JOLLYBOY'S NEWS JOLLYBOY TIMES
 Vol.46  2001年8月号

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ピーナッツ・シリーズ探検隊 (最終回)

8.チャーリー・ブラウンと赤毛の女の子

 さて、今回でこのシリーズも最終回を迎えることとなりました。最後はやはりこの人、チャーリー・ブラウンを取り上げないわけにはいかないでしょう。
 人には誰でも、青春時代にかなわなかった異性への想いや、破れてしまった恋のほろ苦い思い出の一つや二つあることと思う。ピーナッツの世界では、恋が成就することは絶対ない。ルーシーの求愛はシュローダーに受け入れられることはないし、サリーの想いはライナスに届くことはないのだ。そしてかなわない恋の象徴が、チャーリー・ブラウンなのである。
 チャーリー・ブラウンは、赤毛の女の子に恋をしている。しかし、当の赤毛の女の子は彼の存在すら知らない。チャーリー・ブラウンは、校庭のベンチで一人昼食のピーナッツ・バターサンドを食べながら、赤毛の女の子との会話を空想する。木の後ろでチラチラと赤毛の女の子を見ながら、赤毛の女の子のことを想う。しかし、チャーリー・ブラウンのこの切なる想いは、決して彼女に届くことはないのだ。
 何故、チャーリー・ブラウンの想いは、赤毛の女の子に届かないのか?理由は二つ考えられる。第一に、シュルツがプロの漫画家だからである。願いがかなわないからこそ、読者はそれに共感し、また笑ってくれる。もし想いが届いたら、ハッピーエンドになり、物語はそこでストップしてしまうのだ。プロであるシュルツは、話のストリングを決して緩めることはない。
 第二に、赤毛の女の子への想いは、作者シュルツ自身の心の投影なのである。彼は若き日に、ドナと言う赤毛の女の子と付き合っていた。しかし、彼女は二人の男性の間で心が揺れ動いていた。一人はまだ売れていない漫画家のシュルツ、そしてもう一人は消防士のアル。ドナは、消防士アルを選ぶことを決心し、シュルツに別れを告げる。彼女との結婚を考えていたシュルツにとって、それは消し難い大きな心の傷、痛手となった。赤毛の女の子は結婚し、シュルツの想いは永遠に彼女に届くことはないのだ。
 多くの読者は、チャーリー・ブラウンの想いが届くことを願うかもしれない。しかし、それは決してかなわない。チャーリーが、決して野球の試合で勝つことがないように。決して、凧上げに成功しないように。決して、ルーシーからフットボールを蹴れないように、恋も成就しない…決して。しかしチャーリー・ブラウンとピーナッツの仲間たちはめげることなく、何度もトライし続けていくことだろう。彼らは、暗黙の内に読者にこう訴えている。「あなたは、あるがままでいいじゃないか。転んだって、失敗したって、どうってことないさ。また、やり直せばいいよ。きっと必ず、いい思いができる日が来るからさ!」。
 シュルツは、ピーナッツの連中を子供のように愛し、50年間も描き続け、そして静かに幕を下ろした。


ピーナッツ・グッズ 8 "ピーナッツの記録"

 紹介したいピーナッツグッズはいくらでもあるだけれど、今回最終回なので、自作した"ピーナッツの記録プレート"をお見せしたい。シュルツ氏死去の報を伝える新聞記事、ピーナッツ最後の回のスヌーピーが"さよなら"を伝える漫画、ピーナッツの音楽を作った後亡くなったピアニスト・ガラルディのパッケージ、そしてピーナッツキャラクターたちで構成した世界でたった一つの自分だけの記念プレートである。額に入れて、パソコンの横に飾ってある。彼のような、素晴らしい作品を作れたらどんなに良いだろう、とこの額を見るたびに思うのである

ピーナッツの記録プレート ピーナッツの記録プレート

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映画"この一本!"22 「最前線物語」

 さてこのコーナーでは、隠れた名作映画を毎月一本づつ紹介していきます。賞を取ったのに興行成績が惨敗だった映画とか、一般には知られていないがカルト的に人気のある映画とか、海外では大ヒットしたのに日本でこけてしまった映画とか-いま一つ日の目を見ない不運な映画を取り上げていきます。

