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「トップ・シークレット」   (記:1999年11月)

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 今回ご紹介するのは、「トップ・シークレット」。1984年の作品。なんとこの映画、本国アメリカではそこそこヒットしたものの、日本ではあまりの客の不入りに、たった2週間で上映を中止されてしまったという、とても不運な映画なのだ。かく言う僕も、不覚にもロードショーでは本作を見ず、後にビデオで見た。しかし、この作品はとても優れているのだ。今までビデオで、10回以上見てしまった。

トップ・シークレットImaged by JOLLYBOY

 で、どんな映画かと言うと、パロディー満載のナンセンス・コメディーなのだ。コメディーにも色々あるが、例えば「バック・トュー・ザ・フューチャー」は、 "脚本(ストーリーと構成)"のしっかりした優れたSFコメディーに仕上がっていた。一方、本作「トップ・シークレット」はストーリーは在って無いようなもので、さして重要ではない。この映画の笑いの本質は、ひたすらシーン毎に繰り出されるナンセンスなプロットの連続!にある。しかも、たった1シーンのくだらないギャグのために、豪華なセットや小道具などを惜しげも無く作ってしまい、名優を徹底的にくだらない脇役に使ってしまうのだ!その辺が安っぽいコメディー映画とはスケールが違うのだが、映画自体は大作感など微塵も感じさせず、くだらなさを徹底して極めている。

 で、肝心のストーリーなのだが、在って無いようなものなので簡単に済ませよう。アメリカの人気ロック歌手のニックが、国際文化祭に出演するため東ドイツ (まだベルリンの壁崩壊前だったのね)へ行くが、そこで東独軍の陰謀に巻き込まれると言うストーリーだ。この主演のニック役を、なんとヴァル・キルマーが演じているのだ!ニックの役は、明らかにエルビス・プレスリーのパロディーで、登場する歌もエルビスのパロディー。他にも、懐かしい曲のパロディーが登場する。また、映画の名シーンのパロディーも多数出てくるので、映画ファンは要チェック!ナンセンスな映画だが、オマー・シェリフ、ピーター・カッシングら名優も登場しているのだ。この辺が、懐の広さと言おうか、凄いところ。

 まあ、この映画が面白いのは当然と言えば当然で、なんせ"ジム・エイブラハムズ"と"デイビットとジェリーのザッカー兄弟"の黄金トリオが作ったのだ。彼らを知らない人のために簡単に紹介すると、彼らは"笑い"に命をかけている人達なのだ!今まで、「ケンタッキー・フライドムービー」「フライング・ハイ」を初め、コメディー映画の名作を次々と生み出してきた人たちなのだ。後に映画化もされたテレビシリーズ「裸の銃を持つ男(原題:ポリス・スクワァッド)」は、ナンセンスコメディー・ドラマの金字塔と言っても過言ではないだろう。その脚本の密度の濃さから、6話しか制作できなかったのは残念なところ(このシリーズも、僕は十回以上見ている)。

 と言うわけで、この映画を褒めちぎったが、それでも日本では2週間で上映を打ち切られたのも事実。まだ日本人には、このナンセンスの感性は早過ぎたのかもしれない。