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 vol.59 2004年冬号

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JOLLYBOYのワインハウス

29.ワイン偉人伝1:ドン・ペリニヨン

 新たなる年、2004年を迎えました。さて今年からは、しばらくワインに関わった偉人達の物語をご紹介していきたいと思います。初回は、ドン・ペリニヨン。
 ドン・ペリニヨンと言えば、シャンパンの王様"キュヴェ・ドン・ペリニヨン"のワインの名前で有名ですが、これは修道院の酒庫(酒蔵)係のドン・ペリニヨンの名を冠したものです。彼は、いかなる人物だったのでしょうか。


DOM PERIGNON像 DOM PERIGNON像(JOLLYBOY'Sワインノートより)

 ドン・ピエール・ペリニヨン(もしくは"ペリニョン")。彼は、ルイ十四世誕生の一年後1639年に生れ、ルイ十四世と同じ1715年に亡くなっています。彼は、1668年からオーヴィレーヌ修道院の酒庫係を務めることになりました。この頃には、シャンパーニュ地方にまだシャンパンはありませんでした。もともと発泡したワインは、元を辿れば「灰色の水」とか「悪魔のワイン」と呼ばれる白ワインの出来そこないだったのです。
 そして、そもそもシャンパーニュ地方では、赤ワインとロゼワインばかり造っていました。ところが、お得意様である宮廷でブルゴーニュ産の白ワインが大流行したので、シャンパーニュも負けじと、白ワインを造り始めました。ところが、白ワイン造りのノウハウがないので、失敗に継ぐ失敗を重ねます。発酵に失敗して灰色にくすみ、炭酸ガスが大量に発生してボトルを爆発させる事件もしばしば。オーヴィレーヌ修道院でも同様で、酒庫係に赴任した修道僧ペリニヨンは、修道院長から何とか白ワイン造りを成功させてくれと頼まれます。
 ペリニヨンは試行錯誤を繰り返します。最初は、灰色のくすみを取り去る事に尽力しましたが、その後、氷砂糖を溶かしたワインを注ぎ足して、発酵の進み具合を制御する方法にトライ。すると、翌年になっても、その方法で造ったワインは完璧に澄んだままでした。それだけではなく、予想外のことが起こっていたのです。出来上がった白ワインは、発泡性の白ワインになっていたのです。シャンパン誕生の瞬間です。ペリニヨンは、その発泡性白ワインを飲んで「空の星を飲んでいるようだ」と言ったとか。
 これが、ペリニヨンによるシャンパン誕生の逸話です。しかしながら、歴史的にはこれ以前に、ロンドンでガラス瓶に入れられた発泡性の白ワインが飲まれていることが確認されているので、スパークリング・ワインの生みの親とは言い難いようですが、やはりシャンパン誕生におけるペリニヨンの功績はとても大きなものです。
 ドン・ペリニヨンの功績は、これだけではありません。ペリニヨンの功績のもう一つは、コルク栓を発明したことでしょう。今、ワインボトルの栓と言えばコルクが当たり前になっています。しかし、初めからコルクが使われていたわけではありません。当時の栓は、油をしみこませた布を木の釘に巻きつけたものや、麻に油をしみこませたもの、葡萄の葉を堅く巻いたもの等でした。ところが、これらのワインはボトルに詰めて半年もすると、ワインの澱の中の酵母が活発に働き過ぎて、度々変質していました。ペリニヨンは、これを「栓の密閉性が足りないせいだ、ワインが空気に触れすぎるせいで変質するのだ」と考えました。そんなある日、彼はスペインからやってきた巡礼者が、水を入れるひょうたんにコルク栓を使っているを目撃しました。「コルクならすぐに手に入るし、しかも軽い」、こうしてペリニヨンはその秋の仕込みでコルク栓を試してみたのです。するとどうでしょう!ワインボトルの中身は、春先になってもまったく変質しなかったのです。修道院で使われだしたコルク栓は、瞬く間にフランス全土に広がっていきました。
 現代の科学では、ワインの熟成には微量の酸素がいることが分かっていますが、これは「現代の技術では、どんなに機密性を高めても、どうしても漏れてしまう程度の酸素量」だとも言われていますから、ペリニヨンの科学的考察による先見の明は確かだったと言えます。各、ワインメーカーがコルク栓に替わる新しい素材を研究・開発していますが、今のところはコルク栓がベストなようです。
 ドン・ペリニヨン神父が、ワインにもたらした革命的な発見と技術は、現代まで通用し使われているのです。



