ロータス・ヨーロッパ

街中で見かける名車・50回記念  (2005年12月4日記載)

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 この"街中で見かける名車"シリーズも、今回で50回目を迎えました。50回を記念して取り上げる名車は、スーパーカー世代のDNAに刻まれていると言っても過言ではない"ロータス・ヨーロッパ"。サーキットの狼の主役(※本当の主役は風吹裕矢)、キング・オブ・ライトウェイトスポーツ、コーリン・チャプマンの名作、…形容詞はどうであれ、僕らスーパーカー好きの原点とも言うべき名車である。

2008年1月追記:お台場ヒストリーガレージの特別展示で、サーキットの狼仕様のヨーロッパSPを見ました!超ラッキー!


 今年2005年になっても、現役で走っているロータス・ヨーロッパを2度も見た。一度は、3月に千葉県内の妻の実家に行く途中で、颯爽とコーナーを駆け抜けてくるヨーロッパ。もう一度は、4月に市内自宅近所の交差点ですれ違ったヨーロッパ。両方ともピカピカにして乗られていた。まだ右も左も分からないチャイルドシートに座る2歳そこそこの息子に、僕は言った。「あれがロータス・ヨーロッパだ。よく見ておけ!」(…あきれる妻)。

 子供時代に撮影したロータス・ヨーロッパ(田園調布にて)

 せっかくの機会なので、ロータス社の歴史について軽く触れておこう。ロータスの歴史は、コーリン・チャプマン抜きには語れない。チャプマンは、1928年5月19日イギリスにて誕生。ロンドン大学在学中にバイク事故を起こし、モーリスの中古自動車に乗り換える。この際に、チャプマンは車の愉しさを覚える。友人と中古車売買のアルバイトを始めて、学費や車の費用を稼ぐ。大学での学業知識により機械の知識があり、彼は購入した中古車を整備しては売り、運転技術や商売のセンスを磨いていく。
 1948年初め、チャプマンは売れ残りのオースチンを改造、ボディを一新し、エンジンをディチューンするなどして、初めてのオリジナルカーを完成させる。ロータス・マーク1である(※有名な"7"の初版である)。この車で、小さなレースに参戦し賞を獲得し、注目を集める。同年末にはマーク2を、2年後にはマーク3を誕生させる。ロータス・マーク3は、速度と性能の高さで多くのレースを勝ち抜き、コーリン・チャプマンの名前を一躍有名にした。そして1952年1月、友人と共に"ロータス・エンジニアリング社"を旗揚げする。同年、マーク4が登場。これはレースドライバーのオーダーを受けて設計製造されたマシンだ。1953年には、量産車となるマーク6が登場(※マーク5はここでは省略)。この2シーター・コンバーチブルは発表直後から評判になり、イギリスのカーマニアの人気を得た。当時のイギリス政府の税制のため、この車はキット販売と言う形を取ることになる。完成車両には高率の税金がかかるためで、購入者がマニュアルに従って組み立てるのである(その後税制が変わったが、このキット・フォーム販売でロータスは有名になった)。
 そしてこのマーク6に続く、有名なセブンが1957年に登場。このセブンはマニアが多く、他のメーカーでライセンス生産されたりすることになる。ケータハム・セブン、バーキン・セブン等(※他多々あり)の名前を記憶しておられる方も多いと思う(とある諍いで、ロータスの名前が冠せられなくなったケータハム・セブンの件はマニアには有名。西風のGTロマンでも少し描かれている)。セブンは、街中で見かける事もけっこう多い。
 同じ1957年には、ロータス・エリートが登場する。その後、1962年にエランが登場する事になるのだが、それはエランの章(→ここをクリック)で詳しく述べているので、その辺の歴史はここでは省略。

 最近見たセブン(地元にて/※写真はロータス製ではないようです)

 ロータスは、レースの世界、取り分けF1のレースでも快進撃を始める。フェラーリ等の旧F1勢力が、伝統的なFRレイアウトにこだわり、エンジンの高出力化でF1レースに勝とうとしていた頃、イギリスのロータスやクーパー勢は、明らかにパワーの劣るエンジンでF1に参戦。しかし、車重バランスに優れるミッドシップ方式の採用や、新型フレームの採用、ディスクブレーキの採用、その他新型技術を採用し、マシンのトータルなバランスで勝利を重ねていく。今でこそ、トータル・バランスと言う設計思想は当たり前になっているが、当時はとても斬新な考え方だったのだ。エンジンパワーの向上で勝負するヨーロッパ本土勢とは一線を画す、新時代のマシン設計思想でF1レースを席巻していく(しかしF1レース界は、傾向として新興勢力に冷たいレギュレーション変更をする傾向があり、イギリス勢は後々不利になっていく。この辺の事は、いずれ別の章で取り上げたい)。こうしたチャプマンの時代を先取りした設計思想、トータルバランスでマシンをとらえた設計思想は、ロータスの市販マシンにも投入されていく。ロータス・ヨーロッパも、そうした新しい設計思想に基づいて作られているスポーツカーだ。

 ロータス・ヨーロッパの後姿(子ども時代/田園調布にて)

