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「マッカーサー」 (記:2005年10月)
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今年は、終戦60周年記念でしたね。戦後の日本の方向を決定付けたのは、良くも悪くもマッカーサー元帥(僕は"良い"方が多いと思っているけど)。マスコミで憲法問題や、靖国神社問題、教科書問題が語られる事は多いのに、マッカーサーについて語られる事はあまり無いですよね。僕が、映画「マッカーサー」を見たのは中学校の時だったのだけれど、この映画は、見事なくらいヒットしませんでしたね~周りの誰も見なかった。僕は中学生になって映画にはまったので、お小遣いをほとんど全部映画に注ぎ込んでいたので、"マッカーサー"も見たけど、同級生は誰も見ていない。僕一人。僕は当時サントラ版を買ったので、今でも"マッカーサーのマーチ"が口ずさめる。タンタカタッタ、タッタッタ、タッタッタターン!(って、文字じゃ伝わらないよね~)。当時の戦争映画には、必ずと言ってよいほどマーチが定番テーマ曲でした。コンバット、大脱走、史上最大の作戦、クワイ河マーチ(戦場にかける橋)と同じぐらい普通に口ずさめる。で今回は、この映画「マッカーサー」を取り上げます。
ところで、元帥ってどのくらいの階級かご存知ですか?国によって違いはありますが、兵隊の階級はだいたい次の通りです。下から言うと、二等兵、一等兵、上等兵、兵長。これが一般の兵卒。"プライベート・ライアン"の、プライベートとは兵卒の意味でこのクラスです。次に、伍長、軍曹、曹長、准尉。これが下士官と呼ばれる階級。テレビドラマの"コンバットシリーズ"のサンダース軍曹は、この下士官クラスです。次が士官と呼ばれる階級。少尉、中尉、大尉。これは尉官と呼ばれる階級で、テレビアニメの"はいからさんが通る"に登場する中尉殿はこのクラスです。次が、少佐、中佐、大佐で、佐官と呼ばれる階級で、英語だと、メジャー、コマンダー、カーネルとなります。スターウォーズシリーズで、ダースベイダーの台詞を聞いていると帝国軍のある士官を「コマンダー」と呼んだりしていますが、階級的には中佐の事なんですね。このクラスが、連隊や大隊を指揮したり、海軍では艦長になります。そして次が、准将、少将、中将、大将と続きます。これらの階級の人々は、閣下と呼ばれます。一般人の我々は、「閣下」なんて言葉は、それこそ映画ぐらいでしか聞きませんね~。閣下は、軍団や艦隊全体の長官となって指揮を取るクラスです。閣下は、アメリカで言ったら州知事並みの凄い権力を持っている訳です。そして、それぞれ(※陸海空)の軍の最高司令官、それが「元帥」です。一般的には"元帥"は平時には置かない階級で、第二次世界大戦のような大きな戦争でのみ置かれ、通常は大将が軍隊の最高位である事が多いようです。
階級の話が長くなりましたが、つまり元帥とは、その位凄い権力を持った人なのです。それが世界最強の軍隊のアメリカ軍の元帥ともなれば、どのくらいの権力と影響力を持っているかが自ずとお分かりになるでしょう。マッカーサー元帥とは、正にそう言う"絶大な力"を与えられた人でした。
Imaged by JOLLYBOY
この映画"マッカーサー"は1977年のユニヴァーサル映画なんだけど、全然ヒットしなかったんですね。この年は、スターウォーズ、未知との遭遇、ロッキー、キングコングを初め、名作・大作が目白押しだったので、マッカーサーはもうマイナー中のマイナー映画って感じになってしまった…グレゴリー・ペックが主演で、それなりの巨費をかけて作ったのですけど。内容的にも、やはり第二次世界大戦のパットン将軍を描いた"パットン大戦車軍団"とは大違いで。しかも日本映画公開時には、マッカーサーと天皇が会談するシーンが、不敬的・侮辱的としてカットされてしまった。だから、ロードショーで見た僕もそのシーンは見ていない。この映画を調べようと思って映画雑誌を調べたら、1977年の部分でこの映画の事が一切、一文字も触れられていない…アニー・ホールやサタデーナイトフィーバーですら、しっかり記事になってるのに(笑)。なんだか踏んだり蹴ったりの映画ですが…そんな恵まれない映画だからこそ、このコーナーで取り上げるのですけどね。
