Vol.34 2000年8月号
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12.マクロで見たワインの性格
前回、ワインの個性を決める主な要因について、取り上げました。今回は、マクロな視点で捕らえたワインの性格をとらえたいと思います。まあ、一般論として考えてください。だいたいそういうことか…ってな感じで。
良質な糖度の高い原料ぶどうの生育には、日照時間が大きく影響します。必ずしも、「原料として良質=糖度が高い」ではありませんが、ぶどう果実の成熟が進むに従って糖度が上がっていくので、ブドウの糖度が果実成熟の指標となるのは確かです(「糖度が上がれば良質」とは限りませんが、「良質ならば必ず糖度がある程度以上ある」ということです)。糖度には日照時間が大きく影響するという事は、(北半球では)十分な日照のある南部では糖度が上がり、日照の少ない北部では糖度が上がらないということです(南半球ではこの逆)。
さて、糖度が高いとどういうことになるかというと、アルコール発酵のための酵母のエネルギーとなる糖が十分にあるということです。つまり南では「アルコール度の高いコクのあるボディの厚いしっかりとしたワイン」ができるということです。こうした地域では、主に赤品種が主流です。しかし、あまり暑過ぎる地域だと、香りがボケて酸味不足になります。
逆に糖度が低いと十分なアルコール発酵が行なわれず、アルコール度の低いワインしかできないということです。こうした地方では、主に白品種が栽培されています。赤品種よりも、高い酸味(特にリンゴ酸)や品種特有アロマが求められ、アロマ成分を十分に生成させて、リンゴ酸の低下は適度に抑えます。こうして北では、「アルコール度は低いがフルーティーで爽やかな酸味をもったワイン」ができるというわけです。
これを具体的に、地域を思い浮べて見てください。暖かいイタリアやフランスのボルドー、カリフォルニア等では、良質の辛口赤ワインが作られ、寒冷なフランスのシャンパーニュやアルザス、ドイツ等では、フレッシュでフルーティーな白ワイン(や発泡ワイン)が作られます。これでワインが少し身近で、取っ付きやすくなったのではないでしょうか。もちろんこれは一般論で、個別に見始めたら奥が滅茶苦茶深いのですが…。
映画"この一本!"10 「ガープの世界」
さてこのコーナーでは、隠れた名作映画を毎月一本づつ紹介していきます。賞を取ったのに興行成績が惨敗だった映画とか、一般には知られていないがカルト的に人気のある映画とか、海外では大ヒットしたのに日本でこけてしまった映画とか-いま一つ日の目を見ない不運な映画を取り上げていきます。
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さて、先日"サイダーハウス・ルール"という映画を見てきました。とても素晴らしい作品でした。ジョン・アーヴィングという作家のベストセラーの自伝的小説を映画化した作品です。この時、頭に思い浮んだ映画が一本あります。同じくアーヴィングのベストセラー小説を映画化した作品"ガープの世界"です。今日は、この作品を取り上げます。
Imaged by JOLLYBOY
映画"ガープの世界"が封切られたのは、1982年です。この年は、"ET"や"愛と青春の旅立ち"、"トッツィー"等が公開され、"ガンジー"がアカデミー作品賞を取り、"ミッシング"がカンヌ映画際の作品賞をとっています。僕の映像トラウマとなっている"ブレード・ランナー"の公開もこの年です。こういった有名作の面々の中で、果たして何人の人が"ガープの世界"を見たのでしょう?と言うか、そもそも作品があったことを知っているのでしょうか?この映画は、日米共に売れてません。日本では、"ザ・カンニングIQ=0"などという馬鹿そうな映画より興行成績が下です。
では、この作品はB級映画だったのかというととんでもなく、先程の記述のように、ベストセラー小説の映画化であり、ロビン・ウィリアムスやグレン・クロースといった演技派俳優が主演し、メアリー・ベス・ハートやジョン・リスゴーが脇を固めている。これだけ見れば超A級映画だ。ストーリーは、夫は欲しくないが子供は欲しいジェニーという看護婦が、瀕死の兵士によって子をもうける。この子がガープ。ジェニー、ガープとも本を執筆し、ガープはそこそこの評判の作家となり、ジェニーはウーマンリブ運動の指導者に祭り上げられていく。そんなストーリーなのだが、映画にまったく説得力がない!のである。もちろん、グレンやロビンだから、演技はがんばっている。でも、登場人物には感情移入できないし、背景が薄っぺらに見える。そもそも、この映画は何が言いたいのだろう?