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世界トイレ博   (2002年1月20日記載)

 「えっ、ちょっと待って!なぜトイレの話なの!CGやワインの話じゃないの!」と、思ったあなたは正しい。でも、いきなり今回はトイレの話なのだ。
 人間にとって"衣・食・住"は大事な三大要素。その内の"住"の部分で大切なのは、僕にとって"トイレ"なのだ。寝室も大切かもしれない。リビングも大切かもしれない。台所も大切かもしれない。しかし、何にもましてトイレが重要なのだ。
 実は、僕はトイレに対して大きなトラウマを持っている…。そう、あれはずっとずっと昔、僕が幼稚園に入る前のことだった。僕は、ウ~ンチ君をするためにトイレに入った。当時のトイレは、今のトイレとはまったく違う。トイレットペーパー・ホルダーなどと言うおしゃれなものは無く、当然トイレットペーパーもない。箱の中に、一枚一枚バラになった固めの鼻紙が置いてある。天井からは粘着テープの蝿取り紙がぶら下がっていて、何匹もの蝿がベタベタとくっ付いている。そして、一番の問題は便器。僕は、幼児用の"お丸"を使ったことが一度もない…おしゃれなアヒル型をした"お丸"の存在を知ったのは、ずっと大きくなってからだった。ぶっつけ本番で、僕はいきなり大人と同じトイレに行かされていた。そのトイレと言うのが、和式便器なのだ!がに股でしゃがみこみ、ウ~ンチ君をするのだ。それだけでない。和式便器で、かつ"汲み取り式"の"ぼっとん"トイレだったのだ!ぼっとんトイレ…つまり"暗い暗い"かつ"深い深い"穴が、股の下にポッカリと開いているのだ。これほど恐ろしい場所が、家の中に(否、世界の中に)あろうか!
 ところがである。僕は、家の中で(否、世界の中で)最も恐ろしい場所で、致命的なミスをおかしてしまった!ウ~ンチ君を無事終えた僕は、立ち上がった時に足を滑らしてしまった!すると僕の小さな小さな体は、すっぽりと和式便器の穴にはまってしまった!細い細い二本の腕で体を支えて、穴の底に落ちるのを防いだ!幼稚園就学前の幼児でも、その穴の底がどんな場所かは容易に想像できる。ウ~ンチ君がいっぱい溜まっていて、臭くて、落ちたら溺れてしまって、二度と生きては帰れない奈落の底!僕は、力いっぱい叫んだのでしたよ、「助けて~!」。だんだん腕がしびれてくる。「落ちちゃう~!」。…が、父は仕事、そして母も仕事…そう、うちは不運にも共働きだったのだ!どんどん腕がしびれてくる!「助けて~!」。ああ、年端も行かぬ僕のような子供が、ウ~ンチ君まみれで死んでしまうのか!ああ、体がずりずりと便器の穴の中に沈みこんでいく…。もう、ダメか。と、その時である!ドアが"ガラッ!"と開き、ヒーロー登場!(ヒーローは、いつだってギリギリで現れるのだ)。お婆ちゃんが僕の声を聞きつけて、駆けつけてくれたのだ!僕は、間一髪便器の穴から引き揚げられ、事無きを得たのだった…。

 小学二年の時、僕は引っ越しをした。真新しい家、自分の部屋、家族団欒できるリビングときれいな台所。が、僕が最も心躍ったのは、光り輝くトイレだった。テレビのCMでしか見たことのなかった"水洗式の洋式便器"をそこで発見したのだ!ほの暗く深~い"穴"がない水洗式というだけでうれしいのに、洋式の便器なのだ!しゃがまなくて良いのだ!椅子に座るように、普通に座れば良いのだ!これで、僕の心が踊らないわけがない!あの、和式ぼっとんトイレの恐怖を味あわなくても良いのだ!…しかし問題が一つあった。家族五人に、トイレ一つ!朝のトイレ争奪戦は、熾烈を極めた。皆さんも経験がないだろうか…「ねえ、まだ!もれちゃうよ、早く出てよ!」…こんな光景が、毎朝のように繰り返されたのであった。
 僕は、思った。家の中にはトイレがいくつあったって良いのではないか?僕は、今から9年前に3階建ての二世帯住宅を建てたのだが、トイレを三つ作った。もちろん、すべて洋式トイレであり、今では三つとも全部に"便座ウォーマー"と"ウオッシャー"機能が付いている。夢のような複数のトイレ。玄関は二つ、台所は二つ、お風呂は二つ、リビングも二つ…しかし、トイレだけは三つ作ったのだった。三谷幸喜監督の映画"みんなの家"に、「嫌よ、トイレが三つも四つもある家なんて!」「いや、三つだよ。」と言うシーンがある。僕は言おう。トイレは、「三つも四つも」あったって良いのだ。

