ルノー・アルピーヌA110 ベルリネッタ

(2016年10月25日記載)

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 僕が好きな名車(旧車)スポーツカーベスト4は、フェラーリ・ディーノ246GT、ランティア・ストラトス、トヨタ・2000GT、ルノー・アルピーヌA110です。ディーノとストラトスと2000GTは実車も見て、撮影する機会もありました。
 ところが、ルノー・アルピーヌだけは一度も実車を見たことが無く、写真とミニカーだけでした。ある雑誌で、静岡の喫茶店にアルピーヌが置いてあると聞いて、旅行ついでに行こうと思っていたくらい見たかった名車です。
 ところが、今年2016年2月、千葉県塩浜にサイクリングに行った帰りに土手沿いを走行中、土手下脇の道を真っ白なルノー・アルピーヌが走ってくるではありませんか!びっくりしました。50年も前の希少な名車が、すぐ下を走っている。自転車を停めて撮影しようかと思っていたのですが、あっと言う間に走り去ってしまいました。撮影ならず、残念!
 それから約8か月、今度はもっと間近でルノー・アルピーヌを見るだけなく、撮影する機会すら与えられました!いつも自転車で走っている中川サイクリングロードのすぐ近くのSlow Garage MTSの社長とFaceBookで知り合いになり、この会社を訪問させていただきルノーアルピーヌを拝見させていただきました(※写真の使用許可をいただいております)。社長様に、心から感謝です(^^)。
 しかし、これまで一度も見たことのない名車を、たった8ヶ月の間に2度もみるなんて・・・今年は、僕のアルピーヌイヤーです(笑)。

 さて、ルノー・アルピーヌA110の解説と共に、(アルピーヌを取り上げる機会もそうそうないので)アルピーノ社についても簡単に説明してしていきたいと思います。アルピーヌは、ラリーに挑戦するフランス人実業ジャン・レデールによって誕生した会社です。ジャンは、そもそもルノーのディーラーを営んでいました。販売主力商品は、このHPでも2007年に取り上げたルノー4CVです(※下記写真)。

 

 1951年には、4CVのパワーは僅か19psしかありませんでしたが、事業を始めたジョンには、この4CVしかありませんでした。ジョンは、排気量圧縮版の4CVでレースに挑んでいき、モンテカルロ、ル・マン、ツール・ド・フランス、ミッレ・ミリアに挑戦し活躍するようになります。1954年には2つのレースでクラス優勝を果たしたジョンは、4CVのベースに独自のボディを持つスペシャルマシンの構想を始めます。このスペシャル4CVは、あのミケロッティがデザインを担当し、カロッツェリア・アルマーレがアルミを叩き出してボディを成型しました。このスペシャルなマシンはどんどん精錬されていき、1955年にはミッレ・ミリアでチームで1・2フィニッシュを果たします(ジョン自身は2位)。これらの躍進で、1955年アルピーヌは正式に会社組織として発足しました。会社名は、"ソシエテ・デ・オートモービル・アルピーヌ"。アルピーヌ=ALPINEは、人気の高いラリーフィールドであるアルプス山脈から取られた名前です。
 1955年10月、アルピーヌは従来のスペシャルをベースにした"A106ミッレ・ミリア"の販売を始め、1960年まで生産されました。その後、A106ベルリネッタを経てA108へ移行します。1955年来使用されてきた4CVのプラットフォーム・シャーシは、アルピーヌ独自のバックボーンに転換されます。1962年には、A108の上級モデルとしてR8が登場し、このR8をベースにして1963年に"A110ツール・ド・フランス"が誕生します。

 
前方から見たA110ベルリネッタ1300

 1963年の登場から1977年生産終了まで、大まかに言うとA110は9つの排気量、そしてモデルタイプは13種類がありました。改良や変更が多いのでざっくりと書きますが、リアに積まれた直列4気筒のOHVエンジンは、1リッター、1.1リッター、1.3リッター、1.5リッターと拡大していき、1969年には1.6リッターが登場します。それに従い、エンジン出力も、55ps、66ps、81ps・・・と次第にUPしていきました。55psとか66psとか、現代の軽自動車並みのパワーで非力に感じるかもしれませんが、車重が500~700kgととても軽いので、その軽さが非力さをカバーしていました。正にパワーウエイトレシオに優れたライトウエイトスポーツ!1974年の、ウエーバー45DCOE燃料システムを2基搭載した1600SCでは138psを絞り出し、最高速度は200km/hを超えました(※215km/h)。
 A110ベルリネッタの特徴的なフロントの補助ランプは、1967年の1.3リッターモデルから設定されて、1970年に1.1リッターモデルの消滅と同時に標準化されました。
 車重はタイプによって異なりますが、車体サイズは全長3,850mm×車幅1,520mm(※全幅はタイヤサイズの拡大と共に増加した)×車高1,450mmとたいへんコンパクトです。ボディはFRP製です。

