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「旧約聖書映画の歴史」   (記:2001年11月)

 さてクリスマス・シーズンも近づいてきたこともあり、今月と来月の2ヶ月に渡って聖書映画の歴史を取り上げます。今回は、「旧約聖書を題材にした映画の歴史」。聖書を題材にした映画は、欧米ではともかくとして、クリスチャン人口が1%に満たない日本ではとてもマイナー。日本においては、"十戒"や"ベン・ハー"といった一部の大作を除き、ほとんどの映画がその存在すら知られていない。と言うかクリスチャンですら、それらの映画を知らない人が多い。そこで、ぜひキリスト教映画に詳しい僕が(自分で言うな!)、述べねばならないと考えたのである。ちなみに、廃盤・絶版になったビデオや国内で販売されていないビデオに至るまで、あらゆる方法を駆使して手に入れた「旧約聖書」と「新約聖書」映画のビデオ・コレクションは、けっこうな数でなかなかのものだと自負している。

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 さて、今回は「旧約聖書を題材にした映画」の歴史。映画の創生時、ハリウッドのプロデューサーたちは、競って聖書エポックの原作の映画化権を手に入れました。制作された年代順に見てみましょう。
 1923年の「十誡」。監督は、後にミスター・モーション・ピクチャーと呼ばれるセシル・B・デミル監督。この作品は、出エジプト記を題材とする前半部と、現代劇の後半部の二つのパートから成っています。後半部は、信心深い母親と二人の息子の話で、神の掟に反抗した者への教訓的な物語。話の内容に一部酷評された部分がありましたが、2,500人のクルー、4,500匹の動物、100台の戦車、24個のスフィンクスなど、莫大な費用を費やした超大作でした。

 1928年のマイケル・カーティズ監督の「ノアの箱舟」。やはりスペクタクル巨編で、デミルを追い越したいために、洪水の見せ場で60万ガロンの水をぶちまけて、不幸にも3人の死者と無数のけが人を出しました。

 1950年には、やはりデミル監督が「サムソンとデリラ」を作っています。イスラエルの獅子サムソンの生涯を描きました。クライマックスでは、大寺院が崩壊するスペクタクルなシーンがありました。

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 1951年には、「愛欲の十字路」が上映されています。グレゴリー・ペックが、齢を重ねたダビデ王を演じています。内容は、年を得たダビデが、若き日の自分の活躍と信仰心を思い起こすと言うものです。

 1957年に、再びデミル監督が「十戒」を監督しています。企画から題材の考証研究に3年、現地のロケハンとシナリオ執筆に3年、撮影準備に3年、ロケ撮影に3ヶ月、セット撮影に4ヶ月、計9年7ヶ月の日数を費やし、1,350万ドルを費やしました。24人もの大スターと25,000人のエキストラが動因されました。小道具の数100,000というのは、ハリウッドの最高記録です。

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 1959年には、「ソロモンとシバの女王」が上映されています。ソロモン王をユル・ブリナーが演じています。
 翌年、イタリアのバルディとフランスのボライエが「ダビデとゴライアス」を撮っています。イスラエルの羊飼いダビデと、ペリシテ軍の巨人との戦いを描きます。尚、預言者サムエルを、オーソン・ウェルズが演じています。

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 1961年には、イタリアのアルドリッチ監督が「ソドムとゴモラ」を撮っています。アブラハムの甥のロトが、背徳の街で遭遇する事件を、ソドムの滅亡などの見せ場と共に描いています。

 1966年、旧約聖書それ自体をベースに、ジョン・ヒューストンが「天地創造」を撮っています。アメリカ、イギリス、イタリアのスターが集まった一大スペクタクル映画です。ノアの箱舟や、バベルの塔の崩壊など、おなじみの物語が綴られます。

 さて、近年になってからも、天地創造やダビデやサムソンの物語のリメイク的作品やルツの物語など、旧約聖書題材の映画が作られていますが、以前ほどの大作はなくなって、B級、C級映画になっています。聖書題材の映画は、もはや大物プロデューサーや映画会社の興味をひかなくなりました。1980年代の二つの作品を取り上げて、聖書映画の歴史"旧約聖書編"を締めくくります。

 1984年の「サムソンとデリラ」。1950年のデミル監督の作品と比べると、あきらかにスケール・ダウン。マックス・フォン・シドー(偉大な生涯の物語、エクソシストなどに出演)の他、スターらしいスターも出ていません。

 最期にご紹介するのは、1985年の「キング・ダビデ」。なんとイスラエルのダビデ王を、リチャード・ギアが演じています(もっとも今彼はチベット仏教に傾倒していますが…)。監督は、オーストラリア出身の新進気鋭の若手監督ベアフォード。聖書の物語を史実に忠実に描こうとしている一方、極力ダビデ王の内面を描こうと努力しています(しかし、聖書の解釈という点から言うと、いくつかの疑問点や正しくない解釈も指摘できますが)。最近では、スケール、内容ともなかなかがんばった旧約聖書題材の映画です。尚、主演のリチャード・ギアは、後に「なんで、あんな映画に出たのか自分でもわからない」と述べたとか…。






このページの引用・参考文献:

映画のあゆみ(世界映画史入門)   飯島  正 著 (泰 流 社)
世界映画名作全史(戦前編)      猪俣 勝人著 (社会思想社)
映画千夜一夜  淀川長春・蓮寛司重彦・山田宏一対談 (中央公論社)
大予言と奇蹟ファンタジー             (新 書 館)
SFX映画の世界(第4巻)     中子 真治 著 (講 談 社)
その他各種映画ビデオ、映画パンフレッ