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経済について真面目に考える    (2004年8月1日記載)

パチンコや宝くじについて

 僕は学生時代、先輩に連れて行かれたパチンコ屋で、初めてにも関わらず打ち止めしてしまった(しかも先輩から分けてもらった玉だった)。こんなに楽にお金が稼げるのかと思ったのも束の間、後日のパチンコでは連続で負けてしまった。結局のところ、ギャンブルとはそう言うものである。胴元が勝つように、構造上できている。そうでなければ、商売として成り立たない。一部には勝つ人がいるが、その他大勢は負けるのである。パチンコ屋の儲けがどれほど大きいか、一般の人は把握していないかもしれない。僕は銀行の営業担当時代、パチンコ屋の稼ぎを目にする機会があったが、サラリーマンには考えられない莫大な額である。もちろん立地環境にもよるが、一台何十万円もする新種のパチンコ台を何十台も購入しても、数日で減価償却できてしまう。逆に言うと、それだけ損をしている人がたくさんいると言うことである。
 パチンコに関わらず、競馬であれ、競輪であれ、競艇であれ、損をすると分かっていて、人は何故これほどまでにギャンブルにのめり込んでしまうのだろうか。ギャンブルには二つの側面がある。一つは、レースや試合の勝ち負けを競うと言うスリルを味わう(※大金を失うかも知れないと言うスリルも含む)と言う娯楽の面。二つ目は、一獲千金と言う金銭を儲ける面。実際には、この二つ目の面が圧倒的に強い。ただ単にレースや試合を楽しむと言う娯楽だけであれば、別に金銭を賭けなくても楽しめる。僕もGPレースが大好きだが、お金を賭けていないのに十分楽しんでいる。金銭を賭けるとしても、千円から数千円程度であれば娯楽としては十分成り立つ。映画や劇や遊園地だって、そのくらいの入場料は取るだろう。しかし、ギャンブルにのめり込む多くの人は、何万円も…時には何十万円、何百万円も…注ぎ込む。よほどのお金持ちでない限り、家計を圧迫したり、限度を超えて借金をしたりする場合も出てくる。負けが大きくなると、負けを取り返そうとより大きな額を賭けてしまう。こうして泥沼にはまっていく。不況になるとパチンコ業界は儲かると言うが、裏を返せば損をする人も増加すると言うことである。またギャンブルのスリルは、常習性をもたらす傾向がある。ストレスフルな家庭の主婦が、子供を放ったらかしにしてパチンコに興ずるのは、正にパチンコ中毒と言わざるを得ない。多額の借金を作るだけでなく、子供の命を危険にさらしてまでもパチンコに興ずるのだ。ギャンブルは、正に公営ないし公認の"多重債務者製造機関"もしくは"家庭不和増強援護装置"である。
 宝くじも同様である。社会人に成りたての頃、何も考えず漠然と毎年宝くじを買っていた・・・当たったら良いなぁ・・・と言う感じで。しかし、ある年から完全に買わなくなった。まったく当たらないから買わなくなった、と言う事ではない。当たろうが、当たらなかろうが、「僕は買わない」と決めたのだ。宝くじは、当たれば確かに生活が楽になるし、色々と高価な物も買える。一般論として、もし1億円ないし3億円が当たれば、家も買えるしスーパーカーだって買える。貯金もできるし、老後の蓄えだってできる。リストラを恐れて、びくびく会社に通う必要もなくなる。僕自身の事にしても、それだけの大金があれば住宅ローンを完済できるし、今の事業に関わる借金も返せるし、事務所の不足しているCGや映像の設備を買い揃える事もできる。しかし、それだけの事だ。宝くじ当選は、人生の様々な諸問題のほんの一面(特にお金に関わる面)を解決してくれるだけだ。多くの人は、宝くじの一等賞が人生の諸問題をすべて解決してくれる、人生すべてをバラ色にしてくれる、と漠然と思っているのではないだろうか。しかし宝くじは、その人の存在意義や、仕事のやりがい、家族との平和な生活、良き友人達との関わり、そう言ったものをプレゼントしてはくれない。大金がそれらを補完してくれる事はあっても、お金自身がその人の幸福を生み出すわけではない。結局それらは、日々の普通の生活の中で培われていくものである。宝くじで1億円当たるよりは、がんばって毎年一千万円を十年間稼ぎ続ける方が、僕には合っていると思う。たいへんだけど、日々の充実感、やり遂げた充足感と言うものはあるし、その過程で経験したものはお金には換算できないと感じている。自分の力で苦労して山の頂上に辿り着くのも、ヘリコプターで山の頂上へ連れて行ってもらうのも、「山頂へ辿り着く」と言う結果は同じかもしれないが、僕は自分の力で登りたいと思う。百歩譲って、宝くじは「夢を買うのだ」と言う事を認めるとしよう。しかし、夢を抱いて日々それに向かって努力していなかった者が、ある日突然大金を手にしても、そのお金を「夢」に変えるのは難しいと思うのである。まあ、そんなこんな思いがあって、僕は宝くじを買わないことに決めている。近くの人が例え3億円当たっても、別に羨ましくは無い(と思っているつもりである)。


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