三菱・ギャランGTO & ランサーエボルーション

(2010年 4月18日記載)

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 GT-R、インプレッサWRXと日本のGTカーを取り上げてきたが、インプレッサを取り上げたらやっぱりライバル"ランエボ"を取り上げないといけない。ってな訳で、今回は三菱のランサーエボルーション(※以後、ランエボと略す)。
 で、ランエボを取り上げるに当たって、そのDNAのルーツを辿っておきたいと思う。と言うのも、三菱車にいきなりランエボと言うモンスターマシンが登場した訳ではないからだ。話をギャランまで遡ろう。1960年代、三菱はコルトを世に送り出したが(→詳細はこちらをクリック!)あまりに地味で人気車と言うには、ちょっとはばかられた。そこで1969年、三菱はフルモデルチェンジを行い、最新の流行のウェッジシェイプデザインを採用した斬新でスポーティなモデルに生まれ変わらせた(まあ、なんと言うか、昔の某アメ車のようなデザイン…)。これがギャランであり、エンジン別に、AⅠタイプ(1.3リッター)とAⅡタイプ(1.5リッター)の2タイプが設定された。AⅡは最高速175km/hに達する高性能車で、爆発的な人気を獲得した。
 そして翌1970年11月に発売されたのが、ギャランシリーズのトップモデルがクーペタイプのGTOである。当初は1.6リッターのSOHCエンジンだったが、12月には三菱車初となるDOHCエンジンを積んだGTO-MRが追加された(※MRとは三菱レーシング=Mitsubishi Racingの略)。MRの最高速度は、200km/hを誇った。ギャランはこの後、排気量が拡大されていくが、この辺の話は話の本質から外れて、くどくなるので割愛。

 子供の頃撮影したギャランGTO

 ギャランGTO・MR(1970年車/三菱旧品川ギャラリーにて)

(↑※余談ですが、子供時代撮影したアングルと同じ。僅かな違いは、身長の高さ。写真の感性って変わりませんね…笑)

 ギャランGTO・MR(1971年車/石川県日本自動車博物館にて)

 さて、1971年、ギャランGTOの下位を補完すべくベーシックスポーツクーペとして登場したのがFTOである。多くのコンポーネンツは、GTOから流用。デビュー当初は1.4リッターOHVエンジンだけだったが、後にSOHCエンジンや1.6リッターエンジンも追加されたが、1975年にランサーセレステの登場と共に生産中止となった(ちなみにこのランサーセレステは、大学のバレーボール部の先輩が所有していて、よく乗せてもらっていた車)。

 ギャランFTO1600GSR(1973年車/三菱旧品川ギャラリーにて)
ちなみにこのFTOは、この年のザ・ベストスポーツクーペ・イン・ジャパンを受賞!

←ちなみに、これは1990年に復活したGTO。評判が悪かった

←こっちは、1994年に復活したFTO。非常に評判が良かった(笑)。


 さて、ここからようやく話は核心に近づいてくる。1970年代初頭の三菱車は、ミニカの上がギャランと、あまりにも離れたカーラインナップだった。このラインナップの隙間を埋めるべく…失礼…改善すべく発売されたのがランサーである。ボディバリエーションは、2ドアセダンと4ドセダン。1.2リッターOHV、1.4と1.6のSOHCを引っさげ、カローラとサニーに真っ向勝負を挑んだ。三菱としては、このようにベーシックモデルの位置づけだったのだが、センスの良いエクステリアと軽量な車重による軽快な走りによりマニアックな層からの支持を得た。半年後には、1.6リッターのツインキャブエンジン、ハードサス、クイックステアリング等を装備した1600GSRが追加され、ランサーはラリーやジムカーナにおいて高く評価されるようになった。ワークスマシンの1600GSRは、サファリラリーで1974年と76年に総合優勝を果たしている。このように、走りのDNAが、ギャラン→ランサーへと引き継がれていく。

 ランサーGSR(三郷にて)

