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8.またまたバブルの破裂…いい加減に、もうやめませんか? (2008年10月19日記載)
サブプライムローンに端を発したリーマンブラザースの破綻など、この世界的経済の混乱。ああ、またか。20世紀末のバブル崩壊による日本の失われた10年は、現在まで大きな負の影響を与えた。今回は、世界的な規模。
日本の金融機関や個人投資家でも、前回のバブル崩壊の教訓から学ばなかった者がいるようだ。7年前に、バブル経済の崩壊についは記述したので、同じような事はここではグタグダと書かないことにする。また、債権や先物取り引き、外国為替などをまとめて書くと焦点がぼやけて分かりづらくなるので、ただ一点"株式の取り引き"についてのみ取り上げ、書き記しておきたい。
僕は銀行員時代に、証券業取り引き免許を取得した。またそれよりも遡れば、学生時代に"証券取り引き"の授業を取っていた。その講義の先生が、某大手のバリバリの証券マンだった人。大学で授業を取っていた当時も、先生は株取り引きでけっこう儲けていた。
その先生は言う。「株の価格を決めるのに、重要な要因は何か?」。
学生達は、教科書通りに答える。「企業の資産価値」、「企業の商品開発力」、「企業の営業力」、「企業の収益力」…その他、会社四季報に載っていそうな色んなことを羅列する。
それに対して先生は言う。「そう、そう言ったものも大切です。後ですね…"空気"。これも大きな要因です」。
そう、空気である。雰囲気と言っても良いかもしれない。数字では表わせない"何か"。
株価の決定には色んな要因が上げられるが、「ああ、なんか上がりそうな気配が漂っている」…こんな理屈ではない空気だけで乱高下する事もある。株はね、"企業"が資金を集めるための証券であって、お金を出す側にしてみれば企業への投資である。だから、本来、企業の収益力や資産価値等から大きく逸脱した価格にはならないはずである。
しかし、ここ最近は"株"(を含め様々な物)の価格が実体経済からかけ離れてしまう。企業への"投資"ではなく、明らかに"投機"になっている。たった一字の違いだが、この差は大きい。企業の繁栄によって、資金を出した株主もその恩恵を受けると言うのではなく、単に株価の乱高下の隙間を縫って売り抜けて儲けると言う思考。その最たるものが、機関投資家の"空売り"。莫大な資金を背景に、大きくガツンと買って、株価が上がったところでドーンと売り抜いて、大きく儲ける。大量に売れば当然株価は下がるが、その損を引き受けるのが、わずかな投資資金しか持たない個人の弱い投資家。これは、もはや投資なんかではなく、"ギャンブル"ないし"社会に対する背信的な投機"である。
今回の経済危機をなんだかんだ難しく言うコメンテーターもいるようだが、結局は単なる"バブル"の破裂、崩壊である。ガソリンの価格も、株価も、大きな資金を持った国や企業や団体が支配権を握る。資金はある、そして儲けたいからお金をどんどん注ぎ込む。実体経済の価格とかけ離れるから、誰もが「やばい」、「そろそろ降りないと」と思う。しかし、「こんなリッチな生活環境は捨てられない」と言う"降りられない"異常な心理状態。そして、破裂した時には莫大な損害となる。一部の幸運な(もしくは計画通り?の)人は崩壊前に売り抜けるが、その他大勢は大損である。
しかし、株価の上昇時には、証券マンの中には、年収数千万円、中には年収数億円と言う人々もいた。株価の上昇だけでなく、投機の金はあちこち投入され、現物であるガソリン価格や穀物価格も高騰した。市民の多くは苦々しく思いつつも、自由経済活動の中の"ハイ・リスク&ハイ・リターン"原則と言う事で、世間はギリギリ容認していた(…否、もはや多くの市民の容認の限界を超えていた)。しかし、ハイリスクの面が遂に牙を振るい大手の証券会社が破綻した時、アメリカ市民も下院議会も、国家予算で彼等を救う事には"No"の意思表示をした。当然な帰結、当たり前の話である。