 
後方から見たA110ベルリネッタ1300

 アルピーヌは、ラリーに挑戦するジャン・レデールによって生まれたと書きましたが、1963年のル・マン24時間レースでは参加したアルピーヌが3台ともリタイヤと言う惨憺たる結果でしたが、1964年には3台とも完走し入賞しました。しかし、A110やA210(※レース用マシン)の戦力は、フェラーリやポルシェやアストンマーチンなどの強豪には到底太刀打ちできない性能で、アルピーヌはラリーに集中するためにトラックレースから撤退しました。
 1968年、アルピーヌはチェコやアルプスの大会で勝利を飾り、1969年にはクープ・ド・アルプスで1・2・3位を独占。アルピーヌA110は偉大なる小型車と呼ばれて、曲がりくねったラリーコースでは快進撃を続けました。その絶頂期は、1973年のモンテカルロラリーで、上位3位を独占!もちろん、これはアルピーヌだけでなしえる事ではなく、ルノー社による財政面でのバックアップの貢献が大きかったのですが。


※アルピーヌの運転席。とても狭く、背の高い人、太った人、関節の固い人は、ドライバーズシートに座るだけも一苦労。足元はもっと狭く、くつろぐスペースは皆無。正にレーシングカー・コクピットと言った感じ。

 A110は、1977年までに8,203台が生産されました。スペインやブラジル、メキシコ、ブルガリアでも生産されていたのですが、1970年までには生産は終了しています(※スペインのFASAルノーでは、本国での生産終了後も1977~78年まで、1400タイプのA110が生産されていました!)。
 ちなみに、A110は、ルパン三世で
峰不二子の愛車として有名です(笑)。

 

 A110は、A310へと引き継がれます。途中の番号"A210(220)"はレース向けの車なので、ロードゴーイングカーとしては市販されていません。1971年に発表されたA310は、レーシーなコンペティションマシンな性格のA110から、グランツーリスモな性格にチェンジしました。つまり運転しやすくなったのです。A310は当初4気筒エンジンでしたが、1977年にV6エンジンに発展して150psを発揮しました。後期型のA310GTの2,849ccV6エンジンでは、193psを発揮するに至っています。
 第二世代のA310は、各段に実用性が増し、エンジンは自然吸気(160ps)とターボ(200ps)の2タイプとなりました。ここに書いた以外にも、派生モデルがいくつかありますが割愛。
 ちなみに、A310はエヴァンゲリオンの
葛城ミサトの愛車として有名です(爆)。

 アルピーヌのマシンは、1991年にはA610に発展します。サイドビューやリアスタイルにはA310と大きな変化はないと感じられるものの、リトラクタブル・ヘッドライトを採用するなどして、フロントを中心にイメージは大きく変わっています。V6ターボとインタークーラーの組み合わせで250psの出力を発生し、265km/hまで引っ張りました。ただし車重は1,420kgと重くなり、500~700kgのライトウエイトスポーツ"A110"とはもはや性格をまったく異にしたGTカーです。
 ちなみに、A610に乗るアニメキャラは・・・
知りません(笑)

 
前方から見たA610(松戸市内にて)

 
後方から見たA610(松戸市内にて)

 また、ルノー車は、アルピーヌ独自の車を作るだけではなく、既成の車のチューニングも手掛けていました。その代表例が、ルノー5(サンク)ターボです。これについては別のページで取り上げましたので、こちらをご覧ください。

 さて、アルピーヌの創業者のジャン・レデールの話に戻りますが、彼は1978年にA110の終焉を見取ったかのように、アルピーヌの株を全てルノーに売却してしまいました。
 1995年のA610生産終了と共に、一旦アルピーヌブランドは途絶えましたが、アルピーヌ社と工場は存続しています。今もルノーのスポーツブランドを手掛けています。
 そして今年(2016年)になって、アルピーヌ復活計画が発表されています。僕もネットで、そのコンセプトモデルを見ました 正にA110ベルリネッタの現代風解釈版と言ったエクステリアデザインでした。今後の展開が、ちょっと楽しみです。


2016年11月3日追記:前述の"Slow Grage MTS"にて、アルピーヌルノーがコーティング処理されてピカピカとなりました。作業前の光景と、作業後にヘッドライトと補助ライトをつけた様子。まるで鏡のように天井の蛍光灯が写り込んでいます。かっこ美しい!(※かっこ良くて美しいの略…w)

 


2019年3月9日追記:ライド中に、現代のスタイルによみがえった新型アルピーヌA110を見ました♪かっこいい!








 マイコレクションより"ルノー・アルピーヌ"

アルピーヌのベースとなったルノー4CV

 4CVの後、アルピーヌのベースとなったルノードーフィン


参考・引用文献
ルノー・アルピーヌ     (デルプラド・カーコレクション)
Slow Garage MTS


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