マツダ・キャロル

(2006年6月25日記載)

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 マツダ・キャロルは、僕にとって思い出深い車である。僕が幼少の頃、うちの親父が初代マツダ・キャロルに乗っていた。新潟地震の影響で、親族共々新潟の山奥から出てきた親父が、埼玉に曲がりなりにも小さな一軒家を建て、家族をなんとか養っていた頃、乗る事ができたのはこの中古キャロルが精一杯だった。遠出をした時に、エンジンが止まってしまうのでは…と心配していたと言う事実も、車が故障しなくなった現代車社会では考えられない事だ。そう言う時代だった。小さな車体に、父と母と姉と僕の4人が乗る…キャロルは僕にとって自動車と言う物の原体験のような車だ。その頃のキャロルの写真が残っていないのも残念(※写真も今よりずっと貴重な時代だった)。

 僕にとってこの記念的な車を取り上げるに当たり、マツダと言うメーカーの歴史に少し触れておきたい。

 マツダの前身は、東洋コルク工業(株)でコルク製造販売業として1920年に創業を開始した。瓶や樽等の栓、工業製品の断熱材や絶縁体として使用されるコルク材の加工を事業としていた。1921年に松田重次郎が取締役社長に就任すると、新事業への進出に着手する。創業7年後には機械工業分野へと進出し、1927年9月に社名を東洋工業(株)に改称した。同年12月には、機械類の生産を開始した。主に軍相手に順調な商売を続けていたが、1929年に更に新分野への進出を計画する。当時、最先端だった自動車業界への参入である。1930年には、プロトタイプの2輪車を完成させ、30台ほど販売した。翌年には、第一号のマツダ3輪トラックDAを開始しした。1936年、三輪トラック販売の好調を背景に、小型4輪自動車の製造を計画し、1940年には試作車を完成させた。しかし太平洋戦争が激しくなる中、材料は不足し、工場は兵器生産を優先せざるを得なくなった。4輪車計画は、頓挫。追い討ちをかけるように、原爆投下により主要工場は倒壊。従業員の中にも、多くの死傷者が出た。このような状況下、東洋工業は、被害の少なかった府中工場を焼け出された人々の施設として提供、また広島県庁の全機構を本社屋ら移して行政を助けただけでなく、東洋工業の医療施設も開放して被爆者の治療に当たった。
 1945年、戦後初の三輪トラックを生産する。東洋工業の復活は1946年から本格化し、空前の三輪トラック需要で業務は拡張の一途を辿った。統一キャブ化による効率的な生産方法により、業界トップにまで躍進する。その後も丸ハンドルタイプタイプを全車に採用した。
 1951年松田重次郎が会長に退き、息子の恒次が取締役社長に就任する。恒次はトラックの開発を担当した技術者で、大の車好きであり、東洋工業の開発に更に拍車がかかった。1959年3月、軽3輪トラックのK360を発表した。軽三輪ブームに投じたK360は、ミッドシップエンジンのユニークな設計で注目された。

 マツダR360(石川県・日本自動車博物館にて)

 マツダR360(河口湖自動車博物館にて)


 1960年には、K360の技術が活かされた軽自動車R360クーペが発売された。R360クーペは、マツダが初めて世に問うた乗用車である。スバル360の発売から2年後の事であった。
 R360クーペは、360ccV型2気筒エンジンをリアに搭載するRR駆動。4人が乗れる乗用軽自動車の幕開け時代を代表する名車の一台である。当時最も安い価格とファニーなスタイリングで、人気を博した。翌年には軽4輪トラックB360やライトバンも発売される。R360クーペは、1966年まで生産された。

 マツダR360(栃木県・ホンダミュージアムにて)

 そして1962年に、いよいよキャロル360が発売されるのである。今回は、このキャロルについて語る。

※その後の、世界にその名を轟かしたロータリーエンジンの開発ストーリーについては、コスモスポーツのところで触れているので、そちらをご覧くださいませ(→ここをクリック!)。マツダ株式会社への社名変更は、1984年5月に行われました。ちなみに現代のマツダと言う社名は、東洋コルク工業の二代目社長、松田重次朗と光の神アウラ・マツダのMAZDAに由来するそうです。

 キャロルは、当時、世界最小の水冷4気筒エンジン、しかも総アルミ合金製、5ベアリング、ヘミヘッドと言う高度な設計技術を持ったエンジンを搭載して、世に送り出された。出力は、18ps(※後に20psにアップ)を発揮した。スバル360が空冷2気筒エンジン(※16ps)だったのを考えると、水冷4気筒エンジンと言うのは確実にアドバンテージだっただろう。ちなみに5年後の1967年には、ホンダが31psを発揮する空冷の4気筒エンジンを搭載したN360を発売する。軽自動車黎明期の、激しい技術バトルを窺い知る事が出来る各社のエンジン達だ。
 キャロルの大きさは、当然当時の軽自動車の寸法枠内で、全長2,990mm(全幅1,295mm×全高1,320mm)だった。車重は560kgと言う軽さ(とは言っても、スバル360に至ってはなんと僅か385kgだった)で、最高速度は94km/hに達した。サスペンションは、前後ともトレーリングアーム方式。ブレーキは、当然前後ともドラム式だった。

