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SOHOで働く   (2004年4月11日記載)

 SOHOとは、Small Office・Home Office。スモールオフィス・ホームオフィス・・・大企業のように大きな社屋でなく、小企業や個人事業主が事業を営むための省スペースのオフィスのことです。僕もサラリーマンを辞めて独立開業してスモール・オフィスで働くようになって、早いものでこの4月で5年目に突入しました。ここまで一応事務所を維持できて、赤字にもならずにやってこれたと言うことは、そんなに間違った事務所経営をしていないと言うことでしょう。
 この大不況の時代、会社で働くことに見切りをつけて、自分で事業を起こしたいと言う方もいらっしゃるでしょう。しかし、市販の「会社の作り方」等の本は、登記や払い込み等の法的な手続きの説明ばかりで、具体的な事務所の選定の仕方や事業の進め方はほとんど触れられていません。法的な手続き等は専門誌に譲って、このページではなるべく痒い所に手の届くSOHOの作り方を具体的に考えていきたいと思います。

★オフィスの選定

 さて何はともあれ、事業を営む場所を確保しないことには、事業が始められません。スモールオフィス・ホームオフィスと言う名の通り、自宅(ホーム)の一室を事業用に使用する場合、自宅とは別の場所に事務所を借りる場合、と言う二通りの方法が考えられます。それぞれに一長一短があります。
 ホームオフィスの場合は、自宅を使用しているので、家賃や光熱費等を新たに払う必要が無いので経費節約の面で有利です。また、通勤時間もないので時間の上で楽でしょう。ただしホームオフィスは欠点も多く、(自宅近隣の会社と取り引きする事業ならともかく)一般的に自宅は都心などの取り引き先から離れている場合が多いので、営業活動などで時間がかかり不利になる場合も多いようです。そして最大の欠点は、自宅と仕事場を兼ねると、余暇の時間と仕事の時間の境が曖昧になりがちで、公私のケジメが付けづらくなり、仕事も次第に効率的でなくなっていくようです。しかも休日まで取引先からの電話を受けなければならないなど、ストレスも溜まっていきます。こうした理由から、経済的な理由や特別な理由がない限り、私はホームオフィスはお勧めしません。
 一方、別の所にオフィスを借りる場合ですが、これにも長所、短所があります。取り引き先の近くに借りることで営業がしやすいこと、設備を事業用で統一できることなどが利点として挙げられますが、何よりも公私をきっちりと分けられる点が最大の利点かもしれません。短所ですが、オフィスを維持するのはけっして安くないことです。毎月の家賃、光熱費、通信費はもとより、一般的な設備も自宅用とは別に揃えなくてはなりません。定期的にかかる更新料や保険料も、考慮しておかないといけません。こうした経済的な点をクリアーしておかないと、事務所を別に設けるのは難しいでしょう。
 さて、自宅とは別にオフィスを開設すると仮定して、オフィスの選定について考えたいと思います。

・場所の選定・・・まずオフィスの場所の選定について考えましょう。私の今のオフィスは秋葉原近辺(東神田)ですが、昨年夏までは市ヶ谷近辺(九段南)にオフィスを構えていました。市ヶ谷にあった大きな取り引き先のいくつかが湾岸地域に移転してしまったので、市ヶ谷近隣にいる意義が薄れたので移転することにしました。移転にあたって最も重視したのが、地の利です。取り引き先の会社は、東京都内のあちこちに点在しています。大きな都内の地図を用意し、取り引き先の場所を一つ一つ書き込んでいって、すべての取り引き先からもっとも便利で交通の便の良い場所を選定していきました。候補地をいくつかに絞って、最終的に選んだのが秋葉原近辺です。築地や汐留などの湾岸地域にも、市ヶ谷や新宿などの内陸部にも比較的近くて、JRの総武線、京浜東北線、山手線、地下鉄の都営新宿線、都営浅草線、日比谷線など数多くの路線が使えて通勤や営業時の移動にも便利、と言うことで秋葉原を選択しました。また、うちの仕事がコンピューターや映像機器を使うので、秋葉原の電気街に歩いていけるのも大きな利点です。
 このようにオフィスの選択は、ただ単に家賃が安いとか、自宅から近いと言う理由だけで選ぶのは避けた方が良いでしょう。どこにオフィスを構えるのが最も都合が良いのか、例えば、取り引き先から近い、同様に交通の便が良い、仕入先や外注企業が近い等、何が自分の事業にとって重要視するポイントなのかを見極めて選択した方が良いでしょう。ただし、丸の内や銀座が最も便利だと思っても、賃料があまりに高くては借りるのは到底無理と言うことになるので、物件の賃料も考慮に入れながら、第二、第三の候補地も考えておいた方が良いでしょう。

