JOLLYBOY'S NEWS JOLLYBOY TIMES
 Vol.44  2001年6月号

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ピーナッツ・シリーズ探検隊

6.シュローダーとピアノ

 ピーナッツには、印象的なシーンが数多くある。犬小屋の上で寝るスヌーピー、毛布を引きずるライナス、おもちゃのピアノを弾くシュローダーに、そこに肘を掛けて横たわるルーシー等々。
 シュローダーは、ピーナッツの中でとても冷静沈着で知的な男として描かれている。それはチャーリー・ブラウンの厭世的な世を斜めに見た知性や、ライナスの哲学的な知性とは違っている。分析的と言うか、知性のための知性…と言ったような客観的なものである。それは、彼の日々の生活にも現れている。野球チームではキャッチャーを務め、冷静な判断でチャーリー・ブラウンの投球をリードする(しかしチャールズの鈍ら球は、リード以前の問題で簡単に打ち返されてしまうのだが)。欠点だらけのキャラクターが渦巻くピーナッツ世界で、彼自身、このピーナッツでの存在に違和感を感じているようで、(楽屋落ちネタではあるが)「僕、他の漫画へトレードされた方がいいんじゃないかな」というようなことを洩らしたことがある。
 そんなシュローダーにも、冷静さを失わせるものがある。ベートーベンである。ある日など、ルーシーが"ルードヴィヒ"(注:ベートーベンのこと)を"ヨハン"(注:シュトラウスのこと)と言い間違えただけで、烈火の如く怒る。シュローダーは、ベートーベンに関してだけは狂信的だ(それはライナスがかぼちゃ大王に対する思いに似ている)。日々ベートーベンの練習に余念が無く、野球のヤジはベートーベンの口笛。ベートーベンの胸像を所有し、ベートーベンのブロマイドをコレクションし、ベートーベンの誕生日間近にはプラカードをかかげて宣伝にせっせと励み、時にはベートーベン記念館のために募金活動さえ行う。彼の熱意はそれにとどまらず、ヨーロッパのベートーベンの生家に訪れてさえいるのである。
 彼はモーツァルトをはじめ、他の偉大なコンポーザーの曲も弾くが、ベートーベンは別格なのだ。実は、シュローダーのベートーベン好きは、作者シュルツの反映である。シュルツは、大のベートーベン好きなのだ。ピーナッツではシュローダーがピアノを弾いているが、ピーナッツの前身"チビッコたち(リル・フォークス)"では、チャーリー・ブラウンらしき子がその役を担っている。ピーナッツの他のキャラクターと同様、ピーナッツの変遷と共にシュローダーも今のポジションへ収まった。
 私はピアノなんてとても弾けないが、おもちゃのピアノならいつしか挑戦してみたい。笑いも取れそうだし。鍵盤数の足りないおもちゃのピアノで"ワルトシュタイン・ソナタ"を弾いてしまうシュローダーは、やっぱり凄い奴なのだ。

シュローダーとピアノとルーシー シュローダーとピアノとルーシー 「マイ・ピーナッツ・ノートブック」より


ピーナッツ・グッズ 6 "ピーナッツ・ミュージックとヴィンス・ガラルディ"

 さて、シュローダーとピアノを取り上げたので、今回はピーナッツの音楽CDをご紹介。テレビ版のピーナッツ・シリーズで音楽を手がけたのは、ジャズ・ピアニストのヴィンス・ガラルディ。有名なスタンダード・ナンバー"ライナス&ルーシー"をはじめ、数々のピーナッツ・ナンバーを創り出した。しかし、ヴィンスは1976年に47歳で亡くなってしまった。彼はピーナッツのテレビシリーズ・15本と、1本の映画の音楽を担当しただけだった。後のテレビアニメの中でルーシーがチャーリー・ブラウンに、歴史上一番好きな曲は何かと尋ねる。するとチャーリーは、「それはヴィンス・ガラルディさ。」と答え、"ライナス&ルーシー"をハミングし始める。これはプロデューサーの粋な演出なのだが、当のプロデューサーはこの場面で泣いてしまったという…。
 ピーナッツのCDはいくつか出ているが(僕は3枚所有)、お薦めはあのジョージ・ウィンストンがカバーしているCD(タイトルは、その名も"ライナス&ルーシー、ザ・ミュージック・オブ・ヴィンス・ガラルディ"/Fun House社)。ヴィンスのオリジナル演奏と聴き比べてみても、面白い。


