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「野のユリ」 (記:2000年3月)
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「野のゆり」。この映画を知っている日本人が、果たしてどのくらいいるであろうか?。若い世代では、誰も知らないだろう。1963年、ラルフ・ネルソン監督の作品であるが、日米ともに興行成績ベスト10にもランクされていない小作品。この年は、 "クレオパトラ"や"史上最大の作戦""アラビアのロレンス"などの超大作が次々とヒットした年。しかしそんな激戦の中、これはシドニー・ポワチエが黒人として初めてアカデミー主演男優賞を受けた記念すべき映画なのだ。
Imaged by JOLLYBOY
この「野のゆり」を初めて見たのはずっと昔の日曜洋画劇場で、淀川長治さんがとても誉めていたのを覚えている。モノクロフィルムの低予算の映画。こんなにこじんまりした作品をゴールデンタイムに放映するなんて、日曜洋画劇場も粋だなあと思ったが、後の新聞で調べたら視聴率がたった "一ケタ%"だったのも覚えている。
小作品だが、ヒューマンな内容が受けて本国ではそこそこのヒット。その演技が評価されて、シドニー・ポワチエがアカデミー主演男優賞を受けることになった。今でこそ、黒人男優が賞を受けるのは当然となっているが、今から40年も前はまだまだ偏見や差別が激しかった時代のことで、画期的なことだったのだ。シドニー・ポワチエは、次のようにコメントしている。「今まで努力してきた何万人もの黒人俳優全員への賞だ」と。それほどまでに、この賞の持つ意味は大きかったのだ。
さて、この映画の内容だが、本当に素朴そのもの。黒人除隊兵のホーマー(ポワチエ)が、ボロボロのステーション・ワゴンに大工道具を積んで旅をしていた。アリゾナ砂漠でエンストすると、そこで東ドイツから亡命してきた4人の尼僧に出会う。言葉も通じなければ、金もない彼女ら。しかし、尼僧らは本気で、荒野に教会を立てようとしている。彼女らは、ホーマーを勝手に神から使わされた助け手と決め付け、ホーマーは仕事を引き受けるはめに。しかし、全米カトリック後援会からの寄付も来ない事が判明し、人手もまったくない。さあ、果たして教会は建つであろうか?しかし、ホーマーの努力は徐々に実って行き、次第に町の人々も手伝うようになり、資材も届けられることに。そして、教会は完成するのだ!尼僧たちが喜びのアーメンコーラスを歌う中、ひっそりと去っていくホーマー。
とても爽やかな感動を残して映画は終わる。超大作のSFX駆使の、爆発バンバンの映画全盛だが、こういう映画も時には良いものだ。
2005年追記:「野のユリ」のDVDが、ようやく販売されました(FOXビデオ・スタジオ・クラシックシリーズ)。