光岡ビュート

(2008年2月24日記載)

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 光岡自動車工業。1996年、運輸省(当時)から正式に型式認定を公布された、日本で10番目の自動車メーカー。しかし僕ら車好きは、それ以前から"ミツオカ"を知っていた。BUBUと言う名で、レプリカ車を発売していた。中でも印象的だったのは、中身がワーゲン・ビートルのポルシェ356スピードスター・レプリカ。
 しかし、日本で新たに自動車メーカーを興すと言うのは、相当にたいへんな事であると思う。新しいメーカーだからと言って、ハンデとして「他のメーカーよりも品質が低くても良いよ~」とは誰も言ってくれない。古参のメーカーだって、戦後作られた車のボディを現在の目で見ると、そりゃもう~ひどいプレスラインだ・・・まるでブリキのおもちゃ。エンジンだって全くエコじゃなかったし、安全性だって現代の車とは比べ物にならなかった。戦後の黎明期には、湯たんぽをガソリンタンク替わりにしてバイクを作り、飛行機の余ったタイヤで三輪車を作っていた。そうしたメーカー達も、半世紀の時をかけて、ようやく世界に誇れる車達を作れるように進歩してきたのである。ローマは一日にしてならず。
 しかし、今から新たに参入するメーカーは、湯たんぽから車作りを始めるわけにはいかない。基本的なテクノロジーだけで、車を作るわけにはいかない。そう、いきなり"先端特許技術満載"の"ハイテクノロジー"で、車を作らなければならないのだ。既に各種特許は古参メーカーが山のように取っているから、特許料や先端技術導入にはたいへんなコストがかかるだろう・・・。新規参入メーカーと言えども、世界で先端を行っている車達に引けを取らない車を作らなければならないのだ。「新規メーカーなんだから、この程度の品質で勘弁して!」と言う理屈は、まったく通じない。市場原理に従っている以上、言い訳は通じない。だからミツオカには、最大の賛辞を送りたいのである。「あんたは~、偉い!!」と。

 今回は、そんな日本で最も新しい自動車メーカー"ミツオカ"のビュートを取り上げたい。せっかくなので、光岡自動車工業の歴史についても軽く触れよう。
 
 1968年、富山県富山市に光岡自動車工業が設立された。光岡自動車工業の創業者は、光岡進氏。彼は、中古車売買から仕事を始めた。皆さんご存知(?)、中古車のチェーン店"BUBU"である。安い土地で中古車を買い付けて、高い土地で売る。当たり前の市場原理だが、これができている人って意外に少なかった。だから儲かっていく。さてさて、商売が繁盛するに従い、光岡氏のモノ作りへの夢が膨らむ。
 50ccで一人乗り、原付免許で乗れる超小型車。その名も"BUBUシャトル50"、これを発売した。1982年のことである。ゼロハンカーは好調に売れた。マイクロカーのタイプは、50から501に、そして502から504へと発展。しかし、転機が訪れる。1985年に道交法が変わって、ゼロハンマイクロカーにも普通免許が必要になり、一気に売れなくなったのである(※しかし、今でもミツオカは、MC-1等のマイクロカーを販売している)。
 ちなみに僕が銀行員時代、お客さんで光岡のマイクロカーを乗っている方がいらっしゃった。その方が、いつも支店長が車を停める駐車場の定位置に勝手にマイクロカーを停めてしまうので、支店長が「誰のだぁ、あの車は!」とよくプリプリ怒っていたと言う、どうでもよい想い出がある(笑)。

 光岡MC-1(自宅近所にて)

 ゼロハン・マイクロカーは、突然売れなくなった。さてしかし、光岡氏はそれでめげたりしないのであった。
 次は既製車を利用して、往年の名車のレプリカを手がけ始めた。メルセデスのSSKや、最初にも取り上げたポルシェ356スピードスターなどである。ゼロハンカーからフルサイズの車作りに移行して、遂に1990年"ラセード"と言うクラシックテイスト溢れる"すんご~い車"を作ってしまった。僕も街中で見た事があるが、何が凄いって、色んな意味で吹っ切れているのが凄い。なんかどこかの王族が乗るようなぶっ飛んだデザインだったが、中身のメカニズムは普通に日産シルビア。これが、完売。一言・・・"凄い"。

 光岡ラ・セード/オープンタイプ(台東区にて)
※上のラセードは駐車位置が悪くて全体像は撮影できなかったけれど、実車を間近で見ると凄い迫力でした!