ピーナッツ・ミュージック・CD ピーナッツ・ミュージック・CD

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映画"この一本!"20 「ピンク・フロイド ザ・ウォール」

 さてこのコーナーでは、隠れた名作映画を毎月一本づつ紹介していきます。賞を取ったのに興行成績が惨敗だった映画とか、一般には知られていないがカルト的に人気のある映画とか、海外では大ヒットしたのに日本でこけてしまった映画とか-いま一つ日の目を見ない不運な映画を取り上げていきます。

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 学生時代、十回以上見た作品がある。カルト的に人気のある奇才アラン・パーカー監督の"ザ・ウォール"。1982年の作品、ロック・グループのピンク・フロイドの超ヒットアルバム"ザ・ウォール"の映像化。主演は、ボブ・ゲルドフ。そう、アフリカの飢餓を救うために、超有名シンガーに呼び掛け"ウィ・アー・ザ・ワールド"を成功させた、あのボブ・ゲルドフだ。その彼が、ピンク・フロイドを思わせるロック・シンガーに扮するのだ。
 音楽と映像のマッチングが素晴らしく、過去幾多に存在したコンサート・ムービーとは一線を隔している。幻想的な映像に、シュールなアニメーション。何より、その内容が心をひき付ける。バラバラな映像が羅列されているようで、しっかりとストーリーがある。ゲルドフが演じるロック・シンガーが、少年時代の思い出を探るシーンから、周囲に踊らされて自分を見失いファシストの統領に扮するシーンまで一気に見せる。ラストのナチを思わせるシーンは圧巻である。

ザ・ウォール
Imaged by JOLLYBOY

 この映画は、人間性を押し潰すファシズムに抗うことのできない恐ろしさを描き、そして人と人の間、民族と民族の間、国と国の間にある厚い壁への警鐘を鳴らしている。学生時代、人々の間に存在する壁について深く考えるきっかけになった作品なのだ。この作品は最初、ダビングしたコピーで見ていたが、何度も見て、テープが擦り切れたのできちんと販売用ビデオを買いなおし、ついでにピンク・フロイドの2枚組LP"ザ・ウォール"も買ってしまった。




ビークル&アウトドアー&エトセトラ

"メッサー・シュミット・KR200"

 千葉県印旛沼の脇を通った時、公園の駐車場でとても珍しい車が目に飛び込んできた。写真でしか見たことの無い、真っ赤な三輪のオープンカー。ドライバーと話をして、車の撮影をさせていただいた。それだけなく、わざわざ中も見せていただき、。コクピットや細かい部分も撮影させていただいた。
 車の名は、メッサーシュミットKR200。そう、第二次大戦で活躍した戦闘機のメーカーが戦後作った車。今回出会ったシュミットは、イギリスのキットカー、つまりレプリカだが、十分楽しませてもらった。ちなみにオリジナルの性能は、強制空冷単機筒エンジンの191ccで10馬力!前後で二人乗りという珍しいコクピット、正に戦闘機デザイン。1955~1964年まで作られた。一時期、四輪モデルも作られた。


シュミットKR200 シュミットKR200 シュミットKR200・レプリカ

 また、珍しい車を見かけたら報告します。では、では。



引用・参考文献:

ピーナッツ・シリーズ旧刊/1~35,37~39,42~48,51,52,54,55,72
                      (ツルコミック&角川)
ピーナッツ・シリーズ新刊全26巻         (角 川 書 店)
スヌーピーと生きる/チャールズ・M・シュルツ伝
     リタ・グリムズリー・ジョンスン著   (朝 日 新 聞 社)
スヌーピーと仲間たちの心の時代/広淵 升彦 著  (講  談  社)
スヌーピーたちの性格心理分析/A.J.ツワルスキー著  (講  談  社)
知ってるつもり・チャールズ・M・シュルツ     (日 本 テ レ ビ)
朝日新聞・チャールズ・M・シュルツ死亡記事
映画・スヌーピーとチャーリー/スヌーピーの大冒険
ピーナッツTVシリーズ・ビデオ
OH! GOOD GRIEF!/VINCE GUARALDI        (ワーナー・ブラザース)
A Charlie Brown Christmas/Vince Guaraldi Trio  (スター・バックス)
LINUS & LUCY/THE MUSIC OF VINCE GUARALDI/George Winston
                         (Fun House)
ピンク・フロイド ザ・ウォール        (ヘラルド・ポニー)



聖書の言葉

「平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる」。(マルコによる福音書5章9節)