色んなテーマの断片が中途半端に出て来ては放りっぱなし。ただ単に時間順に出来事を並べただけの不条理劇に思えてしまう。なんでA級の食材を集めてB級料理が出来上ってしまったのだろう?やっぱりシェフに問題があるのでしょう。製作・監督ジョージ・ロイ・ヒル。脚本家スティーヴ・テシック(誰?)。ジョージ・ロイ・ヒルには、この映画に対しては明らかに力不足か、向いていなかった(もちろんロイ・ヒルは"明日に向かって撃て"や"スティング"を作った名監督です。誤解なきよう)。題材が彼に適していなかったのか、それとも準備不足だったのか…。前回はコラボレーションの成功例を取り上げましたが、今回はコラボレーションの失敗例(?)を取り上げてみました。
しかし冒頭で紹介した"サイダーハウス・ルール"は傑作です。本来はとても長いストーリーを、2時間の中にうまくまとめて、共感できる作品に仕上がっています。アーヴィング自身が13年間も脚本を手直しし映画化を進めていただけに、説得力のあるストーリーとなっていて、監督も"マイライフ・アズ・ア・ドッグ""ギルバート・ブレイク"の監督ラッセ・ハルストレム。そして俳優達が、自然にのびのびと演技しています(これは監督の手腕です)。A級素材がA級作品に仕上がった幸せな映画です。お勧め。
ビークル&アウトドアー
"東京風景・1"
4ヶ月連続で、どこにも出かけられませんでした。車にも、ほとんど乗らなかったし。どこにも行かなかった期間の、自己新記録かもしれない。学生時代は、バイクで自由にあちこち行ってたし、社会人になってからも、忙しくとも週末はバイクや車で遠出してたし…。フラストレーション溜まるなぁ…。しかし真夏の太陽の下、東京都内を営業で回っていて心安らぐ場所を見つけたので、密かにご紹介しよう!
中央区の湊(みなと)。中央区といっても、銀座などの繁華街から離れた下町情緒の溢れた隅田川沿いの町。地下鉄の駅などから遠く離れていることもあって、人通りは少ない。日中、川沿いの道を歩いていても、人とすれ違うこともあまりない。川沿いの公園には、クローバーが咲いている。写真には、写っていないが、左側にハープ橋がある。海が近いせいか、塩の香りが漂ってくる。対岸には、近代的な高層マンションと緑の公園。時折、行き交う遊覧船。太陽の下、ぼおっと水面を眺めながら潮風を頬に受けていると、とても落ち着くのだ。地下鉄有楽町線の新富町駅から、歩いて10分ほどの場所です。
今月の200文字コラム
「ミリオンセラーと個別化」
さてこのコーナーは、社会で起こっている様々な問題をたった200文字以内で論評しようという無謀なコーナー。
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ここ十年、音楽でミリオンセラーが続出。その一方、その捨て去られる速度も速い。かつて数十万枚売れたレコードは、国民の多くが知っていて、その息も長かった。しかし今は数百万枚売れても、それは特定の世代に絞られ、飽きられる速度も桁違いに速い。これは音楽に限ったことでなく、様々な分野で起こっている現象。嗜好の一元化はもはや不可能で、良い意味でも悪い意味でも、個性化、個別化の時代である。 (今月は193文字コラムでした)。
引用・参考文献:
ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本
(日本ソムリエ協会)
基礎ワイン教本WSET編 (柴 田 書 店)
田辺由美のワインブック (飛 鳥 出 版)
ワインの科学 清水 健一 著 (講 談 社)
ヒュー・ジョンソンの楽しいワイン (文 春 文 庫)
ワインベストセレクション260 浅田 勝美 監修 (日 本 文 芸 社)
世界ワイン大全 (日経BPムック)
ワインの世界史 (中 公 新 書)
ワイン・カタログナヴィ・インターナショナル編 (西 東 社)
ソムリエを楽しむ田崎真也 (講 談 社)
ワインものがたり 鎌田 健一 著 (大 泉 書 店)
今日からちょっとワイン通 山田 健 著 (草 思 社)
私のワイン畑 玉村 豊男 著 (扶 桑 社)
夢ワイン 江川 卓 著 (講 談 社)
永井美奈子のベランダでワイン (主婦と生活社)
ワイン この一本 戸部民夫・清水靖子編著 (毎 日 新 聞 社)
ワイン用葡萄ガイド ジャンシス・ロビンソン (WANDS)
ワインの教室 (イカロス 出 版)
ザ・ムービー No.22 (ディアゴスチーニ)
ザ・サイダーハウス・ルール (アスミック・エースエンターテイメント)
聖書の言葉
「神はわたしたちの避けどころ、わたしたちの砦。苦難のとき、必ずそこにいまして助けてくださる。」(詩篇46編2節)