クリスチャンのための哲学講座

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(哲学番外編:読後の簡易な感想のみ)
22.プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神/マックス・ウェーバー


  

カール・マルクスのところで書いたけど、僕は大学時代は経済学部だったので、アダム・スミスやマルクスなどの古典、ニューディール政策のケインジアンまで、色んな本を読み、学びました。
そんな中で、もっとも影響を受けた経済学者が、間違いなく、マックス・ウェーバーです。「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」は学生時代だけでなく、社会人になってからも読んだなぁ~。
ウェーバーは、マルクスよりも二世代ほど後の人で、政治学者であり、社会学者であり、経済学者だった人。哲学者には分類されていないけれど、古代や中世の学者だったら間違いなく哲学者にも分類されていただろうね。

ウェーバーはプロテスタントの家庭の長男として1864年に生まれ、1920年に「スペイン風邪(※今のインフルエンザ)」で56歳で亡くなってます。僕が1964年生まれなので、ちょうど僕の100年前に生まれた人。で、昨年2020年「コロナの大流行」で、僕は今ウェーバーが亡くなった56歳な訳で・・・ちょっと考えさせられます。

ウェーバーが、その著作「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で何を語っているか、何度も読み返した僕が簡潔にまとめます。新教徒(プロテスタント)の生活は、贅沢をしない清貧の生活。資本を蓄積して、企業経営と経済活動の拡大を担っていくのは彼らなのだけど、贅沢をしない質素堅実な彼らが、何故経済の中心を担っていくようになったかを、歴史資料で論じていく。彼らは、真面目にコツコツ仕事をします。そして儲かっても必要以上に贅沢などはせず、その余剰金を次の生産拡大や事業展開に用いていく。だから経営は拡大し、企業は繁盛して更に潤って行くわけです。簡潔に要約すると、そう言うことを言っています。

僕は、経済学と言う入口からウェーバーに入ったけど、学問の方法論としてのウェーバーの影響も受けている。また、大塚久雄先生がかかれた「社会科学の方法-ヴェーバーとマルクス」にも多くを学びました。物理などの自然科学は、実験によってその理論を証明できます。しかし、社会科学は何十億と言う人間が絡み、環境・文化・思想その他の複雑な諸要因が存在するので実験による検証が難しいですよね。現実と理論をどうやって擦り合わせていくんでしょう?と言う問題とか、色々考えさせられました。
現代は、経済学も含めて、ビッグデータを駆使して数学的・統計学的に解析していく社会学なんだけど、昔は違った。「こうあるべき」とか「こうでなければならない」的な学問の派閥ごとの考えがあって、みんなその説に固執しているところがあった様に思う。もっと言うと、本来「経済学」と言うのは高度で複雑な数学や統計学を駆使しなきゃいけないのに、それが出来る経済学者なんてほとんどいなかった訳で(笑)。だってそもそも経済学が理系じゃなくて、文系に分類されていた・・・駄目ですよね。日本の経済学が、世界から取り残されたのは、そう言った前近代的な物が幅をきかしていたせいとも言える。
どう説明すれば分かりやすいかな?例えば、二人の男性が並んで歩いていて、向こうから一匹の大きな犬が歩いてくる。この時点では、その犬の素性は二人とも知らない。男性の一人は犬が大好きで、「あの犬は大喜びで自分にすりよってくるに違いない」と思っている。もう一人の男性は昔、犬に噛まれたことがあって、「あの犬も自分を噛むに違いない」と勝手に決めつけている。
でも実際どうかは、その犬が側に来るまで分からない訳です。でも確かめる前に、結論付けちゃっている。経済論にはそう言った傾向のも多く、「こうであろう」「いや、こうであるべきだ」と言う、科学の在り方としてはお粗末な面があったのは確かです。
マルクスなんてまさにそうですよね。「科学的」社会主義と言いながら、「ブルジョアはプロレタリアに打倒されるはずだ」ないし「打倒されるべき」・・・って、もう科学じゃなくて、これは思想ですよね、革命の。まず結論ありきの。
学問をする上で、客観的とは何か、科学的とは何か、ということを、ウェーバーによって、またウェーバーらの事を取り扱った大塚久雄さんの著作によって考えさせられ、学ばされました。

(2021年5月3日記)

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