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不都合な真実を読む


 「不都合な真実~ECO入門編」(アル・ゴア著/枝廣淳子訳/ランダムハウス講談社)を、遅ればせながらようやく読んだ(※机の横に多数の本と共にずっと積んであった)。映画の方は(見たかったが)仕事が忙しく映画館へ見に行けなかった。しかし、本の方だけでもじっくりと読めて良かった。一般の人が興味を持って読めるよう、写真や図解をふんだんに使い分かり易く構成してある。

 僕が、(このHPでも載せている)"自然環境破壊"を卒論のテーマに選んだのが約20年前。経済学部なのに、何故"自然環境破壊"を卒論テーマに選んだかと言うと、人間の"経済活動"が自然環境の破壊をもたらしている事が、因果関係が、当時でも既にほぼ明らかになっていたからである。
 当時は、すべての学者が"温室効果による地球温暖化"を認めていたわけではなかった。しかし、現代の学者で"温室効果による地球の温暖化"を否定する人は皆無だろう(…特定の企業によって雇われた御用学者ならば話しは別だが)。20年前でも、地球の環境破壊がこのまま続けばたいへんな事になる事は分かっていたが、環境保護への取り組みは非常に緩やかだった。だが当時愁いていた未来は現実となってしまい(むしろ予想よりも速いスピードで悪化?)、一刻の猶予もない状態になっている。ここまで温暖化が"目に見える形"で現実化しようなどと、20世紀半ばの人々には信じ難い話しだろうと思う。寒冷地の氷が溶け始め、海水面の上昇も著しい。そして、実際に消え去ろうとしている島の国すら存在する。
 温暖化の影響によって、地球の各地で著しい気功の変動が起こっている。激しい嵐や洪水の頻度が高まり、一方で日照りと旱魃、緑地の砂漠化の速度が増している。地球の温暖化は、特に先進国の責任が大きい。環境問題に真剣に取り組まないと、本当に手遅れになってしまう。

 企業の中には、二酸化炭素排出を抑えようと言うグローバルな動きを嫌う企業もまだまだ多い。特に、"京都議定書"を批准しなかった米国の企業には、コスト増を嫌い環境問題に積極的でない企業が多い…悲しいが、それが現実である。世界の二酸化炭素排出量の30%をも占める米国(※しかし一方で人口は世界の4%程度)が、環境問題に積極的に関与しない限り、効果的な環境問題の解決は難しい。米国には、戦争に注ぎ込む人的・財的な資金とその熱意を、ぜひとも環境問題の方に向けてほしいと心から願う。
 環境問題の多くは、米国を筆頭とする先進諸国とその企業が中心となって巻き起こしてきたものだ。大量消費国に住む私たちの責任は大きい。私たちが便利な生活を営む代償として、ある国では洪水が起こり、ある国では旱魃と飢饉が起こり、そして自らの国も猛暑や強烈な台風に襲われるのである。

 では、個人たる"自分自身"は、環境問題に対して実際にどんな事をしているだろうか?思いつくままに挙げてみる。

・照明に電球型蛍光ランプを使っている。
・省エネ型の家電に買い換えている。
・燃費の良い軽自動車に乗っている。
・自転車にも乗るようにしている。
・職場でリサイクルゴミ収集のための分別を厳密に行なっている。
・コピー用紙は裏まで使っている。
・使い捨て商品ではなく、長く使える商品を選ぶようにしている。

…う~ん、まだまだ弱い。まったく物足りない。もっともっとできる事がある。世界中の数十億の人々が少しずつ努力するだけで、地球全体の環境改善への影響は計り知れない。温暖化が進み、強烈な嵐や洪水や旱魃がこれ以上増大し、自然界のバランスが崩れ、動植物や珊瑚が死滅し、氷が溶けて世界中の都市が海面下に沈んでからでは遅い。

 環境問題は、かつてはお金にならないと思われてきた。しかし、トヨタのプリウスの成功例が示すように、環境問題は企業にとって決してマイナス要因だけではないはずだ。僕が卒論を書いていた20年前とは違い、環境技術は格段に向上した。自然環境破壊の進行を押し留め環境を保全する技術を、日本は数多く持っている。国も企業も個人も、行動できる事はたくさんあるのだ。そして、それをしなければならない…「不都合な真実」はそれを私たちに教え、訴える。

(2007年10月17日記載)


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