・物件の選定・・・さて場所を決めたら、次は具体的にオフィスを決めなくてはなりません。スモール・オフィスである以上、マンションなどの一室と言うことになるでしょう。私は東京都内と都内周辺の物件しか分かりませんが、私は事務所を借りるにあたり、調べた物件は数百件に上ります。インターネットで調べたり、あちこちの不動産屋をこまめに廻ったりしました。オフィスは毎日仕事をする場ですから、物件は時間をかけてしつこく調べた方が良いでしょう。よく「不動産に出物なし」と言われる通り、格安の物件は避けた方が良いでしょう。立地場所や広さの割に賃料があまりに安い物件は、建物がボロボロ、設備が古い、不良住人が居住している等々、何か理由があるかもしれません。
 賃料ですが、都内の山の手線内の物件で言うと、20平米前後でだいたい最低10万円はすると考えておいた方が良いでしょう。銀座などの地価の高いところでは、同じ広さでも賃料はその1.5~2倍は覚悟しましょう。自分の事業にどれぐらいの広さが必要なのかを見極めましょう・・・机一つで良いなら10平米で足りるかも知れませんし、人が数名働くなら40平米~50平米必要かもしれません。部屋の間取り図を書いて、必要なツールを紙に書いて切り取り、レイアウトしてみても良いでしょう(今の事務所もそうやってレイアウトしてみて、約30平米の部屋を借りました)。そして、必要な広さのオフィスが払える賃料の範囲内かどうかを考えながら、物件を探していきます。
 部屋の広さと賃料がだいたい決定したら、物件の他の項目もチェックします。設備、清潔度、防犯性等いくつか考えられるでしょう。ガス、水道、トイレ、キッチン、冷暖房などの基本設備をチェックしましょう。交通の激しい道路脇などでは、防音性もかならずチェックします。改造車両や街宣車両などが通ると、けっこう騒々しくて仕事に集中できないものです。徹夜作業などが必要な仕事なら、シャワールームやバスルームもあった方が良いかもしれません。光熱費の観点から、防温性もある程度あった方が良いでしょう(以前の市ヶ谷のオフィスは防温性があまり良くなくて、冬はとても寒くて暖房費が異常に高かったと言うことがありました)。建物の清潔さは、防犯性とも密接に関係があります。建物のエントランスやエレベーター内等の共用部分が異様に汚いようでしたら、管理組合や管理人がしっかりしていないか、住人の素行が良くないと言う事も考えられます。また、ゴミの出し方がいい加減だったり、建物の中が汚かったりすると、泥棒や強盗に狙われやすいと言われていますし、オフィスに来てくださるお客様に大しても体面が良くないでしょう(うちの事務所が入っているマンションは、建物自体は新しくはないのですが、管理がしっかりしていてエントランスやエレベーターはいつもきれいです)。防犯性が高いことも、治安の悪い現代の社会では絶対必要でしょう。特に高価な機器や商品を扱う仕事では、たいへん重要なポイントになります。ダブルロックや夜間のオートロック、防犯カメラ、火災報知器、管理人の常駐、警察の定期的な見回りなど、防犯に対する配慮がどこまで出来ているのかをチェックしましょう(うちの事務所のマンションは、これらがほとんど満たされています)。
 細かいことですが、仕事で使うオフィスは、居住の場合と違って南向きである必要はないでしょう。直射日光がパソコンなど精密機器にあたると良くないですし、事務所内の温度が異様に上がったり、窓の外が眩しかったり、コンピューターのディスプレーが太陽光の反射で見づらかったりと、実はあまり南向きの利点は多くなく、結局日中はブラインドやカーテンを閉めておくことになります。
 物件が、こちらが要求するすべての用件を満たせればベストかもしれませんが、そうすると賃料が相当高くなってしまうことでしょう。賃料と相談しながら、何が必要で何があまり必要でないかの、物件の判断ポイントの優劣順序をあらかじめ決めておいてから、物件を探しましょう。

