vol.62 2004年秋号
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32.ワイン偉人伝4:アゴストン・ハラジー
さて、前回は"カリフォルニアワインのルーツ"、フニペロ・セラ神父について取り上げました(&"近代カリフォルニア・ワインの父"、ロバート・モンダヴィについても少し触れました)。今回は、"カリフォルニアワインの父"と呼ばれるアゴストン・ハラジーを取り上げたいと思います。
アゴストン・ハラジーは、1812年8月30日、ハンガリーのBacskaのFutak(※すみません・その1…ハンガリー語の発音が分かりません)で貴族の一人息子として生まれました(なのでハラジー"伯爵"と言っても良いでしょう)。その後の冒険的な人生はしばらくワインとあまり関係ないので、話しは一気に1848年に飛びます(本当は伝記の途中をきちんと翻訳するのが面倒なだけです…すみません・その2)。その年カリフォルニアで金が発見され、そのゴールドラッシュの情報は瞬く間に全世界に広がりました。そして、世界中からサンフランシスコに何万人もの移民が押し寄せたのです。このゴールドラッシュ時に、ハンガリー人アゴストン・ハラジーもカリフォルニア南部に移民して来て、果樹園の経営を始めました。ハラジーはサンフランシスコ(サンマテオ)に移り住んだ時、葡萄の栽培も始めました。ハラジーはもっと良い葡萄の栽培地を探し続けて、そして見つけたのが恵まれた天候の地である"ソノマ"と言う土地なのです。
アメリカ大陸には天然に葡萄が自生していましたが、それらはワインには向かない種類の葡萄でした。ハラジーは、1860年頃(※1862年?)にカリフォルニアの天候と土壌に合った最適の葡萄品種を見つけると言う実験のため、ヨーロッパからヴィニフェラ系の苗木300種類10万本を取り寄せ、ソノマ・バレーに植えました。彼のこの発案は、町ぐるみの大プロジェクトとして始められました。現在のカリフォルニアワインのほとんどの葡萄品種が、ハラジーによって輸入されたものです。これらの事で、アゴストン・ハラジー伯爵は現在でもカリフォルニアワインの父と呼ばれています。
AGOSTON HARASZTHY像(JOLLYBOY'Sワインノートより)
1860年の南北戦争、1869年の大陸横断鉄道などによって、カリフォルニアワインはどんどん発展しました。1870年代になると、フィロキセラ病による被害が増加しましたが、カリフォルニア大学研究所でフィロキセラ防止の研究が始まり、カリフォルニアの酒蔵技術が確立されました(その後も、カリフォルニア大学デイビス校などの積極的な研究により、現在のような高級ワインが生産されるようになり、1976年にはワインの品質のための法律も整備されました)。こうして、ハラジーによって花開いたカリフォルニアの近代的ワイン産業は、大きな発展を遂げていくのです。ハラジー伯爵自身は、1869年ニカラグアの川にて死亡し、その冒険的な人生に終止符を打ちました。
追記その1…ハラジーによってもたらされたヴィニフェラ系品種のルーツは長い間謎とされていましたが、2002年2月、前述のカリフォルニア大学デイヴィス校のキャロル・メレディット博士のチームのDNA鑑定研究の結果、ジンファンデル種のルーツが明らかにされました。ジンファンデル種は、カリファルニア・オリジナルと言えるほどローカル色の濃い品種として現在認知されていますが、原産地はイタリアともハラジーの母国ハンガリーとも言われていました。DNA鑑定によれば、ジンファンデル種のルーツは、クロアチア原産のチェリエナック(Crljenak)種だと言うことです。
追記その2…アゴストン・ハラジーの土壌研究等に対する熱意は、ガロ・ワイナリー(※カリフォルニアの有名なワイナリーの一つ)の現在のヴァラエタル(※葡萄品種名のワインの事)品質改良に対する熱意等に反映されています。
ブエナ・ヴィスタ・カベルネソーヴィニヨン
ブエナ・ヴィスタ・ワイナリーはカリフォルニア最古のワイナリーです。1857年に、アゴストン・ハラジーによって設立されたプレミアム・ワイナリーです。このワイナリーには、年間12万人以上の観光客が訪れるそうです。
