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番外編1.アメリカの戦争
               (2003年3月18日記載)


 さて、アメリカのイラク攻撃が間近に迫っている。世界の8割が、戦争に反対する中、何故アメリカはこれほどまでに戦争に固執するのか。世界の人々が戦争に反対するのは、何もイラク側が正しいと思っているからではないだろう。むしろ過去を振り返ると、国内少数部族の弾圧・虐殺や、周辺諸国への侵略、化学兵器の使用など、非道な行いは枚挙に暇が無いくらいに世界に知れ渡っている。イラクの現況も、国際社会を欺く欺瞞に満ちたものであることもほぼ確実だろう。それでも、世界の国々と人々は戦争以外の解決の道を模索している。それは何故か?

・少数国の独善でなく、国連の元での世界での総意による解決が望ましいと考えている。
・戦争以外で国際紛争を解決するための、新しい方法論とルールを求めている。
・戦争が始まれば、過去の例が示す通り多くの非武装民間人が犠牲になり、大量の難民が出る。
・戦争の影響・被害は、イラク以外に広がる可能性が大きい(戦後の予測が不可能)。


などが主な理由だろう。他にも、「軍事大国アメリカに対する反発」や「国ごとの利害関係」なども要因にあげられるだろう。
 一方、アメリカが戦争をしたがる要因は、どのようなものだろうか?

・フセイン政権を打倒できなかった湾岸戦争のリベンジ。
・ニューヨークテロの背後にいると言われるフセイン政権への報復。
・大量破壊兵器のテロリストへの流出の阻止。
・世界第二位の石油埋蔵量を誇るイラク石油利権の確保。
・国内の軍需産業(軍産複合体)への利益誘導。
・世界警察もしくは軍事大国としての力の誇示。
・実戦部隊としての軍隊の士気高揚&実戦力の維持。
・戦争による愛国心高揚によるアメリカ国民の意志統一。


等々。他にもまだあげられるとは思うが、アメリカは戦争をやると決めたら絶対にやる国である(キューバ危機で戦争を避けたケネディ大統領は、例外的な存在である。軍部が進言したソビエトとの戦争を避けた為、軍部の反感をかい暗殺されたと言う説もあるほどだ)。過去中東地域で、アメリカは数多くの非合法活動を行ってきた。イランの傀儡政権国家の樹立や、CIAによるゲリラ支援等々。ニューヨーク・テロの首謀者オサマ・ビン・ラディンも、かつてはそもそもCIAの支援を受けていた人物だ(世界中のゲリラ部隊を支援してきたアメリカが、今になってテロを非難しているとは、皮肉なものである)。またアメリカは、かつてイラクのフセイン大統領を支持していた国でもある。国連において多数派工作を推し進め、正当性のない理不尽なイスラエル建国を成し遂げたのもアメリカである。一方で、イスラエルが他国を侵略してもアメリカは傍観している。アラブ諸国の不満は、時代とともに高まっていった。現在のイスラエル・パレスチナ問題を作ったのは、アメリカと言っても過言ではない。この点はイギリスも同様で、二枚舌外交で中東地域の混乱の原因を作った責任は大きい。
 このように、現在の中東の混乱の基を作り、それを今も維持しているアメリカ(そしてイギリス)が、またまた中東において戦争をしようというのだから、「正義の国アメリカ(&イギリス)が、悪の元凶イラクを倒す」という大義名分は、アラブ人ではない日本人の私にさえ、到底受け入れがたい。確かに、イラクのフセイン政権は、とんでもない独裁政権である。過去為してきた行為を見れば、フセイン政権は倒されてしかるべきであろう。しかし、それは世界中が知恵を尽くして、国連の力で解決されるべきである。各国利害が一致しないから、国連で意見がまとまるのは確かに難しい。会議は、踊るだろう。それでも、国際連合が無視されたら、第二次大戦前の国際連盟の二の舞いである。
 アメリカとイラクとの軍事力の差は圧倒的で、プロレスラーと幼児の喧嘩ぐらいの歴然とした差がある。間違いなく、アメリカの一方的な大勝利で終わるだろう。一方で、多くの民間人の死者が出るであろう。ベトナムでも、旧ユーゴスラビアでも、アフガニスタンでも、多くの民間人が誤爆などにより殺された。アメリカの情報網と軍事力と経済力をもってすれば、戦争以外にフセイン政権を倒す方法はあるはずだ。それでも、強大な軍事力を誇示したいアメリカに、今、世界中が失望しつつある。今のアメリカ合衆国は、かつてのバビロン帝国やローマ帝国に度々準えられる。アメリカ帝国の暴走を止められる軍事力を持った国は、今やどこにも存在しない。
 多民族国家アメリカ合衆国は、法で一つにまとまっている法治国家であるが、実際にアメリカがもっとも団結するのは、戦時だと言われている。今、アメリカでは、戦争に反対する人は誹謗中傷されていると言う。戦争に反対の意志を表明した俳優の出演した映画のボイコット運動や、映画会社への嫌がらせのメールや電話や圧力が後を絶たないと言う。マスコミも、どの局もほとんど「アメリカの正義」を掲げた右へ倣え的なステレオタイプの報道姿勢だと言う。マッカーシズムが吹き荒れた時代と、アメリカは基本的に何も変わっていないのだろうか?自由と民主の国を標榜するアメリカ合衆国が、自由から遠のいていると感じるのは僕だけだろうか?


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