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映画を観ると言ふこと   (2007年2月25日記載)

 映画が好き。否、だ~い好き。「映画について語ろうよ」と誰かに誘われたら、きっと何時間でも会話してしまうだろう。映画については色々と書きたいけれど、この1ページに収まるように、特に僕の人生に影響を与えた映画をメインに書いてみたい。

 以前このコーナーで、"本を読む"事の影響について書いたけれど、映画も人生に様々な影響を与える。今の仕事も、映画が決定づけたと言っても過言ではない。それらの映画の想い出。

 話は、初めて見た映画に遡る。初めて見た映画は、幼稚園の時…5歳ぐらいだったか。隣町の2番館公開(ロードショーが終わって時期をずらして公開する事を、当時は2番館落ちと言っていた)で見た"チキチキ・バンバン"である。翼が出てきて空を飛ぶ車のファンタジー物語である。母親に連れられて行ったのだけれど、僕がまったく映画に集中していなかったので、母親はがっくりしたらしい。「せっかく映画に連れて行ったのに、見てないし!」と憤慨気味。そりゃあ、そうだろう…ようやくテレビのウルトラマンやスペクトルマンに慣れてきた幼稚園児に、いきなり洋画を見させられても…。ところがである。僕は何を思ったか、クレヨンを取り出して、画用紙に絵を書き始めた。何かに取り付かれたように、せっせと"何か"を描く。そして絵は完成。親は、その絵を見て驚く。画用紙には、映画館の"スクリーン"と左右の"幕"とそして中央には"翼の生えたチキチキバンバンの車"がしっかり描かれていた。当時はパンフレットなんて買わなかったし、記憶だけで描いたのである。母親は、感激したらしい。その絵を幼稚園の先生に見せるべく、翌日弁当と共に僕に持たせた。これが、初めての映画館&洋画体験であり、母親と一緒に見た初めての(そして恐らくは最後の)劇場映画である。

 その後見た劇場映画は、小学校でもらう割引券(※青少年なんたらかんたら映画鑑賞券)で見られる2番館落ちの"東映マンガ祭"のや"ゴジラ"ばかり。ロードショーで"メカゴジラの逆襲"をやっている時に、僕らは地元の映画館で一作前の"ゴジラ対メカゴジラ"を見ている。そんな感じ。
 チキチキ・バンバンの次に見た洋画は、小学校2年だか3年だかの時の2番館落ちの"イルカの日"だった…渋すぎるぜ…。数年に一回しか見ない(もしくは見れない)劇場洋画としては、小学生にはあまりにつまらなかった。逆一期一会。これを見て洋画に懲り、またゴジラやマンガ・ヒーローの邦画に戻ってしまうのであった。その頃、同級生に"銀座"に行って"ロードショー"を"頻繁に"親と見に行くK君がいた。彼は、公開直後の"ベンジー"や"がんばれ、ベアーズ!"の話をするではないか!羨ましい…うちは貧乏なのか!?そうなのか!?しかも、K君は映画の帰りに"マクドナルド"なるものを食して帰ってくると言うではないか!マクドナルドって何だ?
 ちなみに、僕が生まれて初めてカップヌードルなる物を食べたのも、K君の家にてであった(カップヌードル…当時の僕には不味かった)。

 その後の僕が見る洋画は、"お金のかからない"もっぱらテレビ放映の洋画だった。中でも影響を受けたのが、シンドバッドの冒険シリーズやアルゴ探検隊等のレイ・ハリーハウゼンの特撮映画。着ぐるみの邦画怪獣物と違って、とてもリアルな造型と動き!(ちょっと動きがカクカクしてたけど…)。これが、後々僕のその後の人生を決定付ける布石となる事は、当時の僕は知る由も無い(※実は、僕と同様ハリーハウゼンの影響を受けた映像関係者は世界中にいっぱいいて、今まで僕が出会ったディレクターにも彼のファンがいた)。

