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「シュメル神話の世界」を読む
シュメル神話の世界 岡田明子・小林登志子著 (中公新書)
今から5千年前にティグリス、ユーフラテス河沿いに栄えた人類最古の都市文明シュメル。
英雄ギルガメッシュ(シュメル語でビルガメッシュ)やニンウルタも登場するシュメルの神話。同地域&同時代の物語として、ノアの洪水物語、バベルの塔伝説との比較など、シュメル神話は色んな本に登場するので断片的には知っていたが、これほど詳細に読むのは初めて。ちなみに、アブラハムが生まれ育ったのも、この地域のカルデアのウル。
ギリシャ神話同様、シュメル神話にも多数の神々が登場する。 洋の東西を問わず、人々は自分の具現化したい神々を作り出す。それは、時に太陽であったり、大地であったり、海であったり、川であったり、山であったり…エトセトラ。
そして、それらの神々は、「神」と呼ぶにはとても欠点だらけである。シュメルの最高神"エンリル神"は欲望を抑えられず、"ニンリル女神"を手籠めにしてしまう。そして神々の会議の結果、最高神エンリルは追放処分となる。最高神ではあるが、完全・永遠・不変・無限の神ではない。そう言う神。つまり、これらの物語は神と称しながら、人間の社会の単なる投影である。
同様に、これも洋の東西を問わず、神々の物語は"時の権力者"の"神格化・正統化"のために編纂された。"王"は、正当な"神"の系譜であると。日本の古事記や日本書紀が正にそのための書物であるのと同様に、シュメル神話もそう言う側面が大きい。
時代や場所が大きく変わっても、人間の弱さ・欠点や欲望の根深さと言ったものを感じられる。今の時代の見ても、いろんな所で「自分は正当な側にいて、あっち側は間違っている!」と言うような攻撃が止む日はない。自分に都合の良い話は採択し、都合が悪いものは隠ぺい・消去する。シュメル神話の世界を読んで、そんな事を感じました。
(2016年10月20日記載)
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