Vol.48 2001年10月号
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18.ニュージーランドのワイナリー訪問記
9月に新婚旅行でニュージーランドに行って来ましたが、その内の一日(27日)を使ってワイナリーツアーに行きました。念願の海外のワイナリーツアー。えっ?ニュージーランドのワイン?と、思われた方もいるのではないでしょうか。しかし、近年フランスやイタリア以外のワインも非常に評価が高いのです。アメリカ、オーストラリア、南アフリカ等々。ニュージーランドのワインも、そうした評価の高まっているワインの一つです。
シドニーから派遣された聖公会牧師が、1819年に北島のケリケリに100種類余りのぶどうの苗を植えたのが始まりとされています。1960年代後半から近代的なワイン醸造が始まりました。1975年には、ニュージーランドワイン協会が創立されています。現在、温暖な北島から冷涼な南島まで、ワインが造られています。
ワイン・トレイルバス
今回訪れたワイナリーは、南島のクィーンズ・タウン郊外のワイナリー。この地区はオタゴ(Otago)地区と呼ばれ、世界で最も南側の地区です。北海道と同じ緯度の地域を想像していただくと、いかに寒冷な地区かがお分かりいただけるかと思います。この地区で初めてワインが造られたのは120年前ですが、商業目的の生産は近年開始されたばかりです。
僕らが参加したワイナリーツアーは、ワイン・トレイルと呼ばれるツアー。写真上のマイクロバスに乗り出発。運転手は、どことなくジョージ・クルーニーを彷彿とさせるジョンさん。乗客は、初老のオーストラリア人夫妻。同じくオーストラリアから来た若い女の子二人。アメリカのアトランタから来た友人同士の婦人二人。地元ニュージーの若いカップル。そしてフィンランドから来た若い男性一人(名前はヨーニンさんだったと思う)。日本人は、僕ら二人のみ。もちろん、ツアーの間はすべて英語のみ…(^_^;;)。小雨の降る中、運転手+乗客の計12人を乗せたバスは、ワイナリーへ向かった。
ギブソン・バレーのワイン・カーブ
最初のワイナリーは、ギブソンバレーと呼ばれるワイナリー。地下の巨大なカーブ(ワイン貯蔵用の洞窟のこと)に案内され、ワインの説明を受ける。そしてワインのテイスティング。一杯目のワインが、ピノ・グリ。今日初めて飲むワイン。よくできたワインだ。二杯目がシャルドネ。とてもドライだが香りはハニー。三杯目が、ピノ・ノワール。若いせいか、とても茎っぽい味。四杯目が、ソービィニョン・ブラン。こちらは、ちょっと藁(わら)っぽい感じ。四杯のテイスティングを終えてからカーブを出て、地上のレストランで昼食。ツアー客全員でテーブルを囲み、料理を食べながら談笑。僕も、慣れない英語を駆使して会話に参加。みんな別々の国から参加しているので、立場は一緒。気楽に話ができた。
ウェントワース・エステート 受賞の数々
次に訪れたワイナリーは、ウェントワース・エステート。小さな家屋風のシャトーに入ると、迎えてくれたのは若い農場主。店内の壁は一面、ワイン・コンテストの受賞の賞状や楯やトロフィーが飾られている。賞状の数、実に数十枚!
