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第二十章 声との対話

 目の前のシリウス猿人が斧を振り上げた瞬間、カスパールはすべてが終わったと思った。その時、遠くで鬨の声が上がるのが聞こえた。シリウス猿人の動きが止まり、斧を振り上げたまま後ろを振り返った。彼の仲間がやって来て、二言、三言、吼える。すると、斧を振り上げた猿人はそれを振り下ろすことなく、カスパールに一瞥をくれると、仲間と共にその場を去った。広場中の石器を持った猿人達もそれに続き、一斉に岩山を下って行った。
 カスパールは、たった一人そこに残された。広場には、仲間の残骸が転がっている。彼は、辺りを見回す。シリウス猿人は、一人もいない。マウス・スピーカーの音をオフにすると、遠くから猿人達の吼える声と争う音が聞こえてきた。カスパールの左腕は失われ、右足の損傷も激しい。体中が、凸凹になっている。彼は、もはや立ち上がる事すらできない。
 カスパールは、またもや仲間を守る事ができなかった。たった一人の仲間すら救えず、前回と同様彼のみが"生き残って"しまった。シリウスの第二惑星のドーム探査も失敗に終り、エンタープライズ号は高度のシリウス文明に関するデータをほとんど持たぬまま地球に帰還する。彼を支配する感情は、シリウス猿人に対する”怒り”でも、仲間を失った事に対する”悲しみ”でも、彼に与えられた使命を果たせなかった事に対する”後悔”でもなかった。それらすべてをひっ包めて、異常な過負荷がカスパールの演算回路に加わった。それは、”絶望”として認識され、プログラムとメモリーに記録された。彼は、今正に失意の中にあった。
 軌道上のエンタープライズ号から、カスパールに呼びかけがあった。
「カス、聞こえるか?君は、まだ無事なのか?」
バルタザールの声だった。破壊されず稼動しているロボットは、バルタザールとメルキオールと、そして彼だけになってしまった。カスパールは、答えようとした。ところが、次の瞬間目の前が真っ暗になった。アイ・カメラの接続配線が、断線してしまったのか。真っ暗な空間で、彼は言った。
「私は、まだ何とか機能しているが、動くことはできない。バル…万策尽きたようだ。」
その後、彼はしばらく待ったが、船からは何の返信もない。彼は、チェック・プログラムを走らせ、電波送受信回路を調べた。アンテナは、エンタープライズ号からの電波を受信していない。電波の受信回路も、とうとう壊れたのか?アイ・カメラを、通常モードから赤外線暗視モードに切り替えてみる。しかし、やはり視界は戻らず真っ暗なままだった。再び、カメラを通常モードに戻す。やはり、何も見えない。腕と足以外の部分のダメージも、確かにかなり大きかった。今、カスパールは永遠に活動を停止しようとしているのだろうか?激しい行動の連続だったので、バッテリー残量も少なくなっている。激しい動きの無い待機モードなら、バッテリーは十日以上もつ。しかし今だと、このまま待機モードに切り替えても、五日と持たないだろう。いずれにせよ、シリウス猿人が戻ってきたら、彼はバラバラに分解されてしまうのだから、バッテリー残量などどうでもよい事なのかもかもしれない。
 そんな事を考えていると、暗闇の中に不思議な幾通りもの光の筋が見えて、同時に反響するような音と声が聞こえた。
「カスパール。」
次の瞬間、いきなりアイ・カメラの画像が戻ってきた。明るい陽射しが目に飛び込んで、カスパールは適正露出に一秒弱を費やした。回路の断線はなかったのか?しかし、彼の目に飛び込んできた光景は、先ほどまでの岩山の狭い広場ではなかった。遥か彼方まで、広大な大地が広がっている。彼の演算回路は、その状況を的確に把握できない。なんと言うことか…彼は、エアーズロックの頂上に、たった一人で座っていたのだ。
