vol.58 2003年秋号
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28.最近のワイン事情
さて、この夏久しぶりに、ソムリエ協会の講座に出た。ソムリエ、ワインアドバイザー、ワインエキスパートの資格を持つ人のための、ブラッシュアップ・セミナーである。ソムリエ協会の行事で、新高輪プリンスホテルに行くのは、今回で4度目である。今回の講師は、田辺由美さん、大橋健一さん、小飼一至さんの三名。田辺由美先生は、僕が通信講座で受講していた"田辺由美ワインスクール"の校長先生だが、お会いするのは初めてで、挨拶をして名刺交換をさせていただいた。
田辺由美先生のお話しは、最近(ここ数年~十年)の最新ワイン事情。そんなお話の中から、いくつかをピックアップ!
会場の新高輪プリンスホテル
まず、ワイン業界の全体的傾向をざっと見渡すと、ニューワールド(※フランスやイタリア等の伝統あるワイン生産国以外の、オーストラリアやチリなどと言ったワイン新興国)のワインが増加している。例えば、イギリスでは、長らくフランスのワインの輸入量が第一位だったが、今はその地位がオーストラリアのワインに取って代わられている。伝統的なワイン生産国であるフランスでは、伝統的なワインを飲む人が減り、清涼飲料水やビールなどを飲む若い世代の人々が増え、テーブルワインなどを造る生産者がどんどん潰れている。そこで、フランスでは多くのワイン生産者達が、量から質へ、つまりテーブルワインから上級ワインへの転換を図っていると言うことだ。
当然ながら、ワイン醸造の技術もどんどん変わっている。伝統的な木樽の発酵から、ステンレスタンクの発酵へ移行した業者も増えつつある。温度管理がしやすい(と言う事は、品質管理がしやすい)からだ。発酵だけではなく、ぶどう栽培なども変革している。クローン・セレクションと言う方法によって、自分の畑の目的にあった苗木を接木して増やして行く方法が増加している。これには、15年もの歳月がかかると言われている。気の遠くなるような長期的な視野に立ったぶどう栽培法である。また、キャノピーマネジメントによって、表土より上にあるぶどうの樹木すべてのバランスを改造して、よいぶどうを作る理論も実践されている。葉の枚数、その位置に至るまで、理論によって決定される。ぶどうの樹の仕立て方法も変わっている。いずれにせよ、これも根気のいる作業だ。また、バイオ・ダイナミックと呼ばれる有機栽培も導入されている(注:これは、従来のオーガニック・ワインとは別)。
ワイン生産の経営方法も、どんどん変わっている。ワイン・コンサルタントと呼ばれる人が、ぶどう生産からワインの醸造、販売に至るまで一貫して指導するようなやり方が、目に付くようになった。ミッシェル・ロラン氏や、ミケール・トーレス氏と言った有名なワイン・コンサルタントが、世に認められるワインを作り出している。例えば。オノロジスト(醸造家)兼コンサルタントのミシェル・ロラン氏は、シャトー・ルパンを初め数多くの名ワインを生み出してきた。しかし、彼等がやっているのは、決して奇抜なことではなく、「伝統の流れの中で、その土壌にあったワインを造る最良の方法をセレクトした」結果に過ぎないと言う。それが優れたワイン・コンサルタントの腕なのだろう。
またワイン・コンサルタントの中には、フライング・ワインメーカーと呼ばれる人も出てきている。"空飛ぶワイン醸造家"とでも呼んだらよいのか。北半球と南半球は季節が逆なので、オーストラリアの"ワイン造り職人"が暇な時期に、欧州へ行ってぶどう栽培やワイン醸造を指導したり、手伝ったりする(その逆もあり)。そう言う人たちである。
ワイン業界では、他にも色々と時代と共に様々な変革が起こっているが、ここでは割愛。別の機会に、またご紹介しよう。
この田辺先生の講座の後、ワインショップの第一線で活躍しておられる大橋健一氏の面白い講演を聞き、ホテルで長い経歴を持つベテランの小飼一至のワイン・テイスティングを終えて、ブラッシュアップ・セミナーはすべて修了。終了証と、ワインエキスパート証カードをいただいて帰ったのである。
ワイン・エキスパート証
阪神タイガース優勝記念ワイン