 ランサーは、1979年に2代目のランサーEXへ。FF車が増える中、FRで健闘する。しかし、傾向としてはファミリーセダンの方向に振られた。1983年、ランサー・フィオーレが出るが、これの内容はほぼミラージュ。次のランサーは、ランサーEXとフィオーレを統合する形で1988年に登場した。1991年には、フルモデルチェンジしたランサーがデビュー。

 そして、1992年9月、いよいよランサーエボルーション"エボⅠ"の登場となる。WRC(ワールド・ラリー・チャンピオンシップ)のホモロゲーション(参加資格)を得るべく限定生産されたランエボの始祖が、GSRエボルーションである。ギャランVR-4の4G63型2リッター直列4気筒DOHCターボエンジンは250psのパワーを発揮し、フルタイム4WDが組み合わせられた。サスは、前が独立懸架のマクファーソンストラット・コイルで、後は独立懸架のマルチリンクコイル。ブレーキは、前後ともサーボディスク。初代ランエボの全長は、4,310mm(全幅1,695mm、全高1,310mm)で、車重は1,240kg。

 1994年に、"エボⅡ"が登場。エボⅠの問題点を、徹底的に改良したモデル。Ⅰの足回りの弱さを改善し、ボディの剛性を増すなどの各種改良が施された。

 "エボⅢ"は、1995年に登場。基本は、Ⅱを受け継ぐ。空力性能の向上のため大型のリアスポが付き、エンジン冷却のため開口部の大きなフロントバンパーを備える。エンジンパワーは、270sまでアップした。
 ちなみに、エボⅠ~Ⅲ(1992~1995年)が第一世代のランエボ。

 ランサーGSRエボルーションⅢ(秋葉原近辺にて)

 1995年、ランサーは6代目にフルモデルチェンジし、1996年に"エボⅣ"が登場した。ランエボの凄まじい進化は、更に続く。基本の構造から見直して刷新、ボディ(シャシー)は剛性アップした。リアの4段階可変ウィング、エンジンのパワーは、(自己規制値の)280psまでアップ。ランエボⅣはアクティブ・ヨー・コントロールが搭載され、旋回性能が向上した。1997年からWRCに参戦。

 ランサー・エボルーションⅣ GSR(隣町にて)

 1998年、"エボⅤ"が登場。トレッド不足によるハンドリングのパフォーマンス不足を補うため、ランエボⅤでは3ナンバーサイズとなり車幅が1,770mmとなった。これにより、タイヤサイズが拡大し、ブレーキの性能アップが図られ。更にフロントヘリカルLSDを採用し、制動力と旋回性能が著しく向上した。

 ランサー・エボルーションⅤ GSR(地元市内にて)

 1999年、"エボⅥ"が登場。空気抵抗や冷却性能、フロントリフトの改善などのため、様々な改善が施されたが、2段ウィングはWRCのレギュレーション違反となり、実戦では投入されず。しかし、細かな面で色々とバージョンアップされ、ランエボの進化は止むことなく進む。
 この年の12月、三菱のWRCワークスドライバーのトミ・マキネン4年連続ドライバーズ・チャンピオン獲得を記念して、ランエボⅥトミ・マキネンエディション・モデルが発売された。
 このエボⅣ~Ⅵ(1996~1999年)までが第二世代のランエボ。

 2001年、"エボⅦ"が発売された。"エボⅦ"は、ベース車がランサー・セディアとなった。おとなしい外観となったものの、中身の進化は更に続く。エンジンパワーは、自己規制値の280psを維持。しかしトルクは、初代ランエボが31.5kgmだったのに対し、41.5kgmと10kgmもアップした。駆動方式も、初期のセンターデフ式フルタイム4WDから、アクティブセンターデフ(ACD)、アクティブヨーコントロール(AYC)、スポーツABSを搭載する統合電子制御システムへと進化し、旋回性能は更に増した。残念ながらⅦは、セディアのファミリーとは認められず。WRCのグループAのホモロゲーションを取得できなかった。
 "エボⅦ"は、2002年にスポーツモード付きのATを採用したGT-Aモデルが発売された。ランエボ初のATで賛否両論あったが、スポーツ一辺倒であったランエボの性格を転換させたのは事実。


