vol.35 2000年9月号
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13.ワインの雑学Ⅰ「コーヒー・ルネッサンス」
さて、今回は息抜きということで、ワインの教本には載っていないワインにまつわる雑学を取り上げて見たいと思います。その一回目は、ヨーロッパの中世に起こった文芸復興(ルネッサンス)とワインの関係。「えっ?一体何の関係が?」と思われるでしょう。僕も、大学の地理の講義を受けるまで知りませんでした。
ヨーロッパが、無知と蒙昧の中世暗黒時代から蘇ったのは、その飲み物が深く関係しているのではという説があるそうです。欧州の水の多くは日本の水と違って、硬度の高い硬水で飲用にあまり適していません。ヨーロッパを旅行された方は、ホテルのシャワーでシャンプーが泡立たないのを経験されたことがあるかもしれませんが、それは硬水だからです。買って飲むミネラル・ウォーターが欧州で発達しているのも、水が飲用に適さないからです。日本では水道水を当たり前に飲んでいた僕らの子供時代は、水を買って飲むなどというのは冗談のようなことでした。しかし今や日本でも水道水の危険性が指摘され、欧州の様に水を買って飲む時代になっています。けれども、中世の欧州はミネラル・ウォーターなど店で売っているはずもありません。そこで登場するのがワイン。食事時には、一家揃って朝から晩までワインを水変わりに飲むのです。いくらワインが体に良いと言っても、所詮アルコール飲料ですから酔います。つまり、一日中酔っている状態だったわけです。これでは、冷静・明晰な思考などできるはずもなく、魔女裁判を初めとする無知蒙昧の中世暗黒時代が続く訳です。
そこに登場したのがコーヒーです。外国から持ち込まれ、欧州に広まります。コーヒーが飲まれるようになって、人々は一日中酔っ払いの状態から、すっきりした状態の頭に戻ります。そこであらたな芸術が産み出され、学問が進展していくこととなっていきます。ルネッサンス期の到来です。この説がどこまで正しいのかは知るよしもありませんが、ちょっとは説得力があるとは思いませんか?気が向いたら、また雑学の話しを載せたいと思います。では、今回はここまで。
マリリン・カベルネ・ソーヴィニョン
さて、今回は雑学を取り上げたので、ワインもちょっと珍しいものを取り上げて見ます。その名も"マリリン・カベルネ・ソーヴィニョン"。その名のごとくマリリン・モンローの写真が、ラベルとなっています。映画ファンを狙って安いワインにラベルを貼っただけの安易な商品と思われるかも知れないが、しっかりした重厚なボルドータイプのワイン。カルフォルニアのワイン名産地ナパ・ヴァレイで作られたモンロー財団のプレミア・ワインで、日本は限定200ケースのみ輸入の希少ワイン。これを飲んだり手に入れたことのある人は、かなりラッキーである。ある意味、メドックの一級ワイン達よりお目に掛かるのは難しいかも(ただフランスワインと比較してカルフォルニアワインは、良品質でも割安だ)。私は、幸運にも昨年これを手に入れることができた。映画好きでワイン好きの人が家に来たら、飲もうかと思っているが、かなり重厚な造りのカベルネ・ソーヴィニョンのワインのようなので飲み頃はまだ先かも知れない。
参考データ:ぶどう品種/赤/カベルネ・ソーヴィニョン種、メルロー種
購入時価格/1994年もの=6,000円
マリリン メルロー ナパ・ヴァレー [2011] (正規品)
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感想(4件)
映画"この一本!"11 「ソイレント・グリーン」
さてこのコーナーでは、隠れた名作映画を毎月一本づつ紹介していきます。賞を取ったのに興行成績が惨敗だった映画とか、一般には知られていないがカルト的に人気のある映画とか、海外では大ヒットしたのに日本でこけてしまった映画とか-いま一つ日の目を見ない不運な映画を取り上げていきます。
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SFの本来の意味は、"サイエンス・フィクション"であり、"空想的な世界を科学的仮想に基づいて描いた物語"である。同じSFでも、"スペース・ファンタジー"と呼ばれる"スター・ウォーズ"から、比較的近い将来を描いた"近未来SF"と呼ばれるジャンルまで色々なSF物語がある。私は、特に中学から高校にかけて、様々なSFを読み漁った。「ソイレント・グリーン」の原作であるハリー・ハリソンの"人間がいっぱい"もそんな一冊だ。これが、映画化されたのは1973年。当時、僕はまだ小学生で、この作品を見たのは10年も後のことだった。
さて、この作品の監督はリチャード・フライシャーで、主演はチャールトン・ヘストン。チャールトン・ヘストンは、この時期ハリウッド大作には欠かせない俳優だったが、こんなうけない作品にも出ている。この作品は、日米ともに興行成績のトップ10にも入らず、アカデミー賞をはじめ賞取りレースとも無縁の映画だった。余程SF好きでもなければ、この作品の存在さえ知らない人がほとんどだろう。でも、私はこの作品が好きで何度も見てしまうのだ。
Imaged by JOLLYBOY
