Vol.33 ２０００年７月号
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11.ワインの個性を決めるもの
さて、一口にワインと言っても、色んなワインがあります。これらのワインの個性を作る要因って何でしょう。次に挙げる4つが主な要因です。
・葡萄品種…ワインの個性は、原料となる葡萄の種類に負う所が大きい。葡萄は五千種類あると言われ、実際にワインに使われている種類は三百種。その中でも、主要品種が約百種類。いかに多くの個性ができるかが、お分かりいただけると思います。
・気 候…日射量や気温の違いが、葡萄の生育に大きく影響します。一般に、温暖な気候では十分に糖がのりアルコール度の高いワインができ、寒冷地では酸を多く含む締りの良いワインができる傾向があります。
・土 壌…葡萄は、畑の土壌が砂質か粘土質か、石灰岩をどのくらい含むかなど、生育する畑の土壌の性質を反映します。一般に、葡萄はやせて水はけの良い土地の方が充実した実を結びます。
・醸造方法 …醸造に使用する葡萄の選択、発酵や熟成の方法や時間、たるの種類、環境など作り手の様々な個性がワインに表れます。近くの畑でも北向きと南向きで日当たりが違ったり、隣りの畑同士でも土壌が違ったりと、ワインはこれだけ多くの個性を持つ要因を持っているのです。こんな何万通りもの組み合わせが可能なワインのそれぞれの個性をすべて把握するのは、到底不可能に思えます。
そこで次回は、マクロな視点で捕らえたワインの個性の把握について考えて見たいと思います。
シャトー･ムートン･ロートシルト
前回に引き続き、今回もボルドーのメドック地区の第一級ワインをご紹介します。その名も、"シャトー･ムートン･ロートシルト"。メドックの１級という格付けを語る上で、けっして欠かせないワインです。１９世紀になると、ボルドー･ワインの評価は飛躍的に高まりました。世界中の金持ちが、名醸ワインの畑を手に入れようとしていました。富豪ロートシルト家の３男ネイサンの息子ナサニエルは、ブラーヌ男爵の所有するシャトー･ブラーヌ･ムートンを手に入れました(ムートンは丘を意味するモットからきている)。そして、シャトー･ムートン･ロートシルトと改名しました。
メドック地区の格付けは、前回書いた通り1855年のパリ万博の際に決められました。その時、絶対に第１級であると確信していたシャトー･ムートン･ロートシルトは、なんと第２級にされたのです(外国人であるロートシルトの所有ということが影響したとも言われる)。ロートシルト家の財力、政治力をもってしても、この屈辱はいかんともしがたかった。その時の言葉。「２級にはなったが、ムートンはムートンである」。
その後、ナサニエルの戦いが始まりました。土地改良、苗木の植替え、醸造方法の見直し、他あらゆる改善･改良。４代にも渡る不断の努力の末、シャトー･ムートン･ロートシルトは、1973年に格付け第１級を獲得しました。その時の言葉。「かつて２級だったが、第１級となった。されどムートンは、昔も今も変わらず」。信念を貫き通すとは、こういうことを言うのだろう。
このワインは、1924年以来有名なアーチストがオリジナル・ラベルを描いているのも魅力の一つ。ローランサン、ダリ、ミロ、シャガール、ピカソ、ウォーホール等。ワインの味や香りだけでなく、ラベルも素晴らしい。僕も、３月に１９９３年ものを一本購入した(ラベルは、ポーランドの画家バルテュスによるもの)。ラフィット･ロートシルトと同様に、特別な記念日に飲もうと思うが、熟成を考えると2010～2020年ぐらいまでは待つことになるかな～。
参考データ：ぶどう品種／赤／カベルネ･ソーヴィニョン種、メルロー種
(参考価格／１９９６年もの＝４９,０００円)
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映画"この一本！"９ 「ビューティフル･ドリーマー」
さてこのコーナーでは、隠れた名作映画を毎月一本づつ紹介していきます。賞を取ったのに興行成績が惨敗だった映画とか、一般には知られていないがカルト的に人気のある映画とか、海外では大ヒットしたのに日本でこけてしまった映画とか－いま一つ日の目を見ない不運な映画を取り上げていきます。
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夏になると必ずビデオを引っ張り出してきて見る、思い出の作品がある。日本の劇場アニメーション映画"ビューティフル･ドリーマー(うる星やつら２)"である。おそらく、コミックの「うる星やつら」ファンでもない限りご存知ないかもしれない。今日は、ぜひこの作品を取り上げたい。
