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「12人の怒れる男」 (記:2009年1月)
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そろそろ日本でも陪審員制度が導入されるので、今回は"12人の怒れる男"を取り上げたいと思います。テレビドラマでリメイクされたり、この映画をモチーフにパロディ化したコメディが撮られたりと、現代に至るまで語り草になっている名作。でも、半世紀以上前の1957年の作品なので、今の若い人たちはあまり見ていないのじゃないかな~。僕も、当然この映画が作られた時は生まれてもいなかったので、後にビデオで見ました(※その後、DVDも買いました)。ぜひ見てほしい映画なので、今回取り上げます。
主演のヘンリー・フォンダが、アメリカの良識ある市民を演ずる。監督は、社会派のシドニー・ルメット。共演の俳優人の演技もまた素晴らしい!
僕の目には、最近、弱肉強食の弱者切り捨ての"アメリカの民主主義"が随分と傾いているように映るけれど、民主主義と言うのは多数決社会ではなく、少数の意見に耳を傾ける事だと言う事をこの映画は教えてくれます。この映画は、ベルリン映画祭で作品賞受賞しました。
Imaged by JOLLYBOY
物語の内容だけど、舞台はニューヨークの法廷にある陪審員達。被告は飛び出しナイフで実父を刺殺した容疑の17歳の少年。12人の陪審員達が、評決を出そうとしている。第一回の評決は、11対1で少年の有罪。11人が、不良の少年を有罪と断定。ただ一人ヘンリー・フォンダが演ずる"8番"の男のみが、少年の無罪を主張する。有罪だと思っている男達はさっさと終わりにしたい…ある男性などは裁判よりも野球の試合の開始を気にしている…が、8番の男はせめて1時間は審議すべきだと説得。被告の証言が曖昧で、目撃者もおり、凶器のナイフも少年の所持品。誰もが、有罪と確信している。
しかし、8番の男は、証言や所持品の矛盾点を、次々に明らかにして行く。同時に、そこに集っていた陪審員達の過去や環境も明らかになっていく。偏見や誤解が、正しい判断を覆っている事が少しずつ白日の陽の下にさらされていく。第2回、第3回、第4回と評決が繰り返される度に、無罪派が増えて行く。そして最後まで無罪を主張していた男も、息子に裏切られた事で有罪を主張していた事が明らかになり、全員が無罪の主張となった。こうして裁判を終えた(お互い名も知らぬ)1番から12番までの陪審員達は、雨上がりの街へと散っていった。
この映画の凄いところは、なんとラストシーン以外は、ずっと密室で話しが展開していくんです。しかも、"審議時間=映画の時間"と言うリアルタイム進行なんです。たった一つの部屋だけで物語が展開したら、普通は映画がもちませんよね?ところが、脚本と演出と俳優達の演技が素晴らしいので、まったく気にも苦にもならない。すごく緻密で、かつ緊迫感をもって、話しが進行していくのです。SFXやセットに莫大な予算をかけずとも、素晴らしい映画を撮り得る事を実証した稀有な名作です。