 僕が、初めてロードショー公開で映画を観たのは、小学校五年生の時の事である。親父が初めて僕を銀座に連れて行き、当時の日劇で"タワーリング・インフェルノ"を見た。高層ビルの火災の物語であるが、親父は消防士だったのである。そうでなければ、親父は僕を映画になんか連れていかなかったろう。小学5年生なので、字幕を読むのが間に合わなかった…まだ習っていない漢字もどんどん出てくるし…。しかし映画の迫力は伝わったし、すごく面白かった。これが、初めてのロードショーと銀座体験であり、父親と一緒に見た初めての(そして恐らくは最後の)劇場映画である。

 中学校に上がると、僕の生活は一変する。写真部に入部し、なけなしのわずかなお小遣いを、写真と映画にすべて継ぎ込む事になる。ロードショーは高いから、基本は地元の2番館。東京に遠征して見る時は、池袋の文芸座に行く(※今はもう無い)。映画2本を、400円で見れたのだ!電車賃と合わせても、ロードショー映画を見るよりずっと安かった。銀座でロードショーを見る時は、少しでも安く見るため前売り券は絶対買った。この頃になって、ようやくマクドナルドのハンバーガーなるものが、どう言う味なのかを知る。
 この中学時代に映画と写真にどっぷりとはまり込み、これが人生を決定付けたと言って良い。次から次へと映画を観て、パンフレットを買い、チラシをかき集め、サウンドトラックのレコードを買い集め、ロードショー誌やスクリーン誌を買い、アサヒペンタックスSPで特撮写真を取る。そんな日々が続いたこの時期に、完全に僕の人生を決定付ける映画に出会う。テアトル東京でリバイバル公開された"2001年宇宙の旅"である。
 あっ、テアトル東京について一言説明しておこう。昔、東京と大阪に巨大(と言うか横に長い)70mmシネラマ・スクリーンを備えた映画館があった。そのスクリーンで見る映画は、とても迫力があった。"世界が燃え尽きる日"のようなB級映画でさえ、面白いと勘違いしてしまうほどの迫力なのである。そこで、松本零次さんを見かけた事もある。テアトル東京は僕のお気に入りの映画館だったが、残念ながら今はもう無い。
 で、話しを"2001年宇宙の旅"に戻そう。この映画には、二つのショックを受けた。
 一つ目は、そのリアルな特撮映像。円谷プロのピアノ線吊りの特撮とは、もう段違いの遠~い別世界。飛んでいる宇宙船の周囲にピアノ線は無く、しかも中で人間が動いている!本物なのか!?もちろん、そんな訳はないよな!そんな訳で、このあまりにリアルな特撮の世界に引き込まれてしまった。その後、色んな特撮技術解説本を読み漁る事になる。
 もう一つのショックは、特撮映画なのに"映画の意味がまったく分からない"事だった。特撮映画と言えば、宇宙人やらロケットやらが出てきて、分かり易く面白い物語と相場が決まっていた。日本のヒーロー特撮映画なんてその最たるモノ。でも、2001年…は、形而上学・哲学しちゃっている!輪廻転生しちゃっている!なんなんだ、この映画は!?映画の意味を理解するため、アーサー・C・クラークの原作を読み、彼の過去に書いた小説を次々読破し、2001年…関連本も各種読破して、ついぞ僕も立派な一人前の"2001年宇宙の旅オタク"となる事ができた。

 さて、この2001年宇宙の旅ショックも覚めやらぬ頃、僕はお年玉やらお小遣いやらをかき集めて、8mmカメラを買った。8mmって言ったって、ビデオじゃないですよ、フィルム・カメラ!…当時は、まだ民生用VHSすら無かった時代ですから。しかも、単なる8mmカメラじゃないよ、コマ撮りのできる高機能タイプ!このカメラを使って、次々と特撮に挑戦した。ハリーハウゼンよろしく、人形のコマ撮りアニメにも挑戦したのは言うまでも無い。またダグラス・トランブルよろしく、オリジナルの宇宙船を作って撮影したりもした。とにかく、特撮にはまった。しかし、フィルムは長いのでも秒間18コマで3分ほどしか取れない。しかもフィルム代は、とても高い。ついでに現像代も高い。さらに高いのは、映写機や編集機の機材。結局、時間をかけて全部揃えた。だから、映画と写真以外のお金は、びた一文無い!(この8mmカメラだけは、捨てられず記念としてまだ持ってますよ~)。
 特撮、特撮、特撮!中学生の特撮馬鹿!高校受験直前までこんな事を続けていたので、何故か隣のクラスの担任の数学教師から「そんなもん辞めて勉強に集中しろ!」と説教される始末…余計なお世話である。何でも分かっているような事言うが、一教師に人間の一生なんか見通せるものか!!・・・おっと、話が脱線・・・。

