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「招かれざる客」
                      (2016年10月31日記載)

招かれざる客 [DVD]

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 10月31日、月末の午後、仕事休みの嫁さんと御茶ノ水で行われた"映画カフェ"に行きました。今回の映画は「招かれざる客」。僕の好きな俳優のシドニーポワチエが出ています。ポワチエの「夜の大捜査線」や「野のゆり」が好きで、「野のゆり」は10回は見ています。ポワチエの事は、「野のゆり」の会に語ったので割愛します。
 この映画は、人種差別問題を真正面からとらえた1967年の作品。もう半世紀も前の映画ですので、多くの人…特に若い世代…が知らないのじゃないかと思います。人類は平等であると一貫して主張してきた白人の新聞社の社主の娘が、結婚相手に黒人男性を連れて帰ってくる。娘の親である夫婦の意見の相違。また相手の黒人男性の両親も驚き、夫婦間で意見が割れる。白人夫妻の下で働くメイドの黒人女性の、黒人男性に対する偏見。それぞれの立場の偏見や差別する心を、建前で無く本音であぶり出していく。そう言う物語です。
 世界中で偏狭な他民族の排他主義・熱狂的愛国主義の嵐が吹き荒れつつあつ現在、自分とは違うと判断する人々を差別する心が誰にでもあると言う事を突き付けられます。肌の色が違う、障碍がある、年収が低い、一流大学を出ていない、一流の会社に勤めていない、背が低い、太っている、はげている…どこにでも偏見や差別があります。「完璧な人間などどこにもいない。自分も不完全な人間である」というのにです。時代が(特に経済が)低迷してきて生活が困窮してくると、自分より立場の弱い人々を見つけ、それを攻撃するようになります。この映画は半世紀も前の映画ですが、そんな現代で生きる私たちがこの映画を観る意義は、十分にあります。



 この「招かれざる客」は、名優スペンサー・トレイシーの遺作で、この映画を撮り終わった17日後に亡くなったそうで、映画の完成は見られなかったそうですが、最後の彼の語りは15分もの長尺にも関わらず、観客を引き込みます。ハリウッド女優で唯一4度のオスカーに輝いたキャサリン・ヘップバーンの演技も見事です。時代の変革期の名作。
 今回初めて行った映画カフェでは、元ワーナー・ブラザースの映画製作室長の小川政弘さんが映画の解説を毎回してくださいました。ワーナーで2,000本を超える字幕・吹替版製作に従事、「マトリックス」シリーズや「JFK」、「ラストサムライ」、「硫黄島からの手紙」等々を監修。自身も「偉大な生涯の物語」や「イングリッシュ・ペイシェント」、「老人と海」他多数の作品の字幕翻訳をされたそうな。 そんな映画の生き字引のような小川氏の解説は分かりやすく、面白く、正に立て板に水の如く話して下さいました。楽しかったです。
 次回、第13回(2017年1月21日)の映画カフェは、これもまた僕の好きな作品「ロレンツィオのオイル」だそうです。