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第一部:第四章 第Ⅳ軍団マケドニカ

26.百人隊長マルキウス

荷物の整理を終えたマルキウス隊の全員が、正式軍装で兵舎前に整列した。十人隊長のカッシウスが、宿舎奥の隊長達を呼びに行く。しばらくして、宿舎から正式軍装の百人隊長と副隊長と旗手が出てきた。
隊長と副隊長は兜に羽飾りを付けている。副隊長の羽は茶と白の2色だったが、隊長の羽は真っ白だった。旗手は狼のような毛皮を纏い、百人隊旗のシグヌムを掲げている。隊長達は、組み立て式甲冑ではなく鎖帷子の甲冑を身に付けていた。
隊長達を見たクロディウスは、心底驚いた。アントニウス・ウァレンスも、ユリウス・ニゲルも、アッリウス・シドも同様に驚いている様子だった。 そこに並んでいた隊長と副隊長と旗手は、なんと新兵候補96人をローマからタッラコまで率いてきた、あの3人だったからだ。その百人隊に、クロディウスら4人は配属されたのである。

百人隊長が、口を開いた。
「隊の諸君!今日、新たな編成が行われ、我が隊に4名の新兵が加わることとなった。ユリウス・ニゲル、アッリウス・シド、アントニウス・ウァレンス、クロディウス・ロングス、前に出よ!」
「はい、隊長!」
4人は返事をすると、隊列から抜け出して最前列に並んだ。
1ヶ月も旅を共にした隊長は、当然4名の名前も既にしっかり覚えていた。新兵4人の年齢も出身地も境遇も、またどういう性格なのかももちろん理解している。
「私が、この百人隊のケントゥリオ―(※百人隊長)、マルキウス・フスクスだ。そして、彼がオプティオー(※副隊長)のウァレリウス・ルフスで、その隣がシグニフェル(※旗手)のロンギヌス・セレウスだ。尚、カッシウス十人隊長が、この隊の連絡士官である。」
彼は、簡潔に紹介した後に4人に言った。
「彼らの言葉は、私の言葉と思って良く聴き従え!」
「はい、隊長殿!」
と4人は答えた。 続いて、副隊長のウァレリウスが訓告を行う。
「他の隊員の名前も早急に覚えるように!また軍団での仕事は多く、覚える事もとても多い。気を引き締めて取り組むように!」
「はい、副隊長殿!」
最後は、旗手のロンギヌスの訓告。
「軍団の規律を遵守せよ!我が百人隊や歩兵隊の名誉を汚さぬように!この百人隊旗は、この隊の誇りと命であると思え!決して、敵に手渡してはならぬものだ!分かったか?」
「はい、旗手殿!」
「では、これにて解散!」
副隊長がそう告げると、隊長達3人は兵舎に戻っていった。その後、十人隊長にして連絡士官のカッシウスは整列を解き、各自部屋に戻るよう指示した。



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