 中学時代影響を受けた映画が、もう一本ある。
"スタートレック"?いや、いや、いや!
"スターウォーズ"?ノー、ノー、ノー!
じゃあ、"未知との遭遇"?ノン、ノン、ノン!
…では、何か?その映画のタイトルは"スーパーマン"である。しかも、そのオープニング・ロゴ・タイトルのCGアニメである。もちろん本編も面白かったけどね。CGを本編に本格的に使用したのは"トロン"かも知れんが、僕が影響を多大に受けたのは、"スーパーマン"のオープニングCGである。立体的な文字が、画面手前に"ヴォ~!"と飛んできてすり抜けていくのである。鳥肌がたった。CGってこんな事ができるのか!(当時は、ユーザーフレンドリーなGUIを持つソフトウェアも、高速のレンダリングファームも無かった時代。コマンドラインに立ち向かい、超鈍足のコンピューターに立ち向かった技術者やアーティストに拍手を送りたい!)。
 当時の僕には、CGなんて技術ははるか雲の上の技術。そこで、僕はアナログな方法でロゴアニメにチャレンジした。画用紙と方眼紙を用意して、3次元的に消点を設定して、計算機で文字の角の位置を一つ一つ計算し、一枚ずつ文字をレタリングして、数十枚のロゴアニメの原画を書いて着色し、一枚ずつコマ撮りした。現像から上がってきたフィルムを、映写機にかけて試写。で結果は?ただ、ただ、愕然とした。なんだこれは!?スクリーンに映し出された映像は、僕が頭の中で想定していた"スーパーマンのオープニングのような"タイトルアニメーションとは、似ても似つかぬ惨憺たる映像だった。…ひどいアニメーションだった。何日もかけた大作だったのに…。しかしこの体験が、現在の僕の職業である"CG"を始めようと思うに至った原体験に他ならない。

 高校時代、大学時代も、映画はたくさん見た。影響を受けた映画もたくさんある。しかし、それは主に人生訓であったり何らかの哲理であったり、単なる優れた娯楽としてであったり、そう言う面での影響であり、中学時代の様に"人生そのものを変えるような"大きな影響ではなかった。

 今まで数多くの映画を見てきた。社会人になってからも、年間20~30本ぐらいは劇場で映画を見てきた。ビデオやDVDで見たものも含めると、年間かなりな数の映画を見ていたと思う。結婚して、子供もできて、余暇の時間も無くなってからは、かなり見る映画の本数も減ったけれど、これからも面白い映画に出会いたいと思う。
 また、子供達にも素敵な面白い映画をいっぱい見せたいと思う。昨年夏、ピクサーの映画"カーズ"のロードショー初日に、上の子(当時3歳)を映画館に連れて行った。息子の映画館デビューである。息子は、初めての映画館にワクワクしていたようだ。車は大好きだし、ピクサーアニメも大好きだ。最初はカーズを見入っていたが、上映1時間ほどしてソワソワし出し、僕の顔をチラチラと見る。1時間ちょっとして、僕の耳に「…出たい」心境を小声で語った(周りに迷惑にならないよう、息子なりに気をつかったのだろう)。で、映画館を脱出。3歳なのに、1時間以上も集中力を保ったのだから良しとしよう。まだ、DVDのトトロなどの方が楽しいようだ。この映画館デビューの想い出は、息子にはどう言う風に記憶に刻まれているのだろう?

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 いやぁ、映画って本当に面白いですね…。映画、バンザイ!


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