キュヴェ・ドン・ペリニヨン キュヴェ・ドン・ペリニヨン

 
 シャンパンの王様、ドン・ペリニヨン。僕も過去、10本ほど買いましたが、自分で飲むためと言うよりは、お客さんへ贈るお歳暮用に買う事が多いワインです。ドン・ペリニヨンよりも高価なシャンパンは他にもあるのですが、それらのシャンパンはあまりにマニアックで、ワインの事を知らない人には今一つピンと来ないようです。しかし、ドン・ペリニヨンなら多くの人がシャンパンの王様として認知しているので、お歳暮としては良いかな…と思っています。化粧箱も立派なので、お歳暮にはピッタリ!ドン・ペリニヨンは、日頃の感謝の心をこめて贈るワインには最適ではないでしょうか。
 飲んでみた感想ですが、藁のような香り、柑橘系の甘い香りがして、余韻が長く続きます。
 ドン・ペリニヨンは、よくテレビ番組などで「ホスト・クラブで空けると一本10万円」と言うような紹介がされていますが、いくらなんでも1本10万円は高すぎるでしょう。それにボトルを使いまわして、中身は別物スパークリングワインにすり替える悪質な店も一部にあったと聞きました…どうせ味や香りなど誰も分かっていないのだから、と言う判断でしょうか。また、そう言う店で、味わいもせずビールやサイダーのようにガバガバと飲むのでは、苦労してこの葡萄を育てた葡萄栽培者や、何年もかけてこのワインを熟成させたワイン生産者達に対して、たいへん申し訳ない失礼なことです。ファッションやブランド物のバッグなどと同様、時や場所やシチュエーションを考えないとね。
 特別な機会に、このビロードのような咽ごしの繊細なシャンパンの王様を飲まれてはいかがでしょうか。


参考データ:生産地/フランス・シャンパーニュ地方 ぶどう品種・ピノ・ノワール種、シャルドネ種
      価格(白)10,000円~ (ロゼ)25,000円~


ドン・ペリの化粧箱 (ドン・ペリの化粧箱)


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感想(24件)





映画"この一本!"35 「ウェールズの山」

 さてこのコーナーでは、隠れた名作映画を毎月一本づつ紹介していきます。賞を取ったのに興行成績が惨敗だった映画とか、一般には知られていないがカルト的に人気のある映画とか、海外では大ヒットしたのに日本でこけてしまった映画とか-いま一つ日の目を見ない不運な映画を取り上げていきます。

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 毎年の初めは、なんかこう気持ちを明るくさせてくれるような映画とか、勇気が湧いてくるような映画を取り上げたいなぁ…と思っているのですが、今年最初にご紹介する映画は"ウェールズの山"。原題は、"丘に登り山を降りたイングランド人(the Englishman who went up a hill but came down a mountqin)"と言う、長くて変なタイトル。1995年のイギリス映画で、監督&脚本はクリストファー・マンガー。この監督はウェールズ出身で、ウェールズに伝わる伝説を基にこの映画を作り上げた。主演は、ヒュー・グラント。脇を、イアン・マックニー、タラ・フィッツジェラルド、コーム・ミーニーらが固める。

ウェールズの山Imaged by JOLLYBOY

 物語だが、第一次大戦後間もない1917年、ウェールズの小さな村に二人のイングランド人がやって来る。地図のための測量にやってきたのだ。村のガース山の高さも測られる。その高さは299メートル。なんとそれは「山」と呼ぶには、6メートル足りない。つまり地図には、「丘」と記載されてしまうのだ。村の人々は大慌て。ガース山は、村人にとって誇りなのだ。ウェールズ地方の最初の「山」が、ガース山。それが、「丘」になってしまうのは、とうてい我慢できない。村中が騒然となる。村人は、あの手この手を使って、測量技師二人を村に足止めする。その間に、村人たちはなんとかガース「丘」を305メートルのガース「山」にしようと奮闘努力を開始する。
 この映画の見所は、郷土の誇りにこだわる村人のおかしさと熱心さ、個性溢れる村人一人一人の葛藤である。理解し合えなかった者達が、郷土の誇りをかけて次第に連帯していく。映画によくありがちな設定だが、監督やスタッフ、出演者達の努力が高度に融合・調和していて飽きさせない。しかも、出演者の村人たちの多くがウェールズから選ばれているとの事。ウェールズの山"ガース山"と同様、正に郷土"ウェールズ"の誇りをかけた名作映画である。




趣味の部屋(ビークル&アウトドアー&エトセトラ)

"雪は天からの手紙"