開設資金と資金繰り

 事務所の選定と共に、同時に進めていかなければならないのが、開設設備の準備です。電話、FAX、コピー、机に椅子、ソファー、テーブル、冷蔵庫や各種ロッカーや棚等々、一般的な仕事のツールを揃えるだけでも、思ったよりお金がかかるものです。これ以外に、仕事の種類に応じて、色々な設備が必要となることもあるでしょう。開設時には、事務所の敷金、礼金、手数料、各種設備の資金など、色々と費用がかかります。
 架空のAさんの事務所の例を考えて計算をしてみましょう(話を簡易にするため、リースは組まないものとし消費税は込みとします)。
 Aさんが事業を始めるにあたり、12万円の事務所を借りたとします。事務所契約関連の費用は、敷金3ヶ月、礼金3ヶ月、手数料その他で1ヶ月、一ヶ月目の家賃1ヶ月分で、最初に払った金額が、8ヶ月分の96万円。一般的な設備の購入は、電話&FAX10万円、小型コピー機30万円、事務用の椅子や机で8万円、テーブルとソファーで10万円、本棚やロッカー、冷蔵庫等に16万円、その他細々とした事務所の必要家財等に10万円で、計84万円。Aさんの仕事はデザイン業で、マックや特別な大型プリンター、特殊なハードウェアやソフト等を購入し、その費用合計が120万円だったとします。すると、開設時に必要な費用は、300万円となります。
 しかし、これだけあれば事業が始められるわけではありません。仕事の打ち合わせをし、仕事を仕上げて、それ納品し、請求し、その売上が実際に入金されるまでには、通常3~6ヶ月かかるのです。仕事を開始してお金になるまで数ヶ月、下手をすると1年先と言うこともあります。実際に売り上げがお金になるまでの、事務所の維持費も考慮しておかなくてはいけません。一ヶ月にどのくらいの経費がかかるのか、計算しておきましょう。
 家賃12万円、水道費2千円、電気代15千円、電話&FAX代1万円、インターネット代3千円、通勤&営業交通費3万円、一般的な事務費・通信費・消耗品費2万円、仕事の消耗品費・外注制作費10万円、そして給料に相当する生活に最低必要な費用20万円、これらの合計額がちょうど50万円。最初の売上が入金されるのが6ヶ月後と仮定して、6ヶ月間はお金が入ってこないと考えると、50万円×6ヶ月=300万円の資金を確保しておく必要があります。
 つまり、Aさんの開設時に必要な資金は、設備資金300万円、6ヶ月分の回転資金の300万円の、計600万円となります。回転資金が不足することを、資金がショートすると言います。資金がショートすると、家賃を払えない、外部に資金を払えないと言うような事が起こり、事業が継続できなくなり、倒産することとなります。ですから、手持ちの資金は少しでも多いほうが良いのは、言うまでもありません。
 うちの事務所は、CG映像制作を生業としていますので、数台のワークステーション、各種ハードウェア及びソフトウェア、業務用の映像デッキ等一般の会社では使わない特殊な機器を色々と揃えていますが、初年度、それらの設備に投入した金額は約300万円。この他に、電話や椅子や棚などの一般的な設備も購入していますし、事務所の敷金、礼金、手数料なども払いました。一方手持ち資金は、わずかな貯金と、勤めていた映像制作会社のわずかな退職金だけでしたので、とうぜん資金が足りずに初年度に250万円の借金をしました(今、その借金はようやくあと30万円になりました)。事務所開設の最初の数ヶ月は売上が入金されなかったので、資金繰りはたいへん苦しいものとなりました。個人的に住宅ローン等がある一方、仕事にはきちんとお金をかけたかったので、削れるところは食費や遊行費だけで、仕事以外はたいへん清貧な生活となりました。
 事業をしていると、けっこう予想もしなかったところにお金がかかるものです。設備計画や資金繰り計画は、開設当初の予定通りにはなかなかいきません。仕事のスケジュールが予定より伸ばされる、当初の見積もり額を減額される、お客さんからの入金が遅れる、等と言うことは日常茶飯事です。中には、仕事をきちんと納品したのにお金を払わず夜逃げしたお客さんもいます。そう言うことがおうおうにして起こるので、設備などは最初全部揃えるのが難しいようだったら、必要最低限のものを揃えておいて、事業が軌道に乗ってきたところで少しづつ買い増ししていけば良いでしょう。うちの事務所も、最初は高価なワークステーションを買うのが無理だったので、家庭用パソコンで代用していました。その後4年かけて、少しづつ設備を買い増ししたり更新したりして、現在の設備になりました。4年間の設備投資額は、全部で850万円です。これからも、まだまだかかります。
 事業を進めていくにあたり、設備や経費の資金繰りの心配は終わる事無くずっとついて回るものです。サラリーマン時代のように、決まった日時に自動的にはお金は入金されてこないので、常に事務所のお金の全体像を頭の片隅に入れておくことが必要になります。最初はそれがストレスになるかもしれませんが、自分で事業を営んでいく上での宿命と割り切って、慣れていくしかないでしょう。