今回ご紹介するリーズナブルなワインは、"VICTORY"と印字された阪神タイガース優勝記念ワイン、2,000円である。阪神が優勝して、様々な記念製品が発売された。車から洗濯機に至るまで、凄く幅が広い。阪神が優勝することによる経済効果は、巨人優勝以上かもしれない…などと思ったりする。
さて、今回ご紹介するワインは、けっこうきちんとしたワインである。過去、僕も記念的なラベルを貼ったワインを手に入れたことがあるが、そうしたワインの中には、バルクワインを使ったものもある。バルクワインとは、外国から安い大量のワインを樽やタンクで輸入して、国内でワインを調合して瓶詰めして売るワインのことである(しかし決して質が悪すぎると言うほどでもない)。こうしたワインは原価が安いので、記念品扱いでたくさん売れれば儲かる。しかし今回のワインは、ボルドーのシャトーもののワインに"VICTORY"のラベルを貼っている。かなり良心的だと言えるだろう。ワインは、シャトー・ラコンブ(以前、僕はシャトー・ラコンブ・ノイヤックを飲んだことがあるけど、関係あるのかな?)。典型的なボルドータイプのワイン。阪神ファンが優勝を祝って、焼き肉パーティーをする時にはもってこいのワイン。
ちなみに私は、阪神ファンではない…スワローズファンである。つい珍しいので、衝動買いしてしまった。この際、阪神を飲み干してやろうかな(笑)。このワイン、当然期間限定ものなので、阪神ファンは買うなら今しかチャンスはありませんぞ!
(裏のラベル)
参考データ:/フランス・ボルドー地方 ぶどう品種・カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー種
価格 2,000円
映画"この一本!"34 「アタック・ナンバーハーフ」
さてこのコーナーでは、隠れた名作映画を毎月一本づつ紹介していきます。賞を取ったのに興行成績が惨敗だった映画とか、一般には知られていないがカルト的に人気のある映画とか、海外では大ヒットしたのに日本でこけてしまった映画とか-いま一つ日の目を見ない不運な映画を取り上げていきます。
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昨年、ワールドカップと並行して、"少林サッカー"が大ヒットしてロングランとなったのは記憶に新しい。僕は仕事に追われて映画館で見ることができなかったので、ビデオかDVDを借りて見ようとしたのだが、ずっと貸し出し中で数ヶ月もの間借りることができず、結局DVDを買ってしまった。ここまで借りられなかった作品は、少林サッカーが初めてである。今、アジアの映画が元気がいい。昔は、世界市場で通用するのは香港のアクション映画がメインだったが、最近は恋愛ものから、歴史ものまで色んなジャンルのアジア映画が、世界で認められている。国も、韓国、中国、台湾、インドと幅広い。とりわけ少林サッカーのようなコメディー映画が受けたのが、個人的にとてもうれしい。何故ならコメディー映画と言うのは、他のジャンルの映画より作るのがとても難しいとされているからだ。少林サッカーは、フィクションのハチャメチャなお馬鹿映画だったが、笑える映画だった。大ヒットも頷ける。少林サッカーほどのヒットはしなかったものの、実話を元にした優れたアジアのコメディーが2000年に公開された。タイの映画"アタック・ナンバーハーフ"である。
Imaged by JOLLYBOY
ストーリーは、ゲイ(※オカマorニューハーフ)の登場人物達が、偏見と闘いながら、バレーボールのチームを作って、勝ち進んでいったと言う実際の出来事に基づいている(ネタバレになるので、最後まで勝てたかどうかはここでは書きません)。バーレボールチームの監督はオナベ(※オカマの女性版)で、チームの中でストレート(※オカマでは無い人)の選手は一人で、後は全部ゲイの選手。そうしたチームメイト同士の葛藤や諍い、社会の偏見と言ったものと相対しながら、チームは一つになっていく…。