パイプをくわえた姿のダグラス・マッカーサーって、戦争を経験したうちの親父達の世代には感慨深い人で、彼の行った政策は知っているのだけど(うちは地主で農地を取り上げられた側らしいですけど)、マッカーサーと言う人の背景とか性格とか、そう言うのって意外と知らないんです。実は、ダグラス・マッカーサーって日本とはかなり昔から縁があった人なんですね。ダグラスの父親アーサー・マッカーサーが駐日大使館付武官として、日露戦争観戦したそうです。その際に、息子ダグラスを副官として派遣するよう要請して許可されたそうです。だから、日本と言う国を第二次世界大戦よりずっと前に(って言うか第一次世界大戦より前に)、親子で知っていた訳です。父アーサーは、フィリピン統治政策でアメリカ政府と対立して本国に召還されてしまいます。ダグラスは、その父を生涯尊敬していたようです。またマッカーサーは、回想録で日本軍に多くを学んだと告白しているそうです。
さて映画のストーリーですが、真珠湾攻撃から3ヵ月後の1942年のフィリピンから始まります。グレゴリー・ペック演ずるマッカーサー大将は、フィリピンの最後の拠点コレヒドールで日本軍との攻防に明け暮れていたが、ワシントンのルーズベルト大統領は撤退の決断を下す。マッカーサーは撤退命令に激怒するが、ウェインライト中将に指揮を委ねて撤退する。その後、コレヒドールは陥落。マッカーサーは空軍の少将に協力を求め、手に入る限りの航空機と兵力結集して、南洋諸島の日本軍補給路を断つ。ワシントンから飛んできたルーズベルト大統領やニミッツ提督と作戦会議を開くが、ニミッツは台湾攻撃を、マッカーサーはあくまでもフィリピン奪還を主張する。マッカーサーは、フィリピン奪還の了解を大統領から取り付ける。レイテ島で日本軍に大損害を与え、ついにAデーでフィリピン再上陸を果たす。
Aデー後間もなく、マッカーサーは陸軍元帥の称号を与えられる。ルーズベルトが急逝し、トルーマンが副大統領から大統領に昇格。原爆投下に許可を与え、広島と長崎に原爆が投下される。日本は無条件降伏して、ミズーリ号艦上で調印式を行った。マッカーサーは、ミズーリでウェインライトと再会した。敗戦後、日本の占領軍総司令官として駐留する事となったマッカーサーは、農地改革、財閥解体、新憲法の制定等の改革を、次々と行う。幣原首相と会談し、日本の軍備放棄が決定する。英雄マッカーサーのアメリカへの帰国要請があったが、マッカーサーは日本に留まり任務に全力を注ぐ。
そのマッカーサーが、再び戦場に呼び戻される。マッカーサーは、陸・海・空の三軍を動員して、仁川の北朝鮮軍の補給路を叩き、38度戦の北を窺がう。トルーマン大統領は、マッカーサーが国連を巻き込み、北朝鮮の動乱を中国相手の戦争に拡大する事を恐れて、マッカーサーに警告する。マッカーサーは敵の動員兵力はたかだか5万人と反駁したが、北朝鮮は26万人の大軍を動員する。かくして、泥沼の戦争が続いていく。トルーマン大統領は、マッカーサーを解任する決定を下した。このニュースは、世界に衝撃を与えた。
任を解かれてアメリカへ帰国したマッカーサーに対し、国民は熱狂的な歓迎で迎えた。議会に招かれたマッカーサーは、歴史に残る告別の演説を行った。「老兵は死なず。ただ消え行くのみ…」。
その後82歳になった老将軍は、ウェストポイント陸軍士官学校で、若き士官候補生に「義務と、名誉と、祖国」を重んずるように説く。この演説を最後に、老兵マッカーサーは人々の前から姿を消した。…以上が、映画の概略です(マッカーサーは、1964年に亡くなりました)。
第二次大戦直後のアメリカの世論調査では、マッカーサーは、トルーマン大統領やアイゼンハワー将軍よりも人気が高かったと言う。その人気のあったマッカーサーが大統領になれなかったのは、アメリカと言う国が軍人と文民の統制をきっちりと分けていたからで、かつマッカーサーが自分の領域に文民が口を挟むを毛嫌いしていたからだとも言われ、生粋の軍人マッカーサーが大統領になる事はありませんでした(…対称的に、アイゼンハワー将軍は大統領になりましたけれど)。マッカーサーが統治したアメリカと言うのも、少し見てみたかった気がするけど。今よりも、もう少し男女同権や民主主義が進展していだろうか?