 同じ手法で、今度は"ドューラ"を送り出す。こちらは、マスタングをベースにしたオープンカー。そして、次に出したのが、今回取り上げるビュートなのである。ビュートは、後で取り上げるので、ここはパス。

 光岡ガリュー(自宅近所にて)

 光岡ヌエラ(自宅近所にて)


 既製車のボディに手を加えて、クラシック仕立てにするこの手法は、ビュートで完全に軌道に乗った。その延長線上で、日産クルーを加工した"ガリュー"を1996年に発売(※2007年4月、コンバーチブルタイプも発売)。1998年には"リョーガ"、1998年にはダイハツ・ミラを改造した"レイ"を発売する。

 光岡レイ(八王子市内にて)

 既存車改造路線とは別に、光岡では別のプロジェクトが進んでいた。白紙からスタートした車の開発である。フレームも社内で設計開発した"ゼロワン"である。エンジンやギヤボックスは、マツダからロードスター用を売ってもらったが、シャシーなどはすべて初体験。
 試作車第一号は、真っ直ぐに走ることすらできなかったと言う。いかに技術と言うものが、経験と共に蓄積されていくかを実証するような出来事である・・・ホンダだっていきなりNSXやS2000に到達した訳ではない。すべてゼロからスタート、光岡自動車の踏ん張りどころであった。一方で、社長の光岡氏は、何度も名古屋の中部陸運局等の関係省庁に通い詰めた。
 そんなこんなの苦労の末、光岡のゼロワンは、ワインディングロードを攻めることのできる立派なスポーツカーに育ち、正式な型式認可も公布され、1996年めでたく発売にこぎ着けた。冒頭でも書いた、日本で10番目の自動車メーカーの誕生である。現在、光岡自動車は異彩を放つオリジナルのファッションスーパーカー"大蛇(オロチ)"も発売し、日本の自動車メーカーの中で独自の路線を歩んでいる。実は現在ミツオカは、その気ならF1用の12気筒エンジンまで作る事が可能な加工機を仕入れているそうだ。日本で最も新しい自動車会社のミツオカの今後に目が放せない。


 光岡ビュート(地元市内にて)

 さてさて、ミツオカ・ビュートのお話し。このビュートだが、むか~し買おうかどうか真剣に迷ったことがある。往年の名車ジャガー・マークⅡのフォルムに、中身は先進のマーチのメカニズム。信頼できて、美しいエクステリア。光岡の代理店って全国にあまり無かったので、郵送で光岡自動車にカタログの請求をした(※そのカタログは今でも大事に取ってある)。
 結局、あれやこれやと悩んだ末、ビュートを断念し別の車を買ってしまったのだけれど・・・。でも、そのくらい心から気に入った車が、このビュートなのである。

 本物のジャガー・マークⅡ(事務所近辺にて)

 ビュートの中身はマーチなので、ここではメカニズムの詳細は省略。日産マーチのページを見てください(→日産マーチはこちをクリック!)。
 初代ビュートは、2代目マーチをベースに作られている。あのジャガー・マークⅡのフォルムを、よく破綻させずあのコンパクト・ボディに凝縮してデザインしたものだと、つくづく感心してしまう。車体の全長は4,270mm(全幅1,640mm×全高1,420mm)で、車重は930kg(1,000cc)~950kg(1,400cc)。ちなみに、オリジナルのジャガー・マークⅡは全長4,590mm(全幅1,700mm×全高1,460mm)なので、ビュートはそれよりも約30cmも短いのである。それなのに。デザインが破綻していない。

 2代目ビュートは、3代目マーチをベースにしている。3代目マーチは丸みを帯びたデザインなので、2代目ビュートも必然的に丸みを帯びている。ジャガー・マークⅡらしさと言う点では、初代ビュートの方が上である。僕自身も(ジャガー・マークⅡに似ている・似ていないと言う事は別にして)、エクステリア・デザインは初代ビュートの方が断然良かったと思う。また、2代目ビュートの全長は4,400mm(全幅1,680mm×全高1,520mm)、車重は1,040kg(1,200cc)~1,130kg(1,400cc4WD)と、サイズ、重量共に、初代ビュートよりも一回り大きく重くなっている。
 そんな理由もあるのかどうか定かではないが、中古のマーチの中からコンディションの良い固体を選び出して、初代ビュートのボディを架装した"メイクアップ・ビュート"と言うバージョンも生産・販売されている。旧タイプと新タイプを併売していると言うのも、小回り&機転のきく光岡ならではである。


 ビュート・カブリオレ(埼玉県内にて)

 最も新しい後発メーカー故、既存の国産メーカーとは違う道を歩みつづける光岡自動車。車という工業製品がグローバル化され画一化されつつある現在、僕は、光岡自動車にはこれからも独自路線を貫いて欲しいと心から願うのであった。そして、トヨタや日産には決して真似できない、"ビュート"や"大蛇"のような"アッ!"と驚くような車を、次々に生み出し続けてほしいと思うのであった。













 マイ・コレクションより"光岡ラ・セード"

 マイ・コレクションより"光岡ビュート"

 マイ・コレクションより"光岡大蛇"

参考・引用文献
ミツオカおろちのすべて   (モーターファン別冊)
光岡ビュート・カタログ
乗り物探検隊ビデオ


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