クライスラー・PTクルーザー

(2011年1月16日記載)

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 それぞれの自動車メーカーごとに、やっぱり得手不得手と言うものはあって、苦手分野のタイプの車に手を出すと失敗することが多い。例えば、アメリカの車は小型車を作るのが得意でない。数少ない成功例を除き、あんまりうまく行かない。それは仕方ない…長年そう言う車を作ってこなかったのだから(※日本の軽自動車メーカーに、フェラーリやポルシェを作れと言うようなものだ)。そんなアメリカ車のコンパクトカーの中、「なかなか良いなぁ~」と個人的に思っているのが、今回取り上げるクライスラーのPTクルーザーである。

 PTクルーザーの話題に入る前に、長らくアメリカのビッグ3に数えられていたこのクライスラー社の歴史について書いたことがなかったので、ここで簡潔に書いておこうと思う。
 クライスラー社は、ウォルター・クライスラーが2つの会社(マックスウェル社とチャーマーズ社)を統合して、1925年に設立した自動車メーカー。本社はミシガン州。有能な技術者を多数抱えて、技術面では様々な新技術…4輪油圧ブレーキや油圧式パワステ、鋼製ボディなど…を他社に先駆けて市場に導入した。
 第二次大戦中や朝鮮戦争では、軍用部門で売り上げを伸ばした。戦後1950年代以降は、アメリカ経済好景気の後押しもあり、大型で高性能のクライスラーは販売台数を伸ばした。1960年代以降は、ブラジルで生産を開始したり、欧州のいくつかの自動車メーカーを買収してクライスラー・ヨーロッパを組織するなど、世界戦略を開始した。しかし、買収したメーカーは弱小会社ばかりであり買収の効果は薄く、クライスラー車は品質低下や販売不振が続き、そしてリコールが多発してしまう。一方、日本やドイツの高性能小型車が、自動車販売市場でシェアを伸ばしていく。石油危機も手伝って、1970年代にはクライスラーは経営危機に陥る。

クライスラーのマーク

 クライスラーの経営再建に当たったのは、フォード躍進の立役者アイアコッカ(→アイアコッカについてはこちらをクリック!)である。彼はフォードからクライスラーに移り、社長に就任した。アイアコッカは連邦政府からのローン保証を得るなど奮闘するが、軍事部門の売却や人員大幅削減など、クライスラー社は苦難の時を迎える。しかし、アイアコッカが就任後から開発した小型車やミニバンの導入の他、全車の小型化、組織の見直し、不採算部門の閉鎖などの改革により、1980年代には経営を立て直し、1987年には黒字化を達成した。また、ジープ・ブランドを所有するアメリカン・モーターズ(AMC)を買収したのも、1987年である。
 この頃には、他国自動車メーカーとの資本提携や買収なども行なっている。日本の三菱自動車とも提携し、日本での三菱生産の小型車をクライスラーやダッジやイーグルのブランド名で販売した(※ちなみに僕は、アメリカでこのイーグル車をレンタルして運転したことがある)。小型車開発のノウハウを得たクライスラーは、後に日本車キラーと呼ばれる事になる小型車"ネオン"を発売しヒットさせた。
 1998年には、ドイツのダイムラー・ベンツ社と合併した。しかし業績は伸びず、ダイムラー・クライスラー社は、2007年にクライスラー部門をアメリカの投資会社に売却した(
→ダイムラー・ベンツの歴史ならびに合併についてはこちらをクリック!)。そして、2008年の世界金融危機によりクライスラーは完全に行き詰り、アメリカ政府の融資援助などを受けたものの、提携候補や債権団体などの関係者との交渉は時間切れとなり、2009年4月30日、連邦倒産法の適用を裁判所に申請した。新生クライスラーは、アメリカとカナダ政府からの公的資金援助を受け、フィアットからは小型車開発の技術支援と経営・開発における人材支援を得て、経営再建を目指す事になったのである。

 PTクルーザー(地元市内にて)