★営業&広報活動

 さて、オフィスが決まって、設備が揃ったと言っても、単に仕事をする場と設備、つまり"事業所の器"ができたにすぎません。事務所が開設できただけで喜んでいる人はいないと思いますが、実際に仕事をしなくては食っていけませんし、事務所を維持できません。だいたい事業を始める人と言うのは、前に働いていた会社のツテがあって、独立したら仕事を出してあげようと言うような約束があって、事業を起こす人が多いようです。何もツテが無く何の見込みも無くて独立するとしたら、大馬鹿者か余程の強心臓の持ち主でしょう。
 とは言うものの、僕もどちらかと言うと後者の立場の大馬鹿者です。前の映像制作会社で経営上のゴタゴタがあったのと、前々からその会社では色々な意味で進歩は望めないと言う思いも手伝って、いきなり独立を決心したので、お客さんに根回しはまったくできていなかったのです。正直、前の映像制作会社から取り引きを継続できずに失ったお客も数多くあります。
 ですから、ゼロからのとは言えませんが、一からの営業活動スタートでした。かと言ってただやみくもに、「仕事を下さい」と回っても迷惑がられるだけです。ここで、営業のセンス、広報活動の方法論と言うものが必要になってきます。実は、私は銀行員時代、営業をやっていたことがあるので、その時の知恵を最大限活かすことにしました。

・顧客ノートの作成・・・まず、前勤めていた映像制作会社で取り引きのあった会社、そこから紹介してもらった会社などをすべてノートに書き込み、会社ごとに色々な情報を書き込んでいきます。会社の基本的な情報はもちろん、担当者は誰なのか、私がいつどのような営業活動をしたのか、と逐一書き込んでいきます。はがき一枚でも、いつどんな内容のもを出したのかをきちんと書き留めておきます。営業活動の中で得た情報は漏らさずチェックして、その後の動向もチェックします。日々の営業活動で、ノートの欄はどんどん埋まっていくようになったらしめたものです。それだけ情報が得られていると言うことですから。

・販促物の作成・・・ただ手ぶらで営業に出るのは、けっこう辛いものです。こうした時に、販促物があると営業にでやすいものです。「パンフレットを作ったので、寄らせていただきました」、「デモ・リール作ったので、見ていただいてよろしいですか?」などと言いつつ、相手方のオフィスに入って行くのです。販促物には色々なものがありますが、うちのような小さな事業所は、あまり高価なものや派手なものは作れません。過去実際に作ったものは、事業開設の案内のパンフレット、同様に事務所移転による改訂版パンフレット、デモ作品ビデオ、デモ作品DVD、卓上オリジナルCGカレンダー、各種案内はがきなどです。年賀状や暑中見舞いは、当然出しています。まだまだ色々と計画中なのですが、費用や時間の問題もあるので、全部は実行に移せないでいます。

