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第一部:第三章 新兵達の訓練
17.ジローナからの伝令
新兵の訓練が6日目を迎える朝方、伝令の早馬がジローナからやって来た。
早馬に乗った騎士は、基地の司令官であるドゥクス(大将)に手紙を渡した。すぐさまレガトゥス・レギオス(軍団長)以下、トリプヌス・アングスティクラウィス(連隊長)までの上級士官全員が、基地中央の要塞司令部に招集された。彼らは鎧こそ纏っていないものの、全員が軍装で急ぎ集う。
集合した上級士官たちに向かって、司令官は言った。
「今から一週間ほど前、ローマの隊商が山賊に襲われた。19人のローマ人と傭兵が無惨に殺され、積み荷とお金、荷馬車、馬の全てが奪われた。生き残った商人の一人が、この襲撃をジローナの守備隊に報告して分かったことだ。犯人に関する事は、まだ何もわかっていない。」
士官たちに緊張が走った。ローマの安寧と秩序が、破られたのである。ローマ軍は、理不尽にローマ人を殺害した敵を決して許さない。
「この非道を行った盗賊には、必ずふさわしい報いを受けさせる。今後、犯人を突き止めるため、当該地域に密偵を送る。この任務に相応しい者を選ぶように。」
こうして、タッラコの軍団で密かな任務が開始されることになった。
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