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 vol.51 2002年冬号

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JOLLYBOYのワインハウス

21.ワインの雑学Ⅱ「お酒の法律と酒神の関係」

 さてさて、ワインには健康に良い面があるとあちこちで言われています。ワインが生まれたばかりの時代、脂肪のしつこい羊肉を食べていたオリエントの人々にとって、体内に吸収されて塩基性に働くアルカリ飲料のワインは、優れた保健飲料だったでしょう。現在でも、ワインの各種ポリフェノールが体に良いことが、研究によって分かっています。
 とは言うものの、良い面ばかりでなく、悪い面も当然あります。ワインも他の酒と同様に、やはりアルコール飲料だと言う事です。飲み方によっては、凶暴・粗野な衝動をもたらすこともあります。過去から現在にいたるまで、アルコールのもたらす悪い面は人類にとって問題でした。そこで、法律によって飲酒を厳しく規制するようになります。
 有名なのは、あのハンムラビ法典。ワイン商は、酔い癖の悪い者、酔って騒がしい者にワインを売ることを禁じただけでなく、ワイン商のワインの販売量自体も規制され、違法行為は厳罰に処されました。
 またハンムラビ法典では、神殿に仕える女性がワインを売買することを禁じています。当時のワインは民衆にはまだまだ希少・貴重品で、神殿に献上されるような飲み物でした。ところが本来献上物を売買できない神殿の神官や僧侶が、身内の女性や寺院の女性を使って売買させ利益をあげる(つまり献上物の闇流し)という不正・腐敗が横行しました。これを法律によって一掃しようとしたのです。
 ところがいくら法で規制しても、法の網をくぐり抜ける輩というのはどの時代にもいるものです。そこで、人類はいつとはなしに酒の神様を創り出しました。法律の力よりも宗教の力を借りた方が、古代の人々を律しやすかったのでしょう。有名なギリシャのディオニソスやローマのバッカスを初め、エジプトのオシリス、アッシリアのゼイストロス、トラキアのサバジオスなどの酒神が酒と人を律していくことになります。実はこれらの酒神は別々に発生したものではなく、オリエントで発生したディオニソス信仰がベースになっていて、各地方に広がっていくごとに各呼び名が命名されていったと考えられています。ワインと同様に、酒神も「喜び」と「恐怖」の二面を持っていて、一定限度までは楽しいが、度を超えると苦しみを与えるという性質を現しています。
 現在の私たちは、アルコールの功罪を科学的に知っています。人の創り出した酒神の力を借りずとも、ワインを楽しく飲めるはずです。過度に飲んで暴れたりして、現代版ハンムラビ法典のお世話にならないように気をつけましょう!



ヴァルポリチェッラ・クラシコ ヴァルポリチェッラ・クラシコ

 さてさて、今までこのコーナーでは、世界の様々な名ワインをご紹介してきた。しかしワイン愛好家であってもなくても、いつも高価なシャンパンや何万円もするワインを飲めるわけではない。そこで2002年度は、手ごろな価格(1,000~2,000円程度)で、しかも良質なワインをご紹介していこう。
 で、2002年最初にご紹介するのは、「ヴェローナの王子」と言われるイタリアの"ヴァルポリチェッラ"。ちょっと言いにくいワインかもしれないが、とても良くできたワイン。このワインの生産地の中心は「ロミオとジュリエット」の舞台となったヴェローナ。このヴェローナの北部の村々で、コルヴィーナ・ヴェロネーゼ種の葡萄プラス数種の葡萄で、軽快で爽やかな赤ワイン"ヴァルポリチェッラ"が作られているのだ。ちなみに"クラシコ"とは、昔から伝統的にこのワインを作り続けてきた村の、特定ぶどう畑のぶどうを原料としているヴァルポリチェッラである。
 この"ヴァルポリチェッラ"は、初代ローマ皇帝に愛されたワインと言われている。そんなワインが、1,000円~1,500円ほどで買えるのだから、うれしいかぎりだ。ローストした肉や鳥料理にも合うし、僕はミートソースのパスタやチーズたっぷりのピザなどでも飲んでしまう。イタリア料理を食べに行って、予算に困ったら頼んでみたらどうだろう。店でも、2,500円程度で飲めるはずだ。僕の好きなよく買う赤ワインの一本で、お薦めです。


参考データ:ぶどう品種/コルヴィーナ・ヴェロネーゼ種 イタリア・ヴェネト州ヴェローナ
      価格 1,500円 (750ml)

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映画"この一本!"27 「バグダッド・カフェ」

 さてこのコーナーでは、隠れた名作映画を毎月一本づつ紹介していきます。賞を取ったのに興行成績が惨敗だった映画とか、一般には知られていないがカルト的に人気のある映画とか、海外では大ヒットしたのに日本でこけてしまった映画とか-いま一つ日の目を見ない不運な映画を取り上げていきます。

