キリスト教の信条とその歴史

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5.信条の歴史4/改革派教会の歴史

Ⅰ.ジャン・カルヴァンの生涯

1509年7月10日  ノワイヨン(パリ北東50マイル)で、ローマ教徒の両親の下に誕生
         (父は彼を僧職にするため、最高の教育を授ける)

         14歳の時、パリ大学入学。ラテン語、噛理学、哲学を学ぶ。
         その後、オルレアンとブールジュ大学へ。
         (最も有能なる教授陣の下)法学研究(→神学思態に多くの影響を与える)。

         父の死後、文学を生涯の目標とする。
         ラテン語、ギリシャ語、ヘブル語と、文学の研究。

1534年   (突然)プロテスタントヘ回心。パリを脱出し、三年間仮名で思索と祈りの時を過ごす。

1536年春  「キリスト教綱要」出版

1536年8月 ジュネーブの宿屋に宿泊。
        (1532年以来、ジュネーブで宗教改革している)ウィリアム・ファレムと出会う。

1536年9月1日 聖ペテロ教会(ジュネーブ)で説教(講解説教→聴衆に感動を与える)

1537年   
「信仰告白」「教理問答」「訓練規程」(ファレルとともに)作成 ⇒ 市議会で承認(※反対派もいた)


1538年4月22日 カルヴァンとファレルはジュネーブから追放される。
        (ファレルは、ヌーシャルテルヘ。ジュネーブへは二度と帰らず)。
        カルヴァンはドイツのストラスブールヘ行く。プロテスタント大学の神学助教授に任命される。
        フランスの亡命者が沢山おり、彼らをーつの教会に組織する。カルヴァンはその教会の牧師に。

         ・礼拝は、説教と聖餐式中心(礼拝の内容=明白、表現=自由)。
         ・式文祈祷と自由祈祷。
         ・詩篇による賛美(楽器は用いず)。

1540年8月 未亡人イドレット(10代の男児と小さな娘の母)と結婚。(生まれた子は死亡)。


 カルヴァンとファレルの追放後、ジュネーブは最悪の事態になる。市民達は、カルヴァンの帰国を(霊的、道徳的、市民生活の指導者として)願う。

1540年秋  市議会の懇願。しかし、帰らず。 (ファレルの呪いの宣言をする?)

1541年9月14日 カルヴァン、ジュネーブに帰る。再び、ジュネーブで仕事開始。
        
「教会規程」の必要(聖書に基づいた教会政治、礼拝、訓練、生活)。
        1542年に認める ⇒ 事実上、長老教会(or改革派教会と言われた)。

長老会(consistory)
        ジュネーブの五人の牧師と12人の長老で長老会を組織(小会or中会)
        (長老会は、教会を治めることと、戒規の施行を行なう)。
        長老の選挙に市議会が強く介入(教会政治と市の政治が混在)。
        教会員の訓練を強調(キリスト教生活に関する規則→戒規)。

・信仰告白と教理問答書 ⇒ 増補、改訂されて、教会で採用。
 (→フランス、オランダ、スコットランド、イングランドの信仰告白に影響)

・ジュネーブ市の改革 (聖書、信仰告白、教会規程、長老会を基にした改革)
   カルヴァン-毎週数回説教、神学講義、学校の監督、
         註解書や他の書物の執筆、ヨーロッパの神学者たちとの文通。
         人々の生活と福祉にかかわる一切の事に深い関心を持つ。

・キリスト教教育 宗教と教育は、常に相伴うべきものと考える。
         →ジュネーブに整った教理体系を作る。初等教育から大学まで。
          大学で牧師養成、全分野で働く青年の教育。
          学校は、教会により指導監督。教師には、キリスト者のみ。

1553年10月27日 ミカエル・セルヴェトゥス、ジュネーブ郊外で火刑が行なわれる。
        (彼は、ローマ教会でもプロテスタントでもない。多くの反カルヴァン派議員で占められた。
         ジュネーブヘ出現。カルヴァンは、セルヴェ トゥスヘの反対の証人として出廷。
         市議会は、異端と瀆神の故に有罪とし、火刑にする。
         カルヴァンは、もっと情けのある方法をと助言するが、市議会は拒否)。

1564年5月27日 カルヴァン死亡(余談だが、シェークスピア誕生の日)


