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税金社会よ、何処へ行く   (2005年8月7日記載)

 以前、税金について少し触れたが、今回は少し細かく考えみたい(一部、前回の著述と重複するところもあります)。
 僕は個人事業主なので、毎月帳簿を締めて、毎年末に確定申告している。先日、2002年から2004年までの3年間、どのくらいの税金や公金を払ったのか計算してみた。一口に税金や公金と言っても、けっこう種類が多い。確定申告で所得税が確定し、不足分は春先までに払うし、還付金がある場合も春先には戻る。春が過ぎると、国民年金保険料や固定資産税や自動車税の納付書が続々と届き、その後住民税(県民税と市民税)の納付通知書が届き、追い討ちをかけるように国民健康保険税の納付通知書が届く。これらの額をすべて足したら、3年間で520万円を超えていた。唖然…である。僕は、しがない零細企業の個人事業主である。その僕が、一年当たり170万円以上も支払っている。一日あたりだと、約5千円ほどの税金・公金を払っている事になる。ちなみに僕の一日の昼食代は、500円以内である。一日5,000円の税金は、いくらなんでも多すぎるだろう。税金はそれだけではない。毎日購入している食品や本や雑貨にも消費税がかかっているし、ワインだって相当な割合の税金が含まれている。ガソリンなんて約半分が税金なのに、それにまた消費税がかけられているのだ。税金に税金をかけるって、どういう事?…納得できない。しかも税制が改正されたので、僕のような零細業者も来年から消費税支払い義務の生ずる業者になるので、仕事でも消費税を支払わなければならない。国は、税金を国民からどうしたら少しでも多く取れるだろうかを、ひたすら考えているようだ。身の回り、税金の支払いだらけ…税金を払わずに済む"何か"を見つけるほうが難しいくらいだ。
 納めている税額って、サラリーマン時代にはあまり気にしなかった事だ。毎月源泉で引かれてしまうし、自分がいくら払ったかなんてたいていの人が正確に把握していない。だから一度きっちり計算してみる事をお勧めする…その多さに唖然とするから。払っている額そのものにも頭にくるが、その使われ方がもっと頭にくる。払った税金や公金に見合ったサービスを受けているとは感じられないし、将来正当に受け取れるかどうかも怪しい。おそらく多くの人が、そう思っているに違いない。いったい何時になったら、必要度の低い公共事業が減るのだろうか。何時になったら、毎回会計検査院から指摘される官公庁の何百億円と言う無駄遣いが無くなるのだろうか。省庁改革も名称等の外枠だけ変わって、中身はほとんど変わらなかった。道路公団改革も、国民のためになったとは思えない(※独り猪瀬さんががんばっていなかったら、民営化すら危うかっただろう)。年金改革も超怪しいまま(※若い層のほぼ全員が取られ損と感じているし、将来に不安を感じている)。現在、政府は郵政改革の大旗を振っているが(7月には僅差で衆院を可決。今これを書いている時点では、参院の民営化特別委員会も可決。8日は参院本会議で採決に入ると言う)、郵政事業の郵便事業に限って言えば、僕は切手一枚で地方まできちんと届く郵便サービスには感謝の念さえ感じている。他に、もっと大事な改革すべき事が山積みのはずなのだが。