で、一杯目のテイスティングはソービィニョン・ブラン。やはり藁っぽい。二杯目が、シャルドネ。やはりドライ。三杯目が、ピノ・グリ。四杯目が、リースリング。とても、フルーティ。五杯目が、ピノ・ノワール。やはり茎っぽい。どれも、よくできたワイン。数々の受賞も頷ける。ほろ酔い気分の中、次のワイナリーへ。
チャード・ファーム
三番目に訪れたワイナリーは、チャード・ファーム。今回訪れたワイナリーの中では、最も大きなシャトーを持ち、最も近代的な設備を持っているように見受けられた。今回、説明してくれた方は、先ほどとうって変わって年輩の男性。テイスティングのワインは、一杯目がリースリング。とってもフルーティ。二杯目が、ソーヴィニョン・ブラン。三杯目が、シャルドネ。四杯目が、ピノ・ノワール。しかし赤ではなく、ロゼである!珍しいピノ・ノワールのロゼ。今日初めて飲むロゼ。少しスィートで、飲みやすい。余韻を楽しみつつ、チャード・ファームを後にする。
タラメア・ワイン・メーカーズ・センター 熱心な説明
アロー・タウンでトイレ休憩を取った後、最期に訪れたワイナリーが、タラメア・ワイン・メーカーズ・センター。ここのワイナリーの家屋は、シャトーと言うより小屋に近い。ここで説明に立ってくれたのは、若い農園主。彼の説明は、とても熱が入っている。ワインにかけた情熱が、言葉と態度から伺える。葡萄の生成域の南限での、ワイン造りの厳しさが伝わってくる。こんな寒冷な極限地で葡萄が育つ要因に、マイクロ・クライミット(※微小気候のこと)による比較的暖かい風土、丘の南面に葡萄を植えていること、そして何よりもストラグル(※奮闘努力のこと)があることを、熱く語った。そして付け加えて、政府のポリシー(※おそらく農業政策のこと)のお陰だと(そこで一同笑い。半分ジョークか…)。色んな意味で、南限のワイナリー経営の難しさを実感させる。アトランタから来た婦人が、農園の青年の肩を叩いて励ましていた。
で、一杯目のテイスティングがシャルドネ。二杯目が、カベルネ・ソーヴィニョンとメルローのワイン(比率は75%vs25%)。今日初めて飲む、ボルドー・タイプのワイン。三杯目が、シラーのワイン。フランスのハーミタージュやオーストラリアなどの一部の地域で作られている珍しいワイン。これも、今日初めて飲む種類。石っぽさが際立っている、力強いワイン。最期に飲んだのは、リースリング。ここのリースリングはとても良くできている。マイクロクライミットと特殊なバクテリアが作り出す葡萄から作られたワインは、とてもフルーティーでコクがある。このワインを一本買って帰りました。
初春のぶどう畑
ちなみに、肝心の葡萄畑の方はどうだったかと言うと、まだ冬から明けたばかりの初春なので、上の写真の通り、葉の一枚も生えていない。夏の青々とした情景、秋に葡萄がたわわに実った情景などを思い浮かべながら、ワイナリーを後にしました。一日で19杯もワインを飲んだので、かなりフラフラになってしまいましたが。
ワイン・デリ ロブさん
さて市内に戻ってから、リカー・ショップへ行きました。ここは、2日前に訪れていて2回目の訪問です。店の名前は、ワイン・デリ。店主は、ロブ・スピンクスさん。彼の娘さんは、さきほど紹介したワイナリー、チャード・ファームへお嫁さんに行ったそうです。ここで、一本のロゼワインを購入。タラメアで購入したリースリングも包んでもらいました。とても、親切でワイン好きなロブさんです。
リマークブル・リースリング
先ほど紹介したタラメア・ワイン・メーカーズ・センターで購入したリースリング。フルーティーでスィート、そしてコクがある。特殊なバクテリアとマイクロ・クライミット、そして奮闘努力によって作り出されたワインである。
参考データ:ぶどう品種/ピノ・ノワール種 価格 1999年 35Nドル(ハーフボトル/375ml)
ブラン・ド・ピノノワール
ロブさんのワイン・デリで薦められて購入した。ピノ・ノワールのロゼ。今回のワイナリー・ツアーで、初めてピノ・ノワールのロゼを飲んだが、とても良くできていた。このロゼも楽しみ。
参考データ:ぶどう品種/ピノ・ノワール種 価格 2001年 42Nドル
映画"この一本!"24 「未来世紀ブラジル」