今回ご紹介するブエナ・ヴィスタ・カベルネソーヴィニヨンは、輝くルビーレッド色、ベリー系のフルーツやハーブの香りがよく調和しています。バランスのとれたタンニンと熟成による芳醇でまろやかな味わいが特徴で、肉料理などに合うでしょう。
参考データ:生産地/アメリカ合衆国カリフォルニア州・カルネロス地方
ぶどう品種・カベルネ・ソーヴィニョン種 価格 4,000円(1999年もの)
【お取り寄せ】アサヒビール/ブエナ・ヴィスタ・カーネロス・シャルドネ 750ml
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映画"この一本!"38 「華氏451」
さてこのコーナーでは、隠れた名作映画を毎月一本づつ紹介していきます。賞を取ったのに興行成績が惨敗だった映画とか、一般には知られていないがカルト的に人気のある映画とか、海外では大ヒットしたのに日本でこけてしまった映画とか-いま一つ日の目を見ない不運な映画を取り上げていきます。
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さて、秋も深まってまいりました。読書の秋…と言う分けからでもないのだけれど、今回取り上げるのは"華氏451"。「本」と、密接な関係にある映画です。1966年のアメリカ資本のイギリス映画で、監督(&脚本)はあのフランソワ・トリュフォー。トリュフォーとかゴダールなどの監督は、ある年齢以上の映画ファンにはとても印象深い人たちですが、"あのトリュフォー"と言ってピンと来ない若い世代の人には、「未知との遭遇で、タララピーポ~と言う音階に合わせて、手を動かしてた博士役の人だよ」と言えば、分かっていただけるだろうか?(えぇ?余計に分からなくなった?)
さて物語ですが、ブラッド・ベリ原作の近未来の社会のお話し。社会が高度に機械化され、情報はテレビで伝えられる(40年近く前の映画なので、壁掛け式の薄いテレビが最先端の家電として描かれたりしている…。乗り物も、当時の先端(?)のモノレール。今見ると、どれもこれも全然未来の風景に見えない…笑)。思想は統制され、読書はすべて法律で禁止され、本を持っているだけでも違反者として捕まり、本はすべて焼かれてしまう。この本(つまり紙)が燃える温度が、華氏451度(※注)なのである。建築物は完全な防火構造となっていて、滅多に火事は起きない。消防隊の役目は火を消すことではなく、本を集めて焼くになっていた。つまり"消防"隊ではなく、"焚書"隊なのであった。そんな焚書隊の一員であったモンターグは、本を愛し隠し持つ女性に出会い、自分も本の魅力に取り付かれてしまう…。さて、彼の運命は?と言うお話し。
映画自体はいたって真面目に作られているのだが、現代人の我々が見ると、なんだかモンティパイソンのコントを見ているような感じがする描写もないではない。狙ってそうしたとは、思わないけれど…
Imaged by JOLLYBOY
この映画で扱われている焚書は、実際にナチスドイツで行われた野蛮な行為で、そういう全体主義、ファシズムへの警鐘がこの映画のテーマになっている。"1984"や"未来世紀ブラジル"と同じく、抑圧された思想統制社会・管理社会下での個人の抑圧を扱った映画である。今年のカンヌ映画祭で、マイケル・ムーア監督(※あのボーリング・フォー・コロンバインを撮った人)の"華氏911"が聴衆から満場の拍手喝采をもって向かい入れられ、パルムドールを受賞。題名は、もちろんこの"華氏451"から取られたもので、911ニューヨークテロに引っ掛けている。現代アメリカの病や中東石油利権のブッシュの影の部分等を扱ったドキュメント映画で、配給元のディズニーに配給を停止させられてしまった映画である(その後苦労の末に、全米公開されて大ヒットした)。この"華氏451"で取り締まられる"本"のように、ムーア監督の"映画"も暗黙の圧力で取り締まられてしまった(自由の国と言われるアメリカにも、実は恐怖の思想統制全体主義的傾向が度々見られる)。日本でも、政治家の情報をプライバシー情報として守ろうと言う嫌~な法案がチラホラ出たり、引っ込んだり。政治家の悪事ですら報道したら、名誉毀損で訴えられかねない変な世の中。世のため人のためと思って危ない所に奉仕に行って運悪く人質で捕まったら、"おまえはどうせ○○党だろう"みたいに言われる怖い世の中。"華氏451"の描く世界は、決して未来の絵空事でもないのである。