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 8月と言うと、嫌でも過去の戦争と向き合わねばならない。先月に引き続き、戦争映画を取り上げる。有名な戦争映画と言うと、"史上最大の作戦"や、最近では"プラトーン"や"シン・レッドライン"、"プライベート・ライアン"など、大作やメジャーな作品がたくさんある。今回、取り上げるのは"最前線物語(原題:THE BIG RED ONE)"。1980年の作品だが、ロードショーでご覧になった方はあまりおられないのではないだろうか。事実、本国アメリカでも、日本でも、年間ベストテンには入っていない…。
 監督は、サミュエル・フラー。1911年生まれのフラーは、16歳で記者になり、殺人事件や人種差別などアメリカ社会の矛盾と向き合う。第二次大戦では、陸軍歩兵として北アフリカからヨーロッパ戦線を転戦し、ノルマンディー上陸作戦を初め、数々の最前線の修羅場を生き残る。フラーは映画監督デビューから低予算映画ばかり20本近くこなしていたが、70歳を目前に「最前線物語」で正当な評価を得ることとなった。軍曹を演じるのは、名優リー・マービン、若い兵士の一人を演じるのは、スター・ウォーズのルーク役のマーク・ハミル。
 映画の内容はというと、第二次大戦下、最前線の激戦地を転戦するベテラン軍曹と4人の若い兵士の物語。軍曹は、戦場でいかに生き残るかを若い兵士に叩き込む。ヒロイズムもロマンもない、完全な狂気の組織化である(それは、フラーが正に激戦の最前線で体験したものだった)。元ジャーナリスト、元兵士として、彼ほど戦場を冷徹に見れる監督はそういないだろう。

最前線物語Imaged by JOLLYBOY

 彼が撮る映画はヒロイズムを徹底的に排除して、リアリズムを追及した結果、赤狩りマッカーシー旋風が吹き荒れた時代には、共産主義者呼ばわりされもした。だいたいお金のかかる大作の戦争映画となると、「自国の戦争を聖戦化・肯定化する映画」や「軍隊に入りましょう調宣伝映画」になってしまう。それは、洋の東西を問わずそうした傾向があり、物語の中に英雄を誕生させたり、ストーリーを感動的に仕上げようとする。フラーのように、戦場にはヒーローはいないし、敵を人と思わずただ殺して生き残るだけ、というリアティー描写をした監督はあまり多くない。彼は、本国アメリカより、ゴダールやトリフォー、ヴェンダースといったヨーロッパの才人からリスペクトされている。スコセッシ監督も、フラーのリアリズムに魅せられた一人だ。僕もこの映画が気に入って、DVDを買ってしまった。



ビークル&アウトドアー&エトセトラ

"お台場で余暇を過ごす"

 7月に、ゆりかもめに乗ってお台場公園付近に行った。いつもは、雑誌やインターネットである程度調べてから行くのだが、今回は何の下知識もなくいきなり行ってみた。しかし、それが良かったようだ。大観覧車やフジテレビの球形展望台や自由の女神ぐらいは知っていたが、他にも色々な面白い場所があった。
 中でも気に入ったのが、ヴィーナス・フォート。何にも知らないまま、中に入ってびっくり。どうせデパートかなんかだろう、と思っていたら、なんとまあ…。建物の中が文字通り街になっていて、一件一件の店がヨーロッパの建築を思わせるような作りで、広場や噴水があったり、空の色さえ変わるのである。店も、服飾だけでなく、手ごろなレストランやバラエティショップなど、飽きがこない。最も驚いたのが、ヒストリー・ガレージ。何気なく通りの奥を除いたら、メッサー・シュッミットが目に入った。おお、おしゃれなディスプレーだな、などと思って近づいたら、僕の大好きなトヨタ2000GT(※2300GT)やフェラーリ・ディノ246を初め、世界の数々の名車がずらり!まったく予期していなかったので本当にびっくり。そればかりでなく、様々な車関連のグッズも販売されていて、目の毒。ああいう名車を見たかったら、富士の博物館に行かないと難しいのに、突然お台場で見れてうれしい限り。しかも、無料だった。
 休日の余暇に、(一見バブリーだが)ほとんどお金をかけずに一日中楽しめた。また行ってみたいのである。 


トヨタ2300GT トヨタ2300GT(ヒストリー・ガレージにて)



引用・参考文献:

ピーナッツ・シリーズ旧刊/1~35,37~39,42~48,51,52,54,55,72
                      (ツルコミック&角川)
ピーナッツ・シリーズ新刊全26巻         (角 川 書 店)
スヌーピーと生きる/チャールズ・M・シュルツ伝
     リタ・グリムズリー・ジョンスン著   (朝 日 新 聞 社)
スヌーピーと仲間たちの心の時代/広淵 升彦 著  (講  談  社)
スヌーピーたちの性格心理分析/A.J.ツワルスキー著  (講  談  社)
知ってるつもり・チャールズ・M・シュルツ     (日 本 テ レ ビ)
朝日新聞・チャールズ・M・シュルツ死亡記事
映画・スヌーピーとチャーリー/スヌーピーの大冒険
ピーナッツTVシリーズ・ビデオ
OH! GOOD GRIEF!/VINCE GUARALDI        (ワーナー・ブラザース)
A Charlie Brown Christmas/Vince Guaraldi Trio  (スター・バックス)
LINUS & LUCY/THE MUSIC OF VINCE GUARALDI/George Winston
                         (Fun House)
最前線物語             (ワーナー・ホーム・ビデオ)
ザ・ムービー 1980年          (ディアゴスティーニ)


聖書の言葉

「愛する者たち、互いに愛し合いましょう。愛は神から出るもので、愛するものは皆、神から生まれ、神を知っているからです」。(ヨハネの手紙Ⅰ 4章7節)