JOLLYBOYの教育について考える

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2.胎教について考える (2003年10月26日記載)

 誰でも、最初の体験と言うのは不安なものです。入学、入社、結婚、様々な人生経験に「初めて」と言うものがありますが、中でも「出産」ほど不安なものはないのではないでしょうか。各言う私も、初めての妻の出産に際しては、極度の緊張と不安の中にありました。無事に生れてくるのか、何か予期せぬ異常はないだろうか、妻の身体は大丈夫だろうか、と不安の種は尽きないのです。
 一方、出産に至るまでの道程も長いのです。妊娠期間中の心配、不安、問題と言うのも、色々あります。中でも、妊娠期間中の胎内の赤ちゃん(※つまり胎児)と如何に接すれば良いのか、と言う問題は親にとって大きな悩みどころでしょう。胎教…さて、どうしたものだろう…本屋に並んでいる本の内容は、千差万別…どれを規準にして良いものやら。何冊かの本を読んだ結果、分かったのは「胎教」に関しては、まだ臨床研究の例も多くはなく、確実な事は言えないという事実です。
 ある夫婦が胎教を積極的に行った結果、生れた子がすべてにIQ160以上の天才であったと言う実話もありますが、こうした話を聞くと世の親は焦ってしまうではないでしょうか。うちの子(※と言ってもまだ胎児)にも、早く教育を始めないと、と。しかし、胎児がいつから言葉や音楽に反応するのかは、科学的(医学的)には、実はまだよく分かっていないのです。胎児は、7ヶ月目ぐらいから外界の音が聞き取れると言われていますが、胎教はそれよりずっと早く2ヶ月目ぐらいから始めた方が良いとも言われていたりして、諸説紛々です。2~3ヶ月の胎児に、絵本を読んだり音楽を聴かせても分かるわけが無い…何故なら耳も聞こえないのだから、と言う意見もあります。胎教は母親の感情が胎児に(何らかの物質を通じて)伝わるのだ、と言う人もいます。つまり、実際には耳で聞こえていなくても、お母さんが絵本を読んであげたり、歌を歌ってあげたりする、その優しい気持ちが、何らかの方法で胎児に伝わる、と言うものです。いずれにせよ、どれも「説」の域を出ていません。では、どのように考えたら良いのでしょう?子供達を育てた先人達の言うことも様々で、専門家の意見もバラバラ。だったら、素人である私たちが、断定できるものなど何もないようにも思えます。
 しかし、私は子育てを成し遂げた人生の先輩の話を聞いたり、胎教を実践した人の書いた本を読む中で、確信したことがあります。ある女性は、胎内の赤ちゃんに聴かせていた音楽を、生れてからも聴かせると明らかに他の音楽より関心を示して落ち着くようだ、と語ってくれました。逆に、「ああ、赤ん坊なんて欲しくないのに!」と毎日思いながら過ごしていたお母さんから生れた子は、そのお母さんのおっぱいを拒絶して激しく顔を背けてしまった、そんな記事もある本に載っていました。これらはほんの一例ですが、やはり胎内の赤ちゃんはいきなりゼロで生れてくるのではなく、お母さんのお腹の中で外界からの情報を何らかの方法で得ているらしいのです。生れる時、赤ちゃんはみんな白紙で生れてくると言われますが、実際には胎内で色々と準備されてから生れてくるのです。どのような準備をして生れてくるのでしょうか。
 胎児は、受精10週頃には、手足を伸ばしたり、頭を動かしたりと、色々な動きを見せます。15週頃には胎児の指しゃぶりに一定の規則が現れます(協調運動の出現)。16週には、呼吸様運動が現れます。20週以降は、脳などの中枢神経も目覚しく発達します。眼球の動きも、最初はランダムに動いていたものから、妊娠25週を過ぎた頃から眼球運動が一定のリズムを作るようになり、レム睡眠期とノンレム睡眠期のリズムが形作られるようになるようです。呼吸様運動、眼球運動、吸う運動、排尿などの運動は、生れてから突然始まるのではなく、胎児の時から続いている運動なのです。指しゃぶりも、胎児期はしていて、生れてからしばらくはしませんが、再びするようになります。このように、お母さんのお腹の中にいる時から、赤ちゃんは外の世界で生きるための準備をしているのです。ですから、赤ちゃんが胎内にいる時から外の世界の情報を受け取っていると考えるのも、それほど非常識な考えとも思えません。
 では、どのように胎教をすれば良いのかと言う実際の問題ですが、さほど難しいことでもないようです。実は、昔のお母さん方が、日常やっていたことを参考にすれば良いようです。お腹の中の赤ちゃんに優しく語りかけてあげる、まだ見ていない世界のことをお腹の赤ちゃんに話してあげる、お母さんが優しい声で子守り歌を歌ってあげる…こう言った単純に思える積み重ねが、胎教には良いようです。昔からの知恵と言いますか、先祖代々、歴代の母親たちは、自然に胎教をしていたようです。反対にしない方が良いのは、間違った教育ママのように、難しい語学テープを聞かせると言ったようなことです。"胎教"="英才教育"と勘違いするとそんなことになります。先例の、4人の天才児を育てたお母さんも、色々と絵を描いたカードを作ったりして胎教しましたが、根底にあるのは、生れてくる子どもたちに対する愛情です(生れてからも、色々と子供達が興味を持つことをやらせて、詰め込み教育をせず、のびのびと育てたようです)。胎教で必要なのは、愛情を持って胎児に語りかける事が基本であり、知識を詰め込むことが目標ではありません。心地よい音楽やお母さんが話す声や歌う声を通して、お腹の中の赤ちゃんを愛している事、安心して生れてきて良い事を伝える事が、胎教の最も大切な目的と考えて良いのではないでしょうか。