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 新年に相応しい、暖かなで希望のもてる隠れた名作ということで、今回"バグダッド・カフェ"を取り上げます。
 この映画が作られたのは1987年、日本で公開されたのは1989年。世界的にそこそこヒットし、主題曲「コーリング・ユー」と共にサウンド・トラックもヒットした。とは言うものの、世界の主要な映画祭の賞とは無縁で、メジャーなヒットと言うよりはカルト的人気を博している映画。公開当時、僕も口コミで「良い映画だ」と聞いていたのだが、仕事が忙しくて時間がなくて、しばらくしてビデオで見た。ところが一度見るや感動してしまい、DVDを購入して今も度々見返している。これをまだ見ていない人にお薦めしたくて、今回取り上げてみました。
 この映画の舞台は、アメリカのモハーヴェ砂漠の真ん中、ラスベガスとロスを結ぶハイ・ウェイ沿いの寂れたモーテル兼カフェ"バグダッド・カフェ"。しかし、この映画を撮っているのは、ドイツ人監督のパーシー・アドロン。ドイツ人がイメージしたアメリカの田舎の風景…この映像が美しい。フィルターのかかったような空の色、錆色の地平を吹き抜ける寂しげな風…。登場人物も、太っちょドイツ女優のマリアンネ・ゲーゼブレ、英国領ギアナ出身女優のCCH・パウンダー等、個性派俳優達。美男・美女達は登場しないが、次第に映画の世界に魅きこまれていく…。

バグダッド・カフェImaged by JOLLYBOY

 で、ストーリーはと言うと、ハイウェイ脇のバクダッド・カフェにドイツから来た太った女性ジャスミンがやってくる。この女性は、アメリカ観光中に亭主とケンカしてここへ辿り着いた。カフェの主人ブレンダも、ダメ亭主を追い出して一人で店を切り盛りしている。カフェには、怪しげな客たちがたむろっていて、ピアノばかり弾いている息子、遊んでばかりいる娘…達が、ブレンダをイライラさせる。店を勝手に手伝ったジャスミンとブレンダは衝突するが、次第に友情が芽生えていく。
 場面場面で流れる悲しげな"コーリング・ユー"の歌、カフェに泊る青年が大空に投げるブーメランの音、紫色の地平。次第に怪しげに見えていた客たちが、素晴らしいハーモニーを見せ、魅力的に見えていく。何気ないストーリーと場面場面の積み重ねが、次第に暖かな感動を生み出していく…。
 新年お時間があったら、ぜひお薦めの一本です。







ビークル&アウトドアー&エトセトラ "富士山について考える"

 さて、初夢と言えば「一鷹、二富士、三茄子(なすび)」と言うくらい、日本人は「富士山」が好きである。いつぞやラジオで、富士山が見える「理論上」最も遠い地点で富士山を撮影した人の話を聞いた。現代は大気汚染のせいで、東京から富士山が見える日数は、江戸時代の数分の一に減ってしまったらしい。私の住む草加では、けっこう晴れれば富士山が見えるが、果たしてどのくらいの日数が見えるのだろう。2002年度は、その日数を数えてみたいと考えている。

寝室から見える富士山 うちの寝室から見える富士山

 ちなみに富士山のデータ。標高3,776メートル。火口の直径は、約800メートル。1707(宝永4)年の噴火で中腹に宝永山ができ、以後活動を中止している。五合目までは、自動車道が通じている。ゴミが多くて汚いため、世界文化遺産からもれてしまったのは悲しい…。僕は子供時代に両親と頂上へ昇ったが、その頃すでにゴミがいっぱいだった。



今月号の引用・参考文献:
ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本
                        (日本ソムリエ協会)
基礎ワイン教本WSET編             (柴 田 書 店)
田辺由美のワインブック              (飛 鳥 出 版)
ワインの科学           清水 健一 著  (講  談  社)
ヒュー・ジョンソンの楽しいワイン         (文 春 文 庫)
ワインベストセレクション260 浅田 勝美 監修 (日 本 文 芸 社)
世界ワイン大全                  (日経BPムック)
ワインの世界史                  (中 公 新 書)
ワイン・カタログナヴィ・インターナショナル編    (西  東  社)
ソムリエを楽しむ田崎真也              (講  談  社)
ワインものがたり         鎌田 健一 著 (大 泉 書 店)
今日からちょっとワイン通      山田 健 著  (草  思  社)
私のワイン畑           玉村 豊男 著  (扶  桑  社)
夢ワイン              江川 卓 著  (講  談  社)
永井美奈子のベランダでワイン            (主婦と生活社)
ワイン この一本     戸部民夫・清水靖子編著 (毎 日 新 聞 社)
ワイン用葡萄ガイド    ジャンシス・ロビンソン   (WANDS)
ワインの教室                   (イカロス 出 版)
ザ・ムービー 1987年              (ディアゴスティーニ)
バクダッド・カフェ                (日本コロムビア)
大 辞 泉                    (小  学  館)


聖書の言葉

「主よ、わたしに耳を傾け、答えてください。わたしは貧しく、身を屈めています。
 わたしの魂をお守りください。わたしはあなたの慈しみに生きる者。あなたの僕をお救いください。
 あなたはわたしの神、わたしはあなたに依り頼む者。」   (詩篇 86章1,2節)