Imaged by JOLLYBOY
この映画は、高橋留美子原作の「うる星やつら」の人物設定を大事にしながら、独自の世界観と物語を作り上げている。監督は、押井守監督。これを初めて見たのは、学生時代だった。衝撃を受けて、何度もこの作品を見た。いくつか気が付いた点を掲げると…各キャラクターの個性は元々良くできているのは当然として…ストーリーがオリジナルで先が読めないこと、展開がアップテンポでリズムが良いこと＆強弱があること、何よりも詩的であることなどが、この作品を特異な魅力有るアニメ映画にしているのではないだろうか。これは、監督の押井守監督の感性と経験に負う所が大きいのだと思う。高橋留美子原作のキャラクターの良さと、押井守監督の感性がみごとに融合･昇華された、コラボレーションの好例だと思う(ちなみに、劇場で"うる星やつら３"と"うる星やつら４"も見たが、どちらも設定が安易でつまらなかった。２の、押井監督の力量に脱帽)。
最近は、何でもマルチメディアミックス戦略と銘を打って、売れたマンガをアニメにしたり、ドラマにしたり、ゲームにしたりするが、営業的な視野だけでマルチメディア化を謀ると失敗する例を最近よく見かける。コミック「スラムダンク」のアニメ化、「いいひと」のドラマ化は、明らかに大失敗の部類に入ると思う(両作品ともコミックが素晴らしいだけに、コラボレーションの力量が問われる)。そういうのを目の当たりにする度に、押井守監督の"ビューティフル･ドリーマー"が頭に浮かぶのである。
ビークル＆アウトドアー
"スカイ･フェスタ 2000"
４月、５月に引き続き、６月もまたアウトドアへ出かけられませんでした(って言うか休めませんでした)。そんな中、珍しくアニメーションではなく、ポスターのＣＧイラストの作成を引き受けました。仮装フライトなどで毎年盛り上がる、石川県･獅子吼高原のスカイ･フェスタのポスターです。アウト･ドアに出かけられない不満を、イラストにすべて叩きつけてみました。たった２日の制作期間でしたが、なんとか楽しい絵に…(イラストデータ量、レンダリング時間は超ヘビーでした)。
お金と時間にゆとりのある方は、ぜひ石川県まで足を伸ばしてみては？詳細は、下記の通りです。
獅子吼高原スカイフェスタ２０００
鳥人間コンテスト 大道芸人コンテスト 仮装フォトコンテスト
日 時：２０００年８月１２日(土)・１３日(日) 場 所：石川県石川郡鶴来町獅子吼高原
今月の200文字コラム
「コピー文化」
さてこのコーナーは、社会で起こっている様々な問題をたった２００文字以内で論評しようという無謀なコーナー。
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コピーの氾濫の問題が大きくなっている。デジタル機器の進歩が凄まじく、オリジナルと寸分違わない音楽･映像･プログラムのコピーが、簡単に可能になった。これは、版権元の版権保護だけの問題ではない。大量のコピービデオや音楽を抱え、時代に遅れないように－忙しい日常生活の中－事務的に音楽を聴き飛ばし、撮り貯めたドラマを見る。本物を大事にする心や、自分の時間を楽しむゆとりが失われてはいまいか。 (今月は１９６文字コラムでした)。
引用・参考文献：
ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート教本
(日本ソムリエ協会)
基礎ワイン教本ＷＳＥＴ編 (柴 田 書 店)
田辺由美のワインブック (飛 鳥 出 版)
ワインの科学 清水 健一 著 (講 談 社)
ヒュー・ジョンソンの楽しいワイン (文 春 文 庫)
ワインベストセレクション２６０ 浅田 勝美 監修 (日 本 文 芸 社)
世界ワイン大全 (日経ＢＰムック)
ワインの世界史 (中 公 新 書)
ワイン・カタログナヴィ・インターナショナル編 (西 東 社)
ソムリエを楽しむ田崎真也 (講 談 社)
ワインものがたり 鎌田 健一 著 (大 泉 書 店)
今日からちょっとワイン通 山田 健 著 (草 思 社)
私のワイン畑 玉村 豊男 著 (扶 桑 社)
夢ワイン 江川 卓 著 (講 談 社)
永井美奈子のベランダでワイン (主婦と生活社)
ワイン この一本 戸部民夫・清水靖子編著 (毎 日 新 聞 社)
ワイン用葡萄ガイド ジャンシス・ロビンソン (ＷＡＮＤＳ)
ワインの教室 (イカロス 出 版)
聖書の言葉
「苦難の日に主があなたに答え、ヤコブの神の御名があなたを高く上げ、聖所から助けを遣わし、シオンからあなたを支えてくださるように。」（詩篇２０編２、３節）
