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「地球まで2千万マイル」   (記:2007年7月)

 今日は、レイ・ハリーハウゼンの映画を取り上げたい。"地球まで2千万マイル"なんて、よほどのマニアでないと知らないと思う。各言う僕も、この映画は映画館ではなく深夜のテレビ放映で見たのである。日本では、DVD販売もされていない超マニアックな映画。1957年の映画なので、ちょうど50年も昔の映画。半世紀前・・・すごく古い映画だ。
 ハリーハウゼンは、1949年の"猿人ジョー・ヤング"から1981年の"タイタンの戦い"まで、16本もの長編映画を撮っている。そのうち僕は、"シンドバッド・シリーズ"や"アルゴ探検隊の大冒険"を始め、11本を見ているが、まだ見ていないのが5本もある。そう言う意味では、まだ本物のハリーハウゼン・ファンとは言えないかもしれない。しかし、ハリーハウゼンの影響はすごく受けている。中学校から高校にかけて、8mmフィルムカメラで、人形をコマ撮りして短編アニメを作ったのは、正しくこの"ハリーハウゼン"の影響そのものである。

 子どもの頃、テレビで何度も放映された"シンドバッド・シリーズ"や、"SF巨大生物の島"や"恐竜百万年"。特に"恐竜百万年"は、何べん見たか知れない。日本の怪獣物は、着グルミ怪獣。どうがんばって作っても、中に人間が入っているのが分かる。
 しかしハリーハウゼンの手がけるモンスター達は、リアルな造形物が動く。中に人間が入る事が不可能な"骸骨"まで、リアルに戦うのだ。かつて日本でも、(タイトルは忘れたが)コマ撮りのリアルな怪獣が出てくる忍者物のヒーロー特撮ドラマがあったが、たった3回かそこらで放映が終わってしまった。コマ撮りアニメと言うのは、とても時間と手間がかかり、とてもテレビの週一スケジュールでは無理だったのだろう・・・。
 ハリーハウゼンの影響を受けた映像作家達は、物凄く多い。日本でも数多くいる。かつて知り合いになったテレビのディレクターが、やはりハリーハウゼンのファンで話しが盛り上がった事がある。ピクサーのCGアニメ"モンスターインク"に出てくるレストランの名前が"ハリーハウゼン"。"ミスター・モンスター"と呼ばれる巨匠に対して敬意を現したのだろう。
 特撮ファンには有名な話だが、そう言うハリーハウゼンもまた、ウィリス・H・オブライエンの作った"キングコング"を見て影響を受けたのである。僕も昔、DVDで"キング・コング"を見たが、あれが1933年・・・つまり75年も前!・・・に作られていたと言う事実に驚きを覚える(ちなみにキングコングのDVDを昔3,800円で買ったのに、今は版権がパブリックだとかなんとかで500円で売っている・・・涙)。2005年に、最新CGI技術で"キング・コング"を撮ったピーター・ジャクソンも、この1933年版コングの大ファンだった。
 ハリーハウゼンは短編物を撮っていたが、その後オブライエンと一緒に"猿人ジョー・ヤング"の仕事をする事になり、ハリーハウゼンの輝かしい経歴がスタートする事となる。
 彼自身は本質的に"特撮屋"であり"監督"ではなかったが、彼の関わる特撮映画は、まず彼が全体の構成や特撮のセットアップを行なうことが"主"であり、残りの人物のドラマ演出は限定的な"従"であった。だからシンドバッド・シリーズやアルゴ探検隊等の映画は、誰が監督したかを知らない人でも、ハリーハウゼンが作った映画であると言う事は知っているのだ。


地球まで2千万マイルImaged by JOLLYBOY

 さて、本題の"地球まで2千万マイル"に移るが、まあ話し自体はたいへんチープである。はっきり言って物語はどうでも良いと言うか、"キング・オブ・ザ・子ども騙し"。でも、僕が子どもだったら、喜んで"騙されて"見ただろう。

 イタリアのシシリーの漁民が、巨大なロケットが地中海に墜落するのを目撃する。そのロケットの大きさが、尋常ではない。この映画が作られたのは1957年(!)のこと、巨大な有人ロケットと言う概念は当然一般に無い。漁民は、それが何なのかまったく分からない。漁船で恐る恐るロケットに近づき、勇気ある猟師がロケットから唯一の生存者の宇宙飛行士を救出する。
 一方で、漁村の少年が浜辺でカプセルを発見する。それはロケットから飛び出たものなのだが、中にブヨブヨした物体が入っている。少年は、村に滞在する医者にその物体を高値で売る。実はその物体は"金星獣(竜)"で、どんどん成長していく。金星獣は、あっという間に人間のサイズになり、さらにどんどん巨大化していく。後は、警察やら軍隊やらが絡んで、お決まりの"モンスターvs人間"の戦いへと発展していく。ローマではゾウと戦い、更には人類の近代兵器の猛攻を受け、最後はバズーガ砲の餌食となる。ああ可愛そうに・・・勝手に地球に連れてこられてこんな目に・・・でエンドである。
 僕らにとって、"物語"自体はどうでも良い。僕らは、ハリーハウゼンの紡ぎ出す"素晴らしい動き"を見たいのだから。

 20世紀後半には映像技術が発達し、恐竜やモンスターは造形物からCGIへと移っていった。彼は、1981年に"タイタンの戦い"を最後に引退した。しかし、ハリーハウゼンの名前は、これからも長く語り継がれる事だろう。