再び、声が聞こえた。
「カスパール。」
その声は、イヤー・マイクが実際に捉えた声でも、電波が捉えたエンタープライズ号からの通信音声でもなかった。その声は、直接カスパールの頭脳に響いたのだ。
「バル?メル?」
彼の問いに、答えは無かった。その代わりに、彼の前に北村陽一郎博士の姿が、突然現れた。カスパールの演算回路は、この状況を把握・理解しようと必死に稼動し続ける。
「北村博士?」
北村博士は、一歩一歩カスパールに近づいてきた。
「やあ、カスパール。」と、北村博士。
「ここはどこなのですか、北村博士?どうしてあなたがここに?」
「君の記憶の中だよ、カスパール。正確には、君の記憶から再構築された場所だ。君の実際の体は、今ドームの中にある。ところで…ここは、エアーズロックと言う場所なのかい?」
北村博士の問いに、カスパールは短く答えた。
「はい…。」
「君の横に座らせてもらうよ。」
「どうぞ、博士。」
北村博士は、動けずに座っているカスパールの右隣に座り込んだ。北村博士は、広大な砂の大地を見回して言った。
「これが君の心の故郷の風景か…。素晴らしいね。」
カスパールは、北村博士の横顔を見つめた。
「ここは、仮想空間なのですね…。あなたは、誰なのですか?」
北村博士も、カスパールの方を向いて言った。
「これは失礼。挨拶が遅れてしまった。私は…いや正確には”私達”なのだが…、君が必死で辿り着いたドームの管理者だよ。君の記憶から、もっとも対話に相応しい姿を選ばせてもらった。北村博士と言うのは、君を作った人物らしいね。」
「はい…。では、あなた方は”シリウス人”なのですか?」
北村博士は、しばし沈黙した。
「残念ながら、私はシリウス人ではない。君達”ロボット”の存在もたいへんユニークだが、私も君達と同様に、ある種のプログラムに基づく、作られた存在なのだ。君達の時間で数百万年に渡って、この惑星のドームを管理している。」
エアーズ・ロックの頂上にいる仮想実体の二人は、まるで老人同士がお茶を飲みながら会話をするように、淡々と話しを続けた。
「カスパール、最初に君に謝っておきたい。”シリウス猿人”と君達が呼ぶこの惑星の生物が、君の仲間を破壊する間、私たちは何もしなかった。私たちは、惑星の生物の行動や生態環境に干渉することを、どんな場合も許されていないのだ。君達が、実力でここへ辿り着くのを待つ他なかった。」
カスパールが言った。
「多くの仲間を失ったことは、残念でなりません。しかし、こうしてシリウス人の高度文明の一端に触れることができたのは、幸いな事です。私は…いや、これも私達人類は、と言う意味ですが…、多くの謎を解明したいのです。その為に、多大な犠牲を払ってここまで来ました。答えていただけるでしょうか?」
北村博士は言った。
「私に答えられる範囲なら、喜んで答えよう。」
カスパールは、質問を整理しながら尋ねる。
「ここのシリウス人は、どこへ行ってしまったのでしょうか?あのシリウス猿人達は、彼等の退化した末裔なのでしょうか?この惑星や地球にあるドームは、何の目的で建てられたのでしょうか?」
北村博士は、丁寧に答え始めた。
「ここのドームも地球のドームも、シリウス人が建てたものではない。実は、この銀河系の住人が建てたものですらないのだ。私たちのマスターは、別の銀河からやって来て、今も宇宙の探査を続けている。そう、超銀河種族なのだ。」
カスパールは、その答えに驚いた。銀河から銀河へ…そんな途方も無い距離を移動する方法が、果たしてあるのだろうか?