 話しを少し変えよう。これからの日本の経済の話しである。残念ながら、日本の経済の未来は明るくない。「年収300万円時代の到来」を唱える経済ジャーナリストもいる。今後の企業は、限られた人件費を効率よく分配しなければならない。よく仕事のできる人によりたくさんの給与を与え、そうでない人の給与は下げる。結果、1~2割の人のみが年収1千万円以上(2千万円とか5千万円とか、中には年収1億円以上のスーパーサラリーマンも出てくる)を受け取り、残り8~9割の人が年収300万円程度にまで下がる。今までの一億総中流家庭(…と思っていた)状態は崩壊し、1割の"たくさん持つ人"と9割の"あまり持たない人"に対極分化する。年収だけではない。1割と9割の差は、文化レベルや教育レベルも圧倒的に大きく差が出来てしまう。その差は、もう年収の差だけでは計り知れないほど大きくなってしまう。こう言う考え方は、以前から少しずつあっちこっちで囁かれていたが、最近現実味を帯びてきた。問題は、その税金の負担の問題だ。9割に達した持たぬ人への負担が大きくなる事は間違いない。たった1割の国民に税金を負わせたのでは、国の財政が成り立たない。持たぬ9割の国民の負担は大きくなる。すでに実際の話として、労働者の8割を占めるサマリーマンの各種控除が、減額されたり無くなる方向に話が進んでいる。控除が減ると言う事は、納税額が増えると言う事だ。サラリーマンの税金は天引きされるから、国にとっては税金を集めるのにこんなに楽な事はない。現在、一部のIT企業を除き、大不況でリストラされて転職を余儀なくされたり、ボーナスや給与等を減額されたりしている人が大勢いる。毎年の自殺者も、3万人を超える異常な事態が続いている。そんな状況下で、さらに増税して国民の生活を圧迫しようとしているのだ。
 さっき自分の税金・公金の納付額が年間170万円を超えていると書いた。何度も言うが、私は一介の零細企業の個人事業主である。その私が年収300万円になったとしよう。300万円の年収では、当然ながら今と同じ年額170万円の税金・公金は払えない。仮に、年収が下がったので税金・公金の支払額が年間100万円になったとしよう。300万円から100万円を差し引いた残り200万円で、家族を養う事になる。ところが、住宅ローンや水道光熱費、生命保険だけで、現在200万円を超えてしまっている。僕のお小遣いどころか、日々の食費や子供の教育費すら出ない計算になる。つまり、破産と言うことである。年収300万円時代が本当に到来するかどうかは知る由も無いが、これ以上増税となったら生活は苦しいを通り越して、"国民総破産寸前"と言う事になりかねない。
 一般家庭が収入の半分を借金に頼り続けたら、あっという間に家計は破綻する。それを、国は平気でやっている。前にも別のコーナーで書いたが、82兆円近い国家予算のうち36兆円以上が国債、つまり借金で賄われている。国債の発行残高は、450兆円に達している。個人に置き換えると、家計支出820万円のうち360万円が借金で、借金は毎年増え続けて借金残高は4,500万円に達していて、しかも返す目途は今後もまったく立たない…そんな状態である。どう考えても、普通なら破産である。ところが、"国だから"と言う理由で、こんな理不尽な状況が許されている。
 各家庭は苦しい家計をやりくりして、借金に頼らないようにがんばる。それが普通の姿だ。国だけが、無駄遣いや不必要な支出を許されて良いわけが無い。国の支出の見直しは、まだまだ甘い。もう、ぬるま湯状態。集める税金だっていっぱいいっぱいだし、国債発行だってもうとっくに許容限度の範囲を超えている。すべき事は、本来支出の切り詰めのみ。"見直し"なんてぬるい事を言っている余裕は無い。"切り詰め"が必要な状況だ。不必要な支出、無駄な支出を切って切って切りまくって、削って削って削りまくって、「もうどうにも削るところがありません」となって、初めて増税と言うのなら国民も耳も傾けるだろう。官公庁の無駄な支出や、政官財の癒着、増え過ぎた特殊法人や外郭団体、こう言う大事な改革すべき要所を放っておいて、"増税"の話だけはどんどん先に進める。もう国民は本当に怒って怒って、今の政権与党に怒りの一票を投じないと、たいへんな事になる。っていうか、すでになりつつある。野党もしっかりしてほしい。与党との違いが、どんどん分からなくなつている。
 
 直接は税金問題ではないが、関連して心配な問題もある。古今東西を問わず、国家と言うのは国内情勢が悪化すると、国民の怒りの矛先を外に向けようとする傾向がある。先日の中国の反日行動にしても、同様の面がある。国内の政治への不満を、外への怒りに転化して逸らす。日本の国内事情が悪化し、各家庭の家計が逼迫して国民の怒りが増大した時、その怒りを政府に向けさせず、外交問題に向けさせる可能性だってゼロではない。例えば、今なら北朝鮮問題や靖国問題で愛国心を煽る事で、国内の不況や増税の不満の鬱憤をそこで晴らさせそようと言う事だってあり得る。"日本人最高!!"、"日本国万歳!!"の国家発揚は、正にアナクロニズム。日本人としての誇りを、そんな下らない政府(と言うか政治家の)保身のために使わせてはならない。話が少しそれたので、話を税金の話に戻そう。

 政治の使命は、法律を作る事。法律を作ると言う事は、突き詰めれば"税金をどう使うか"を決めることである。法律に基づかないで、税金を官僚や政治家が勝手に使う事はできない。高度成長期は、イケイケで税収もどんどん伸び、次々と大規模な公共事業に税金が注ぎ込まれた。法律をどんどん作って、特殊法人もたくさんできた。逆に言うと、法律を通す事により、官僚や政治家がお金を使いやすくした。天下り先も、山ほどできた。もはや無駄金と言う範疇すら超えた多額の裏金も、闇に消えていった。しかし、大不況の現在、もはやそんな事はしていられない。何度でも言うが、もし支出を削らずに増税策だけを政府が煽るのであれば、国民は自分の怒りを選挙の一票に投ずるべきだ。そうでないと、日本の高額納税&税金社会はとんでもない奈落に落ちてしまうと思うのだ。自分の子供達の時代に、そんな酷い社会を絶対に残したくない。


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