Ⅱ.カルヴァン主義&長老主義の進展

1.フランス


 フランスのユグノー(Huguenotes)は、教理はカルヴァン主義で、教会政治は長老主義を採用。
 フランスのプロテスタント運動は、1500年に逆上る。パリ大学教授ルフェーブルは、新約聖書をフランス語に訳し、民衆が熱心に読む。プロテスタントに改宗する人が現れる。カルヴァン、ファレル、他。

フランス最初のプロテスタント教会


1555年   パリのプロテスタントの家庭に一人の子が生まれ、両親が小児洗礼の為、
        近くに教会を作ることを訴え、カルヴァンの下で教育された青年が牧師になる。

1559年   フランスに、2000ものプロテスタント教会ができる。
        →政治形態は長老主義、教理はカルヴァン主義。
         カルヴァンが教育してフランスに派遣した牧師は、120名。

1559年5月  大会(National synod)を組織
        →カルヴァン主義に基づく信条を作り、政治形態は長老主義を採用した。

ローマ教会は、軍隊を動員して改革派教会を弾圧。 ⇒ カルヴァンは、謀叛・武力による抵抗運動に強く反対。

1572年8月24日 
聖バルトロマイ祭日の大虐殺
        多数のプロテスタントが、ナヴァル公アンリとローマ教徒マルグリートの結婚式を口実に
        集められる。聖ジェルマン寺院の鐘の音を合図に大虐殺が始まる。一週間に、7~10万の死者。

1598年   「ナントの勅令」ナヴァル公アンリ(アンリ四世)
        →プロテスタントヘの寛容。が、アンリ四世の暗殺で死文化(1610年)

685年    ルイ十四世により、「ナント勅令」廃止
        →仏全土のプロテスタント牧師は国外退去(2週間以内に)

プロテスタント教会は焼かれ、学校は閉鎖、子供は司祭により洗礼を受け、ローマ教会学校教育を受ける。
また、市民としての権利を奪われ、結婚は法的には無効、子供の相続権は奪われ、財産は没収された。
多くのプロテスタントが殉教、多数の者が外国へ亡命。400万人ものプロテスタントがフランスから消えた。

(→今日のフランス改革派教会/約50万人の会員。多くの流血を戦い抜いてきた「十字架の教会」)


2.オランダ(ネーデルランド)

 ルターの教えは、すぐオランダヘ。カルヴァン主義は少し遅れたが永続的で大きな感化を与えた。宗教改革は、急速に進展。1531年まで、聖書の全訳25種類が完成。しかし、オランダでも早くから迫害が始まり、長く続く。

→1523年7月 ヘンリー・フォス、ジョン・エッシュがプロテスタント信仰を待っているという理由で、
       カトリック当局者により、ブラッセルで焚刑。以来、迫害は猛烈。
       公的、私的を問わずプロテスタントの書物を持っていれば、死刑となった。

長老教会の成立

1559年   プロテスタント運動は組織化。結集して一つの教会を作る。
        「
ベルギー信条」=カルヴァンの下で教育を受けた一人の牧師が作る。

1563年   アントワープの会議/→長老主義に基づく教会憲法を作成。
                   この教会憲法に基づいて、非常に多くの長老派教会が組織される。
1569年   ドイツのエムデンで会議(自国で会議を開くのが危険であったため)
        →大会を組織(各個教会から大会まで全教会組織が仏長老派にならう)。
        「連合教会」(Collegiate Church)
         /一つの町に長老派の教会がいくつあっても、―つの小会によって統治されている。

余談…「沈黙の人・ヴィレム」
オレンジ公ヴィレムは、プロテスタントを支持し、オランダにおけるプロテスタント運動の政治的、軍事的指導者となった。彼の指導下に、オランダの北部7州は独立し1579年にオランダ共和国が成立した。

(→今日のオランダ改革派教会/今日のオランダ人口約800万の約半分が、改革派教会の会員)


3.ヨーロッパの他の国々

 ドイツ、チェコスロバキア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、スイス、イタリア、スペインにも、長老主義政治形態を持った改革派教会がある。ジャン・カルヴァンによって聖書に基づいて再建された代議的政治形態を持つ教会が、信じられない程の早さで、ヨーロッパヘ広まっていった(16世紀の独裁政治下の民衆にとって、大変魅力があったと考えられる)。



 次回は、アイルランド、スコットランド、イングランドの改革派教会の歴史を取り上げ、ウェストミンスター信仰告白作成の背景までを見たいと思います。


(2008年 1月20日記載)


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