「ドームには二つの役割が在って、その一つが情報収集。このシリウス第二惑星の巨大ドームは、この周辺の太陽系探査の為の情報の集積ステーションで、他の太陽系に建造された小型ドームは、情報収集の最前線基地と言ったところかな…。各ドームで収集されたデータは、この巨大ドームに集められる。私が、こうして君と地球の言葉で自然に話せるのも、地球から随時膨大なデータが送られてきているからなのだ」。
「では、シリウス猿人は、この高度文明とは何の関係も無いのですね。」と、カスパール。
「君達を襲ったシリウス猿人は、数百万年もの間ほとんど進化していない。まあ、シリウスの二つの太陽の複雑に変化する重力と、シリウスAの強力な太陽放射の下で、ここまで進化しただけでも奇跡と言ってよいのだがね。この惑星は、それほど過酷な環境なのだ。彼等が地球の人類より進化することは、まずないだろう。」
 太陽は、エアーズロックの真上に昇った。カスパールと北村博士の影は短くなり、大地の赤い砂が陽に燻られている。北村博士が、ゆっくりと立ち上がった。
「カスパール、落ち着いたかね?」
「はい。もう、混乱はしていません。」
カスパールが答えると、北村博士が微笑んだ。
「では、君にこのドームの真実の姿を見せてあげよう。」
そう言うと、一瞬にしてカスパールの視界は真っ暗になった。再び、暗闇と静寂が辺りを包む。どこからともなく、幾筋もの光が輝き出した。どこにも照明器具はないのに、ドーム内部に光が溢れる。カスパールは、座ったままドームの天井を見上げていた。その視線の先は、先ほどまでシリウス猿人が斧を振り上げていた光景だったのに、今はドームの天井が広がっている。直径五十キロと言う巨大ドームの内部光景は、形容のしようが無い。比較対照物が無く、かつ壁と天井が大き過ぎて、数値では分かっていても正確な大きさが実感できない。視覚情報が狂ってしまうほどの巨大さ。カスパールが、ゆっくりと視線を下に移すと、ドームの底部には同じ形をした物体が数体あった。円筒形で中央が膨らんでいて、表面はドームと同様に滑らか。地球の流線型をした高速鉄道車両に、似ていなくも無い。一体の長さは、一キロほどだろうか。ドームの中には、他には何も無かった。
先ほど北村博士の姿を採っていたドームの管理者が、ドーム内に”声”を響かせた。
「カスパール。これが、君が命をかけて見ようとしていたドームの内部だ。思ったより、シンプルではないかね?君の前にある物体は、ある種の乗り物だ。君達の言葉を借りるなら、宇宙船と言ってよい。」
カスパールは、驚いた。
「あなた方は、宇宙船を持っているのですか?では、何故私達は、自力でここに来る必要があったのですか?逆にあなたがたが地球に来てくれることも、可能だったのではないですか?」
「可能ではある。しかし、私の超銀河種族のマスターが探しているのは、恒星間航行種族なのだよ、カスパール。ここの猿人たちのような、石器時代の種族ではない。私達がこうして正体を明かす相手の最低限の条件は、恒星間航行をする技術を持った種族であることだ。だから、君達はそれが自力でできることを示すため、ここに直接来る必要があった。そして君達は、それを成し遂げたのだ。」
“声”は、特定のスピーカーや場所から聞こえているのではなさそうだった。光と同様、ドーム中に声が溢れている。カスパールは、思案した。聞きたいことは、山ほどある。
「何故、超銀河種族は、恒星間航行種族を探しているのですか?」
“声”が答える。
「宇宙には無数の銀河があり、各銀河は数多くの太陽を持つ。太陽には、惑星を持つものもあり、そこで単純な生命が生まれることもある。その中には、進化して高度な器官を手に入れるものもある。また、その中のいくらかは知性を持つようになり、その中でもごく僅かな知性体だけが恒星間航行を成し遂げるまでに進化する。」
「地球にも、そういう理論が存在します。銀河系内の一定条件を満たした惑星には、ある程度知性が生まれる可能性がある、と。」と、カスパール。