 さて話がとても狭くなったので、ここで少しワールド・ワイドなトイレの話をしよう。
 友達の紹介で知った"ブリック"というバーが銀座にあるのだが、今から10年ほど前に面白いバーテンさんがいた。とても気さくな若いバーテンさんで、トイレ博覧会に行った時の話をしてくれた。博覧会会場に入ると、ずらっと様々な便器が並んでいたそうだ。そこから、世界の面白いトイレについての話に発展していった。有名なところでは、前の人のお尻を見ながらウ~ンチ君をする中国の壁のないトイレ。どこの国だか忘れたが、足を乗せる台だけがありウ~ンチ君をした後、足の台以外が水だらけになって初めての人はパニックになるトイレ…等々。世界には、僕らが予想もつかないトイレがあるらしい。
 僕がカルチャーショックを受けたトイレは、東南アジアのトイレでもヨーロッパのトイレでもオーストラリアのトイレでもなかった。なんと、世界の最先進国にして超大国のアメリカであった。ロスの国際空港のトイレのドアが西部劇調の小さなドアだったのは、僕の予想通りだった。日本のような完全個室のトイレとは違い、ちょっとしゃがんだり背伸びをするとトイレが容易に覗けてしまう…のだが、これは映画で見ていたので対して抵抗はなかった。
 問題は、サンタ・モニカのトイレである。僕は、地下鉄やバスを乗り継いでサンタ・モニカに辿り着いた。「来てエ、来てエ、来てエ、来て~」と鼻歌混じりに、海岸を歩いて西海岸気分を大いに満喫していたのだが、突然ウ~ンチ君がしたくなった。トイレが近くにあったので、駆け込んだ。すると「あれ?えっ?あれ?」と、目がテンになった。"大"の方のトイレにドアが無いのだ、全部!観光地なので、人が次々にトイレに出入りする。そんな中で、堂々とウ~ンチ君をするほどの度胸はない。慌ててそのトイレを飛び出し、別のトイレを探し始めた。ほどなくして、トイレがあったのでホッとした。トイレに飛び込むと、再び呆然…。やっぱり"大"の方のトイレにドアがないじゃないか!!その時、僕ははっきりと悟った…「このサンタ・モニカの海岸のトイレには、全部ドアがないに違いない」。もう、我慢の限界に達していた僕は、仕方なく一番奥の便器に座りウ~ンチ君をすることにした。ホッとしたのも束の間、誰かがトイレに入ってきた。一歩一歩こちらへ近づいてくるではないか!コッ、コッ、コッ…ああ、僕の恥ずかしい姿が見られてしまう!と思った次の瞬間、その足音は僕の視界に入る寸前で止まった…。そして引き返していき、別のトイレに入っていったのだった。どうやら、気配がしたら覗かないというエチケットが、地元の人(かどうかは分からないが)にはあるらしい。トイレから出た僕は、「何故ここのトイレには、ドアがないのだろう?」と真剣に考えたのだが、「きっとトイレの閉鎖空間で犯罪が行われないように、オープンにしておきたいのだろう」などと、勝手に結論を出したのでした(違ったらごめんね…)。
 カルチャーショックを受けたトイレがアメリカなら、感動したトイレもアメリカだった。ビバリー・ヒルズを散策していた時、「せっかくだから市庁舎も見ていこう」と考えた。と、そこでまた僕はウ~ンチ君がしたくなったのである。英語の不達者な僕は、コンビニに入って「あの~、トイレ貸して下さい」などと悠長に言う事ができない。そんな分けで、公共の施設たる市庁舎のトイレまで我慢したのである(ところで入口に警備員がいなかったのだが、勝手に入って良かったのだろうか?)。市庁舎のトイレに入ってビックリ!きれいなのはもちろん、完全個室状態。そして、そして、そして、何より凄いのが便器!造形美に溢れた幅広い便座はしっかりとお尻をホールドし、かつて無かった座り心地の良さいっぱいの便器だった!さすが、ビバリー・ヒルズ…トイレすら、豪華で素晴らしかった。今までの人生で、あのトイレ以上のトイレには、まだお目にかかってはいない。
 あっ、ところで、僕はいつもウ~ンチ君をしたがっている分けではないので、念のため…。


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