 初代マツダ・キャロル(お台場・ヒストリーガレージにて)

 キャロルは、高度なメカニズムだけでなく、小さなボディながら広い室内を持っていた。スタイリングも、クリフカットと呼ばれる後部のデザインを持ち、てんとう虫のような丸い360とは一線を隔していた。スバル360の独断場だった軽自動車界は、キャロルの登場で盛り上がりを見せていく。
 価格は、37万円だった。ライバルのスバル360の発売当初の価格が42万5千円(※後に36万円まで下がる)だったのを考えると、この高性能にしてこの価格…も大きなキャロルのアドバンテージだった事だろう。キャロルは、一時期軽自動車販売シェアの過半数を確保するほどの人気車だった。
 1962年にはツートンカラーのデラックスも発売され、1963年9月には軽乗用自動車初の4ドアモデルも発売された(※我が家のは2ドアモデルだった)。キャロルは、1970年まで生産された。


 初代マツダ・キャロル(石川県・日本自動車博物館にて)

 短い期間だったが、僕ら家族の一員として共に過ごしたキャロルが世から消え、しばし時が流れ、そして1989年に復活した。
 初代キャロルと違い、二代目は丸い可愛いデザインとなった。マツダのロードスターのところでも述べたが、当時マツダは多チャンネル化政策を取っていて、新型キャロルはオートザムブランドの主力車種だった。


 2代目キャロル(キャンバストップ/近隣市内にて)

 マツダ車とは言っても、開発コストを下げるため、エンジンやフロアパン、サスペンションは、スズキ・アルトの物を流用していた。すべて3ドアの設定で、4WD車やキャンバストップ車もラインナップした。車体全長は、3,190mm(全幅1,395mm×全高1,415mm)。重量は、580~600kg。
 登場時は、550ccの水冷3気筒SOHCエンジンを搭載していた。最高出力は、40ps。ミッションは、3速ATか5速MT(グレードによっては4速MTもあった)。サスペンションは、前がマクファーソン・ストラット方式、後がアイソレーテッド・トレーリング・リンク方式。ブレーキは、前がディスクで、後がリーディングトレーリング。

 横から見たキャロル(キャンバストップ/地元市内にて)

 1990年には42psの660ccエンジンが搭載され、車体全長は3,250mmとほんの僅か大型化した。後にエンジンは、4気筒直列4気筒SOHC12バルブエンジンに変更され、最高出力は52ps(4WDは55ps)にアップした。
 1991年には、ターボエンジンも加わった。水冷4サイクル3気筒6バルブインタークーラーターボ・エンジンは、61psに達した。1992年には、規格変更に伴い再び若干大型化し、全長は3,290mmとなる。後期型は、重量は600~680kgになっていて、2代目デビュー当初と比べると、車重も若干増加している。
 価格は、550cc時代が55万円台から79万円台。660cc時代は、ターボ版がラインナップされた事もあり、57万円台から119万円台と幅広い価格帯になった。

 後から見たキャロル(地元市内にて)

 3代目キャロルは、2代目同様やはり内容こそアルトだったが、スタイリングはマツダ・オリジナル。エンジンには、64psのターボエンジンもラインナップされた。室内の居住性を高めて、実用性を増した。全体的なイメージは2代目を踏襲したが、万人受けを狙ったフロントグリルが採用された。ただし、個人的はそれが他社の軽自動車(取り分け三菱のミニカ等)との相違性を無くしてしまった気もして、残念。初代キャロルの"僕はキャロルだよ~ん!"と言う自己主張が、かなり薄れてしまった気がする。

 そして4代目のキャロルは、名実ともにスズキのOEM供給になり、スズキ・アルトのエンブレムを変えただけだ。5代目キャロルも、まんまアルト。キャロルを、車の原体験に持つ者としては、寂しい、悲しい、虚しい…。マツダ様には、アルトのOEM供給車には別の名前を付けていただき、キャロルの名の車には、その名を関する限りはマツダのオリジナリティを発揮してほしい。ああ、オリジナリティに溢れたクリフカットのデザインが懐かしいよぉ~…よろしくマツダ様。














 マイ・コレクションより"マツダ・R360クーペ"

 マイ・コレクションより"マツダ・キャロル"

 マイ・コレクションより"マツダ・キャロル"


参考・引用文献
昭和の名車        (JTBムック)
国産名車コレクション   (アシェット・コレクションズ)
日本自動車博物館説明プレート
Kカースペシャル     (立風書房)
マツダ・ホームページ
かわいいクルマまで遊びたい(二見書房)
カーセンサー       (リクルート)


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