ティー・タイム/氾濫した育児情報と育児マニュアルについて考える

 現代は、育児に限らず様々な情報が氾濫している。どの情報を信じてよいのやら、みんなが大いに迷っている。どの自動車が最も性能が良いのか、どのパソコンがコストパフォーマンスが高いのか、どの海外旅行がリーズナブルなのか、何を買うにもするにも、とにかく迷う。これは、現代人の病の一つと言って良いかもしれない。高度成長期以前には、何を買うにもするにも、そもそもそんなに選択肢が無かったから迷う事もなかった。しかし、現代は迷う。単に物を買うことなら失敗しても買い替えができるが、育児の事だとそうもいかない。次から次へと登場する、最新の育児情報。幼児のうちから英語を習った方が良いと聞いては幼児の英語教室へ通い、バイオリンを習った方が良いと聞いては音楽教室へ行く。新しい幼児ビデオ教材が出たと言っては、ビデオを買いに走る。何が正しい情報なのか?間違った育児情報をベースにして育てて、子どもが英才教育から落ちこぼれたらどうしよう、逆に人の道を踏み外したらどうしよう…多くの親が、日夜悩んでいるに違いない。
 氾濫する情報に振り回されすぎると言うのも、どうであろうか。バブル時代、マスコミは株式投資や不動産投資を煽ったし、政府はそれを規制せず事実上容認していた。当時の多くの人々が、周囲の者がお金を儲けるのを見て焦り、自分も乗り遅れてはならないとばかりにお金を株やゴルフ会員券に投資した。バブル崩壊後、多くの人が財産を失ったが、マスコミも政府も責任をとりはしなかった。バブルに踊らされなかった人が、結局財産を失わずにいた。育児でも、同じ事が言えないだろうか?各種メーカーが、売り上げ向上のため様々な最新育児情報、育児教材、育児グッズを世の中に送り出す。しかし、それを使って育児に失敗しても、誰かが変わりにその責任を取ってくれるなどと言う事は絶対にない。考えてみてほしいのだが、人間の社会は何百年、何千年以上の歴史の中で、今のような社会のシステムを作り上げてきた。育児にも、先祖代々の知恵と経験と言うものが連綿と積み上げられてきている。赤ちゃんを抱っこして母乳を与える、母親が家事の間おんぶして歌を歌ってあげる、親子が川の字になって一緒に寝る等々、赤ちゃんにとって必要な事が長い長い歴史の間、ずっと行われてきたのだ。ところが、たった数十年の間に社会のシステムや生活習慣が大きく変わった。赤ちゃんはミルク(人工乳)を与えられ、テレビの前の椅子に座らされて幼児用ビデオを一人で見させられ、個室のベビーベッドの中で一人で寝かされる。ここで疑問を持ってみよう、「これは、おかしいことではないのか?」と。社会システムは短い間に大きく変わったかもしれないが、数千年、数万年の時の中で培われた人間の本質が急に変わることはあり得ない。私たちは、もう一度両親や祖父母たちのしてきた育児に目を向けて、そこから学ぶ必要があるのではないか(間違っていることがあったら、反面教師として学べば良いのだ)。
 それともう一つ。現代の親たちの多くは、マニュアル世代だ。高度成長期時代以降に育った人間は、人生の定型マニュアルのようなものを持っている。幸せな人生を送るには、良い会社に入らなければならない。良い会社に入るには、良い大学に入らなければならない。偏差値が、○○以上ないとあの学校は難しい。会社の面接では、これこれこう言う返答をした方が受けが良い。そんなマニュアルを頭に叩き込みながら、人生を歩いてきた人がほとんどだろう。それが、育児にも現れている。本に書いてあるマニュアル通りに育児が進行していかないと、不安になってしまう。離乳食は、○ヶ月から始めた方が良いと書いてあるけど、うちはまだやってないけど遅いのかしら。ハイハイは○ヶ月目から始まると書いてあるけれど、うちの子はまだだし…不安だわ。同年の子は喋り出したのに、うちの子は全然喋らない…どうしたのかしら。多くの不安や疑問が沸いて出て、ノイローゼ気味になってしまう。しかし、子どもの成長も個性もみんな違うのだ。「マニュアル通りにいかなくて当然だ」ぐらいの、どっしりした親の態度&気持ちが大切ではないだろうか。よその子はよその子、うちの子はうちの子、のびのびゆっくり育てばよい…そのぐらいの富士山のような、否、エベレストのようなどっしり感、不動感が親には必要ではないだろうか。小さいうちから、他の子と比較されたり、競争させられたりしたら、それこそその子が不幸と言うものである。
 最新育児情報や育児マニュアルに振り回されてしまうのは、高度成長期以降の核家族化の弊害の一つだと思う。戦後の生活の変化は、アメリカ化と言ってもよいかも知れない。戦後日本はアメリカの豊かな生活を目指してきた。車、テレビ、クーラー、そして親と別々の住宅…アメリカナイズされた近代的生活。しかし、そのアメリカ自体が、離婚率が高くなって、犯罪も多い国になってしまった現状を見ると、日本が目指した方向が正しかったのかどうか。現代日本では、生活を親に干渉されたくないので、どうしても子ども夫婦の世帯だけで生活する風潮がある。自立と言う意味では長所もあるが、同時に欠点も多い。大家族だったら、生き字引たる経験の多い祖父母や両親が一緒に暮らしているから色々な経験や知恵を聞ける。日本がたった半世紀でガラリと変えてしまった「暮らし方」と言うのも、少し見直す必要がありそうだ。





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