・日々の仕事の進行状況確認・・・これは、営業活動と日々の仕事の制作進行の両方で使います。今日やるべきことと、今週中にやるべきことをメモにして、どれが優先度の高いものか、どれが終わって、どれが進行中なのか、いつ誰と会うのか、と言うことを、毎朝、毎晩必ずチェックします。以前はメモに書いていましたが、最近は書き込み式のカレンダーに書き込んでいって、終わったものは線で消すようにしています。

・売上計画の作成・・・先ほどの資金繰りのところで述べても良かったのですが、あえてこちらの項目で取り上げます。一年間でかかる経費(つまり出て行くお金)は決まっているのですから、それをカバーする売上を上げなければなりません。先ほどのAさんの例で考えましょう。Aさんの一ヶ月の必要経費は50万円ですから、一年間で600万円の資金が必要です。それ以外に、今後予定の設備資金や資金繰りのゆとり資金やその他のため、プラス300万円を確保したいと考えます。すると、Aさんは最低年間900万円を売り上げなければなりません・・・月平均75万円の売上です。Aさんがたまたま大口の取り引き先を持っていて、300万円の仕事が3件あった・・・これでも一応900万円となりますが、こういった例は稀でしょうし、たった一つの取り引き先だけでは経営的にも健全とは言えないでしょう。そこで、900万円を達成するための、目標を立てます。50万円クラスの仕事6件、30万円クラスの仕事を10件、15万円クラスの仕事を15件、5万円クラスの仕事を15件、で合計900万円、件数は、比較的大きい取り引き先が数件、中規模の取り引き先が数件から十件、小規模の取り引き先も数件から十件、と言う目標を立てました。取り引き先を分散することでリスクを拡散できますし、いろんな規模の仕事を請け負うことで資金繰りにも悪影響がでないように配慮しました(大きな仕事は売上は大きいですが制作期間も長くてなかなか資金化しませんが、小さい仕事は比較的速く納品できて資金の回収も早い、と言うことです)。この目標にしたがって、日々の営業活動をしたり、見積もりを立てたりするわけです。目標の達成が容易だったり逆に難しいようだったら、修正が必要になることもあろうかと思いますが、いずれにせよ最低限必要な売上額は決まっているので、その額はぜったいに死守しなければなりません。目標が無く漫然と日々の業務活動を続けていると、いつか必ず手痛いしっぺ返しを食らいます。私も毎年達成目標を立てていますが、必ずその目標を達成することに苦心しています。今の所、目標を達成できなかったのは、独立開業初年度だけで、2年目、3年目、4年目と3年連続で目標を達成しています(5年目は、またゼロからのスタートですが)。

 さて、色々と営業方策について書きましたが、私の場合、最終的な"もう一押し"は、やっぱり"やる気"と"根性"です。もし、仕事の見積り額ならびに仕事の技術的な経験や知識が同じなら、やる気のある方に仕事を出すのが人情と言うものでしょう(もちろんベースとなる技術も経験もないなら、まったくお話しになりませんが)。基本的に根性論は嫌いですが、小さな仕事でも、他では無理だと言われた仕事を根性出してきっちりと仕上げれば、信頼も得られて次から主流の仕事も回してもらいやすくなります。小さな仕事に忠実な者は、大きな仕事を任せてもらうようになってくるのです。これらは個人的な経験則で、私の場合も、実際そうやって増えていった仕事がいくつもあります。逆に、小さな仕事を断ってしまうと、二度と仕事が来なくなると言うのは実際にあることです。事業が軌道に乗ってきた時こそ、要注意です。天狗の鼻にならないように、やる気と謙虚さを常に維持しましょう。
 また、色々と営業方策を書き連ねましたが、最終的には足が棒になるくらい日々の営業で歩き回ったことも付け加えておきます。

