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3年間の育児を終えて   (2006年3月5日記載)

 先月、上の子(男の子)が無事3歳の誕生日を迎えた。この3年間で、色々な事を学び、色々な事を感じた。その辺の事を、徒然に書いてみたい。

 育児を通して感じた事は、先ず一にも二にも「育児って、こんなにたいへんなのかぁ!!」と「赤ちゃんって、こんななのかぁ!!」と言う子供自身に関する事である…まぁ、当然と言えば当然だが。独身時代と言うのは、漠然としか赤ちゃんの事を分かっていなかった。自分にも子供だった時代がある訳だけど、さすがに赤ちゃんの頃の事は覚えていない(世の中には覚えていると言う人も希にいるらしいけれど、僕は覚えていない)。
 以前僕は、18歳から35歳までの18年間に渡って、日曜学校の教師(主に小学生クラス担当)をしていた事があるけれど、一週間に一度短時間だけ子供達に接するのと、毎日子供と一緒に過ごしているのでは、その子供に関する情報量がかなり違う。休日などは、ほぼ24時間子供と一緒にいるわけだから、子供からの情報量は半端ではない。色んな事が分かる。
 子供に関して気づいた点は・・・細かい所では山ほどあるのだが・・・最も大きな点を一つ取り上げると、「子供の性格は環境によって作られる」って言うのは嘘だなぁ…と言う事である。上の子は誕生した時、ほとんど泣かなかった。下の子(女の子)は誕生した時、激しく泣いた。ところが、現在にいたるまで基本的にこの傾向は変わらないし、治らない。下の子は癇癪的に突然激しく泣くのだが、上の子はそう言うところが少なかった。上の子は抱っこやオンブをせがまなかったが、下の子は始終「あっこ、あっこ」と言って親に抱っこを求める。また上の子にはミニカーもヌイグルミも買ってあげたが、ヌイグルミには見向きもせずほとんどミニカーで遊んでいた。下の子は上の子のミニカーにほとんど興味を示さず、親に抱っこされてあちこち移動し、そう言う親とのコミュニケーションを楽しんでいた。これは親が教えた事でも、環境が作り出したものでもなく、間違いなく子供が元々持っている傾向だと思う。「地図の読めない女、話しを聞かない男」を正に体現していた。「三つ子の魂、百まで」と言うが、「0歳児の魂、百まで」って言う感じである。親ができるのは、性格を変える事ではなく、本来持っている良いところを伸ばし、人に迷惑をかけそうなところを治していく、って言う事だなぁ…と悟った気がする。環境で変えられるのは、そう言う部分だと思う。そんな訳で、親自身が望む枠にその子供を押し込めるのは、"百害あって一利無し"と感じる。子供に関しては、他にも色々と分かった事、感じた事があるけれど、それが最大の「目から鱗」であろうか。

 次に感じた事は、育児を通して夫婦の意識が大きく変わったと言う事である。育児が如何にたいへんか、この3年間、身をもって体験した。夜間、小刻みに起きてはミルクをせがんで泣き、頻繁にオムツを変える。夜間、熱を出したり咳き込んでは、夜間救急に車を走らせる。親の余暇時間は、すべて育児のための時間となる。うちは、1年3ヶ月の間隔で次の子が生まれたので、一層たいへんだった。
 当然これだけの量の育児は、夫婦の協力なくしては不可能だ。僕も、決して仕事が暇な訳ではないので、育児や家事に関して、時には夫婦と口論になった事が何度もある。その中で、夫婦が育児や家事を分担するようになった。子供を寝かしつけるのは、主に僕の当番。週末や休日は、僕が夜間の育児を担当する。プラス休日は、育児を率先してやる他、僕が洗濯をしたり、なるべく料理を作ったりもする…そう言う風に変わっていった。こうして、夫婦間の理解が高まっていく。
 また、育児をする事によって、育児に関する色々な事を実践で学んだ。最初は苦手だったウンチのオムツも、今でも普通に交換できる。適温のミルク作りは物凄く早いし、子供をお風呂に入れたり、寝かしつけたりするのも相当上手くなった。寝かしつけに関しては、妻より上手いとすら思う。もちろん、これらは今の仕事に活かすと言う意味ではまったく役には立たないが、人生において、人間としての幅が広がったように思う。

 三つ目に感じた事は、子供に関わり合う事によって、社会を見る目が変わった事である。上の子を、初めて病院に連れて行った日の事である。生誕3ヶ月の頃、子供が熱を出した。僕ら夫婦は、「うちの子もとうとう風邪をひいたかぁ…」と呑気に構えて近くの小児科に連れて行ったら、なんと小児科の先生がすぐに目の色を変えて、市立病院に連れて行くように指示した。「風邪ではない」と言う。しかし、熱の原因は分からないと言う。僕ら夫婦は、医師の紹介状を持って慌てて市立病院に行った。子供の熱はどんどん上がり、39度、40度とあっという間に上がった。市立病院でも、原因は確定できないと言う。精密検査が必要となった。点滴用の針が刺され、また採決用の注射針が刺され、3ヶ月の小さな体は痛々しげだった。精密検査の結果、後日「尿路感染症」と診断された。子供にとって初めてのお医者さんが、いきなり5日間の入院になってしまった。痛烈な病院デビューである。その後、子供は一年間に渡って"抗生物質"を飲む事になった。生まれたばかりの子に1年間も薬漬け…と言うのは、親にとってショックな通告だった。
 3年間の育児経験の中の一例だが、こう言う体験を色々してきて、社会においても子供とその親を見る目が変わってきた。電車で泣く子を連れている親を見ても、いら立たなくなった。街中で誰かがベビーカーを押していると、自然に子供と親に目がいく。病院の待合室で親がぐったりしている子を連れているのを見ると、すごく心配してしまう。
 ニュースに対する反応も変わった。以前は、子供が被害者の残虐なニュースを聞くと、「ひどい犯人だ、許せない」と言うような反応と「子供、かわいそうに…」と言う感情が五分五分だったが、今は子供と親に対する同情の念の方が圧倒的に強くなったように思う。「まだ小さいのに。いろんな可能性があったのに。親もここまで育てるのに、いろんな苦労があったろうに。子供が突然奪われて、その心の空白は察して余りある…」そう言う風に、心から悲しみを共有できるようになったと思う(もちろん子供を奪われた本当の悲しみは、当の親本人しか理解し得ないけれど)。自分の子供と、被害者の子供を、自然と重ね合わせてしまうのだ。

 3年間で感じた事、学んだ事は、もちろんたったこの1ページに書けるような事だけではない。これからのもっともっと長い育児の経験やそして子供の成長を通して、親である僕は(そして妻も)成長していくのだと思う。


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