守れないどころか、自殺に追い込むのような政権と官僚組織は、もう末期中の末期としか言いようがない。
 犠牲は、もう十分過ぎるほど払った。まだ、もっと犠牲が欲しいと言うのか!21世紀維新は、もう目の前に迫っている。選挙民よ、今こそ怒りの1票を投ずる時だ。

日本と世界の人々へ向けて書いた、僕の"真夜中のラブレター"でした
(※真夜中に書いた文章って、朝の冷静な頭で読むと妙にこっ恥ずかしいんだよね)。


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