★SOHOで働く心構え

 お金や方法論のことばかりでなく、心構えについても最後に少し書いておきたいと思います。
 個人事業では、経営者、営業マン、制作者(現場の職種)の3つの立場が、個人の中で渾然一体となっています。「経営者」は、経営全体のことを考え、事業の経理状況から将来のことまで考えます。資金繰りにも、頭を悩ませます。「営業マン」は、どうしたら仕事を取れるかを考えます。時には、例え安い仕事でも取りたいのです。一方、「制作者」は、できるだけじっくりと時間をかけて納得のいく仕事をしたいでしょう。安い仕事を受けて急いで仕上げるのは、嫌なものです。また別の角度から見ると、個人事業主は、社長と中間管理職と平社員が、一人の中に同居していると言えるかもしれません。こう言う、ある意味で矛盾した存在が、たった一人の中でぐちゃぐちゃと葛藤しつつ闘い共存しているのが、個人事業主なのです。お客さんから受けた仕事にも責任を持ち、一方で自分と家族の生活にも責任を持ちつつ、自分のプライドとも折り合いを付けていかねばならない。だから、個人事業主はたいへんなのです。そのたいへんさは、絶対にサラリーマンには理解できないでしょう。
 以前、銀行員時代の研修で、「社員はたった一人か二人かもしれないが、事業を営んでいると言うことだけで、小さな企業の社長さんを尊敬をしなさい」と人事部の人が言っていました。その時は、「企業の社長さんに大学出立ての若造銀行員が失礼な事を言わないように、釘を刺しているだけだろう」程度に思っていましたが、今はその意味が分かります。街中のパン屋のお父さん、酒屋のお父さん、惣菜屋のお母さん、八百屋のお父さん、彼らがその事業を維持して家族を支えている・・・今の私はその事実だけで尊敬しています・・・サラリーマン時代では、見えなかったものが見えるようになったと言うことでしょうか。
 独立開業と言うのは、夢に向かって階段を駆け上っているようにも言われることがありますが、実際はそんなに甘い物ではありません。個人事業と言うのは、いつも崖っぷちです。大企業のサラリーマンから、中小企業のサラリーマンや個人事業主への転身は可能でしょう。しかし、逆に個人事業を辞めて大企業へ勤め直すのはほぼ不可能です。一方通行で、不可逆なのです。つまり、個人事業主は失敗したら他に行き場が無い、崖っぷち状態なのです。事業で失敗しても、退職金はありません。仕事で失敗しても、愚痴を聞いてくれたり励ましてくれる上司もいません。そして、先ほど述べた色々な矛盾した物を自分自身の中で処理していかなければならないのです。逆に、崖っぷち感が底知れぬパワーの源となって、事業を成功に導くと言うこともあるかも知れませんが。SOHOで働くと言うことは、つまり、そう言うことです。
 そう言う覚悟が根底にないと、SOHOで事業を営んでいくのは難しいのではないでしょうか。独立開業を、ハイリスク・ハイリターンと言う人もいます・・・サラリーマンよりお金を稼げる(かもしれない?)、好きな夢を追える、と言う「メリット」と、保障がない、行き場がもうどこにも無い、と言う「デメリット」が同居しているのが、個人事業です。会社を辞めてSOHOで独立開業をしたいと考えている方は、この事をもう一度、真剣に考えてみてはいかがでしょう。会社にいる時には、色々と身の振り方があると思っていらっしゃるかもしれません。しかし一度個人事業主になったら、「もう他にどこにも行く場所はないし、保障もない」と言う恐怖心と常にお付き合いしていかなくてはならなくなるのです。営業ノルマが達成できないので会社を辞めたいとか、嫌な上司や同僚との付き合いが嫌で会社を辞めたいと思っているなら、一言だけ言い添えておきます。会社の看板を背負っていても営業成績が上がらないようなら、そもそも個人の力だけで営む個人事業の独立開業は難しいと思います。また個人事業のたいへんさは、嫌な上司との付き合いなど取るに足らないほどの苦労を伴います。一時の感情に流されて簡単に会社を辞めないで、じっくりと将来の事を考えた方が良いと思いますよ・・・SOHO開設はいつでもできますから。


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