この作品は、西暦2022年のニューヨークを舞台にしている。近未来SFだと、映画"ブレード・ランナー"の世界観が今や主流である。ブレード・ランナーが登場すると、雨後のたけのこのように似た世界観を持つ「映像」が次々と登場する(CGの仕事をしていても、未だに「ブレード・ランナーのような感じでお願い」という言葉を耳にする)。リック・ベッソンは、"フィフス・エレメント"でもっと後の世界を描いたが、明らかにブレード・ランナーの世界観を踏襲している。乗り物や工業製品のいくつかは新しいが、今の我々と似た生活様式や道具・家具も持っている(これは、全部未来風にしてしまうと現代との接点がなくなり、リアル観がなくなって、物語に共感できなくなってしまうのを防ぐためだ)。しかし、ソイレント・グリーンは違う。作られた1973年から50年後の世界(今から22年後の世界)を描いているにも関わらず、未来的な建物も乗り物もほとんど登場しない。むしろ現代より衰退している世界観で統一されている。2022年の世界は爆発的に人口が増え、食料不足と大気汚染に悩まされている。市民の食料や水は、週一回の供給制。通りも建物の階段も、汚い恰好をした人々で充満している。供給される食品は、ソイレント社の固形食品"ソイレント・グリーン"。海の養殖場で育てられたプランクトンから作られる緑色の食べ物。クロレラやスビルリナをクッキーにしたような食べ物である。チャールトン・ヘストン演じる主人公の刑事が、ある事件をきっかけにこのソイレント・グリーンの恐ろしい秘密を知るのである。実は、海など当の昔に汚染されていて、プランクトンを供給できる状態ではなく、ソイレント・グリーンはなんと人間の死体から製造されているのだ。それを知った主人公の叫びは、供給を争うしか能のない群衆に掻き消されてしまうという、ハリウッド映画にしてはアン・ハッピーエンドの救いのない映画である。
この映画で、印象的なのは主人公の刑事が、上流階級の事件現場から生鮮食品やジャムをくすねてきて、老人と一緒に味わうシーンである。主人公は、本物の食材の味に感動する。老人から「私が子供の頃は、そういったものが満ち溢れていた」と聞く主人公。やがて、老人は死を選ぶことに決め、ソイレント社へ赴く。主人公刑事は老人を追うが、そこで死を選んだ者たちだけに与えられる特典を共に体験する。世界から絶滅してしまった自然や動物たちの大映像を見せられる。主人公の刑事は、かつて存在した自然の美しさを初めて目にし、驚嘆し感動する。その素晴らしい特典と引き換えに老人は死んで、固形食品を製造する"ソイレント・グリーン"工場へ送られてしまった。この映画は、水質汚染・大気汚染・土壌汚染など、ありとあらゆる公害による被害が先進諸国で巻き起こっていた時代を反映していて、まったく明るさがなかった。一般受けしないのも、当然である。今から約30年近くも前に、公害や環境問題を真正面から扱った稀有な超真面目SF映画である。
ビークル&アウトドアー
"東京風景・2"
とうとう5ヶ月連続で、どこにも出かけられませんでした(注:8月26日にようやく県外へ脱出できた)。という分けで、今回も日頃仕事で周っている東京都内から、お気に入りの場所をご紹介しよう。
牛込橋の上から
千代田区の飯田橋。JR総武線の飯田橋の改札を抜けると、そこは牛込橋の上。そこからの眺めが、なかなか良い。皇居の外堀と木々の緑、走る電車、広がる空、春には桜も見える。改札を抜けて右へ折れると、すぐ神楽坂。お気に入りのなかなか良い場所である。
今月の200文字コラム
「日本経済の斜陽化」
さてこのコーナーは、社会で起こっている様々な問題をたった200文字以内で論評しようという無謀なコーナー。
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日本経済の空洞化が叫ばれて久しい。日本は資源を持たない商人の国。日本経済は、良い物を造りそれを売ることで成り立ってきた。今やその信頼が崩壊しつつある。工業製品の欠陥は封印され、食品からは各種異物が見つかり、大手デパートも問題が山積み。日本が良品質の物造りと売買をやめ、バブル期のように実体のない金融の利鞘で儲けることにうつつを抜かしたら、かつての大英帝国と同じ道をたどるしかないのだ。 (今月は196文字コラムでした)。
引用・参考文献:
ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本
(日本ソムリエ協会)
基礎ワイン教本WSET編 (柴 田 書 店)
田辺由美のワインブック (飛 鳥 出 版)
ワインの科学 清水 健一 著 (講 談 社)
ヒュー・ジョンソンの楽しいワイン (文 春 文 庫)
ワインベストセレクション260 浅田 勝美 監修 (日 本 文 芸 社)
世界ワイン大全 (日経BPムック)
ワインの世界史 (中 公 新 書)
ワイン・カタログナヴィ・インターナショナル編 (西 東 社)
ソムリエを楽しむ田崎真也 (講 談 社)
ワインものがたり 鎌田 健一 著 (大 泉 書 店)
今日からちょっとワイン通 山田 健 著 (草 思 社)
私のワイン畑 玉村 豊男 著 (扶 桑 社)
夢ワイン 江川 卓 著 (講 談 社)
永井美奈子のベランダでワイン (主婦と生活社)
ワイン この一本 戸部民夫・清水靖子編著 (毎 日 新 聞 社)
ワイン用葡萄ガイド ジャンシス・ロビンソン (WANDS)
ワインの教室 (イカロス 出 版)
ザ・ムービー No.16 (ディアゴスチーニ)
大 辞 泉 (小 学 館)
聖書の言葉
「主は言われます。『虐げに苦しむ者と、呻いている貧しい者のために、今、わたしは立ち上がり、彼らがあえぎ望む救いを与えよう。』主の仰せは清い。土の炉で七たび練り清めた銀。主よ、あなたはその仰せを守り、この代からとこしえに至るまで、わたしたちを見守ってくださいます。」(詩篇12編6,7,8節)