 ランサー・エボルーションⅧ GSR(地元市内にて)

 2003年、いわゆる"ブーレイ顔"の"エボⅧ"が発売された。スバルがアイデンティティとして"航空機モチーフ"イメージを採用したように、三菱も共通のアイデンティティを目指した訳であるが、これがたいへん不評だった(笑)。上の写真を見ても分かるように、ラジエターの冷却性能や空気抵抗とは関係の無いデザインを採用したからである。ちなみに、オリヴィエ・ブーレイはスバルから移籍したデザイナーである(爆)。ダイムラークライスラーとの影響が、こんな所に現れてしまった。きっと"ランエボの何たるか"を理解していない人が、こんなにしちゃったのだろうな。ランエボは、ひたすら走りのメカニズムを追求した車であり、「余計な装飾など要らん!」のであり、「機能美こそランエボの身上である」と言う事を再確認させてくれた出来事だった(…気がする)。
 とは言っても、そこはランエボ。中身、すなわちメカニズムは進化している。制御トルクを増大したスーパーAYCを採用し、リアスポイラーはカーボン製(量産車で世界初)となり、トランスミッションは6速化された。面白い所としては、ボルテックスジェネレータと呼ばれる三角形の棘みたいな付加物が、リアウィンドウの上に付いている。スムーズに空気を後方に流す働きがあるとの事。う~ん、細かいこだわりこの頃、三菱自工の不祥事により自ら招いた苦境の中で、なんとか気を吐いていた車がランエボだった。
 2004年には、三菱レーシングを意味するMRのネーミングを冠した"エボⅧ MR"が発売された。ただし、中身はエボⅧより遥かに進化した改良が加えられている。きめ細かい制御により、絶妙なハンドリングと優れたトラクション性能を手に入れた。初代の頃のような、アンダーステアとは無縁の車である。

 ランサー・エボルーションⅨ GSR(秋葉原近辺にて)

 ランエボの進化は止むことなく、2005年に"エボⅨ"が登場した。好みの分かれた…否、はっきり言おう…不評だったブーレイ顔は、正常なフェイスに戻った。ランエボエンジンとしては初となる、連続可変バルブタイミング機構のMIVECが採用され、最大トルク発生回転域が下がった。タービンホイールにはチタンを採用し、コンプレッサーホイールには(従来のアルミ合金から)マグネシウム合金を採用し、更なるハイレスポンスを実現した。ちなみに、ランエボには"GSR"とレースベース車両の"RS"の2タイプが以前から設定されているのだが、その中間車両としてGTがラインナップに加えられた。基本GSRだが、6MTを5MT化するなどいくつかの変更を施し、価格がGSRより安く抑えられ、また20kgの軽量化も図られている。ひたすら高性能のGSRに対して、ワインディングで操る喜びと軽快な走りを備えるのがGT。
 また、同年9月には、ランエボ初となるワゴン版のランエボも登場。ランエボと雖も、時代の波には逆らえない。ライバルのインプレッサWRXの最新版は、初めから5ドアワゴンしか設定されていないし…(※2009年現在)。
 2006年8月には、先代と同じく"MR"を発売。このMRは、このモデルの最終生産モデルとなる。電子制御システムを更に進化させたのはもちろん、ターボチャージャーを改良してレスポンスを高め、アイバッハ製スプリングをビルシュタイン製ショックアブソーバーと組み合わせる等、足回りのチューンも極めた。4,000rpmを超える部分からの加速感覚は輸入車を含めなかなかMRに匹敵するものは無いほどで、コーナリングはオン・ザ・レールと言う表現がピッタリとの事。MR(三菱レーシング)の名を裏切られない、正にモータースポーツユースの基準で作られたマシン。しかし、残念ながら、三菱自工は経営建て直しのため、2006年からWRC活動を休止している。
 このエボⅦ~Ⅸ(2001~2006年)が、第三世代のランエボ。