さてこのコーナーでは、隠れた名作映画を毎月一本づつ紹介していきます。賞を取ったのに興行成績が惨敗だった映画とか、一般には知られていないがカルト的に人気のある映画とか、海外では大ヒットしたのに日本でこけてしまった映画とか-いま一つ日の目を見ない不運な映画を取り上げていきます。
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大ヒットしたわけではないが、未だにカルト的に人気のある映画。それが、この「未来世紀ブラジル」(原題は単に"BRAZIL")。監督は、あのテリー・ギリアム。「あの」テリー・ギリアム…と言われても、誰のことやら知らない人もいるかも知れませんが、彼は「あの」"モンティ・パイソン"シリーズのシュールなアニメーションを作っていた人なのです。モンティ・パイソンのビデオを全巻揃えた僕にとって、かけがえのないアニメの偉大な先人なのです(もっとも、造られたアニメは馬鹿馬鹿しいもののオン・パレードなのだが…。とにかく、シュールでナンセンスの連続)。彼は、「バロン」や「12モンキーズ」も監督しています。
で、この「未来世紀ブラジル」なのだけれど、南米ブラジルとは実際には何の関係もない。近未来の管理社会の国家。コンピュータのミスによりでたらめな当局の陰謀で、とある女性が消されようとしていることを知った主人公の奮闘。しかし、彼もまた管理社会の中に、どっぷりと浸かっていたのだった。不条理な世界の中で、現実と空想の間を彷徨う主人公…。ジョージ・オーウェルの「1984年」を彷彿とさせる世界観。
Imaged by JOLLYBOY
この映画の主人公は、ジョナサン・プライスだが、要所に若いロバート・デ・ニーロが出ている。これから見る人は、要チェック。またこの映画は、一シーン、一シーンをとても大切に作っている感じがする。一コマ、一コマに命をかけていたアニメ出身監督ならではという感じ。
そして、なんと言っても監督の感性が素晴らしいのは、ラストの重々としたしーんで、明るい陽気なサンバミュージック"ブラジル"がBGMに流れること。このミスマッチとも思える選曲が、シーンにピタリとはまってしまうのだ。こういう音楽の使い方をしたのは、テリー・ギリアムが最初だと思う。僕の大好きな映画の一本。
ビークル&アウトドアー&エトセトラ
"プロポリス・スロート・スプレイ"
ニュージーランドに行った時、飛行機に片道10時間以上乗ったり、一日中バスに揺られたりしていて、そのエアコンのせいで喉が乾燥して痛めてしまった。喉が痛いままミルフォード・サウンドに行った時、たまたまフェリーの席で一緒になったカップルに偶然プロポリスのスロート・スプレイを教えていただいた。お借りして喉に何回か吹きかけると、喉がすごく楽になった。
そこで、クィーンズ・タウンに戻ったから、ドラッグショップでこのスプレイを買った。旅の間のバス移動や、帰路の飛行機は、このスプレイのお陰でたいへん楽だった。喉の弱い僕にとって、長距離の飛行機移動などには、重宝しそうである。
引用・参考文献:
ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本
(日本ソムリエ協会)
基礎ワイン教本WSET編 (柴 田 書 店)
田辺由美のワインブック (飛 鳥 出 版)
ワインの科学 清水 健一 著 (講 談 社)
ヒュー・ジョンソンの楽しいワイン (文 春 文 庫)
ワインベストセレクション260 浅田 勝美 監修 (日 本 文 芸 社)
世界ワイン大全 (日経BPムック)
ワインの世界史 (中 公 新 書)
ワイン・カタログナヴィ・インターナショナル編 (西 東 社)
ソムリエを楽しむ田崎真也 (講 談 社)
ワインものがたり 鎌田 健一 著 (大 泉 書 店)
今日からちょっとワイン通 山田 健 著 (草 思 社)
私のワイン畑 玉村 豊男 著 (扶 桑 社)
夢ワイン 江川 卓 著 (講 談 社)
永井美奈子のベランダでワイン (主婦と生活社)
ワイン この一本 戸部民夫・清水靖子編著 (毎 日 新 聞 社)
ワイン用葡萄ガイド ジャンシス・ロビンソン (WANDS)
ワインの教室 (イカロス 出 版)
戦後生まれが選ぶ洋画ベスト100 (文 春 文 庫)
聖書の言葉
「平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる」。(マタイによる福音書 5章9節)