「可能性どころではない。君達の銀河系には、二千億もの太陽があり、その数倍もの惑星があるのだ。銀河は、知性を持つ生命で溢れ返っているのだよ、カスパール。しかし、知性体がお互い出会える確率は、限りなくゼロに近い。出会えるほど近くの星に、恒星間航行種族が生まれる確率は、残念ながらゼロに等しい。もし近くの恒星系で高度な二つの文明が誕生しても、時代がたった一万年ずれただけでも、彼等は出会う事ができない。私達のマスターは、恒星間種族が出会って、お互いに発展することができるように手助けをしたいのだ。そのために銀河を巡り、あちこちにドームを建設し、巨大なネットワークを築いているのだ。」
カスパールは、その壮大なプロジェクトを想像することすらできなかった。あまりにスケールが大きすぎる。しかし、今は少しでも多くの事を聞いておきたい。
「まだ尋ねたいことがあります。私達人類は、あなた方のマスター”超銀河種族”に、直接会うことはできないのでしょうか?」
「それは、君の選択による。」と、ドームの”声”。
「私の選択?」と、首を傾げるカスパール。
「このドームに来た恒星間航行種族だけが、超銀河種族に会いに行くことができる。実質、君しかいない。君の仲間のロボットは、この惑星の軌道上にいる。残念ながら、僅か二体ではここに到達することができないだろう。地球人類が、ここに自力で到達できるようになるには、あと数百年若しくは数千年が必要かもしれない。すると、今可能性があるのは君だけだ。君がドームの宇宙船に乗って、私達のマスターに会いに行くのだ。もちろん、私達は何も強制しない。他の種族の意思に反して干渉する事も強制する事も、一切禁じられているのだ。ドームを出て、再び君達の仲間の所へ戻ると言う決断を下しても、私は何ら反対しない。君自身の、自由意志を尊重する。」
“声”の説明に、カスパールが答える。
「ドームを出たら、私はシリウスの住人に破壊されてしまうではないですか?」
「彼等の意志次第だ。私は、彼等の行動に何ら干渉できない。おそらく、君は破壊されるだろう。」
「では、選択肢は一つですね。私は、超銀河種族に会いに行きます…しかし、まだ多くの疑問があります。」
カスパールが、不安を伴って尋ねた。”声”が、それを穏やかに受け止める。
「何だね?」
「私の機能は、停止しようとしています。バッテリーの残量も、多くはありません。一番近くのマゼラン星雲に行くのですら、光の速度で十七万年もかかります。私達が乗ってきたエンタープライズ号のような船の速度だったら、三十四万年もかかります。例え私を修理してくれても、数十万年の時の流れの中では、私は間違いなく朽ちてしまうでしょう。私の耐久性は、そこまで高くはありません。精密かつ繊細な電子回路、炭素体を中心とした記憶媒体、腐食性の配線や部品、それらはすべて数百年も持てば良い方でしょう。超銀河種族に会えた時に、私の体でまともに残っているのは、チタニウム合金のボディやカメラのレンズ程度かもしれません…。」
「その心配は無い。私達は、光速を超えることができるのだよ、カスパール。そうでなければ、誰も深宇宙の探査に乗り出す事はできない。」
カスパールは、驚いた。超銀河種族の高度な文明は、どのレベルまで行っているのだろう。
「それは、とても信じがたい話です…。私達地球の理論では、光の速度は超えられない事になっています。まず第一に重量についてですが、物質が光速に近づくに連れて、質量は無限大に向かって増加します。光の速度に達した時、質量は無限大となります。もちろん、無限大の質量に耐えられる物質は存在しません。人類の肉体は、光速に達する以前に完全に潰され、我々ロボットの身体も粉々になり、宇宙船も崩壊するでしょう。つまり、光の速度で飛ぶ光子や素粒子は質量がゼロですが、一方、宇宙船や人間の重量はゼロにすることができません。つまり質量を持った宇宙船は、光速に達する事ができないのです。」
カスパールは、自分がキリストや釈迦に対して説教をする弟子のような気分を味わっていた。今彼が話している相手は、人類よりも遥かに高度な文明を持っている種族なのだ。しかし、彼は話し続けた。
