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「ホテル・ルワンダ」   (記:2007年4月)

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 この映画、某監督も言っていたけど、単館レベルで上映なんかしていちゃ駄目です。公開当時、なんで全国公開ロードショーしなかったのでしょうね。やっぱり映画の配給会社は、「日本の観客のレベルはこんなもんだから、どうせ見ないし・・・」ってな意識なんですかね・・・。この映画の公開、日本では危うかったと聞いています。アカデミー賞では主要3部門にノミネートされたと言うのに、日本の映画界はその程度のレベルなんですかね…。まあ、もう公開は昨年の話ですから、今更言っても仕方ないですけど・・・。
 これ、ルワンダで起こった実話の映画なんです。アフリカ史上、最大の虐殺と言われているルワンダでの話なんです。ルワンダ内戦の話が良く分からない人は、別のコーナーで解説していますので、→こちらのコーナーをクリックしてください。

 2004年の映画で、イギリスとイタリアと南アフリカの競作なんです。主人公は、ドン・チーゲル。その他、ニック・ノルティやジャン・レノと言った名優達が脇を固める。監督は、テリー・ジョージと言う人。

ホテル・ルワンダImaged by JOLLYBOY

 ドン・チーゲル演じる主人公は、ルワンダの首都キガリにある高級ホテル"ミル・コリン"の支配人ポール。仕事に忠実で仕事の手腕も確かな、フツ族の真面目な男性である。そして、運命の1994年が訪れる。ルワンダでは、今正にフツ族によるツチ族の殲滅虐殺が行なわれようとしていたのである。

 両部族の確執を簡単に記すと、次のような事だ。ルワンダは、かつてベルギーの植民地であり、宗主国のベルギーは少数派のツチ族を重用し、多数のフツ族の国家を支配下に置く政策を取っていた。フツ族の不満は遂に爆発し、ベルギーから独立、フツ族の政権が発足すると同時に、ツチ族への復讐が始まり、ツチ族は難民となって隣国へ逃れた。ルワンダではフツ族による独裁政権が続き、難民となったツチ族は反抗軍"ルワンダ愛国戦線"を結成する。国連の平和維持軍が投入されるが、両者の反目と憎しみは頂点に達し、フツ族民兵によるツチ族とフツ族内の融和派の殲滅が開始される。これが、ルワンダで起きたことの概略である。

 次々とツチ族の人々が殺され始める。ポールは、フツ族でホテルの支配人であり、将軍とも旧知の仲ではあったが為す術もなかった。やがて虐殺から逃れた人々が、次々とミル・コリン・ホテルに逃げ込んでくる。ホテルのフツ族の従業員の中にも、あからさまにツチ族を侮蔑する者も存在していた。ポールは戸惑う物の、ありとあらゆるホテルの財産を駆使して、将軍に賄賂を渡してその場その場の窮地を逃れる。国連の平和維持軍は、両陣営の争いに介入する事もできないし、平和維持軍はそもそも正当防衛以外の戦闘を許されていない。やがて、平和維持軍の兵士達も殺され始める。街中では、フツ族民兵による大量虐殺が行なわれていた。政府が虐殺にどこまで介入したかは定かではないが、政府軍も将軍も民兵の非道な行動に介入しない事で、事実上虐殺を容認していた。
 ホテルには、毎日難を逃れ生き延びた人々が詰め掛けてくる。欧米人は海外への脱出が可能となったが、ルワンダが故郷の人々はそうはいかない。ポールのホテルの財産もつき、将軍へ渡す賄賂も無い。食料も無い。平和維持軍の引き上げも決定。脱出の道には、民兵殺戮隊が塞いでいる。ホテルに残る人々には、もはや虐殺される瞬間を待つしか道は残されていなかった。ホテルには、すでに1,000人を超す人々が押し寄せていた。しかし、支配人ポールはありとあらゆる手段と伝を使って、全員の無事脱出を画策、実行するのだった・・・。

 極限状況下で、様々な人々の姿を描いている。もっとも醜悪な姿をさらす将軍や民兵や裏切り者の従業員達の姿がある一方で、家族と1,200名の命をかけた勇気ある行動を取った支配人ポールのような人々もいる。
 ラストのエンドロールで流れる曲が、僕らにアフリカと言う地域についての現状を考えさせる。「アメリカはアメリカ合衆国なのに、なぜアフリカはアフリカ合衆国になれないの?」、「イギリスは連合王国なのに、なぜアフリカはアフリカ連合王国になれないの?」。これは、アフリカ人自身と、そして長年に渡ってアフリカの植民地支配を続けた欧米諸国への問いかけである。