 そして、いよいよロータス・ヨーロッパの紹介である。登場したのは、1966年。シリーズ1と呼ばれる初期型に搭載されたエンジンは、ルノー製の1.5リッターOHV4気筒エンジン。82psと言う決して高くはないパワーだが、そこはチャプマン率いるロータスである。先ほども述べたようにトータルバラスが良く、僅か665kgの車重と相まって、特にコーナリング性能が特出している。初代タイプから、前後ディスクブレーキも奢られている。車体の大きさは、全長3,994mm、全幅1,638mm、全高1,080mm。とてもコンパクトである。最近のスポーツカーでも、4m未満の車は珍しい。このコンパクトさは、好感がもてる。そして全高は、ほぼ1m。初めてロータス・ヨーロッパを見た時は、その"薄さ"に驚いた。漫画を読んでいたので車高が低いことは知っていたが、あそこまで"ペチャンコ"だとは思わなかった。ミッドシップと言うと、座席の後方にエンジンを積んでいるので(しかもペチャンコなので)、"荷物を積むスペースなんて無いだろう"を思われがちだが、意外とエンジンスペースがガラガラで、エンジン後方にトランクスペースがあり小型の鞄の1つか2つくらいは入るのだ。これは、日常生活では助かるだろう。
 ロータス・ヨーロッパは、その後シリーズ2に移行するが、エンジンや車体のベースは基本的に、シリーズ1を踏襲している。ただし1971年に、アメリカの規制に適合させるために、ヘッドライトの高さを変更している。

 ロータス・ヨーロッパTC(石川県/日本自動車博物館にて)

 シリーズ2は、その後TCタイプへ移行。TCは、TwinCam(ツインカム)の事。エンジンが、ロータス設計のヘッドを搭載したツインカム8バルブ4気筒DOHCエンジン(※1.6リッターとなる)を搭載したことから、こう名づけられている。出力は、105psに向上。全長は、僅か6mm長くなり4mジャストとなる。車重は、720kgに増加。ツインカム以降のボディは、後方視界を得る為に大きく切り落とされた。
 そしてTCは、ヨーロッパの最終タイプであるスペシャルタイプへ移行(ツインカム・スペシャルの事。一般にSタイプとかSPタイプとか言われる)に移行する。エンジン出力は、126psにまで向上する(※ただしTCもスペシャルも英国仕様とアメリカ輸出仕様は、スペックやパーツが異なる)。サーキットの狼に登場するロータス・ヨーロッパも、このスペシャル・タイプだと思われる(…昔、プラモデルを作ったなぁ…)。ロータス・ヨーロッパは1975年に製造を終了し、そのシリーズに幕を閉じた。
 
 ざっとロータス・ヨーロッパの歴史を見たが、たった10年ほどの短い期間しか製造されていないのに、多くの(特に日本の)人々に強烈な印象を残した。何者にも似ていないオリジナルなデザイン、時代を先取りした技術の採用。しかしロータス・ヨーロッパ・スペシャルは、当時の新車価格が395万円で、カウンタックやBBのような超高価なスーパーカーとは一線を隔していた。漫画の"サーキットの狼"にしても、超高価とも言えずパワーもそれほど高くなかったロータス・ヨーロッパが、高価かつ高性能なポルシェやフェラーリと闘うからこそ人気を集めたのだと思う(高性能車が勝つのは当たり前すぎて、読者の共感が得られないだろう)。今、ロータス・ヨーロッパの中古車価格を調べてみると、年式や程度にもよるが、だいたい200~300万円程度である。グラスファイバー・ボディや古くなったエンジンやパーツを維持・修理するのは楽ではないだろうが、その価格で少年時代の夢を叶えられるのなら決して高くは無い気がする。


追記:2005年12月、mixiで知り合った元ロータス・ヨーロッパオーナーのシンさんより、ヨーロッパの画像をいただきました。これに乗っていたのかぁ…羨ましいですな




追記:2006年2月、事務所の近くで、ピッカ、ピッカのケータハム・スーパー7を見ました。しかもナンバープレートも"7"でした!



追記:2016年10月19日、サイクリング中、市内の自動車販売店で、現代版の新ヨーロッパを見ました。



追記:2020年7月15日:サイクリングで、栃木県の魔法陣スーパーカーミュージアムまで行き、ロータスヨーロッパSPを見ることができました。また、ケーターハム・スーパー7も見ました。

 


追記:2019年12月17日、子どもの頃撮影したモノクロームのヨーロッパの写真をカラーライズ。
オレンジにしようか迷ったけれど、隣りのポルシェ914に譲り、クリームイエローにしました♪

















 マイコレクションより"風吹裕也版"ロータスヨーロッパSP

 マイコレクションより"ヨーロッパSP"

 マイコレクションより"ヨーロッパSP"

 マイコレクションより"ヨーロッパ"

 マイコレクションより"ヨーロッパ"

 マイコレクションより"ヨーロッパ"

 マイコレクションより"ヨーロッパ"

 マイコレクションより超ミニサイズな"ヨーロッパSP

※ロータス・ヨーロッパは思い入れの強い車だけに、ミニ・スケールカーのコレクション数も多く、現在13台になっています(買い過ぎたと反省していますが、後悔はしていませんw)。これは、僕のミニカー・コレクションの中では、同一車種として2番目に多い台数です(1位はカプチーノで14台・・・17年も乗っていたので。こんなにたくさん買い揃えたい名車は、今後はもう現れないかもしれないなぁ…。

参考・引用文献
ロータス (デル・プラドジャパン)
カーチューニング・コレクション・ホームページ
他(特に"サーキットの狼"は忘れてはならない)

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