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「ゾ ン ビ」   (記:2001年9月)

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 まだ多少の暑さの残るこの9月、怖い映画を取り上げましょう。タイトルは「ゾンビ」。"怖い映画"と言う言い方をしたけれど、オカルト映画とも違うし、単なるモンスター映画とも違う。ジャンルとしてはSFに近いと思うのだが、一般にはスプラッター・ムービー(※血飛沫の飛ぶ残酷映画のこと)に分類されているようだ。いずれにせよ、B級映画の扱いの域をでない。

 B級評価…実は、僕はこれが気に入らない。どう引っくり返しても、B級映画から抜け出せない映画。監督であるジョージ・A・ロメロは、過小評価されているような気がしてならない。このゾンビシリーズは、3部作である。一作目は"NIGHT OF THE LIVING DEAD(直訳すれば、生ける死人の夜)"、二作目が本作"ゾンビ"(原題:DAWN OF THE DEAD/直訳すれば、死人の夜明け)"、そして三作目が"死霊のえじき"(原題:DAY OF THE DEAD/直訳すれば、死人の日)。題名からも分かる通り、ビジョンを持った3部作である。わずかなゾンビたちが、次第に勢力を増して、やがては地上の支配者(最もゾンビ自体は支配しようなどとは考えていない。脳が腐っているのだから…)となっていく過程を、全3作で描いている。いずれの作品も秀作で、本作はその真ん中に当る。いずれも時代の背景は同じだが、登場人物などに関連はない。

 で、このゾンビはどんな映画かと言うと、国中で死人が"ゾンビ"として生き返っている。テレビなどのマスコミも、上へ下への大騒ぎ。ゾンビ発生は、この世の終わりの前兆だとか、宇宙からの光線で死人が生き返ったのだとか、討論のぶつかり合いだけで何の対策もない。その間にも人々はゾンビに襲われ、ゾンビの数を増やしている。現場でゾンビを目の当たりにしたSWAT隊員2名は、テレビ局の友人たちを連れてヘリコプターで街を脱出する。
 そして、物資の豊富な広大なショッピングセンターに立てこもる。しかし、周囲には青い顔をした腐りかけたゾンビ達の群れが取り囲む。果たして、彼らはどうなる…と言うストーリー。出ている俳優は、この映画以外では見たことのないような人ばかり。はっきり言って、どんな経歴の俳優なのか全然分からん。しかし、ロメロがうまく見せるのだ。


ゾンビImaged by JOLLYBOY

 この映画は、最初は人間がゾンビを恐れて逃げ惑うのだが、次第に群れのなって徘徊するゾンビが哀れに見えてくる。何でも揃っている衣食住の保証された空間で、ただ一つ"自由"だけのない人間の生活と、ただ生きている人間を求めて彷徨う活ける屍"ゾンビ"の対比が、コミカルな感じに見えてくる。この映画、単に現代文明に対する批評だけでなく、生きるとはどういうことかという問い掛けをしながらも、超エンターテイメントに仕上がっている類希なる作品だと思う。(スプラッターな残虐場面がなくても成立する映画だと思うのだが)このアナーキーな残酷なストレート描写が、この映画のカルト的な人気を保っているとも言える一方、このスプラッター場面がなかったらB級映画以上の評価を得ていたかもしれない。いずれにせよ、僕自身のなかではこの作品とロメロ監督は、A級評価なのだ。