 で、PTクルーザーの話に入ろう。全長は4,330mm(全幅1,750mm×全高1,630mm/車重1,470kg)と、アメリカ車としては随分とがんばった5ドア5人乗りのコンパクトカー。サイズをコンパクトにしただけだと、普通は日本や韓国の車のように面白みの無いエクステリアデザインになってしまうが、そこはアメリカ車、個性的なデザインに仕上げている。1930~40年代のクラシックカーを髣髴とさせる、レトロ感漂うスタイリング。このデザインに共感できれば、もうそれだけでこの車に乗る意味がある、この車の存在価値がある。僕も、この車のデザインに共感する一人だ。だって、最近の多くのコンパクトカーのデザインがつまらないんだもの高いお金を出して買うのだから、眺めていても楽しい車が良いよ、やっぱり。(※我が家のミフィールも見ていてなかなか楽しいよ!)
 まあ、この車は性能を第一と考えて云々するような車ではないと思うが、一応書くと、ベースは(日本車キラーとして成功した)2代目ネオン。日本に導入された初期の搭載エンジンは、136psを発生する2リッターの直列4気筒DOHCエンジン(※本国では2.4リッター)。静粛性能やトルク性能では、日本の2リッターエンジンには到底適わない…まあ、小型エンジン開発の歴史が全然違うから仕方ないところか。また、小回り性能は6.1メートルとかなり悪く、日本の狭い道では大きな欠点だ。
 室内に目を向けると、外観からは想像できないほど広く、6対4の分割可倒式でかつ取り外し可能なリアシートや、多彩なアレンジを持つラゲッジルームを持つ。居住性は、このボディサイズからするとかなり優秀!ミニバンのように広いのだ。インテリアデザインも、クラシックなデザインにとことんこだわっている。フロントシートのホールド性も良い。

 後方から見たPTクルーザー(近隣市内にて)

 このPTクルーザー、2000年に登場し、2004年にはカブリオレ(※4人乗り)も登場した。カブリオには、143psを発生する2.4リッターエンジンを搭載。バランサーシャフトも加わり、カブリオレ用にシャシーも補強された。セダンタイプよりも、かなり振動も抑えられ、静粛性も向上。トルク感も向上し、随分と乗りやすくなっているとのこと。そして、このカブリオはしっかりと実用性があり、4人がしっかり乗れ、センターに大型で幅広のロールバーを採用し、転倒時の乗員の安全性を確保している。他メーカーの4人乗りを謳うオープンカーが実は2+2的で、後部座席に大人2人が乗るには辛いタイプが多い中、PTクルーザー・カブリオはしっかり4人乗りでがんばっていると思う。

 PTクルーザー・カブリオ(東京都内浅草橋近辺にて)

 毎年小変更が行なわれているPTクルーザー、2006年にはマイナーチェンジ。フロントフェイス・デザイン、ならびに搭載エンジンも変更された。エンジンは、非力な2リッターから全て2.4リッターに統一され、GTでは223psのビッグパワーを発生するターボエンジンを搭載したGTの選択も可能になった。ターボ車のパワーは、加速時にホイールスピンするほどらしい。初期の頃より、ボディの剛性感も高まった。ボディはやや小型化され、全長は4,295mmとよりコンパクトになった。

 2007年には、待望の右ハンドル車も登場。2008年にはインテリアデザインやカラーの変更を受け、装備も充実し、2009年にも一部改良されている。要は、毎年のように何らかのバージョンアップをしているのである。
 ちなみにこれを書いている現在、日本でのラインナップからGTとカブリオが無くなってしまった(悲しい…)。PTクルーザーの価格はグレードによって、現在276~340万円ほど。決して安いとは言えないが。
 レトロとモダンを融合したお洒落なデザイン、(最小回転半径等のいくつかの欠点を除けば)高い実用性を持つ、PTクルーザー。実は、僕の中で"買っても良い欲しいコンパクトカーベスト10"に入っている稀有なアメリカンコンパクトカーである(笑)。














マイコレクションより"PTクルーザー"


参考・引用文献
最新国&輸入車購入ガイド       (JAF出版社)
メルセデスの魂    御掘 直嗣 著 (河出書房新社)
クライスラーホームページ


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