色んな国の言葉を学ぶ

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1.日本語について考える

良く知られた世界のジョークから。
豪華客船で火災が発生。船長は、各国の人々にスムーズに海へ飛び込んでもらいたい。
そこで、日本人にはこう言った。
「もうみんな飛び込んでますよ!」

 色んな国の言葉に取り組んでいる最中ですが、やっぱりベース基地は母国語の"日本語"。日本語って、難しい。日本人にとっても難しいのだから、外国の人にとってもすごく習得困難な難しい言葉なのだろうと思う。

 まず、日本語の何が難しいかと言うと、第一に物理的(物量的)にたいへんな事である。
 50音のひらがなが基本と言うものの、実際の生活ではこれではどうにもならない。会話はともかく、数千と言う漢字を覚えないと生活が成り立たない。本が読めない、手紙やメールが読めない、各種説明文が読めない。日本人である僕でも、小説を読んでいて未だに読めない漢字が次々と出てくる。しかも漢字には訓読みや音読みがあり、また漢字同士の組み合わせにより、予想もつかない読み方になったりもする。数十字のアルファベットの組み合わせで単語を形成している国の人には、漢字の習得はたいへん困難な事だと思う。日本語を覚える事って、漢字王や雑学王になる事に近い気がする。

 そして、日本語の習得の言葉でもっと困難な事は、立場や状況によって言葉の使い方を変えなければいけない点にある。英語でも、目上の人や地位のある人に"Sir"をつけたり、若干の丁寧な言い方にしたりはするが、それは日本の比ではない。日本では、話す相手や置かれた状況によって言葉の使い方が、万華鏡の様にくるくると変わる。
 上司は部下に「ご苦労様」と言うが、部下は上司に「ご苦労様」とは言えず、部下は上司に「お疲れ様でした」と言わねばならない。年上の人は年下の者に向かって「おはよう」とは言えても、年下の者が目上の者に「おはよう」等と言えば不躾となる。お客様への言葉遣いとなると、奇々怪々でもっとよく分からなくなる。"禁煙"つまり"煙草を吸ってはならない"を伝えるのに、"お煙草はご遠慮させていただきます"と言う表現になる。禁止と言う明確なルールを伝えるのに、"ご遠慮"とか"させていただきます"と言った"お客の癇に障らない"オブラートに包んだ表現になってしまう。
 挨拶や日常の会話から、電話の取り次ぎや接客まで、対応の相手や状況によって、言葉の使い方や礼儀の作法ががらりと変わる。日本人であっても、言葉の使い方をけっこう間違える。これを、日本の微妙な社会的関係を知らない外国人が覚えると言うのは、漢字を覚える以上にたいへんな事だと思う。
 何故こんな事になっているかと言うと、日本と言う国が関係性で生きる社会・文化、つまり"村社会的な考え方"がベースにあるからである。どんな言語の背景にも、その国独自の文化や社会がある。日本は、個人の尊重よりも、社会の中での立場と言うものを重視する傾向がある。これは日本と言う国が、閉ざされた"島国"で民族構成や言語が"ほぼ単一"であり、"農村社会"であった、と言う事に起因しているのだろうと思う。
 文化や言語が異なる多民族によって構成される国家は、共通の言語や手段によって、何としてでも具体的に明確なコミュニケーションを図る必要がある。一方で、日本ではそう言う必要が無く、「言わなくても分かるだろ?」と言う暗黙の了解が求められたりする。
 狩猟をベースとした社会では、一家の大黒柱が成果をあげられなければ、その家族は生きていけない。対する農村をベースとした社会は、社会が共同で働かなければ収穫を得られない。一人の力では、農業を維持する事はできない。必然的に家族や村全体の総合力、つまり"和"が必要になる。日本は、社会の和に基づく社会を形成してきたので、それは自ずと個人主義(個人の成果主義)に基づく社会とは別のものになった。
 日本人は、社会で生きる文化、もっと極端に言えば言えば"社会全体の力によって個々人も生き延びる社会"を形成してきたので、社会での立場が重んじられる事を人生の大切な指針とする傾向がある。だから、どの分野でも、(若い者が能力を発揮して)目上の者に相談無く勝手に事を進めると、"挨拶がなかった"とか"無礼である"と言われて、反発を食らったり、叩かれると言った事が起きやすいのである。そのように、日本人は社会の中で、自分の立ち位置を確かめ、いかに他者との関係をこじれさせずスムーズに調和させていけるかを考えながら言葉を選び、態度を決定し、生きていく必要があるのである。よって、部下と同僚と上司に、お客に、家族に、友人に、それぞれの社会関係に相応しい言葉を使い分けているのである。
 そんな背景があって、日本語は複雑怪奇に出来ていて難しいと思うのである。

 日本で生きていく以上、これからも日本語は日々精進していかんとなぁ~。

(2007年9月30日記載)


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