しかし、破綻の余波が大きく、関連する企業の経済活動にも大きな影響を与えるとの判断から、結果的には莫大な国家財政出動となった。日本の失われた10年以上のインパクトが出る事は避けられないだろう。ほとんどバブルの恩恵を受けず、むしろ燃料等の価格の上昇で生活をかき回された世界中の市民が、莫大な国家財政出動(つまり税金負担)を苦々しく思うのは当然である。
長年、株価の好調な売買によって、大きく儲けた人もいた。しかし、今回のバブル崩壊で、日本でも大きな損を出した者も多かったはずだ。外資に多額の資金を運用させていたとも言われる、年金の原資なども心配だ。もう、そろそろ学ぶべきだと思う。濡れ手に粟のような儲け方思考法は、そろそろやめよう。それは、"バブル"と"生活への皺寄せ"しか生み出さない。実体経済で革新的な技術進歩が無い限り、本当の実質を伴った株価上昇は有り得ない。そして、残念ながら時代を変えるような根本的な技術革新は、未だ起っていない。
実体経済とあまりにかけ離れた価格の乱高下に対しては、国際社会で(機関投資家への規制も含め)もっと厳しい規制を加えてもよい頃だと思う。共産主義は破綻したが、資本主義だって問題だらけなのである。技術革新や経営努力といった実体経済とかけ離れた「株の売買"だけ"で大儲けできる経済システム」には、もう歯止めをかけるべきだと思う。人や企業ががんばって働いて儲ける事、そしてプラスして、貧しい人々が同じ世界で共生していく事…この両者のバランスを取っていく社会を築く事を重視し、そのための"新たな経済&政治の哲学"を求めるべきだと思う。
最後に一言だけ。
「素人は、株で大儲けしようなどと思わない方が良いよ」。これは、友人や家族に常日頃言っている僕の考え。経済学部出身で、元金融マンで、今も経済に関心を持っている僕も、株には手を出していない。本気で難しいと考えいるからだ。
宝くじや競馬で、継続的に大儲けできるだろうか?「当たる」と言う評判の銀座の宝くじ売場に並んだって、まず当たらない。競馬新聞を一生懸命研究したって、そうそう当たるもんじゃない。株だって同じ。専門家が緻密に調べ上げても、風評一つや機関投資家の思惑一つでぶっ飛んでしまう世界。一部の成功者(※それが本質的に成功と言えるかどうかは別だが)が書いたインターネット記事や本の売り文句なんか、軽々しく信じちゃ駄目だと思う。
もしどうしても株を買うと言うのなら、財産として「長期間」持った方が良いと思う。そして、買う株は(証券会社の営業担当の受け売りじゃなくて)、自分で調べてホントに育てたいと思う惚れ込んだ企業、しかも堅実経営で企業理念のしっかりした企業の株を選択した方が良いと思う。僕だって、買いたいと計画している株が無いわけではない。でも、かなり慎重に考えている。その上で買うつもりだ。もちろんリスクは皆無じゃないけれどね。それが株の宿命だから、買うなら覚悟して買う。
もし、まだハイリターンを狙って"投機的な"ハイリスクな株売買を今後も続けると言うなら、失敗しても友人や家族、ましてや国家に泣きつくような真似はしなさんな…と言いたい。もう一回言うけど、素人は株で大儲けしようなんて考えない方が良いと思うよ。正直、株で儲けた先輩も過去にいるにはいたが、それはむしろ例外的な人。それ以上に、株で失敗した数多くの人を、銀行の営業時代にこの目で見ている。
今、株価が底値に達したら"買い"に走るべく、"投機筋"がじっとその時期を見極めつつ待機している。そして、同じような事態が延々と繰り返されるのであろう。それから、10年先か20年先か知らないが、またバブルが弾けて、またまた公的資金、つまり税金が投入されるのだろう…そんな無駄な事に何度も多額の税金を使われたくない…まっぴらご免である。何故、日本も世界も学ばないのだろう…。もういい加減に、そう言うのやめようよ。こつこつ真面目に堅実に働く事を、これからの時代は大切にした方が良いと思う。当たり前の事だと思うけどね。
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