心の中のヒーロー列伝!

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実在人物編

★ケビン・シュワンツ (2010年6月20日記載)

 僕は、ワールドグランプリ(WGP)が大好きだった。WGPが好き過ぎて、次々と6台のバイクを買い替え続け、片山敬済やトップライダー達のライディング・テクニックの本を読み漁り、そして実際にバイクで毎週"某峠"に通って理論を実践し、遂にはハイサイド転倒を起こして脚を骨折してしまったほど…それほど、WGPライダー達の美しいライディングとレースに傾倒していた。

ヤマハYSR<
峠で転倒した時に乗っていたヤマハYSR

 WGPがMotoGPに移行してからはほとんど見なくなったけれど、昔は深夜のWGP放映をテレビにかじりついて見ていた。WGPのビデオも、年間総集編が出ると必ず買っていた。

WGPビデオ
1976~1999年のWGPビデオ

 ワールドグランプリについて簡単に解説すると、1949年に始まったバイクのロードレース世界選手権である。昔は、50cc、125cc、350cc、500cc、そしてサイドカーなどのクラスがあり、後に50ccの代わりに80ccになり(後に80ccクラスは消滅)、また350ccとサイドカーが無くなって、125cc、250cc、500ccの3クラスとなった。WGPは、2002年からMotoGPに移行し、500ccは2ストは500cc以下、4ストは990cc以下体制へと移行した。その後、2ストエンジンの禁止や排気量の引き下げなどの種々変更が行なわれ、現在に至っている。
 僕が、MotoGPになってロードレースの世界選手権を見なくなったのは、このマシンのレギュレーションが僕には今ひとつしっくり来なかった(※だって排気量もエンジンのシステムもまったく違うマシンが、同じクラスで戦うって納得いかなかった)のと、ロードレーサー達のスターの輝きが僕にはリアルに感じられなくなったからだ。キング・ケニー(ケニー・ロバーツ)、ファースト・フレディ(フレディ・スペンサー)、ステディ・エディ(エディ・ローソン)、ロケット・ロン(ロン・ハスラム)、無冠の帝王ランディ・マモラ、いぶし銀の走りクリスチャン・サロン他、チャンピオンから無冠のライバルまで、個性的な面々がキラ星のごとく輝いていた。彼らの特出していた個性は、WGPをかなり面白くしていた。僕が熱中してWGPを見ていたのは、ミック(マイケル・ドゥーハン)がチャンプの頃まで。バレンティーノ・ロッシが台頭してきた頃から、(レギュレーションの変更などもあり)ほとんど見なくなった。

ケビンシュワンツ物語 
ケビンシュワンツ物語(ビデオ)

 さて、本題。僕が、歴代WGPライダーの中で最も好きなのが、1964年テキサス生まれの"ケビン・シュワンツ"。単なる記録上の事で言えば、彼よりも偉大な記録を築いたチャンプ達は大勢いる。例えば、先述のロッシの留まることを知らないかのような4つのクラスにまたがるタイトル獲得記録は凄いし、アゴスティーニの過去のタイトル獲得保持数も凄い。対するケビンシュワンツのタイトル獲得は、1993年の一回きりである。しかし、このケビンの走りは見ているものを熱くさせた。日本のプロ野球に例えるなら、記録の王貞治、記憶の長島茂雄で言うところの、"記憶の長島"がこのケビン・シュワンツだった気がする。
 1980年代後半から1990年代の500ccクラスは、ヤマハとホンダが凌ぎを削っていた。正直、スズキのマシンは誰の目にも戦闘力が劣って映っていた。ケビン・シュワンツは、そんなスズキのエース・ライダーだった。しかし、ケビンは決して諦めることはなかった。戦闘力の高いマシンを操る手ごわいライバル達に対して、ケビンは自分にしか操れないようなカリカリ・チューン(?)のマシンでチャレンジを続けた。彼のライディングは、いつ見ても熱かった。トップか、さもなくば転倒!そのため、タイトルを獲得できそうな勝利回数を挙げた年もリタイアが多く、タイトルを逃してしまうこともあった…。馬鹿と言えば馬鹿かもしれないが、勝ちか負けか、0か1か、白か黒か…しかないケビンの"勝ちにこだわる"ライディングは見るものを熱くさせた。
 また、彼は、始終ゼッケンナンバー"34"にこだわった。それは、かつてバリー・シーンが、チャンプイヤーにもゼッケンナンバー"7"しか付けなかったのと同じぐらいの、ケビンのこだわりだった。こうした"こだわり"のケビンの個性に、多くのファンが共感した。僕もその一人だ。

ケビンのスズキRGB500γ
ケビンのスズキRGB500γ・1993年型(マイコレクションより)

 有名なヒーローには、必ず良いライバルがいる。ケビン・シュワンツにも、良き好敵手がいた。3度の500ccタイトルを獲得したウェイン・レイニー、その人である。僕は、パーフェクトな走りを見せるウェイン・レイニーもケビンと共に好きだった。だから、ケビン・シュワンツのビデオはもちろん買ったが、ウェイン・レイニーのビデオが出た時にも躊躇せずそのビデオも買った。

 ケビンとウェインのライバル関係は、WGPで突如生まれたものではない。アメリカでのスーパーバイク選手権時代からの、長いライバル関係なのだ。カリフォルニア生まれのウェインとテキサス生まれのケビンは、同じ才能あるアメリカンライダーとして、若いときから闘い、そして常に比べられてきた本物のライバル同士である。
 しかし、1993年にウェインはイタリアGPでハイサイド転倒を起こし、脊髄を損傷した(※彼はこの事故で下半身不随となり、絶頂期に引退となった)。このライバルの戦線離脱で、この年にケビンは初のタイトルを獲得する。しかし、ケビンはレースでウェインを打ち負かしたいと思っていた。"勝ちか負けか"…それが、ずっと彼のやり方だった。ケビンは言った。「彼のケガが治るならば、(チャンピオンの)タイトルはいらない」。ケビンは落胆した。
 ケビンは、ライバルのウェインを失った気持ちからモチベーションを保てず、結局1995年序盤で引退した。ケビン・シュワンツにとって、ウェイン・レイニーと言うライバルはそれほど重要で大切な存在だったのである。
(追記:シュワンツの引退の別の要因は手首の骨折の後遺症で移植しても治らないことだった…と、バイク好きの友人から聞きました)。

 歴史に名を刻む者達には、不思議な物語がある。大金や名誉を獲得する…そう言ったこと以上に、我々に深い感銘を与えてくれる"何か"。ケビン・シュワンツのレース人生に対し、僕はそれを感じた。いつかケビンやウェインのような熱い"何か"を僕自身がMotoGPで感じられるようになったら、また僕はそれに熱中するようになるかもしれない。

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2013年7月28日追記:ケヴィン・シュワンツが鈴鹿8耐に出場!
ケヴィン・シュワンツが鈴鹿8耐に出場!ケヴィンの往年の、あの独特のライディングフォームを見られて、感動!良きライバルレイニーのヘルメットを被って(涙)。
 
ロケット・ロンことロン・ハスラムの息子、レオン・ハスラムも出ていて嬉しい。レオンのチームは優勝で、ケヴィンは3位!