 エボⅨ Lancer WRC05(三菱旧品川ギャラリーにて)

 ゲームで遊べるリアルエボⅨ (三菱旧品川ギャラリーにて)

(↑エボ前に大ディスプレーがあり、プレステと直結されていてラリーゲームを楽しめ、僕もプレイしました)

 エボⅨ Tuned by RALLYART (三菱旧品川ギャラリーにて)

 上記エンジンルーム


 さて、2007年10月、遂に"エボⅩ"が発売された。マイナーバージョンアップではなく、新設計のまったく新しい第4世代のエボルーション。同年7月にデビューしたギャランフォルティス(※実質的に2000年デビューのランサーの後継車)をベースにしているが、中身は最先端のエボルーション。エンジンは新設計の2リッター4気筒DOHCターボを搭載し、これに世界最先端の4WD制御技術を組み合わせる。エンジンパワーは280psに抑えてあるが、トルクは43kgmを発生する。挙動安定化制御装置のASCをオンにしておけば、コントロール可能な領域が驚くほど広くなる。気持ちの良いコーナーリングを見せ、破綻しそうになるとASCが瞬時に理想的なラインに引き戻す。誰にでも無理なく、ファントゥドライブな走りを安全に引き出せるのは大きな魅力である。
 先代までと同様、GSRと競技ベース車のRSの2タイプをラインナップ。GSRには、2ペダル6MTのツインクラッチSSTの設定もある。鳴り物入りで登場したツインクラッチSSTは、マニュアル車以上のシャープな変速を実現している。

 ランサー・エボルーションⅩ GSR(都内にて)

 ランエボは外観をどうこう評価するマシンではないと思うのだけど、このⅩについては一言書き記しておきたい。フォルティスをベースにしたエクステリアはアグレッシブで、(日産GT-RやアウディGTマシンに見られる最近の傾向の)フロントフェイスの開口部をブラックアウトした演出により、一層精悍に顔付きになっている。各部はエアロパーツで空力性能が高められ、リアは当然大型のウィングで武装されている。
 一方、内装の方もフォルティスをベースにしており、上質感がある。GSRには、ハイバックのレカロシートが標準で装備されている。後席の居住性も必要にして十分で、トランクも広い。これだけの走りのパフォーマンスを見せながら、日常の実用性も損なっていないのがランエボの凄いところ。
 価格帯は、だいたい300万円台~400万円ほどだが、(走りに興味の無いひとには無用の高価かもしれないが)走りの質の高さやメカニズムの凄さを知る人にとっては、たいへんなコストパフォーマーなバーゲンプライスのマシンである。ちなみに、2008年にはレカロ製レザーシートを装着したプレミアムタイプを追加し、そのツインクラッチSST版は500万円を超える。

 ランサー・エボルーションⅩ GSR(地元市内にて)

 ランエボⅩを後方から見たところ(隣の市にて)


 "エボルーション"の名の通り、常に進化を続けるランサーエボルーション。将来、ガソリンエンジン車は、好むと好まざるとに関わらず、消えていく宿命にある。ハイブリット車時代や燃料電池車、EV車時代が到来しつつあるこの時代、エボルーションがいかなる進化を続けるのか見守っていきたい。


2017年7月15日追記:サイクリングで、栃木県の魔法陣スーパーカーミュージアムに行き、GTOを見ました。















 マイコレクションより"ギャランGTO"

 マイコレクションより"ギャランGTO"

 マイコレクションより"ギャランクーペFTO"

 マイコレクションより"ランサー1600GSR"

 マイコレクションより"ランエボⅩ"


参考・引用文献
The絶版車ファイル  (インフォレスト)
国産&輸入車購入ガイド (JAF出版)
三菱自動車ホームページ
旧品川ギャラリー説明プレート
日本自動車博物館説明プレート


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