※注:華氏温度の計算方法 華氏温度=1.8×摂氏温度+32
つまり華氏451度は、摂氏約233度。
趣味の部屋(ビークル&アウトドアー&エトセトラ)
"腕時計の日向ぼっこ"
最近は、右を向いても左を向いても"エコ"が主役である。環境に優しく、経済的で、より便利な製品たちが次々と生まれている。腕時計も、より便利にかつエコになっている。僕が今使っている5本の腕時計のうち、4本がソーラーパネル搭載の腕時計である(残り一本は自動巻きである)。一度フル充電してしまえば、数ヶ月から半年は稼動してくれる。交換時に1,000~1,500円かかる電池交換は必要ない(時計の電池交換代って高いから、けっこう馬鹿にならないのだ)。電池交換をする代わりに、時々時計達を陽に当ててやらなければならない。まあ、時計の日向ぼっこと言った所である。
充電中の腕時計達
ソーラーパネルを搭載した商品は、もちろん腕時計だけではない。僕が持っている物だけでも、車載用レーダー、腕に装着する自転車用ライト、アウトドア用ランプ、乾電池充電器がある(下記の写真のグッズたち)。もちろん、世の中には他にも色んなソーラー充電のグッズが売られている。電池交換が必要ないって言うのは、本当に楽である。乾電池すら、光で充電できてしまうのだ。最近のソーラーパネルはどんどん性能が上がっているので、蛍光灯の光でも充電できてしまうタイプも出ている。乾電池を作っているメーカーとしては、片腹痛いだろうなぁ…。
ソーラーバッテリーで充電中の道具たち
これからも色んなソーラーパネル商品が生み出されてくると思うが、どんな面白いものが出てくるか楽しみである。
今月号の引用・参考文献:
ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本
(日本ソムリエ協会)
日本ソムリエ協会 教本/2003年度版 (日本ソムリエ協会)
基礎ワイン教本/WSET編 (柴 田 書 店)
田辺由美のワインブック (飛 鳥 出 版)
田辺由美のワインノート (飛 鳥 出 版)
ワインの科学/清水 健一 著 (講 談 社)
ヒュー・ジョンソンの楽しいワイン (文 春 文 庫)
ワインベストセレクション260/浅田勝美監修 (日 本 文 芸 社)
世界ワイン大全 (日経BPムック)
ワインの世界史 (中 公 新 書)
ワイン・カタログ/ナヴィ・インターナショナル編 (西 東 社)
ボルドー/ワインの宝庫を訪ねて (日 経 B P 社)
ブルゴーニュ/ワインとグルメの歴史にひたる (日 経 B P 社)
シャンパーニュ/金色に輝くシャンパンの故郷へ (日 経 B P 社)
トスカーナ・ワイン紀行 (日 経 B P 社)
ソムリエを楽しむ/田崎真也 (講 談 社)
ワインものがたり/鎌田 健一 著 (大 泉 書 店)
今日からちょっとワイン通/山田 健 著 (草 思 社)
私のワイン畑/玉村 豊男 著 (扶 桑 社)
夢 ワ イ ン/江川 卓 著 (講 談 社)
永井美奈子のベランダでワイン (主婦と生活社)
ワイン この一本/戸部民夫・清水靖子編著 (毎 日 新 聞 社)
ワイン用葡萄ガイド/ジャンシス・ロビンソン (WANDS)
ワインの教室 (イカロス 出 版)
ワインついしゃべりたくなる博学知識 (河出書房新社)
Restaurant Sonoma Wine History Web Site
San Diego Historical Society Web Site
ザ・ムービー 1966年 (ディアゴスティーニ)
華氏451 (ユニバーサル)
聖書の言葉
「主を畏れることは知恵の初め。無知な者は知恵をも諭しをも侮る。」 (箴言1章7節)