キリスト教の信条とその歴史

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7.ウェストミンスター信仰告白の意義

・歴史的意義 (キリスト教が、徹頭徹尾、恩恵の宗教である事を示した)

①旧約聖書は、恩恵の啓示を与えている。

②使徒時代の終り以後、恩恵宗教としてのキリスト教は、正しく信ぜられ告白されていなかった。

③ニケヤ・カルケドンの信条に於いて、三位一休神の教理とキリストの神人両性の教理とに、
 恩恵宗教の基本的信仰の告白をした。
 (アウグスティヌスは、恩恵宗教としてのキリスト教を、大いなる輝きの下においたが、
  以後ローマ教会主義の闇の帳が全教会を蔽い、信仰の真理について無知なる中世の夜が地表に垂れ込めた)。

④暗黒の只中に、光が昇り黎明が訪れた。宗教改革である。ツヴィングリ、ルター、カルヴァンらによって、
 神の恩恵の福音が再び地上にもたらされ、全ヨーロッパに広がっていった。

⑤再び黒雲が訪れる。組織的解明者メランヒトンにより、福音の純粋な立場に立ち得なくなり、
 恩恵宗教の原理を決定的な完結したものとする希望を失う。

⑥改革派教会は、(迫害の下に)救いの神にのみ依拠した。
 信仰と忍耐・戦いと苦難の百年間に、恩恵の教理についての請信条が告白せられた。

⑦ドルト会議は、人道主義を排除し聖書の教えに固着し、恩恵の福音についてのアウグスティヌス主義を再確認。
 内側からの襲撃の戦いは、英国内へ波及。英国教会内の教権主義と人道主義的宗教の双方と戦う事に。
 ウェストミンスター会議(1643~1649年)に集った戦士(神学者)の戦いが始まる。

「ウ会議の神学者達が、今までに類を見ない程、包括性・純潔性・正確さ・明確さをもって、
 神の恩恵の福音を具現させ、歴史的に言って、恩恵宗教の原理の最後的な信条的決定を見るようになった
 (これは、ウ信仰規準がこのような時代と戦った人々の歴史的所産だったからである)。」



・学問的意義

 ウ規準の高い学問的性格は、教理的宗教的戦いの中から形造られていった。
人々に信ぜられる事を要求する宗教は、
①教権主義的宗教
②人道主義的宗教
③恩恵宗教

 この三者間で、信仰の死闘がなされねばならない。完全にこの両者と自らを区別するものが、恩恵宗教の最高・最完全の学問的叙述となる。

 ウ規準が、恩恵宗教の要素を最もよく告白した。第一の敵なる教権主義的傾向は、ローマ教会。第二の敵なる人道主義的傾向は、ソシニアン主義、合理的自然主義、反ペラギウス主義として、キリスト教会内に侵入、宗教改革時代には、ルター派の神人協力主義、レモンストラントの人間主義の形で現れる。
 改革派神学は鍛えられて、17世紀の全欧の信者の心の中に完全な形をとって横たわっていた。教権主義は、英国の改革主義教会を捕らえ、教会の忠実な信者の心と良心を激しく荒らした。又、人道主義的自己主張が、この国の最優秀の信者たちを捕らえ、福音の基礎を倒そうと謀った。多くの者らが欺かれた。信仰に於いて聖書の忍耐を学んだ人々は、この鉄火の試練を受けて潔められ、精錬せられて立ち上がった。ウェストミンスター寺院のエルサレム書院の厳粛な会議に参加し、聖書に啓示せられた信仰についての最高の表現を作り出した。何処においても到達されなかった完成を所有し、何物も比肩できない。
 恩恵の福音の本質が、明快且つ純潔に表明せられ、又教権主義と人道主義の如何なる残液をも止めぬよう徹底させられている。
 "恩恵の福音を最も完全純潔に告白した"ウ規準は、恩恵宗教たるキリスト教の原理についての終極的学問的宣言として、残らねばならぬものとなった。
 (これは、人間の反省が到達した、決定的な学問的叙述であった。神を信ずる者は、神の摂理的働きを必ず考え、聖書の神を仰いでいる者は、彼らが神の事柄について聖書の啓示を学ぶ時、神の導きの約束が必ず成就されることを見る。しかし彼らは、
ウ規準に、「神の霊感」が働いていたことを決して"認めない")。


・霊的意義

 この偉大な信条を制定した父祖たちが、単に思弁的な興味のみに支配され、或いは形而上学的な考察によって、その任務に携わったと思う者は大いに間違っている。-彼らは、実務家であって思弁家ではなく、勇敢な教職また牧師であり、死の用意があった。学識深く、思弁力や哲学的理解を持った人々であったが、思弁的な興味からではなく、(実際的興味からと言うより)明白に霊的な必要から、この任務に携わったのである。

 彼らがウェストミンスター寺院に集まったのは、自己の思いつきを吹聴するためではなくて、英国の教会の良き船が教権主義の暗礁や、人道主義の浅瀬に乗り上げてしまう危険から、それを救助するためであった。また就中、心から腹蔵なく神的生活についての全ての言葉を語るためであった。彼らが我らに与えたものは、宗教改革の精神に貫かれた最高の宗教文書であった。彼らの所産が、学問的造詣の深いものであったとしても、彼らの第一の目的は、スコラ的でなく、聖徒にふさわしくなる事を願って、これらの定義を書いたのである。


 ウェストミンスター規準は、歴史的に言えば「福音的に発展した最高の時代の蓄積された信仰を示」し(恩恵の宗教の本質についての最後的結晶)、学問的に言えば「恩恵の宗教の信条を最も徹底的に考慮し、かつ最も注意深く異端誤解に対して防御した叙述」であり、霊的に言えば「生命ある霊的宗教の明白な本質に満ち、最高の香気を放っている」信条である。


(2008年 3月16日記載)



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