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第二部:第四章 この人を見よ
77.過ぎ越しの祭の終わり
イエスが本当に死んだかどうか確かめるために、兵士がイエスの脇腹を槍で突いた。イエスは死んでいた。ユダヤの安息日が始まるので、その前にイエスの遺体は十字架から降ろされた。
その後イエスの遺体は、ユダヤの議員に引き取られて墓に葬られたと言う。「十字架刑で死んだ男を引き取るなんて、なんと勇気のある議員なのであろう。」と、クロディウスは思った。
翌日はユダヤの安息日と言う事で、ユダヤ人たちは出歩かない。警備のローマ兵にとっても、休息の1日となった。考えてみれば、クロディウスもミヌキウスもケルシアヌスも、2日間寝ていなかった。3人は、しっかりと睡眠を取った。
安息日を終えると、翌日からまた市内の警備任務が始まった。週末にイエスの処刑があった事など皆忘れてしまったかのように、過ぎ越しの祭は続いた。
その夜、ミヌキウスがクロディウスに、不可思議な話を教えてくれた。
「ピラト総督直下の兵士から聞いたのですが、安息日の翌日、イエスの墓は空っぽだったそうです。」
クロディウスは、興味深そうに聞き返した。
「ほお。弟子か誰かが、盗んだか?」
ミヌキウスは答えた。
「いえ、墓はユダヤの番兵が見張っていたそうです。口封じのため、番兵が寝ていた間に盗まれたことにしたそうです。」
「ローマ軍の兵士だったら、夜警で寝たら厳罰ものだな!」
と、クロディウスは言った。墓は空っぽ・・・その言葉が、頭から離れなかった。
一週間の過ぎ越しの祭が終ると、雄牛隊はエルサレムを発った。
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(※10:新共同訳聖書:マルコによる福音書15章25~32節)
(※11:新共同訳聖書:ルカによる福音書23章39~43節)
(※12:新共同訳聖書:マタイによる福音書27書45~31節)
(※13:新共同訳聖書:ルカによる福音書23章45~49節)