 今回は、雪のお話をしたいと思います。
 昨年、北陸に旅行に行った時、石川県の片山津の温泉の柴山潟湖畔に泊まりました。旅館でもらった散策用の地図を見ますと、その中に"中谷宇吉郎・雪の科学館"と言うのがありました。歩いて行けるほど近かったのですが、あまり時間のない旅でしたので、そこには寄らずに柴山潟を出発しました。しかし、帰宅後に妙に気になってしまって、色々と調べてみました。
 中谷宇吉郎は、「雪は天からの手紙である」という言葉で有名です。この言葉の意味は、何でしょう?
 中谷宇吉郎は、1900(明治33)年加賀市片山津に生まれました。東大で寺田寅彦の指導を受け、理化学研究所勤務、ロンドン留学を経て、1930年北海道大学に赴任しました。1932年に教授となったのですが、その頃から雪の研究を開始し、1936年には世界で初めて人工の雪を作る装置の作成に成功したのです。


雪の結晶

 雪の結晶には、同じ形が無いと言われます。上空の水蒸気が冷たい気温の中で凝集して、気温が0℃以下なら氷結して雪になります(実際には0度になっても、核になる塵などが必要だったり、何らかのショックがないと雪にはならないそうです)。そして、中谷宇吉郎はその時の温度によって出来る結晶の形が変わることを発見したのです。雪の結晶の形を見れば、上空の温度や状態が分かるのです。これがつまり、冒頭の「雪は天からの手紙である」と言う言葉の真意です。 今度、雪が降った時には、空から降ってくる雪に想いを馳せて観察してみませんか。空からのメッセージを受け取れるかもしれません。



今月号の引用・参考文献:
ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本
                        (日本ソムリエ協会)
日本ソムリエ協会 教本/2003年度版     (日本ソムリエ協会)
基礎ワイン教本/WSET編            (柴 田 書 店)
田辺由美のワインブック              (飛 鳥 出 版)
田辺由美のワインノート              (飛 鳥 出 版)
ワインの科学/清水 健一 著            (講  談  社)
ヒュー・ジョンソンの楽しいワイン         (文 春 文 庫)
ワインベストセレクション260/浅田勝美監修   (日 本 文 芸 社)
世界ワイン大全                  (日経BPムック)
ワインの世界史                  (中 公 新 書)
ワイン・カタログ/ナヴィ・インターナショナル編   (西  東  社)
ボルドー/ワインの宝庫を訪ねて        (日 経 B P 社)
ブルゴーニュ/ワインとグルメの歴史にひたる   (日 経 B P 社)
シャンパーニュ/金色に輝くシャンパンの故郷へ (日 経 B P 社)
トスカーナ・ワイン紀行             (日 経 B P 社)
ソムリエを楽しむ/田崎真也             (講  談  社)
ワインものがたり/鎌田 健一 著          (大 泉 書 店)
今日からちょっとワイン通/山田 健 著        (草  思  社)
私のワイン畑/玉村 豊男 著            (扶  桑  社)
夢 ワ イ ン/江川 卓 著              (講  談  社)
永井美奈子のベランダでワイン            (主婦と生活社)
ワイン この一本/戸部民夫・清水靖子編著     (毎 日 新 聞 社)
ワイン用葡萄ガイド/ジャンシス・ロビンソン      (WANDS)
ワインの教室                   (イカロス 出 版)
ワインついしゃべりたくなる博学知識         (河出書房新社)
オーケストラワインショップWeb配信ニュース
ウェールズの山      (ブエナ・ビスタ・ホームエンターテイメント)



聖書の言葉

主は嵐の中からヨブに答えて仰せになった。

これは何者か。知識も無いのに、言葉を重ねて、神の経綸を暗くするとは。
男らしく、腰に帯をせよ。
わたしはお前に尋ねる、わたしに答えてみよ。

私が大地を据えた時、お前はどこにいたのか。知っていたというなら、理解していることを言ってみよ。
(中略)
光が放たれるのはどの方向か。東風が地上に送られる道はどこか。
誰が豪雨に水路を引き、稲妻に道を備え、
まだ人のいなかった大地に、無人であった荒れ野に雨を降らせ、
乾ききったところを潤し、青草のもえ出るようにしたのか。
雨に父親があるだろうか。誰が露の滴を産ませるのか。
誰の腹から霰は出てくるのか。天から降る霜は誰が産むのか。
水は凍って石のようになり、深淵の面は固く閉ざされてしまう

すばるの鎖を引き締め、オリオンの綱を緩めることがお前にできるか。
時がくれば銀河を繰り出し、大熊を小熊と共に導き出すことができるか。
天の法則を知り、その支配を地上に及ぼす者はお前か。
お前が雨雲に向かって声をあげれば、洪水がお前を包むだろうか。
お前が送り出そうとすれば、稲妻が「はい」と答えて出て行くだろうか。(後略)」
(ヨブ記 38篇)