クリスチャンのための哲学講座
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1.哲学って何?
今回から、西洋哲学史を中心にして"哲学"について考えてみたい(※東洋の哲学の儒教等の思想については別途考察したいと思う。また、仏教については既に別のコーナーで考察しているので、そちらを参照してください)。
さて、この"哲学"と言う学問だけれど、一体何なのでしょうね。誰もが、漠然とは分かっているとは思うのだけど。色んな本で同じような事が度々触れられているのだが、そもそも"哲学"って変てこな名称である。物理学なら"物理"に関する学問だし、経済学なら"経済"に関する学問だし、歴史学なら"歴史"に関する学問…と言う風に分かり易い。でも、"哲"に関する学問?…"哲"って何ぞや??
哲学を表わす"Philosophy"と言う言葉は、そもそもギリシャ語の"philosophein"と言う「知を愛する」と言う意味の語から来ている。Philo(愛する)→Sophia(知)である。それを日本語に訳した言葉は、初めは"希哲学"だった。「哲(=賢明さ)」を「希(=請い願う)」と言う意味である。それが単純化されて、"哲学"と言う訳語が用いられるようになったそうな。
哲学は、古代においては、人間の政治活動も、数学も、生物学も、天文学も扱っていた。つまり宇宙全体すべてに通ずる普遍的原理を求めるための学問だったと言える。しかし、自然科学の方法が、主に観察や実験によって原理法則が明らかになるのに対し、哲学の方法論や考え方は時代や環境によってバラバラである。自由落下の計測実験は、Aさんの実験でもBさんの実験でも、同じ結果が出ると考えられる。しかし。哲学の場合は、AさんとBさんで同じ結果が出るとは限らない。よく言われる事だが、100人の哲学者がいれば、100個の哲学が存在するとすら言われる由縁である。事実、古代から現代に至るまで、山ほどの哲学が生み出されてきた。また、一般学問は"何が真理か"を問うのに対し、哲学は"真理とは何か"を問う学問だとも言われる。しかしながら、そもそも哲学そのものが可能なのかどうかさえ怪しいとも言われたりするのである(笑)。
哲学を学んでいくと、神と人間、善や悪、存在や非存在、理性と感情、精神と肉体、客観や主観、真理と非真理、etc.…すべてが今まで思っていたようには明快でない事に気づき、訳が分からなくなる事もあろう。しかも、高名な哲学者達が、相互にその考え方の矛盾を批判し合っていたりもする。幼い頃、TVCMで聞いた野坂昭如氏のCMソング、「ソ、ソ、ソクラテスかプラントンか、ニ、ニ、ニーチェかサルトルか~。み~んな悩んで大きくなった!」みたいに、もう悩みまくりになるのは当たり前である。
このような事を書くと、「哲学って屁理屈ばかりで何の役にも立たないじゃん!」とか「この混迷と不況の時代に"私自身"にとって何か役に立つの!?」と言いたくもなるだろう。まあ、哲学を一言で皮肉混じりに言うと、「おめえら、つまんねえ屁理屈をごちゃごちゃこねてねえで、さっさと行動しろ!」って感じであろうか…。が、しかし、なかなかどうして、哲学は、その時代毎に、社会、政治、経済、宗教、文化に多大な影響を与えてきたのである。
僕は学生時代、哲学の講義は取らなかったのだけれど、個人的には色んな哲学者の本を少しずつ読み続けていて、それなりに影響を受けた本もあれば、僕の脳内をスルリと滑り落ちていった内容の本もある。「クリスチャンなら、もう神様を信じているし、聖書を真理と信じ、聖書の言葉に聞き従って生きると言う"哲学"があるんでしょ?なのに哲学を学ぶ必要あるの?」…と言う素朴な疑問を向けられそうな気もするが、実は色んな意味でキリスト教と哲学は、歴史において相互に影響を与えあってきた。
新約聖書が書かれて成立する過程で、イエス・キリストの教えや考え方を文章化するにあたり、ギリシャの哲学的思考や用語を拝借したと言う経緯があるし、聖書を日本語に訳すにあたり、聖書の考え方に一致するような的確な日本語が見つからず、訳語を(本来意味が少し異なる)仏教用語から拝借したと言うような経緯もある。また逆に、キリスト教は、特に中世西洋哲学に様々な影響を与え、良い意味でも悪い意味でも、深く歴史に関与してきたのである。そして、今でも様々な影響を与えているのである。
そのような訳で"この私"は、敢えてしばし"哲学"に正面から向き合ってみようと思う。次回から、古代の哲学者の考えに自分の考えや思いも交えつつ、このシリーズを進めていきたいと思うのである。
(2008年11月 9日記載)
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