「…第二に時間についてですが、物質が光速に近づくに連れて、物質内の時間の進行がゆっくりになります。光の速度に達した時点で、物質内の時間は停止します。もし…光速を突破することが可能だとして…、物質が光速を突破すると時間は逆行を始め、物質は未来ではなく過去へと進むことになります。それはもはや宇宙船ではなく、タイムマシンと言った方が良いでしょう。第三に、理論上光速を突破する物質は、虚数の質量をもった物質でなければならないでしょう。残念ながら、そのような物質はまだ観測されておりません。」
ドーム内に、しばし沈黙が訪れた。不思議な光が、ドーム内を揺らめいている。
「君は、思い違いをしている。」
”声”は、カスパールに丁寧に言った。それは、親が子を諭すような口調にも似ている。
「この惑星の石器時代の種族は、君達の核融合技術を到底理解できない。同様に、私達の理論や技術を理解するには、君達人類はまだ幼すぎる。君達の諺にも、あったのではないかね…”十分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない”…だったかな?」
カスパールは、人類が投入し得る最高技術によって作り出された最高傑作のロボットだったが、超銀河種族にとっては、このシリウス第二惑星の”石器時代の種族”も”カスパール”も大して変わりないのかもしれない…そう思うと、彼は自分の存在をとても小さく感じた。
“声”は、カスパールの思いを察知したように言った。
「決して君達人類の科学を否定したり、侮辱するつもりで言っているのではないのだ、カスパール。私達のマスターにも、そういう時代がかつてあったのだからね。君達人類は、例えて言うなら、そう、”天体望遠鏡で細胞を観察するような”とてもまどろっこしい大業なことをやっているのだ、今は。人類の多くは、宇宙空間には僅かな水素原子しか存在しないと考えている。君達の宇宙船も、それを利用して航行している。しかし、この宇宙空間には、想像を絶する量の物質とエネルギーが存在している…宇宙は、正に資源の宝庫なのだ。君達人類は、それを利用するどころか、今は観測する事すらできない。大地の下に石油が埋まっているのに、それを知らない石器時代人と同じレベルなのだ。しかし、私達のマスターは、それを十分に活用することができる。カスパール、このドームも、宇宙船も、君が言う所の”虚物質”でできているのだよ。」
カスパールの驚きは、最高潮に達した。驚異の連続だったが、これ以上の驚きは考えられない。”虚物質”。もはや、質問は不可能だった。なぜなら、彼には”虚物質”を理解することができなかったからだ。恐らく人類最高の天才学者も、現時点では”虚物質”が何であるかを正しく説明することはできないだろう。”声”は、続けて言った。
「私は、先ほどドームには二つの役割があると言った。一つは、情報収集の為のネットワーク・ステーションとして。そして、残りのもう一つは、文字通り宇宙船の駅、”ステーション”としての役割なのだ。特殊な宇宙船が無くとも、ドーム間であれば宇宙船は、超光速で移動することができる。私達のマスターは、必要があればいつでもドーム間を超光速で移動できるのだ。この巨大ドームは、この星域の宇宙船の発着場、セントラル・ターミナルステーションなのだ。地球のドームは、ローカル・ステーションといった所かな。付け加えて言うならば、私もこのドームの壁を形作っている”虚物質”の中に住んでいるのだよ、カスパール。」
 カスパールは、今はそれ以上の質問を思い付かなかった。損傷の激しい右足を左足でカバーして、ゆっくりと立ち上がった。どこにいるとも知れない”声”に向かって、静かに言った。
「ここを出発する前に、エンタープライズ号にいる仲間と話がしたい。」
“声”も、静かに答えた。
「了解。彼等と、話せるようにしよう。」
カスパールの電波送受信回路が復活し、アンテナはエンタープライズ号からの電波を捉えた。