監督のヨンユット・トンコントーンはストレートだが、本当にゲイの気持ちを理解しているような作品となっている。これは、脚本家のV・ブンガーンジャナーが丁寧に描写をしたのと、監督が何ヶ月もかけてゲイのライフスタイルを徹底的に調べた結果なのである。なので、社会的にマイノリティであるゲイの孤独や悲しみ、怒り、喜びと言うものが、しっかりと表現されている。この映画の登場人物は、創作の三名を除き、すべて実在の人物。だから、演じる俳優たちも真剣に役作りに励んだ。役者は一人を除き全員ストレートなのだが、映画を見た人が役者をゲイと思い込んでしまうぐらいしっかりと演じている。クライマックスのバレーボールのシーンでは、俳優たちが実際にプレイしているのだが、その頃には本当にバレーボールが上達したそうだ。それもそのはず、実際に国体のコーチがついて特訓し、俳優たちはアザが耐えなかったと言う。
こうしてできた作品は、コメディを基調としながらも、生きる上で大切なものをしっかりと伝える硬派な作品に仕上がっている。作品のエンド・ロールで、実際のチームの選手たち(つまり本物たち)のテレビでのインタビューシーンが流れるのだが、これが本当に映画の中の俳優たちにそっくりで、これにも驚いた…。ただ一つ疑問なのが、"アタックナンバーハーフ"と言う放題。お気付きの通り、有名な日本のアニメのタイトル"アタックナンバー・ワン"からいただいた題名…これが良いんだか、悪いんだか、評価の分かれるところかな…。
趣味の部屋(ビークル&アウトドアー&エトセトラ)
"キュウリと枝豆を育てる・その2"
この夏、キュウリと枝豆を育てた。しかし、ほとんど晴れの日がない冷夏が続き、キュウリの葉がうどん粉病でやられてしまう。無農薬栽培を目指していたが、これは如何ともし難く、うどん粉病用の薬剤を買ってきて散布した。しかし、冷夏は7月いっぱい続き、8月に入ってからも太陽が出ず、再びうどん粉病が発生。結局、どの株も枯れてしまい、全滅。残念。
うどんこ病でやられた葉
さて、残るは枝豆。枝豆は、それなりに順調に育って、豆を5~6房付け始めていたが、気がついたら葉がボロボロに食われていた。うまく枝にカムフラージュした芋虫が、2匹もいて、葉がほとんど食われてしまった。う~ん、チョウチョもあなどれず…。
枝 豆
結局、冷夏の日照不足もあって、せっかく育ちちつつあった房もダメになり、枝豆も全滅。その後、種を植えなおしたが、季節的に間に合わずにうまく育たなかった。地道に労したのに、結局実りゼロ…。昨年のイチゴとトマトに続いて、キュウリと枝豆も失敗…悔しい。こんな冷夏だと、農家もたいへんだろうな。来年は、どうしようかなぁ。
今月号の引用・参考文献:
ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本
(日本ソムリエ協会)
日本ソムリエ協会 教本/2003年度版 (日本ソムリエ協会)
基礎ワイン教本/WSET編 (柴 田 書 店)
田辺由美のワインブック (飛 鳥 出 版)
田辺由美のワインノート (飛 鳥 出 版)
ワインの科学/清水 健一 著 (講 談 社)
ヒュー・ジョンソンの楽しいワイン (文 春 文 庫)
ワインベストセレクション260/浅田勝美監修 (日 本 文 芸 社)
世界ワイン大全 (日経BPムック)
ワインの世界史 (中 公 新 書)
ワイン・カタログ/ナヴィ・インターナショナル編 (西 東 社)
ボルドー/ワインの宝庫を訪ねて (日 経 B P 社)
ブルゴーニュ/ワインとグルメの歴史にひたる (日 経 B P 社)
ソムリエを楽しむ/田崎真也 (講 談 社)
ワインものがたり/鎌田 健一 著 (大 泉 書 店)
今日からちょっとワイン通/山田 健 著 (草 思 社)
私のワイン畑/玉村 豊男 著 (扶 桑 社)
夢 ワ イ ン/江川 卓 著 (講 談 社)
永井美奈子のベランダでワイン (主婦と生活社)
ワイン この一本/戸部民夫・清水靖子編著 (毎 日 新 聞 社)
ワイン用葡萄ガイド/ジャンシス・ロビンソン (WANDS)
ワインの教室 (イカロス 出 版)
ワインついしゃべりたくなる博学知識 (河出書房新社)
オーケストラワインショップWeb配信ニュース
アタックナンバー・ハーフ関連ホームページなど
聖書の言葉
「主よ、わたしの言葉に耳を傾け、つぶやきを聞き分けてください。わたしの王、わたしの神よ、助けを求めて叫ぶ声を聞いてください。あなたに向かって祈ります。主よ、朝ごとに、わたしの声を聞いてください。朝ごとに、わたしは御前に訴え出て、あなたを仰ぎ望みます。」 (詩篇5篇2~4節)