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政治について考える

3.政治社会の構成員       (2010年10月17日記載)

 前回、政治的社会の目的について述べました。今回は「政治的社会の構成員は誰か?」と言う問いについて考えたいと思います。政治的社会、政治的社会…と前回から述べていますが、これは現代では実質的には"国家"です。また、都道府県や市町村などもこれに準じます。政治的社会の構成員と言う括りでは県民でも市民でも良いのですが、政治的社会の構成員=国家の人民(=国民)として話を進めましょう。
 政治的社会の構成員、つまり国民とは一体誰なのでしょう?国民は「その国で生まれた者」でしょうか?では、例えばイギリス人のご婦人がたまたま出産間近に日本にきて出産したら、それでその赤ちゃんは自動的に日本国民になるのでしょうか?国民は「その国で経済活動を営み、税金を支払っている者」でしょうか?では、日本国内で経済活動を営むグローバル企業の役員や社員達は、それですべて日本国民になるのでしょうか?そうはならない事は、説明を弄せずとも自然にご理解いただけると思います。そうでなければ、世界中を駆け巡っている企業家は何十もの国籍を取得できることになってしまいますし、世界中に多国籍を持つ人民がうじゃうじゃ存在することになりますが、そんな馬鹿げたことにはなりません。
 政治的社会の目的で述べたように、自らの自由や安全を護るために(幸せに生きられるために)、
相互に政治的社会の契約を取り結んだ者だけがその政治的社会の構成員、つまりその国家の人民と見なされます。国民となって初めて、その政治的意思を(選挙などによって)政治的社会に反映することができます。国内で経済活動を営み税金を支払う者は寄留者であっても、その国民と同様の安全と自由を享受し、社会の基盤インフラやサービスを利用できますが、自動的に国民となる訳ではありません。寄留者がその国家の国民となりたい場合は、その意志を示し、自らその国の安全と自由のために政治的社会の契約を結び、そしてその国家がそれを受け入れて認めた時にのみ(※つまり国籍を取得した時にのみ)その政治的社会の構成員(=国民)となります。反対に、寄留者がその国家の国民を危険に晒したり治安をかき乱す目的や意志を持っていたら、たとえ企業活動で多額の税金を支払っていてもその国家の国民となることは不可能です。政治的社会を取り結ぶ本来の目的(=人民相互の安全や公共の福祉)に、反しているからです。
 次に、その国家の国籍を有する大人から生まれた子供(児童)は、イコール政治的社会の構成員なのか否かと言う問題があります。子供は広義にはもちろん国民だと言うことを疑う人はいないでしょう。しかし、政治的社会に対して権利を行使する存在ではありません。子供はその国家の法の下かつ親の保護下にあり、この国の安全と自由の権利を享受し、教育や様々なサービスを受けますが、まだ政治的社会の契約を結んだとは考えられません。成人として成熟する前の成長段階であり、成人として自らの意志で政治的社会の意味を理解し、その契約の意志を示した時に(※具体的には選挙権の行使など)、その構成員つまり(狭義の意味での)国民と認めらると考えられます。逆に言うと、日本国籍の者の子が成人した時、この国での"政治的社会契約を拒否"して他の国籍を取る事も理論上は可能な訳です(※相手国側がその要請を認めればですが)。
 今回も非常にシンプルですが、これが「政治的社会の構成員は誰か?」と言う"問い"に対する"答え"です。

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